コラム
COLUMN

 「大家都合退去の方法を詳しく解説 立退料の相場と交渉方法」

 「ある日突然『建物老朽化により建て替えの必要がある』というような理由とともに『今後の更新はしないので退去してください』という連絡が来てしまった。退去しなくてはいけないの?」

「これって大家の都合なんじゃないの?」

「立ち退き料ってきいたことあるけど、この場合もらえるの?」

というようなお悩みをお持ちではありませんか?

退去を求められるのも初めてかもしれませんし、経験がある方もそう何度も経験しているわけではないので、どんな場合が大家都合の退去請求かもわからないし、大家都合の退去請求の場合、どのように対応していいものかもわからない。退去するとなると住む場所や店を失うことになるので、非常に不安になりますよね。

上記の問に対して、端的に回答すると以下の通りになります。

  • 大家都合とは、文字通り大家の都合による退去をいう
  • 大家都合の退去請求では、立ち退き料をもらうことができる場合が多い

本記事では、上記について詳しく説明するとともに、交渉を有利にすすめるために撮るべき手段、立ち退き料の性質や、逆に立ち退き料がもらえない場合について解説していきたいと思います。

1 大家都合退去とは

 結論から言ってしまいますと、大家都合の退去とは文字通り大家側の理由による退去を言います。

具体的には、もっと高い家賃の払える借主に貸したい、とか建物が古くなったので建て替えたいというような理由が大家都合となります。以下の図に大家都合の退去請求をまとめました。

大家都合の退去の例

2 大家都合の退去請求は原則拒否できる

 大家都合で退去の請求があった場合でも、原則としてこれに応じて、退去する必要はありません。大家都合で退去を求められた場合、借主を退去させるためには、正当事由が必要になります(借地借家法28条)。

この正当事由の有無は主に以下の要素から判断されるとされています

⑴ 貸主と借主が建物の使用を必要とする事情(一番重要)

⑵ 建物賃貸借契約の従前の経過、建物の利用状況、建物の現況

⑶ 立ち退き料の提供(補充的)

貸主が建物の使用を必要とする事情というと、なにか理由があれば、退去が認められるようにも思えます。しかし、実際には、これはかなり厳しく判断されています。

たとえば、貸主が両親の介護のため、より広い借主居住の賃貸物件に移りたいという理由があった場合は正当な理由といえそうです。しかしながら、貸主が大地主で他に十分広い部屋が用意できるという場合は、上にあげたような理由だけで、退去を求めている物件の使用が必要であると認められることはありません。

 以上のように、正当事由があるかないかは、かなり厳しく判断されますので、大家都合で退去を求められた場合であっても、多くの場合は、借主はこれに応じる必要がないといえます。

3 大家都合の立ち退き請求を拒否できない例外的な場合

 多くの場合で借主は退去を求められても、これを拒否できますが、以下のような場合は例外的に退去を拒否できません。
・ 定期借家等である
 定期借家等とは、予定された一定期間に必ず契約が終了する賃貸借契約です。
一定期間に必ず契約が終了する以上、この期間が終わった場合は退去することが前提となっています。そのため、退去の理由が大家都合であっても、この期間の終了とともに退去しなくてはなりません。

定期賃貸借契約かどうかを判断する際の注意点

・ 借り主自身に問題がある場合

 そもそも、退去を拒否できるのは、大家都合の場合です。そのため、退去の理由が大家都合ではない場合は退去しなくてはなりません。
たとえば、借主が家賃を長期間滞納している場合は、大家都合とはいえないので、退去する必要があるでしょう。

大家都合ではない借主都合の退去事由

・大家が持ってきた合意書にサインをしてしまった

 注意しなければならないのが、大家が持ってきた合意書にサインしてしまった場合です。この場合もサインしたことにより、退去に合意している=「自分の都合で(も)退去している」と判断されますので、大家都合ではないと判断されてしまいます。

そのため、大家が持ってきた合意書にサインをしてしまうというのは絶対に避けなければなりません。

  • 大家側に正当事由がある

 借主を退去させるためには、正当事由が必要になります。つまり、正当事由があると認められる場合は、大家都合であっても、退去を拒否できないということになります。

  • 十分な立ち退き料をもらっている

 立ち退き料が支払われている場合は、必ずしも理由が十分でない場合であっても立ち退きが認められます。立ち退き交渉においては、この立ち退き料が重要になるケースが多いです。具体的には、住宅の場合の立ち退き料は、60万円~100万円程度、飲食店の場合100万円~3億円程度の立ち退き料を受け取っている場合、大家都合の立ち退き請求であっても、拒否できない場合が多いといえます。

ただ、大家側から立ち退き料の提示があったとしても相場よりも低い額で提示されている場合が多いので、交渉をすることで増額できる場合が多数といえます。

4 大家都合の退去請求があったときは立ち退き料をもらえる場合が多い

4-1 そもそも立ち退き料とは

 立ち退き料とは、大家都合の退去に伴って、借主に発生する損害を補償するお金です。大家都合の退去とは、ということは既に説明しました。そうすると、借主は意図せず退去をしなくてはならないわけですから、継続して賃貸を続けていたとしたら、払わなくてよかった金銭を予期せず支払うことになったり、逆に賃貸借契約が継続していたら、得られたはずのお金が得られなくなったりします。

たとえば、

〇居住用の建物の場合

・引っ越し業者費用
・賃料の差額
・新居の仲介手数料

〇営業用の建物場合

・引っ越し業者費用
・賃料の差額
・新居の仲介手数料
・内装工事費用
・休業中に得られるはずだった利益
・移転によって失う顧客からの利益

このような損害が発生します。
立ち退き料は、大家都合の退去請求で意図せず発生した損害を補填する役割があるのです。

4-2 大家都合の退去請求の場合立ち退き料をもらえる場合が多い

 大家都合の退去の場合立退料がもらえるが多いです。

すでに述べたように、大家都合の退去では正当な理由が必要となりますが、これが認められる場合は、かなり限定されています。

しかしながら、裁判などでは、必ずしも十分、正当な理由がないという場合でも、「立ち退き料」を支払うことを条件に立ち退き請求を認めるケースが数多く存在します。

これは、借主に発生する損害を補償するお金だからです。つまり、突然の退去請求による借主の損失を少なく(穴埋め)することで、大家都合の退去理由だけでは十分でなかったもとあわせて正当事由として認められるようになるのです。

以上から、大家都合ではあるけれど、十分な正当な理由がない場合(=ほとんどのケース)では、立ち退き料がもらえることになります。

5 大家都合の退去請求の場合立ち退き料の相場はどれくらい?

 大家都合の退去に伴って、借主に発生する損害を補償するお金ですから、立ち退き料の相場は、退去によって損する範囲によって決まります。この損する範囲というのは、物件をどのような目的で使用していたか、退去によりどのような損害があげられます。

ざっくり言って住宅の場合の立ち退き料は、60万円~100万円程度飲食店の場合100万円~3億円程度とされています。

 立退料の内訳としては

立退料の内訳計算

となります。

裁判例(昭和61年4月28日)では、中高層ビルの多い繁華街において、大家が賃貸物件(1戸建て)を取り壊して、中高層ビルを建築し、土地の効率的な利用を図ろうとしたというケースで、土地の効率的な利用のために中高層ビルを建築しようと考えるのは当然であること、一方で借主にも居住の利益が認められること等を考慮して、立ち退き料9000万円の支払によって、正当な理由が補完されると判断しました。

具体的な計算等はこちらでもさらに詳しく説明しています。

6 立ち退き拒否の場合、大家都合の退去請求の場合交渉が重要

大家都合の退去請求の場合、以下のように交渉を行うことが重要です。

6-1 相手の方から借主に有利な条件が出てくるケースは少ない

 そもそも、大家都合の退去請求では、立ち退き料をもらうことができるケースが多数といえます。当然のことながら、大家の方からみれば、立ち退き料は払わないにこしたことはないですし、できるだけ大家に有利な条件で退去してもらいたいと考えるのは自然といえます。実際に、正当な理由がないにもかかわらず大家からは立ち退き料の提示もない事例が数多くみられます。また、立ち退き料の提示がであっても、相場よりも低い場合もあります。十分な立ち退き料の提示がないからこそ、交渉によって、相当な立ち退き料の提供がなければ退去しないという態度を示す必要があります。

6-2 交渉は大家側にもメリットがある場合が多い

 大家であっても、無理やり借り主を追い出すことはできません。交渉をしないで借り主を追い出す場合は、裁判をすることになります。

裁判は、当事者双方の主張をじっくり戦わせたうえで、中立的な裁判所が、請求が認められるか否かを判断することになります。そのため、一般的に解決までは長い時間がかかります。また、裁判になると弁護士費用も交渉より高くかかる可能性があります。

そのため、交渉を行わない場合、時間的・金銭的コストを多く要することになります。

6-3 柔軟な解決が望める

 訴訟では、基本的に相手方の請求した内容が認められるか、認められないかという点のみが判断されます。立ち退き交渉の場合は、「○○円と引き換えに」と立ち退き料の支払と引き換えに立ち退きを認める判決が出ることはありますが、たとえば、立ち退くまでの期間を延ばしてもらうといったような細かい条件までは設定できません。お互いが納得できるような条件で解決するためには交渉が必要となります。

6-4 結論!交渉は必要

 このように自己に有利な条件を提示しつつ、相手も納得できるような条件で早期に折り合いをつけるためには、大家と交渉を行う必要があります。さらに、大家都合の立ち退き交渉では、以下に述べるような事情もあるため、その交渉を弁護士に任せるべきです。

7 大家都合の退去請求をされたら弁護士に交渉を依頼すべき4つの理由

 大家都合の退去請求をされたら弁護士に交渉を依頼すべきです。以下で詳しく説明しますが、ポイントは下の図の通りです。

大家都合の退去請求をされたら弁護士に交渉を依頼すべき4つの理由

7-1 大家は交渉経験がある場合が多い

 まず、大家は、立ち退き請求を多く経験している場合があります。このような場合、大家は、立ち退き交渉の勘所を知っているということになります。

また、そうでなくても、管理会社や大家の代理人となる弁護士が交渉行うことになります。いうまでもなく、管理会社や弁護士は不動産や交渉の専門家ですので、やはり立ち退き交渉において借主より有利な立場にあるということができます。

弁護士も立ち退き請求の対応を数多く行っており、立ち退き請求を経験している大家側との交渉の際に、対等以上の地位に立つことができます。

7-2 弁護士は判例や相場観を知っている

 弁護士は、立ち退き料の相場を判断する際に用いられる道具(=法律)の専門家です。交渉がうまくいかなかった場合は、最終的には裁判で立ち退き請求が認められるか判断されます。裁判では、法律や判例の知識を用いて、事案が判断されます。すなわち、交渉段階でも、「最終的に裁判になったら判断はこうなる」という点を意識して交渉することが重要になります。弁護士は、この点の専門家ですから、弁護士に依頼すると交渉をうまくすすめることが可能になります。

交渉の経験も豊富ですので、大家サイドと対等以上に交渉ためには、弁護士をつける必要があります。

7-3 自分が交渉を行わないで済むので精神的・時間的負担が減る

 そもそも、借り主の多くは、立ち退き請求を受けたことはないでしょうし、かつ法律知識・判例知識も多くない場合がほとんどでしょう。そのような状態のなか、いきなり大家都合で退去を求められた場合、大きなストレスがかかるものと思われます。

また、日々の仕事や生活の合間に交渉や交渉のための裁判例などの調査を行わなくてはならないので、時間的な負担も大きいかと思われます。

弁護士は、退去の交渉など法的なトラブルについて、代理人となることができますので、これらの面倒な作業のすべてを丸投げすることができます。

7-4 自分にとって不利な行動を事前につぶしておくことができる

 交渉においては、自己に有利な条件を提示することも大切ですが、自己に不利な行動をしないということも非常に大切です。

たとえば、相手方の持ってきた合意書にサインしまったり、立ち退きを求められてすぐに引っ越しをしてしまったりすると、せっかくもらえたはずの立ち退き料がもらえなくなってしまうことになります。このように、大家都合の立ち退き請求においては、自己判断で安易に行動してしまうと、思わぬ不利益を被る可能性があります。

弁護士は、退去請求における交渉を熟知しております。そのため、どのような行動が不利益になるかについても熟知しています。

そのため、意図せず不利益な行動をしてしまい、本来得られたはずの結果がえられないという「もったいない状況」に陥ることを防ぐことができます。

8 大家都合の退去請求がされた場合の相談はグラディアトル法律事務所へ

 大家都合の退去請求において、弁護士をつけることによって交渉力がアップし、適切な立ち退き料を受け取ることができる可能性が高まります。さらに相手方に対して有利な交渉を行いたいということであれば、経験豊富な弁護士を選ぶ必要があります。

8-1 グラディアトル法律事務所は、大家都合の立ち退き請求での解決実績多数!!

 グラディアトル法律事務所は、大家都合の退去請求の交渉経験が多数あります。実際に、弊所で扱った事案では、当初700万円が提示されていた飲食店の立ち退きに際して交渉の結果約3100万円の立ち退き料を獲得した事案がございます。

立ち退き料2400万増額事例図700→3100

8-2 土日祝日も営業。急な大家都合の立ち退き請求にも迅速に対応可能

 グラディアトル法律事務所は、土日祝日も営業しており、電話受付は、24時間365日対応です。そのため、大家都合の立ち退き請求がなされたタイミングで迅速に相談を行うことが可能となっています。

また、土日祝日の相談も可能ですから、平日は相談が難しいという方でもじっくりと相談できます。

8-3 相談は無料

 グラディアトル法律事務所は、初回の相談料は原則として無料です。そのため、話を聞いてから依頼するか決めたいけど、そのために相談料を支払うのは躊躇してしまうという方であっても安心して相談することができます。


8-4 相談の方法も複数用意

 グラディアトル法律事務所では、面談方法として、実際に事務所に来ていただいて相談する方法のほかに、電話やZOOMでの面談にも対応しております。そのため、近所に大家都合の立ち退き請求対応の経験が豊富な弁護士はいないけれども相談したいという、遠方の方の相談にも十何に対応することができます。

9 まとめ

 大家都合で退去請求された場合について、重要なポイントは以下の通りです。

  • 大家都合とは、借主都合出ない場合をいう
  • 多くの場合で立ち退き料をもらうことができる
  • 適切な立ち退き料を受け取るためには、交渉を行うことが重要

 本記事が読者様の理解を促し、大家都合の退去請求における交渉のお役に立てたのであれば幸いです。