本記事では、「はてなブログ」の記事により誹謗中傷、名誉毀損、名誉感情、プライバシー権や著作権を侵害されてしまった場合の削除依頼の方法、犯人特定のための発信者情報開示請求の方法について、弁護士が丁寧に解説をしていきます。
はてなブログとは
はてなブログとは、「株式会社はてな」が提供する無料ブログサービス(はてなブログHP)です。
「株式会社はてな」は、2001年に設立された会社で、京都府京都市に本社があり、東京都港区に東京オフィスがあるウェブ関連の会社(株式会社はてなのHP参照)です。
「はてなブログ」は、執筆を助ける機能が充実しており、長い文章をじっくり書いて発信したいブロガー向けのブログサービスです。画像・動画やTwitterなどを簡単に貼り付けることができ、様々な表現が可能だという特徴があります。
また、アフィリエイト広告を貼ることができるため、アフィリエイターなど、ブログにより収益を得たい人からも多く利用されています。
現在でも、はてなブログを使用するユーザーは増加している人気のサービスです(2021年12月提出の株式会社はてなIR情報参照)。
「はてなブックマーク」という他のユーザーとの間でブックマーク記事を共有できるサービスとの連動により、記事が拡散されやすく、SEOに強いという特徴があります。
SEO(Search Engine Optimization)とは、検索エンジンの最適化のことで、Google検索やYahoo!検索などの検索エンジンで上位表示させる施策をいいます。
つまり、「はてなブログ」により、誹謗中傷、名誉毀損、名誉感情、プライバシー権や著作権侵害の記事が掲載されると、はてなブックマークにより拡散され、またSEOで上位表示されてしまうことにより、その記事が多くの目に触れることになり、権利侵害の被害が拡大してしまうおそれがあります。
はてなブログの削除依頼方法(総論)
はてなブログの記事により誹謗中傷等の被害にあい、ブログ記事の削除依頼をする方法は、大きく分けて2つあります。
- はてなブログに対して削除依頼をする
- 削除の仮処分を申し立てる
1.はてなブログに対して削除依頼をする場合は、メール送信、文書を郵送またはファックスで送付することにより侵害情報の送信防止措置の申立てをおこないます。
詳細な流れは後述します。
2.削除の仮処分を申し立てる場合は、裁判所に対して、削除の仮処分を申立て、裁判所の決定をもってはてなブログの投稿記事を削除してもらいます。
はてなブログは、「株式会社はてな」というしっかりとした会社により運営されており、削除依頼についてその内容を法的観点及び同社の削除ガイドラインの基準にしたがって調査・判断を行います。
ですので、まずは、はてなブログに対して削除依頼を行い、これにより削除されなかった場合に裁判所に削除の仮処分を申し立てるという方法が良いでしょう。
はてなブログに対する削除依頼については、個人でも対応できますが、ネット上の誹謗中傷問題についての経験豊富な弁護士に依頼をし、削除要件を満たすことを丁寧に示した書面を作成し、証拠等を添付することにより、削除が成功する可能性が高まりますので、この段階から弁護士に依頼する人も多いです。
はてなブログに対する削除依頼の流れ
はてなブログに対する削除依頼は、以下の流れで行います。
- 削除依頼文書の送付
- はてなブログによる調査
- はてなブログによる削除決定
1.削除依頼文書の送付については、住所・氏名などの個人情報や、削除依頼をする記事のURLや権利侵害情報などの削除理由等について、メール、文書の郵送・FAXにより行います。
削除依頼の記載事項について(はてなブログ「はてな情報削除の流れ」より引用)
はてなが提供する情報の流通により、著作権及び著作隣接権(以下「著作権等」)・プライバシー侵害・名誉毀損等の不法行為が行われている場合、権利を侵害された者(以下「申立者」)は、以下の各項目を明記し、文書、メール、FAXのいずれかの手段により侵害情報の送信防止措置の申し立てを行うものとする。
・ 住所
・ 氏名
・ 連絡先
・ 侵害情報についての各情報
・ 掲載されているURL
・ 掲載されている情報
・ 侵害されたとする権利
・ 権利が侵害されたとする理由
・ 著作権侵害の場合以下の各情報
・ 申立者が著作権者、あるいはその代理人である事が確認できる資料
・ 権利侵害を確認可能な方法
・ 著作権等の保護期間が経過していることを窺わせる事情が存在する場合は、保護期間内である事を裏付ける証拠
・ 申立者が発信者に対して権利許諾をしていない旨の記述
・ 送信防止措置を希望する意思表示
・ 発信者への氏名開示の可否
・ 申立内容の公開の可否文書による送付先
〒604-0835 京都市中京区御池通間之町東入高宮町206 御池ビル9Fメールによる送付先
cs@hatena.ne.jpFAXによる送付先
075-241-9949
以上の記載事項を踏まえて、はてなブログ側が形式面をチェックし、不備がなければ調査を開始します。
この削除依頼文書の形式面のチェックにおいては、本人確認や代理人弁護士との委任関係の確認もされますので、本人確認書類(身分証など)や委任状などを添付しておくのが良いでしょう。
また、削除依頼の申立項目に不備がある場合や、削除理由が見当たらない場合など、形式面において不備があった場合には、はてなブログから5営業日以内に判断の理由を付して再度の申立てを行うように要請がきます。この要請から7日以内に再度の申立てを行う必要がありますので、削除依頼の申立後は、不備についての連絡を見落とさないよう注意が必要です。
また、緊急削除の申立てをしている場合には、はてなブログから電話にて不備の補正についての連絡がくることもありますので、はてなブログからの電話にも注意をしておいてください。
削除依頼申立ての書面に不備がない場合や、期間内に不備が補正された場合には、はてなブログは削除すべきかどうかの調査を開始します。
2.はてなブログによる調査では、送付された削除依頼の文書に基づき、法律上の削除理由やはてなブログの削除ガイドラインやはてな利用規約に基づく削除理由があるかどうかの調査が行われます。
この調査では、原則として、削除依頼対象となる「はてなブログ」の記事の管理人に対して、削除についての意見照会がなされ、「はてなブログ」側は、記事管理人の意見も聴取した上で、削除するかどうかの判断が行われます。
他方で、以下のような場合には、例外として、意見照会をせずに削除がなされます。
・ はてな利用規約や削除ガイドラインに違反することが明確である場合
・ 電子メールが到達せず、意見照会を行うことができない場合
・ 発信者自身が利用規約違反行為あるいは違法行為であることを自認している場合
・ その他、特に緊急を要するとはてなが判断した場合
この意見照会は、プロバイダ責任制限法に基づく、侵害情報の送信防止措置に係る意見照会と同様の趣旨のものです。
プロバイダ責任制限法3条2項2号では、記事の削除などの送信防止措置について、記事を投稿した発信者に対して意見照会をしてから7日経過しても発信者から不同意の回答がない場合には、発信者からの損害賠償責任を負わない旨が定められております。
プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)
2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
一 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
二 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下この号及び第四条において「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。
なお、はてなブログでは、ブログ管理者である発信者に対して、以下の文書をメールにて送信し、侵害情報の送信防止措置に係る意見照会を行います。
発信者への照会手続きの手順(はてなブログ「はてな情報削除の流れ」より引用)
はてなは、登録されたメールアドレスへのメールにより、発信者へ以下の各項目を伝える。
・ 権利が侵害されたとする情報
・ 侵害されたとする権利
・ 権利が侵害されたとする理由
・ 送信防止措置を希望することの意思表示
・ 当該通知が到達した後、7日以内にメールにて反論を行わない限り、削除等の送信防止措置を行うことの説明また、申立者が申立書に同意を行った場合は、以下の項目を伝える。
・ 申立者氏名
3.はてなブログによる削除決定について、2.調査の結果を踏まえて、はてなブログが削除依頼記事の削除をするかどうかなどの判断を行います。
はてなブログでは、削除などの侵害情報の送信防止措置について、必要最小限どの措置を行うものとしており、データの物理的な削除以外に、非公開化や閲覧範囲の制限などの対策が採られます。
削除依頼対象である「はてなブログ」管理者の利用状況などによっては、アカウント単位でのサービス利用停止、および情報公開停止により送信防止措置が採られることもあります。
削除理由が明らかである場合、意見照会についての回答がない場合や意見紹介に対する回答に理由がない場合などは、削除等の送信防止措置が採られます。
他方で、意見照会に対する回答にも理由がありそうだという判断がなされた場合には、「はてなブログ」が、削除依頼申立者とブログ管理者とを仲介をして、直接交渉による当事者間の解決を促すこともあります。
削除依頼の要件(総論)
以上で見てきたように、「はてなブログ」への削除依頼は、申立て→調査(意見照会)→削除等の送信防止措置の判断といった流れで行われます。
ここでは、どのような場合に「はてなブログ」が削除等の送信防止措置を採るかという削除の要件について解説します。
「はてなブログ」での削除要件は、法律上の要件と、はてな利用規約や削除ガイドラインに基づく要件に分けられます。
削除依頼の法律上の要件
ネット上の誹謗中傷等の削除請求については、その法的根拠となる具体的な法律の条文はなく、人格権に基づく妨害排除請求としての削除請求が法的根拠になると考えられています。
ネット上で誹謗中傷や個人情報を晒されるなどの被害にあい、削除請求、犯人を特定するための発信者情報開示請求を裁判上でするといった場合、法律上は、以下の二つの要件が必要となります。
その2つの要件とは、同定可能性(特定性)と権利侵害性です。
同定可能性(特定性)について
同定可能性(特定性)とは、投稿・書き込みの内容や動画・画像が自分についてなされているということが他人からもわかることをいいます。
削除依頼をした対象であるブログ記事の内容が自分について書かれている必要があるということです。
そして、同定可能性は、自分以外の第三者から見て、誰について書かれているのかがわかる必要があります。
判例によれば、自分のことを知っている人が、誰について書かれているか分かる程度の特定でよいと考えられています。
そのため、名前等の一部が伏せ字になっていても、同定可能性が認められる可能性があります。
また、YouTuberなどネット上で活動している人のハンドルネームや、風俗嬢、キャバ嬢、ホストなど夜の世界で働く人たちの場合の源氏名で誹謗中傷されることも多く、ハンドルネームや源氏名と本人との同定可能性という問題も出てきます。
判例では、源氏名を使って社会活動を行なっており、社会に一定程度定着している場合には、源氏名に関連づけられた被害者の人格的利益等が侵害されたとして同定可能性が認められています。
源氏名に同定可能性を認めた裁判例(東京地判平成28年5月9日)
原告は、××(風俗店名)において、通算で約5年間にわたり、Aとの通称で業務に従事しており、同じ通称で同店に勤務する者は原告のほかにはいないと認められる。そして、上記認定事実によれば、上記通称は、原告の呼称として社会的に一定程度定着しているとみることができるから、前後の文脈も踏まえると、本件情報179は、原告についての投稿であると認めるのが相当である。
これに対し、被告は、上記通称と原告の本名とが全く異なっており、本件スレッドには、そのタイトルとは無関係な投稿がされることもあり得ることなどを考慮すると、本件各情報が原告を対象とするものとはいえない旨主張する。しかしながら、通称が本名と全く異なるものであったとしても、それが社会的に一定程度定着していれば、通称に関連づけられた投稿によって当該通称を用いる者の人格的利益等が侵害され得るとみるべきであるから、上記認定事実も考え併せると、被告の上記主張は採用できない。
権利侵害性について
権利侵害性とは、はてなブログの記事の内容などが削除依頼をする申立人の権利を侵害していることです。
何らかの権利が侵害されていなければ、裁判所を通して法的に削除請求はできまません。また、「はてなブログ」における削除ガイドラインでもほとんどのものについて、削除依頼者の権利侵害性が要件とされております。
侵害される権利として、名誉権、名誉感情、プライバシー権、著作権、肖像権などが一般的です。
名誉毀損(名誉権侵害)は、具体的な事実の摘示により社会的な評価を低下させる行為をいいます。
もっとも、名誉毀損は、以下の3つの要件を備えると違法性が阻却されると考えられています。
- 事実の公共性
- 目的の公益性
- 真実性
名誉毀損の詳細は、以下の記事をご参照ください。
名誉感情侵害は、人が自分自身の人格的価値について有する主観的な価値が侵害されたことが必要です。
名誉感情は、主観的名誉などと表現されることもあります。簡単にいうと、自分の価値についての意識や感情、プライド、自尊心のことといえるでしょう。
判例は、名誉感情侵害の違法性判断基準として、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められるかどうかを基準にしています。
名誉感情侵害の詳細は、以下の記事もご参照ください。
名誉毀損や名誉感情侵害については、その境界線が問題になることも多いです。
ネット上での誹謗中傷として、どこからが違法なのかという点については、以下の動画もご参照ください。
プライバシー権侵害では、一般人の感受性を基準としても、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないものであることが必要になります。
プライバシー権侵害と裁判例については、以下の記事をご参照ください。
著作権侵害では、主に、以下の権利の侵害が問題となります。
・ 複製権
・ 公衆送信権
・ 送信可能化権
著作権法については、以下の記事もご参照ください。
はてなブログの利用規約と削除ガイドライン
「はてなブログ」では、削除依頼の申立てを受けた際に、形式的な要件をチェック・補正した後に受理をし、削除理由があるかについて発信者であるブログ管理者に意見照会をするなどして調査を行い、削除事由があるかどうかを判断します。
「はてなブログ」がブログ記事を削除するかどうかの判断基準は、前述した法律上の削除要件を満たしているかどうかということの他、はてな利用規約や削除ガイドラインに違反するかどうかを基準としております。
「はてなブログ」では、削除基準について、「はてな利用規約」で禁止行為を定め、「はてな情報削除ガイドライン」で類型ごとの削除基準を詳細に定めております。
そのため、「はてなブログ」に削除依頼をする際には、「はてな利用規約」と「はてな情報削除ガイドライン」をよく読み、削除依頼対象となる記事のどの部分がどのような理由でこれらに違反するのかを記載する必要があります。
「はてな利用規約」では、第6条で禁止行為を定めています。
禁止行為では、著作権法違反や名誉毀損等の権利侵害などの法律違反行為、人種差別やポルノなど公序良俗に違反する行為、宣伝や商用利用などのはてなブログが考える不適切行為等を禁止しています。
はてな利用規約 第6条 (禁止事項)より一部引用
1. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような法律違反行為を行ってはなりません。
a. 著作権、特許権等の知的財産権を侵害する行為
b. プライバシーを侵害する行為
c. 名誉毀損行為、侮辱行為や他者の業務妨害となる行為
d. 詐欺行為
e. 無限連鎖講(ネズミ講)を開設し、またはこれを勧誘・運営する行為
f. 不正アクセス行為の防止等に関する法律に違反する行為、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)に該当する行為をはじめ、当社及び他人のコンピューターに対して不正な操作を行う行為
g. その他犯罪に関わる行為あるいは法令に違反する行為2. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような社会的に不適切な行為を行ってはなりません。
「はてな情報削除ガイドライン」では、はてな利用規約の禁止事項の各項目について、詳細な削除基準を定めています。
著作権法違反、プライバシー権侵害、名誉毀損・侮辱などの権利侵害の類型ごとに、それぞれ、詳細に削除基準が定められているのが特徴です。
これらの削除基準は、基本的には法律的な削除要件・裁判例での削除要件と類似の規定になっていますが、より細かくルールが設定されているところもあります。
例えば、ブライバシー権侵害については、権利侵害対象者の属性を公人、準公人、著名人、犯罪関係者、私人に分けて、削除するかどうかの判断基準を分けています。
また、名誉毀損・侮辱についても、個人に対するものと、法人に対するものを分けて記載しており、法人に対する名誉毀損については原則として削除手続きを進める旨が記載されています。
・ 企業その他の法人(以下「法人」)の名誉又は信用を毀損する表現行為が行われた場合、原則として当事者からの申立により削除手続きを進める
・ 記事の内容が明らかに荒唐無稽であり真実でないことが明らかであったり、従業員個人のプライバシー侵害を伴う場合や、記載の様態が著しく品位を欠き目に余る場合は、嫌がらせ、迷惑行為に該当するものと判断し、はてな判断にて削除を行うことがある
・ 企業の営業秘密情報については、原則として当事者からの申立により削除手続きを進める。当該企業やその顧客に経済的に多大な損失を被らせる切迫した危険がある場合は、はてな判断で緊急削除を行うことがある
はてなブログに削除依頼をする際のポイント
ここまで見てきたように、「はてなブログ」では、発信者であるブログ管理者への意見照会を含めた丁寧な調査が予定されていること、「はてな利用規約」及び「はてな情報削除ガイドライン」により詳細な削除基準が定められています。
そのため、削除依頼をする際には、対象記事のどの部分がどのような理由で、法律上の削除要件があるのか、そして、「はてな利用規約」及び「はてな情報削除ガイドライン」のどこに違反するのかを丁寧に記載することが重要です。
また、発信者であるブログ管理者への意見照会において反論されることを予測し、反論内容を先に潰しておくような再反論となる事実の主張もあらかじめおこなっておくことも必要です。
例えば、削除依頼対象であるブログ記事が名誉毀損にあたるとして削除を求める場合には、発信者であるブログ管理者から、公益性・公益目的があり、内容が真実で違法性が阻却されるようなないようの投稿であると反論されることが予想されるとします。
そのような場合においては、公益性や公益目的がないことの反論や、投稿内容が真実でないことの主張が必要です。
加えて、削除依頼に理由があり、反論内容には理由がないと「はてなブログ」側に判断をしてもらうためには、削除依頼で主張した事実を根拠づける証拠資料を添付した方が良いでしょう。
はてなブログ削除の仮処分申立て
「はてなブログ」では、削除依頼に対して調査をして、調査結果を踏まえて削除するかどうかを判断します。
「はてなブログ」に対する削除依頼が認められず、削除がなされなかった場合でも、裁判所に対して削除の仮処分を申し立てるという方法があります。
仮処分という手続きは、通常の裁判よりも簡易かつ迅速な手続きで、本来は裁判で確定させるべきことだけれども、必要性がある場合に、一度権利状態を仮に確定させ、保全をするという手続きです。
本来的には、仮に確定として、その後に通常訴訟(本案訴訟)をすることが想定されておりますが、ネット上の誹謗中傷等の削除の仮処分の場合には、仮処分結果を踏まえてプロバイダ等が削除の手続きをしてくれますので、通常は、仮処分で削除の決定が出れば、対象の記事等は削除されます。
削除の仮処分の裁判管轄は、債権者(原告)か債務者(被告)の住所地となります。
「はてなブログ」は、京都に本社があり、東京に本店オフィスがありますので、京都地方裁判所、東京地方裁判所が管轄になります。
加えて、誹謗中傷などの被害にあい、削除を求めるあなたの住所地を管轄する裁判所に仮処分を申し立てることもできます。
削除の仮処分や発信者情報開示請求の裁判管轄については、以下の記事をご参照ください。
削除の仮処分を申立てると、審尋という手続きが行われ、申立てた削除理由等についての裁判官からの質問に答えていきます。
裁判官が削除要件を満たすと判断した場合には、担保決定が行われます。
削除の決定を出す前に担保金を納めてくださいという手続きです。
削除の仮処分の場合、30万円〜50万円程度の担保金決定となることが多いです。この担保金は一度、供託所に収める必要がありますが、通常は返金されます。
はてなブログの発信者情報開示請求
ここまでは、「はてなブログ」の記事の削除依頼について見てきました。
誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー権侵害、著作権侵害等の被害にあい、「はてなブログ」の該当記事の削除だけではなく、ブログ管理者を特定して、損害賠償請求や刑事告訴をしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、「はてなブログ」での管理者特定のための発信者情報開示請求の手続きについて解説します。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷等の被害によりその権利を侵害された者が、加害者である投稿者・発信者を特定するために必要な情報の開示を求める請求です。
プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)の4条1項をその根拠としております。
(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
発信者情報開示請求の手続きは、主に、以下の3つのプロセスを経る必要があります。
- SNSや掲示板運営会社にIPアドレス等の開示請求
- 開示されたIPアドレス等からプロバイダを特定し、ログ保存請求
- プロバイダに契約者情報を開示請求
「はてなブログ」の運営会社は、1段階目のコンテンツプロバイダですので、IPアドレスやタイムスタンプを開示してもらう手続きをしていくことになります。
「はてなブログ」では、発信者情報開示請求に対する対応についても規定がなされており、要件を満たす場合には、仮処分手続きを経なくても発信者情報を開示してくれます。
発信者情報開示請求の申立てを受けてから、受理、調査、開示するかどうかの判断までの流れは、前述した削除請求の場合と同様です。
詳細は、はてなブログHP上の「はてな発信者情報開示の流れ」をご参照ください。
はてなブログからIPアドレス等が開示された場合には、経由プロバイダを調査し、経由プロバイダに対してログ保存請求と契約者情報を特定するための発信者情報開示請求を行います。
これにより、契約者情報が開示されると、「はてなブログ」管理者が特定できることになります。
特定後は、損害賠償請求や刑事告訴等の対応を行うことが多いです。
「はてなブログ」の削除依頼・発信者情報開示のまとめ
以上で見てきたように、「はてなブログ」は、削除について利用規約やガイドラインで詳細な基準を定めています。
また、削除や発信者情報開示に応じるかどうかの判断においては、発信者であるブログ管理者に意見紹介をするなどの調査をおこない、その理由の有無を判断します。
そのため、「はてなブログ」に対して削除依頼や発信者情報開示請求をする場合には、法律上の要件のみならず、当該ブログ記事の内容が利用規約やガイドラインに違反する旨を詳細に記載し、それを基礎付ける証拠を添付すべきでしょう。
ご自身での対応が難しい場合には、弁護士に依頼をすることにより、削除や開示において、裁判所や刑事告訴の際に要求されるレベルの書面と証拠資料を作成してもらうことができますので、「はてなブログ」での誹謗中傷等にお悩みの方は、弁護士にご相談ください。