Twitter発信者情報開示請求の成功例/誹謗中傷被害で犯人特定、慰謝料等の損害賠償を支払わせた事案

我が国では、大きな事件が起こると、実名報道がなされて、加害者の氏名が公表されることが多いです。

その後、インターネット上では、犯罪加害者の個人情報が特定され、多くの誹謗中傷がなされます。

ときには、犯罪加害者本人のみならず、犯罪者家族・加害者家族の個人情報が晒され、誹謗中傷されてしまうような事例も起こります。

そんなとき、犯罪加害者家族は、ただ黙っていないといけないのでしょうか?法律上何らかの対策はとれないのでしょうか?

今回は、実名報道がなされてしまった大きな事件を起こしてしまった人を家族に持つ方が、Twitterなどのネット上で氏名等の個人情報が流出し、誹謗中傷の被害にあってしまった人の解決事例を紹介します。

このケースでは、多くの誹謗中傷がなされ、多数の発信者情報開示請求等の対策を行いましたが、この記事ではTwitterでの発信者情報開示により、犯人を特定し、慰謝料や発信者情報開示請求にかかった弁護士費用などの損害賠償の支払いを受けることができた成功例に焦点を当てて解説をしていきます。

Twitterでの誹謗中傷被害の削除依頼や、発信者情報開示請求による犯人特定方法については、以下の記事をご参照ください。

Twitterの削除依頼と犯人特定・発信者情報開示請求の方法を弁護士が解説!【2021年最新版】

なお、Twitterの発信者情報開示の成功事例を紹介するにあたって、依頼者の方が特定できないように、事案の概要の詳細部分については、変更を加えております。

Twitterでの誹謗中傷投稿・事件の概要

相談者は東京都新宿区の会社に勤め、化学薬品メーカーに勤める40代後半の既婚男性Aさん。成人した息子Bさんと、まだ高校生の息子さん、中学生の娘さんの3人のお子さんがおられました。

成人した息子Bがとある大事件を起こしてしまい、世間を賑わす事態に発展し、Aさんや奥さんが断っても断ってもマスコミから取材を要請される日々がつづきました。

高校生の息子や中学生の娘も精神的に疲弊し、不登校気味になってしまいました。

インターネット上では、息子Bの話題で大盛りあがり。本人の過激なコメントもあって、更に世間を賑わす事態に発展していました。

そんな中、何者かが、ツイッター(Twitter)で、Aさんが、息子Bの父親であると暴露される事態が発生しました。

Aさんの顔写真をトップ画に使用し、自己紹介欄には「Aに天誅を!身内として死んで詫びろ」など記載される始末。また、どこで情報を仕入れたのか、勤めている会社まで暴露されてしまいました。

Aさんは、事件を起こしたのは息子Bであり、関係各所には大変申し訳ない気持ちは持っておりました。しかし、父親だからといって、ここまで言われなければならないのか疑問を持ちました。

また、騒ぎが大きくなるにつれて、いずれ未成年の息子や娘の学校等が特定され、まともな社会生活が送れないのではないかという危機感を覚えました。

そこで、インターネットで”ツイッター(Twitter)の誹謗中傷”について調べていると、土日も弁護士対応をしている当事務所を見つけ、初回無料相談のご連絡をいただきました。

Twitter誹謗中傷の弁護士無料相談と解決方法の模索

仕事が休みの土曜日、上述の相談に至るまでの経緯を踏まえて、相談者は、これ以上自身の顔写真や個人情報を公開されないようにしたいと考えました。

ただ、Aさんの顔写真をトップ画に使用したアカウントの削除を行ったとしても、別のアカウントを作って同じことをされるおそれがあります。

また、弁護士は、投稿内容は過激なものであって、Aさんに対するプライバシー権侵害、肖像権侵害、名誉感情侵害など、権利侵害性の強いものが多かったため、裁判所もIPアドレスなどの発信者情報開、契約者情報についての開示を認める判決を出す可能性が高いだろうと考えました。

そこで、根本的な解決を図るために相手方を特定する必要があるのではないかと弊所弁護士はアドバイスしました。

Aさんは、この弊所弁護士の意見に納得されまして、弊所弁護士にご依頼くださり、いわゆる発信者情報開示の手続きを取ることにしました。

発信者情報開示の仮処分と犯人特定

何者かが、Aさんに対して、誹謗中傷を行っているのはツイッター(Twitter)でした。そこで、ツイッター(Twitter)の運営会社を債務者(被告)として、投稿を行っている人物を特定するために必要なIPアドレスやタイムスタンプといった資料の提供を求める発信者情報開示の仮処分を申し立てました。

ご依頼いただいてから約2ヶ月後、裁判所の仮処分手続きを経て、ツイッター(Twitter)の運営会社から、IPアドレスとタイムスタンプを取得することができました。

それらの情報を元に、弊所弁護士は、インターネットサービスプロバイダーであるKDDI株式会社に対して、発信者情報(契約者情報)を出すよう書面を送付しました。

このような場合、インターネットサービスプロバイダーは、投稿を行った人物に対して、発信者情報開示の請求が来ていることを知らせます。

この段階になって、誹謗中傷の投稿を行っていた人物Cは自分が行っていた行為の悪質さを知りました。

すると、誹謗中傷投稿の犯人であるCは弁護士に相談・依頼し、Cの代理人となった弁護士のD先生から、弊所弁護士宛に和解交渉の書面が届きました。

弁護士間での和解交渉

弊所弁護士は、D先生との交渉において、息子Bの父親であるという事実やAさんが働く会社を暴露したことについてプライバシー権侵害を、Aさんの顔写真をトップ画に使用した事実について肖像権侵害の主張を、自己紹介欄には「Aに天誅を!身内として死んで詫びろ」と記載したことについて名誉感情の侵害を主張しました。

そして、まともな社会生活が送れなくなっているという事実があるので、損害も甚大であるということを伝えました。

その上で、弊所弁護士は、以下の和解案を提案しました。

1 ツイッター(Twitter)での投稿についての謝罪

2 今後一切Aさんについてインターネット上で投稿しない旨の約束

3 Dさんが行ったAさんについて他の投稿をDさんが費用負担において削除する

4 慰謝料として100万円を支払うこと

5 発信者情報開示にかかった弁護士費用及びその他の費用を慰謝料とは別に支払うこと

 

この案をベースに和解の落とし所を探り、弁護士間の交渉が進み、最終的に以下の条件で和解することとなりました。

1 ツイッター(Twitter)での投稿についての謝罪

2 今後一切Aさんについてインターネット上で投稿しない旨の約束

3 Dさんが行ったAさんについて他の投稿をDさんが費用負担において削除する。ただし、仮処分を含めた法的手続きは含まない。

4 慰謝料及び発信者情報開示手続きにかかった弁護士費用及びその他の費用を含めて合計130万円を支払うこと

 

Twitter誹謗中傷被害事件のまとめ

もちろん、この和解によって、息子Bの件が全て解決したわけではありません。

息子Bのことがニュースになるたび、Aさんはひょっとしたらまた晒し者にされるのではないかと心配されています。また、インターネット上の出来事ですから、掲示板などで息子Bの親族としてAさんのことが話題にっている投稿を全て削除できたわけではありません。

しかし、しっかりと対処したおかげで、Aさんを含めた家族に対する誹謗中傷はほとんどなくなりました。完全に平穏な生活を取り戻すことができたわけではありませんが、以前のように怯えて生活することもなくなったそうです。

また、Cさんは、軽い気持ちでツイッター(Twitter)で投稿を行ったのかもしれません。

しかし、その軽い気持ちによって、AさんやAさんの家族を恐怖に陥れました。そして、その結果、Cさんも100万円以上の債務を負うことにもなりました。

ツイッター(Twitter)での投稿は、人の気持ちを考えて行ってくださいね。

くれぐれも、軽い気持ちで人を傷つける投稿はしないでください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

相談内容一覧

よく読まれるキーワード