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【フローチャート】更新拒絶通知が届いたときの対応方法を分かりやすく解説

「貸主から賃貸借契約を更新しないという通知(更新拒絶通知)が届いたけど、これって出ていかないといけないってこと?」

突然貸主から賃貸借契約を更新しないといわれたとしても、どう対応したらいいか分かりませんよね。

実は、貸主が賃貸借契約を更新しないと言ってきたとしても、物件を立ち退かなくてもいいことがあります。しかも、立ち退かなければいけないときでも、立ち退きの条件を交渉したり、立ち退き料というお金を請求できたりすることがあるのです。

これは、貸主が賃貸借契約を更新しないというためには、立ち退きを求める正当事由というものが必要とされていることがあるからです。

そして、この正当事由というものは、立ち退き料なく認められることは多くありません。

そこで、今回は、更新拒絶通知が届いたときに、

  • どのような流れで進んでいくのか
  • 更新拒絶通知を受け取った借主がどのように対応したらいいのか
  • 立ち退きを求める正当事由とはどのようなものなのか
  • 更新拒絶通知が届いた借主が知っておくべき3つのことを解説します。

更新拒絶通知が届いたときの流れをわかりやすく説明しますので、貸主に対して最適な行動をしていきましょう。

更新拒絶通知が届いたときの対応方法まとめ

1章 更新拒絶通知とは

更新拒絶通知とは、貸主(大家・オーナー)が賃貸借契約を更新せずに、契約期間の終わりと同時に賃貸借契約を終了させる連絡のことをいいます。

契約期間がある賃貸借契約では、貸主が物件を返してほしい場合には、契約期間が終了する1年前から6ヵ月前までの間に、賃貸借契約を更新しないという連絡をしなければならないことになっています(借地借家法26条第1項)。

更新拒絶通知が届く時期

貸主が物件を返してほしいときに、借主のもとに更新拒絶通知が届くことになります。

一例ですが、このような内容の更新拒絶通知が届くことがあります。

契約更新拒絶通知書の例

更新拒絶通知が届いたからといって、必ずしも物件を出て行かなければいけないとは限りません。貸主が更新拒絶をする正当事由がないときには出ていかなくてもいいこともあります。

更新拒絶通知が届いた場合の流れについては、次の章をお読みください。

2章 【フローチャート】更新拒絶通知が届いたときの対応方法を診断

更新拒絶通知が届いたときには、

  • どのような賃貸借契約か
  • 貸主が更新拒絶をする正当事由があるかどうか

によって、対応方法が異なります。

借主は、どのような賃貸借契約か、貸主が更新拒絶をする正当事由があるかどうかによって、

  • 立ち退き条件を交渉する
  • 立ち退きを拒否する
  • 立ち退き料を交渉する

という対応をとることができます。

更新拒絶通知が届いたときにどのような対応をとるべきかをフローチャートにまとめました。

詳しくはフローチャートに記載のある章をお読みください。

フローチャート 更新拒絶通知が届いたときの対応方法

3章 定期賃貸借契約のときは、立ち退きの条件を交渉する

定期賃貸借契約かどうかの判断ポイント

定期賃貸借契約とは、賃貸借契約の更新が予定されておらず、契約期間が終了したときに賃貸借契約が終了して物件を明け渡さなければいけない契約のことです。

定期賃貸借契約の場合には、賃貸借契約書に

「本契約は、期間の満了により終了し、更新がない。」

という内容の記載がなければいけません。

さらに、定期賃貸借契約の場合には、賃貸借契約を締結する前に、契約期間が終了したときには賃貸借契約も終了することを説明する書類を渡さなければいけないことになっています。

  • 賃貸借契約書に「本契約は、期間の満了により終了し、更新がない。ただし、貸主及び借主は、協議の上、本契約の期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約をすることができる。」と書かれている。
  • 賃貸借契約をするときに、「契約期間が終了したときには賃貸借契約も終了することを説明する書類」を渡された

ときには定期賃貸借契約となります。

定期賃貸借契約の場合には、契約期間が終了する1年前から6ヵ月前までに貸主から更新拒絶通知が送られてくることとなります。

そのときには、契約期間の終了とともに明け渡さなければいけないため、事情によっては明け渡しを延長してくれないか、原状回復義務を免除してくれないかなどと交渉することとなります。

ただし、原則、契約期間の終了とともに明け渡さなければなりません。

+α
定期賃貸借ではない通常の賃貸借契約の場合は、契約書に
「甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる」
などの記載がされていることが多いです。

4章 定期賃貸借契約ではない場合は正当事由があるかどうかを判断する

定期賃貸借契約でない場合には、貸主が賃貸借契約の更新拒絶をする正当事由があるかどうかを判断します。

正当事由とは、不動産の賃貸借契約において、貸主が更新を拒絶し、借主を立ち退かせるために必要なものとして借地借家法が定める理由のことをいいます。

この正当事由があるかどうかの判断方法は、「5章 更新拒絶通知に正当事由があるかどうかの判断方法」で詳しく解説します。

正当事由がある場合は、更新拒絶が有効となってしまいます。そのため、立ち退きの条件について交渉をすることとなります。

正当事由がない場合は、貸主の更新拒絶が無効となります。その結果、貸主の立ち退き要求に応じる必要がなくなります。

ただし、正当事由があるかどうかの判断は法的な知識も必要となるところですので、ご自身で判断されず、弁護士に相談することを強くオススメします。

5章 更新拒絶に正当事由があるかどうかの判断方法

更新拒絶に正当事由があるかどうかの判断方法

更新拒絶に正当事由があるかどうかは、主に以下の要素をもとに判断されます。

  1. 貸主が建物を使用する必要性
  2. 借主が建物を使用する必要性
  3. 建物の現在の状況
  4. 今までの経過、建物の利用状況
  5. 立ち退き料

1.〜5.を考慮して、貸主の方が特に建物を必要としているときには、更新拒絶に正当事由が認められます。つまり、借主は、立ち退きをする必要があります。

1.〜5.を考慮して、借主の方が特に建物を必要としているときには、更新拒絶に正当事由が認められません。つまり、借主は、立ち退きを拒否することが可能です。

この記事では正当事由の判断要素について簡単に解説します。

正当事由の判断は法律や裁判例に関する専門的な知識を必要としますので、ご自身に正当事由があるかどうかの判断については、弁護士にご相談ください

正当事由についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ご参照ください。

①貸主が建物を使用する必要性

貸主が建物を使用する必要性というのは、物件の明け渡しを受けて、貸主がどのように建物を使用する必要があるかという必要性のことをいいます。

具体的には、

  • 貸主が自分で住むために使用する
  • 建物を取り壊して新しい建物を建てる
  • 建物を売却する(高い金額で売れるようにする)

などがあります。

貸主が建物を使用する必要性が高いほど、更新拒絶をする正当事由が認められやすくなります。

②借主が建物を使用する必要性

借主が建物を使用する必要性というのは、借主が明け渡しをせず建物を使用し続ける必要性のことをいいます。

例えば

  • 子どもが近所の学校に通っていて、引っ越しをするとなると転校しなければいけない
  • 高齢で今から他の物件を賃貸で借りることが難しい

などです。

借主が建物を使用する必要性が高いほど、更新拒絶をする正当事由が認められづらくなります。また、立ち退き料の金額が高くなりやすくなります。

③建物の現在の状況

建物の現在の状況というのは、建物の築年数、耐震性などの状況のことをいいます。

建物が古く、大きな地震が来たときに倒壊するおそれがある場合などは、更新拒絶をする正当事由が認められやすくなります。

一方で、建物がまだ新しいときや十分な耐震性があるものであれば、更新拒絶をする正当事由が認められにくくなります。

④今までの経過、建物の利用状況

今までの経過というのは、建物の賃貸借契約を締結するときの経緯や、立ち退き交渉の経緯のことをいいます。

建物の利用状況というのは、実際に貸主が建物をどのように利用しているかという状況のことをいいます。

あまり大きな要素ではありませんが、更新拒絶をする正当事由があるかどうかに影響をすることもあります。

例えば、貸主が建物の明け渡しを求める代わりに、貸主が持っている近所の物件を貸してくれると言っているなどのときは、更新拒絶をする正当事由があると認められやすくなります。

⑤立ち退き料

立ち退き料は、立ち退くことになった借主に生じる損失を補填するお金となります。

借主が立ち退くことになれば、引っ越し代や新しい物件の契約費用などで多額の支出をしなければなりません。その損失を補填する立ち退き料が支払われるのであれば、貸主のために更新拒絶の正当事由を認めようという考え方がされています。

立ち退き料についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

6章 更新拒絶通知に正当事由がある場合には立ち退きの条件を交渉する

更新拒絶通知に正当事由がある場合には、更新拒絶が有効となり、契約期間終了とともに建物の明け渡しをしなければなりません。

そこで、立ち退きをするときの条件について貸主と交渉をすることになります。

ただし、以下の2つの理由から、正当事由があるかどうかの判断を自分で判断するのは危険です。

  1. 正当事由の判断は専門的な知識が必要だから
  2. 正当事由があるとされるときでも、立ち退き料の交渉が必要となるから。

正当事由があるかもしれないと思ったときには弁護士にご相談ください。

7章 更新拒絶通知に正当事由がない場合には立ち退き拒否か立ち退き料の請求をする

更新拒絶に正当事由がない場合には、更新拒絶が無効となり、契約期間の終わりとしても賃貸借契約は終了しません。

建物を利用し続けたいということであれば、立ち退きを拒否するということができます。

立ち退いてもいいが、立ち退き料が欲しいということであれば、立ち退き料を請求して交渉をすることになります。

立ち退きを拒否する場合についてはこちらの記事でも詳しく説明しておりますのでご参照下さい。

8章 更新拒絶通知が届いたときに知っておくべき3つのこと

更新拒絶通知が届いたからといって建物を出て行かなければいけないとすぐに判断するのは危険です。

更新拒絶通知が届いたからといって真に受けて行動すると損をする可能性があるからです。

ここでは、更新拒絶通知が届いた方が知っておきたい3つのことを説明します。

  1. 退去することをすぐに約束してはいけない
  2. 貸主から提示された立ち退き料は増額できることがある
  3. 判断に迷うときは弁護士に相談することができる

1.退去することをすぐに約束してはいけない

更新拒絶通知が届いたからといって、正当事由がなければ賃貸借契約は終了しません。

しかし、退去することを約束して合意書など作られると、後から争って撤回することが難しくなってしまいます。

退去することをすぐに約束しないようにしてください。

更新拒絶通知が届いたときにはすぐに弁護士に相談することをお勧めいたします。

2.貸主から提示された立ち退き料は増額できることがある

貸主から提示された立ち退き料は、それに従わなければいけないものではなく、交渉により増額できることがあります。

貸主は立ち退き料が低くなるように考えていることもあり、最初は低めの金額で提示されることもあるからです。

3.判断に迷うときは弁護士に相談することができる

更新拒絶通知が届いたときの対応方法はこの記事で解説しましたが、それでも自分で判断するには不安があるという方もいらっしゃるかと思います。

そんなときは弁護士に相談をすることができます。

いろいろな専門家がいますが、交渉やその後の裁判も見据えて相談を受けることができるのは弁護士だけです。

相談料がかかる場合もありますが、更新拒絶通知が届いて立ち退きを求められている方の法律相談は無料で行っている法律事務所もあります。

判断に迷って間違った選択をしてしまうのはもったいないので、判断に迷ったら弁護士にご相談ください。

グラディアトル法律事務所では、更新拒絶通知が届いて立ち退きを求められている方のご相談は原則無料で承っています。

また、グラディアトル法律事務所では、立ち退き料の交渉を着手金0円〜で依頼することができます。

LINEでも相談を承っていますので、更新拒絶通知が届いた方はお気軽にお問い合わせください。

9章 まとめ

更新拒絶通知が届いたときには、

  • 定期賃貸借契約なのかどうか
  • 正当事由があるのかどうか

によって対応方法が変わってきます。

定期賃貸借契約なのかどうかは、

  • 賃貸借契約書に「本契約は、期間の満了により終了し、更新がない。」とあるか
  • 契約期間が終了したときには賃貸借契約も終了することを説明する書類を受け取ったか

というポイントで判断をすることが可能です。

正当事由があるかどうかは

  1. 貸主が建物を使用する必要性
  2. 借主が建物を使用する必要性
  3. 建物の現在の状況
  4. 今までの経過、建物の利用状況
  5. 立ち退き料

で判断しますが、正当事由の判断は専門的な知識を必要としますので、ご自身で判断せず、弁護士に相談することがオススメです。

定期賃貸借契約ではないときには、立ち退き料の請求が可能なことがあります。

しかも、更新拒絶に正当事由がないときには、立ち退きの拒否も可能となります。

更新拒絶通知が届いたときには、ご自身の状況にあった最適な行動をする必要があります。

その判断が難しいと感じたときには、グラディアトル法律事務所にご相談ください。