当法律事務所では、ネット上の誹謗中傷や個人情報流出被害などについて、多数のご相談を受け、弁護士による削除依頼や犯人特定のための発信者情報開示請求をおこなっております。
本記事では、したらば掲示板での誹謗中傷対策について解説をしていきます。
誹謗中傷対策としては、
- 投稿(レス)を削除する
- スレッドごと削除する
- 犯人を特定して損害賠償請求や刑事告訴をする
といった方法があります。
本記事では、したらば掲示板の特徴を解説しつつ、レスやスレッドの削除依頼の方法、IPアドレスの開示請求、犯人特定のためのプロバイダに対する発信者情報開示請求の方法について解説をしていきます。
したらば掲示板とは?
したらば掲示板(リンク:したらば掲示板Top)とは、2ちゃんねる型の掲示板が無料で使える国内最大級のレンタル掲示板サービスです。
メールアドレスを登録することにより、誰でも簡単に掲示板を作成し、管理者になれます。
数多くの機能があり、荒らしやスパム投稿の対策機能も備えられているため簡単に管理ができます。また、デザインや背景についても変更が可能です。
したらば掲示板の特徴は、ホスラブ(ホストラブ)、爆サイ、5ちゃんねるなどの掲示板とは異なり、運営会社が全ての掲示板を管理するのではなく、運営会社から掲示板をレンタルをした人が掲示板の管理・運営をおこなっている点にあります。
そのため、各掲示板ごとのローカルルールがあり、誹謗中傷などの被害にあった際の削除基準もそれぞれ異なってきます。
詳細は後述しますが、ご自身で削除依頼をする場合について、したらば掲示板の運営会社ではなく、個別の掲示板の管理者に対して削除依頼をするのが原則となります。
したらば掲示板の運営会社は?
したらば掲示板は、 2ちゃんねるの開設者である西村博之氏が設立した「合資会社東京アクセス」によって開設された掲示板が発祥です。
その後、したらば掲示板の営業権の譲渡が繰り返され、運営会社が変遷していきました。
「livedoor」や「Seesaa」による運営を経て、2018年にAegate株式会社(エーゲート)に譲渡されました。
Aegate株式会社は、爆サイの運営会社としても知られております。2020年2月に同社の社長の脱税事件でニュースになり、その運営会社が明らかになりました。
なお、爆サイの現在の運営会社、削除依頼方法、発信者情報開示請求の方法については、以下の記事をご参照ください。
https://www.gladiator.jp/defamation/爆サイの書き込みを自分で削除/
そして、2020年10月に、Aegate株式会社が株式会社フェイズに名称変更をしました。
現在の運営会社は、東京都渋谷区にある「株式会社したらば」であると推測されています。
したらば掲示板の削除依頼方法総論
したらば掲示板で誹謗中傷の被害にあったり、個人情報を流出されたりした場合の対処法としては、当該投稿(レス)を削除する、スレッドごと削除する、犯人を特定して損害賠償請求や刑事告訴をするといった方法があります。
ここでは、レスやスレッドの削除依頼の方法について解説していきます。
削除依頼の方法としては、大きく分けて3つの方法があります。
- 自分で削除依頼をする
- 弁護士に頼んで削除依頼をする
- 裁判所に削除の仮処分を申し立てる
以下、それぞれの削除依頼方法について解説をしていきますが、その前に、どのような投稿が削除依頼の対象になりうるのか、削除依頼の基準についてみていきましょう。
したらば掲示板で投稿が削除される基準
したらば掲示板には、したらば掲示板の運営会社の他に、各掲示板ごとの掲示板管理者がいます。
そのため、削除の基準としては、運営会社の利用規約・禁止事項のほか、各掲示板ごとのローカルルールが削除の基準になります。
また、したらば掲示板に限らず、法律上の削除基準・削除根拠があります。
以下、それぞれについて解説をしていきます。
したらば掲示板の利用規約・禁止事項
したらば掲示板には利用規約があり、その中で禁止事項(利用規約第5条)が定められています。
そして、禁止事項に違反する書き込みについては予告なく削除される(利用規約第7条)旨が記載されています。
第5条(禁止事項)
利用者ならびに第三者に対して、以下の行為を行うことを禁止します。
- 損害を与える行為
- 名誉を毀損する行為
- 侮辱する行為
- 権利を侵害する行為
- プライバシーを侵害する行為
- いやがらせとなる行為
- 誹謗中傷する行為
- 罵詈雑言をあびせる行為
- 嫌悪感を与える行為
- 差別的な行為
- 倫理的に問題のある行為
- 品性を欠く行為
- 特定の利用者にしか理解のできないことを行う行為
- 他のアカウント登録者を含む利用者および第三者の混乱または誤解を招く行為
- 嘘偽りのある行為
- わいせつ的な表現を行う行為
- 暴力的・残虐的な表現等を行う行為
- 公職選挙法に違反する行為
- 宗教に関する勧誘活動とこれらに類似する行為
- 運営者のサービス運営に支障をきたす行為
- 運営者のサービスを妨げる行為
- 法令に違反する行為
- アカウントおよびパスワードを不正目的で取得または使用する行為
- 他のアカウント登録者を含む利用者および第三者に対して迷惑となる行為
- ウイルスなどの有害なプログラムを投稿、掲載、開示、提供、送付、配布もしくは販売する行為
- 他のアカウント登録者を含む利用者の個人情報を収集する行為
- 出会いを求める行為
- 本名、住所、メールアドレス、電話番号の記載(一般に公開されている情報・公人に関してはこの限りではありません
- マルチスパム投稿といった同一内容の多数投稿や無意味な文字の羅列等の行為
- システムのバグ、セキュリティホールを利用する行為
- システムおよびプロトコルの改ざん、解析、集計、二次利用、リバースエンジニアリング、逆アセンブルする行為
- 他のアカウント登録者を含む利用者および第三者を挑発する行為
- その他運営者が不適切と判断する行為
- 1から33に該当する恐れもしくはつながる可能性のある全ての行為
- アカウント登録者を含む利用者が違反行為を行い、運営者およびアカウント登録者を含む利用者ならびに第三者に対して損害を与えた場合、当該違反者は損害を与えた者に対してその責任の全てを負い、損害の全てを賠償するものとします。運営者は、違反行為とそれに関連する事由に起因する直接的または間接的な損害に関して一切責任を負わないものとします。
第7条(掲載情報の扱い)
禁止事項に抵触するものと判断し、運営者にて予告なく削除いたします。該当するおそれのある情報は掲載されないようご注意ください。
したらば掲示板「利用規約」より引用
掲示板ごとのローカルルール
したらば掲示板の各掲示板のトップには、それぞれのローカルルールが記載されています。
各掲示板管理者に対する削除依頼をする際には、ローカルルールに違反していることや、ローカルルール上の削除基準が削除依頼の根拠になりますので、しっかりと確認しましょう。
法律上の削除基準・根拠
法律上の削除基準、削除の法的根拠は、したらば掲示板に限らず、全てのネット上の誹謗中傷や個人情報流出についての削除依頼の根拠になります。
削除請求の法的根拠は、人格権に基づく妨害排除請求権です。
自らの法律上保護された人格権が違法に侵害されている場合に、それを排除し、削除を請求できるという権利です。
自らの権利という点で、同定可能性が要件とされます。
同定可能性とは、当該書き込み・投稿が、自分自身について書かれているということです。誰に対する誹謗中傷か分からないとか、自分以外の人についての誹謗中傷では削除依頼はできません。
また、人格権が違法に侵害されたという点で、権利侵害性が要件とされます。
権利侵害生では、名誉権(名誉毀損)、名誉感情、プライバシー権などの権利の侵害が問題となることが多いです。
弁護士が削除依頼をする場合には、これらの削除の法的根拠を意識して削除依頼文を記載します。ご自身で削除依頼をする場合にも、これらの点を意識して記載をするとよいでしょう。
自分で削除依頼をする方法
ご自身でしたらば掲示板の投稿(レス)やスレッドの削除依頼をする場合の方法について解説をしていきます。
したらば掲示板は、レンタル掲示板であるため、したらば掲示板自体の運営会社の他に、各掲示板の管理者がいるという特殊な構造にあります。
そして、削除依頼については、まずは個別の掲示板管理者に対して削除依頼をしなければなりません。
この旨は、したらば掲示板の「利用規約 第7条2項」、「お問合せに関する注意事項」「削除依頼に関して」にも記載してありますので、運営会社からの要望に沿う形で削除依頼をする必要があるからです。
「利用規約」
第7条(掲載情報の扱い)
- 禁止事項に抵触するものと判断し、運営者にて予告なく削除いたします。該当するおそれのある情報は掲載されないようご注意ください。
- 違法情報の削除や開示については、運営者ではなく掲示板管理者に問い合わせください。連絡が取れない場合は、改めてお問い合わせフォームよりお問い合わせください。当該問い合わせに対して、運営者は、利用規約に基づき、当該問い合わせにて指定された記載内容(以下「指定記事内容」といいます。)の確認を行います。
- 掲示板管理者が「送信防止措置に同意しない」などと判断しその旨返答を受けた場合は、掲示板管理者の責任における判断とみなし、運営者では、指定記事内容の送信防止措置その他掲示板の内容に手を加えることはいたしません。
「お問合せに関する注意事項」
削除依頼に関して
- 削除依頼に関してましては掲示板管理者への依頼をお願いしております。
- 運営事務局は原則として削除を行いません。
個別の掲示板管理者への削除依頼
前述したように、ご自身で削除依頼をする場合には、したらば掲示板の運営会社ではなく、まずは、個別の掲示板の管理者に対して削除依頼をしなければなりません。
ここで、個別の掲示板の管理者に対する削除依頼方法について解説します。
まず、各掲示板のページ最下部に「掲示板管理者への連絡」と書かれたリンク文字がありますので、ここをクリックして、リンク先に飛んでください。
この「掲示板管理者へ連絡」をクリックすると、「掲示板管理者へお問い合わせ」というページにリンクされ、ここで以下の事項を記載します。
- お名前/ニックネーム
- メールアドレス
- 質問の種類
- 質問内容の記入
質問の種類では、「削除依頼」を選択しましょう。
質問内容の記入では、当該投稿(レス)やスレッドが前述した削除の基準に該当する理由をできる限り具体的に記載してください。
個別掲示板管理者が削除依頼スレッド対応の場合
したらば掲示板には、サポーター機能・削除人機能と呼ばれる削除に関する機能があります。
個別掲示板の管理者が全ての削除依頼を対応する手間を省くための機能で、掲示板の管理全体には関われないが、削除だけはできるという管理サポーターを設置できる機能です。
個別掲示板管理者がサポーター機能・削除人機能を使用している場合には、削除依頼スレッドがありますので、こちらから削除依頼をするようにしてください。
削除依頼スレッドは、個別掲示板TOPのローカルルールが記載してあるところに、リンクが記載されております。
したらば掲示板運営者への削除依頼
前述したように、したらば掲示板での削除依頼は、原則として、各掲示板の管理者に対して行う必要があります。
もっとも、この原則に対する例外自由がある場合には、したらば掲示板の運営者に対して削除依頼をすることができます。
利用規約第7条第2項では、各掲示板管理者と連絡が取れない場合について、例外的にしたらば掲示板の運営者に対して削除依頼をすることができると記載されています。
その場合、運営者は、利用規約に基づいて削除の有無を判断するとも記載されており、運営者に対する削除依頼では、ローカルルールではなく、利用規約の禁止事項に違反する事由を記載する必要があります。
したらば掲示板運営者に対する削除依頼では、まず、利用規約第7条第2項の「お問合せフォーム」のリンクをクリックしてください。
利用規約第7条第2項の「お問合せフォーム」のリンクをクリックすると、「お問い合わせに関する注意事項」というページに移動しますので、ページ下部の「上記に同意してお問い合わせ」をクリックしてください。
クリック後、お問合せフォームのページに移動しますので、お問い合わせフォームに必要事項を記載して、「送信する」をクリックしてください。
削除依頼文の書き方・テンプレ書面
ここでは、削除依頼文の書き方を解説します。テンプレの文書も記載しましたので、ご参考にしてください。
削除をする人も忙しいので、労力をかけずに一目で記載内容が分かるように、依頼文はできる限り分かりやすく、かつ、具体的に記載するようにしてください。
分かりやすい削除依頼文を書くための要素は以下のとおりです。
- 要望(削除依頼)を明らかにする
- 削除依頼対象を明らかにする
- 削除理由を具体的に記載する
ご自身で削除依頼をする際の例文・テンプレを以下に記載しますので、ご参考にしてください。
レスの削除のお願い
掲示板管理者に対して削除依頼を行いましたが、連絡が取れませんでしたので、以下のレスの削除をお願いいたします。
【削除依頼対象スレッドURL】
【削除依頼対象レス番号】
【削除理由】
本件投稿(レス番号>001)は、利用規約第5条第2号「名誉を毀損する行為」に該当します。
本件投稿は、「〜」と記載されています。
ここでいう、〇〇とは、〜ということから、私△△のことを指しております。
また、「〜」は、〜という理由で、私の社会的評価を低下させるものであり、書き込み内容は真実ではなく、なんらの公共性もありません。
よって、本件投稿は、私の名誉権を侵害し、利用規約第5条第2号に違反するものですので、早急に削除していただくようお願いいたします。
削除依頼メール文のテンプレ 弁護士若林翔作成
弁護士による削除依頼方法
ご自身で各掲示板の管理者やしたらば掲示板の運営者に対する削除依頼をしても削除されない場合や、削除依頼の手続きの煩雑さを避けたい場合、早期の削除を希望する場合には、弁護士に削除を依頼することが有効です。
弁護士による削除依頼の方法としては、弁護士からしたらば掲示板運営者に対して削除依頼をして任意で交渉するという方法と、裁判所に削除の仮処分を申し立てるという方法があります。
したらば掲示板は、弁護士・法務関連、捜査関係者からのお問い合わせの専用フォームがあります。
そのため、弁護士がその専用フォームから削除依頼をするという方法が使えます。ここでは、法律事務所名や弁護士名を記載して削除依頼をしていきます。
また、弁護士がしたらば掲示板の運営会社に対して、削除を求める書面を送付するという方法もあります。
裁判所に対して、したらば掲示板の運営会社を被告(債務者)として、削除の仮処分を申し立てるという方法もあります。裁判所が削除要件を判断して、削除すべきだという決定を出し、その結果、削除がされるという流れになります。
2021年6月現在、したらば掲示板では、削除の仮処分を行わなくても、弁護士による削除請求により削除されていますので、当法律事務所では、削除の仮処分は行なっておりません。
したらば掲示板の犯人特定・発信者情報開示請求の方法
ここまで、したらば掲示板での誹謗中傷などの書き込みの削除方法をみてきました。
しかし、削除ができたとしても、改めて同様の内容の書き込みがされてしまうことがあります。このような再度の誹謗中傷書き込みを阻止する必要があります。
また、誹謗中傷や個人情報の流出などにより、精神的な損害や実際に事業等に損失が生じたといった場合、書き込みをした犯人に対する損害賠償請求がしたい、犯人を逮捕・処罰してほしいなどと考える人も多いです。
そのような場合には、犯人を特定するための発信者情報開示請求をする必要があります。
発信者情報開示請求は、大きく2つの手続きに分かれています。
一つは、したらば掲示板に対する請求で、IPアドレスやタイムスタンプ等を開示してもらう請求です。
もう一つは、したらば掲示板等から開示されたIPアドレスから経由プロバイダを探し、プロバイダに対して契約者情報を開示してもらう請求です。
したらば掲示板へのIPアドレス開示請求
したらば掲示板へのIPアドレス等の開示請求は、前述した弁護士による削除依頼と同様の手続きで行います。
したらば掲示板の弁護士・法務関連、捜査関係者からのお問い合わせ、「プロバイダ責任制限法に関する申告を行う方へ」では、したらば掲示板の運営会社は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます)その他の法令等を遵守して、当該対応を行うと記載されており、プロバイダ責任制限法等の法令上の要件を満たしていれば、IPアドレス等の開示に応じる旨が記載されています。
弁護士からのフォーム申請や、書面の送付により、したらば掲示板に対してIPアドレス等の開示請求ができます。
また、裁判所に対して、発信者情報開示の仮処分を申し立てるという方法もあります。
プロバイダへの発信者情報開示請求
したらば掲示板の運営会社からIPアドレス等が開示されたら、そのIPアドレスから、犯人が使用していたプロバイダを特定します。
プロバイダが特定できたら、すぐにログの保存請求が必要です。
大手携帯電話会社のログ保存期間は3ヶ月程度しかありませんので、ログ保存期間が過ぎてしまうと犯人が特定できなくなってしまうからです。
ログの保存ができたら、プロバイダを被告として、発信者情報開示請求の訴訟を提起します。
裁判所が、犯人の契約者情報、発信者情報について開示をせよという判決を出すと、プロバイダから契約者の情報が開示されます。
これにより、犯人が特定できます。
犯人が特定できたら、刑事告訴や損害賠償といった方法をとることができるようになります。
したらば掲示板の誹謗中傷対策まとめ
以上でみてきたように、したらば掲示板は、ホスラブ、爆サイ、5ちゃんねるなどの掲示板と異なり、レンタル掲示板であるため、掲示板の運営会社とは別に、それぞれ個別の掲示板の管理者がいるという特徴があります。
そのため、ご自身で削除依頼をする場合には、個別の掲示板の管理者に対する削除依頼を先にしなければなりません。
もっとも、現状では、したらば掲示板は弁護士からの削除依頼等に応じてくれていますので、したらば掲示板での誹謗中傷や個人情報の流出にお悩みの方は、一度、弁護士にご相談ください。