立ち退き料を請求する流れ
CATEGORY
立ち退き料を請求する流れ

1 立ち退きを求められてから立ち退き料が支払われるまでの流れ
・賃貸人から賃貸借契約の解約を通知されることで始まる。
・賃借人から立ち退きをしないと争うことで賃貸人から立ち退き料の提示がされる。
・賃貸人と立ち退きの条件を合意するか、判決が出ることで、立ち退き料の支払いを受け、立ち退きをすることになる。

2 賃貸人(不動産会社)からの更新拒絶及び解約通知が届く
・立ち退きを求められるときは、賃貸人や不動産会社から必ず「更新拒絶及び解約通知書」や「賃貸借契約解約通知書」というものが届く。
・借地借家法27条1項により、賃貸人が賃貸借の解約を申し入れた日から6ヶ月を経過しなければ賃貸借契約は終了しないから。
・口頭でされる場合もあるが、家に書面が届くことが多い。賃貸人としても証拠を残す必要があるから。
・ここで要求に応じてすぐに立ち退いてしまうと立ち退き料は支払われなくなる。立ち退き料が、本来立ち退く必要がない人を立ち退かせるために支払うものだから、既に立ち退いた人には支払われない。
3 立ち退きの条件について賃貸人と交渉をする
賃貸人と直接の交渉
・賃貸人は交渉に応じてくれる。賃貸人は賃借人に自ら出ていってもらうか、判決を得て強制執行しない限り、賃借人を追い出すことができないから。
・ここで立ち退き料の提示がされることがある。ここでの提示はかなり低めにされることが多い。
・交渉で合意することができそうなら続くが、合意できないなら1ヶ月程度で次のステップに進むことになる。
調停で交渉をする
・直接の交渉だけで合意ができない場合、賃貸人は民事調停か訴訟をすることが多い。賃貸人としてはいきなり訴訟を起こす場合もあるが、民事調停を挟むこともある。
・民事調停では、不動産鑑定士や税理士が間に入って調整をしてくれる。だから合意がしやすい。
・1~2ヶ月に1回、調停の期日が開かれることになる。ここでも話し合いができそうなら続くが、調停で解決しないようなら2,3回で訴訟に移行することになる。
・調停の事件は9割解決すると言われている。残り1割は訴訟に移行する。
4 賃貸人から訴訟を提起されて裁判になる
賃貸人が民事訴訟を提起する
・裁判所から訴状が届く。だいたい賃貸人が訴訟を提起してから1ヶ月後くらい。なお、賃借人の方から立ち退き料を請求する訴訟を提起することはできない。
・賃借人は、裁判所に指定された期限(到着から約1ヶ月後)までに答弁書を提出する。期限までに答弁書を提出しないと、立ち退きを命じられるだけでなく、立ち退き料ももらえない。必ず対応する。
口頭弁論
・「正当の事由」がないと賃貸人は立ち退きを求めることができない。裁判所は、正当の事由があるかどうかをお互いの主張と証拠を持って判断する。
・正当事由が十分でないときは立ち退き料がどの程度必要なのかということが審理されることになる。
・賃貸人から証拠が提出されるので、適宜反論する。
・1~2ヶ月に1回裁判期日が開かれ、交互に主張立証をする。
和解交渉
・通常は、判決の前に裁判官から和解を進められる。和解ではなく、専門家を挟んだ調停に移行する場合もある。
・ここで賃貸人の考えている立ち退き料が提示されることもある。この金額は、判決よりも高い場合もあれば低い場合もある。
・まれに代替物件を提案されることもある。
・実際は和解で解決することも多い。判決になった場合に、予想外の結論になるかもしれないから。
・和解も合意できるかどうかで続く期間が変わる。
判決による訴訟の終了
・和解でも解決しない場合には裁判所が判決で判断をする。
・①立ち退き料なしで立ち退きを認める判決、②立ち退き料と引き換えに立ち退きを認める判決、③立ち退きを認めない判決の3パターンがある。このうち、判決で立ち退き料の支払いが認められたのは、②。
・控訴することもできる。
5 立ち退き料の支払い
・交渉や調停・和解の場合には、約束したとおりに立ち退きをすることになる。
・立ち退き前に立ち退き料の一部を支払ってもらって、立ち退いた後に残りを払ってくれることが多い。
・判決の場合には、通常は、判決が出た後に、賃貸人が立ち退き料を支払ってくれて、賃借人もそれに応じて出て行くことが多い。
・それでも出て行かないと、判決が届いてから2週間で確定する。賃貸人が立ち退き料を支払って、強制執行を受けることになる。
6 物件から立ち退く
・立ち退きを約束した場合、約束の期日までに立ち退く必要がある。
・判決で立ち退きが命じられたときに応じないと強制執行されることになる。
7 立ち退き料がもらえないケース
・定期借家の期間満了の場合
・賃貸借契約上の債務不履行がある場合(賃料未払い、用法遵守義務違反など)
・債務不履行の場合でも、和解の中で賃料免除や実質的な立ち退き料の支払いがされる場合もある。
・債務不履行がない上記の立ち退き訴訟で、立ち退き料なしでも正当事由が認められる場合と、そもそも立ち退き料が払われたとしても正当事由がないと判断される場合
・このときは、判決後に再度の交渉がされることもある。