Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問や回答で、誹謗中傷の被害や個人情報流出の被害にあったというご相談を多く受けております。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋は閲覧者も多く、また、GoogleやYahoo!などの検索サイトでも上位表示されることが多いため、誹謗中傷等の被害が大きいのが特徴です。
本記事では、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問や回答の削除依頼と犯人特定のための発信者情報開示請求について、弁護士が解説をしていきます。
また、誹謗中傷になる質問や回答をしてしまった場合に、自分がした質問や回答の削除や取り消しができるかどうかについても解説をしていきます。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋とは?
Yahoo!(ヤフー)知恵袋とは、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)が運営する日常の疑問への質問と回答を投稿することによって疑問を解決していく「知恵」共有サービスです。
困っている人や課題を持っている人が、知恵袋を通じて「答え」や「気づき」を得られ、「答え」や「気づき」を提供した人は、その人の役に立ったという”助け合いの世界を作りたい”という理念に基づいて運営がされています(「Yahoo!知恵袋をお使いのみなさまへ」参照)。
利用者が多く、2019年5月5日時点で、質問と回答の総数は、なんと7億1069万8041件にもなります(「ウィキペディア(Wikipedia)」参照)。
また、ドメインパワーが強く、さまざまな検索ワードで上位表示がなされるため、誹謗中傷等の被害にあった際には、その影響が大きいという特徴もあります。
「釣り(ツリ)質問」や「やらせ質問」なども散見され、誹謗中傷が誘発される、自身で質問に対して別IDをしようした自作自演で誹謗中傷をするなどのケースもあります。
そうであるにも関わらず、Yahoo! JAPANは、知恵袋の質問や回答の削除には消極的です。前述のように、知恵袋は、「知恵」の共有サービスであると考えており、閲覧者が質問や回答などの情報を必ずしも真実だとは思っていない、または、真実かどうかを確認しながら読んでいると考えているからです。
もっとも、Yahoo! JAPANは、知恵袋の禁止事項を設けており、これに違反する場合には削除をすると定めております。弁護士からの削除依頼により削除要件を満たすと判断した場合や、裁判所で削除の仮処分決定が出た際には、削除をしてくれます。
自分の質問・回答を削除・取り消す方法
ここでは、Yahoo!(ヤフー)知恵袋において、自分がした質問・回答が誹謗中傷に該当していると気づいた場合などに、その質問・回答を削除・取り消す方法について解説をしていきます。
自分がした質問の削除・取消方法
「解決済み」「回答受付終了」の質問は、月に1度に限り、知恵コイン300枚を使用して削除することができます。
「回答受付中」の質問は、回答がなければ知恵コイン10枚、回答があると知恵コイン300枚を使用して取り消すことができます。この場合には、取消回数に制限はありません。
自分がした質問を削除・取り消す方法は、以下のとおりです。
- My知恵袋の[質問一覧]から取り消したい質問を表示
- 質問本文の下にある歯車アイコン(歯車アイコン)を押す
- [質問取り消し]を選択
- 「質問を取り消す理由」に質問を取り消す理由を全角5文字以上200文字以内で入力
自分がした回答の取消方法
Yahoo!(ヤフー)知恵袋で自分がした回答を取り消したい場合、「回答受付中」でなおかつ質問者がベストアンサーを選ぶまでの間であれば、自分で投稿した回答を取り消せます。
自分でした回答の取消方法は以下のとおりです。
- My知恵袋の[回答一覧]から取り消したい回答を表
- 回答本文の下にある歯車アイコン(歯車アイコン)を押す
- [回答取り消し]を選択
- [決定]ボタンを押す
誹謗中傷質問・回答・返信の削除依頼の方法
Yahoo!(ヤフー)知恵袋で、他人が投稿した質問、回答、返信などで誹謗中傷の被害にあってしまったり、個人情報が流出する被害にあってしまったりした場合には、当該質問などに対して削除依頼ができます。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信の削除依頼方法は、以下の3つです。
- 違反報告をする
- Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)に削除依頼書面を送付する
- 裁判所に削除の仮処分を申し立てる
以下、一つずつ解説していきます。
違反報告による削除依頼
Yahoo!(ヤフー)知恵袋では、質問・回答・返信による名誉毀損等の被害にあった場合には、違反報告により、削除依頼をするようにアナウンスがされています。
公序良俗に反する、著作権を侵害する、個人情報漏えいといった内容を含む質問・回答・返信は、利用規約で禁止しています。こうした投稿や不快な投稿を発見したら、以下の手順でYahoo!知恵袋までご連絡ください。
このご連絡をもとに、違反と思われる投稿はYahoo! JAPANが削除します。また、Yahoo!知恵袋で利用規約違反と判断した場合は、お客様からのご連絡なしでも削除する場合があります。
そのため、まずは違反報告による削除依頼をするのが一般的です。
この違反報告にはYahoo! JAPAN IDでのログインが必要です。ログイン後の違反報告の手順は以下のとおりです。
- 該当する質問・回答・返信の右下にある違反報告アイコンを押す
- 「違反項目」から最もあてはまる内容を選択
- 注意事項を確認して[送信]ボタンを押す
もっとも、違反報告に対して、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)からの回答はありませんので、ご注意ください。
Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)に削除依頼書面を送付する方法
違反報告によりYahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信が削除されない場合や削除を急いでいる場合には、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)に削除依頼書面を送付する方法を選択します。
この方法は、主に弁護士に依頼をして行うことが多いです。
「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」という書面を送付することになります。
「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」とは、一般社団法人テレコムサービス協会が公表している削除依頼書式で、一般に「テレサ書式」と呼ばれています。
テレサ書式については、以下のYahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)のHPよりダウンロードできます。
このテレサ書式に、弁護士が削除依頼の法的根拠を記載し、法的根拠を基礎付ける証拠を添付して、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)宛に書面を郵送して削除依頼をします。
Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)側が、削除理由があると判断した場合には、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信が削除されます。
この場合、違反報告の場合と異なり、削除依頼をした代理人弁護士宛にYahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)から回答書面が届きます。
裁判所に削除の仮処分を申し立てる方法
Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)は、皆さんご存知のとおりの大企業ですので、裁判所から削除命令が出た場合には、削除に応じてくれます。
そのため、ヤフー株式会社を債務者(被告)として、裁判所に削除の仮処分を申し立てます。
この場合には、削除の法的根拠を記載する必要があります。
削除の法的根拠は、人格権に基づく妨害排除請求権で、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信が、自分自身の(同定可能性)法律上保護された権利を侵害していることを主張・立証する必要があります。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の削除基準は?
ここまでで、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信の削除依頼の方法について解説をしました。
では、どのような質問・回答・返信が削除の対象となるのでしょうか?
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の削除基準は以下の2つです。
- Yahoo!(ヤフー)知恵袋のガイドライン・禁止事項に違反した場合
- 削除の法律上の要件を満たした場合
後者の法律上の要件については、前述しましたので、ここでは、Yahoo!(ヤフー)知恵袋のガイドライン・禁止事項について、解説をします。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋では、ガイドライン、利用のルールが定められており、その中で禁止事項が定められております。
この禁止事項に違反をした場合には、投稿は削除の対象になると明記されています。
禁止事項1:過度な批判、誹謗(ひぼう)中傷など他⼈を攻撃したり、傷つける内容の投稿や、他⼈を不快にさせる内容の投稿
禁止事項2:わいせつや暴⼒的、過激な描写等を含む不愉快な内容の投稿
禁止事項3:法令違反⾏為や犯罪⾏為の誘発や予告を内容とする投稿
禁止事項4:商業⽬的や広告⽬的で利⽤すること
禁止事項5:個⼈を特定できる情報の投稿
禁止事項6:著作権など第三者の知的財産権を侵害すること
禁止事項7:サービス運営を妨害する⾏為
禁止事項8:質問、回答の投稿になっていないものや、なっていたとしても⽂意をなさない投稿
禁止事項9:なりすまし⾏為や⾃作⾃演
禁止事項10:勧誘や呼びかけ投稿の行為
禁止事項11:その他Yahoo! JAPANが不適切だと判断するもの
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信の削除依頼をする際には、当該投稿のどの部分が、どのような理由で、禁止事項に該当するのかを具体的に記載するようにしてください。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の犯人特定・発信者情報開示請求の方法
ここまでは、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信の削除依頼について解説をしてきました。
ここでは、Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信での誹謗中傷などの被害にあってしまった場合の投稿者、犯人を特定するための発信者情報開示請求の方法について解説をします。
悪質な投稿者ですと、質問などを削除したとしても、再度の投稿をするケースもありますので、犯人を特定することにより、再度の投稿を抑止することができます。
また、発信者情報開示請求によって犯人を特定できれば、誹謗中傷などの被害により生じた精神的損害・慰謝料を請求する、被害届や刑事告訴をして犯人の刑事処罰を求めるということが可能になります。
発信者情報開示請求は、以下の3つのプロセスが必要です。
- Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)にIPアドレス等の開示請求をする
- IPアドレスからプロバイダを特定しログ保存請求をする
- プロバイダに対して契約者情報の開示請求をする。
1.Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)にIPアドレス等の開示請求をする場合、削除依頼の場合と同様にテレサ書式によって発信者情報開示請求書を郵送するという方法も考えられます。
しかし、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)は、テレサ書式等により任意の開示をしてくれませんので、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分を申し立てます。
裁判所が開示決定を出せば、Yahoo! JAPAN(ヤフー株式会社)は、質問などの投稿者のIPアドレス等を開示してくれますので、これに基づいて、2.IPアドレスからプロバイダを特定します。
プロバイダが特定できたら、プロバイダに対してログの保存請求をします。
携帯電話の大手プロバイダなどは、3ヶ月程度しか通信ログを保存していないため、先にログの保存をしておく必要があります。
ログの保存ができたら、3.プロバイダに対して契約者情報の開示請求をします。
プロバイダに対する契約者情報の開示請求は、通常訴訟を提起して、裁判手続きによる必要があります。
裁判所が開示の判決を出せば、プロバイダから契約者情報が開示され、犯人が特定できます。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の誹謗中傷対策まとめ
Yahoo!(ヤフー)知恵袋は、閲覧者数が多く、Google、Yahoo!などの検索サイトでも上位表示がされやすく、非常に影響の大きいサイトです。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋の質問・回答・返信で、誹謗中傷や個人情報の流出などの被害にあってしまうと、その被害の影響が大きいのです。
もっとも、Yahoo!(ヤフー)知恵袋のガイドライン・禁止事項に違反する質問等の投稿や、削除の法的根拠を満たすものについては、削除をすることができます。
また、裁判手続きを経る必要はありますが、投稿者・犯人の特定をすることもできます。
Yahoo!(ヤフー)知恵袋での誹謗中傷等の被害にあってしまった方は、まずは弁護士にご相談いただけたら幸いです。