リベンジポルノ防止法に関連する被害相談件数が増えてきています。
警察庁によると、「リベンジポルノ」に関する警察への被害相談件数は、2022年の1年間で、1728件(前年比100件増)と、6年連続で最多を更新しているとのことです。
リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法、正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」により、規制されています。
リベンジポルノ防止法とはどのような法律なのでしょうか。
本記事では、リベンジポルノ防止法の内容、構成要件、罰則・量刑、逮捕事例、判例、リベンジポルノがリベンジポルノ防止法以外の犯罪に該当する可能性などについて、弁護士が解説をします。
リベンジポルノ防止法とは
リベンジポルノ防止法とは、正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といい、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像・動画以外の画像であって,性交又は性交類似行為などの画像・動画の記録を「私事性的画像記録」と定義し、その公表や公表目的の提供を処罰する法律です。
リベンジポルノ防止法のほか、リベンジポルノ法、リベンジポルノ被害防止法などと呼ばれます。
リベンジポルノは、元交際相手などが、復讐目的で、交際時に撮影していた性的な画像や動画を公開するケースが多いですが、リベンジポルノ防止法では、その処罰対象について、復讐目的等の目的の限定はされておらず、復讐目的でなかったとしても適用されます。
リベンジポルノ防止法の設立前は、名誉毀損罪、児童ポルノ禁止法、わいせつ物頒布罪などにより対応をしていましたが、これらの法律では対処しきれない部分もあり、問題視されていました。
リベンジポルノ防止法は、2013年10月に発生した三鷹ストーカー殺人事件(ストーカー殺人をした被告人が被害者と交際していた際に撮影した性的な画像・動画をアダルトサイトにアップロードしていた事件)をきっかけにして、リベンジポルノへ対処する契機が強まり、2014年11月に成立しました。
リベンジポルノ防止法は、性的な画像や動画が公表されることにより、個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的とした法律です。
リベンジポルノ防止法の構成要件
構成要件とは、簡単にいえば、犯罪の成立要件のことです。
リベンジポルノ防止法の構成要件は、以下のとおりです。
- 「私事性的画像記録」に該当すること
- 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で
- 公表(公然陳列)or 公表目的で提供すること
「私事性的画像記録」に該当すること
リベンジポルノ防止法の構成要件の前提として、公表などの対象となる画像や動画が、「私事性的画像記録」に該当することが必要です。
「私事性的画像記録」は、以下の要件を満たす必要があります。
①性交又は性交類似行為
→性行為、肛門性交(異性間のみならず同性間も含む)、口淫(フェラ)、手淫(手コキ)など
②性器等(性器、肛こう門又は乳首)を触る行為であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
③衣服の全部又は一部を着けず、殊更に人の性的な部位(性器等、尻、胸)が露出され又は強調されているものであって性欲を興奮させ又は刺激するもの
①②③のどれかに該当すること
+
公表されることを認識して撮影の承諾がないもの(公表されることを同意して撮影がされたAVなどの画像・動画を除く趣旨)
(定義)第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態二 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。リベンジポルノ防止法 e-gov参照
第三者が撮影対象者を特定することができる方法であること
リベンジポルノ防止法における公表罪や公表目的提供罪は、撮影対象者(被害者)の性的プライバシー権を保護するための法律です。
そのため、撮影対象者(被害者)が誰だか分からないような画像や動画は対象となりません。
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、「私事性的画像記録」の公表等を行うことが構成要件になっています
もっとも、顔が映っていなくても、撮影対象者が特定できる場合には、この特定要件を満たすことになります。
撮影対象者の体の特徴や背景として写っている物や、画像や動画が公表される際に書き込まれたコメントや掲載された場所などから特定することができる場合も含まれます。
また、この特定については、広く一般の人に特定ができなくても、撮影対象者(被害者)の恋人や配偶者、家族、友人などが特定できれば足りると考えられています。
(私事性的画像記録提供等)第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。リベンジポルノ防止法 e-gov参照
【公表罪】不特定又は多数の者に提供、公然陳列すること
公表罪は、私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供する行為、私事性的画像記録が記録された記録媒体を公然と陳列する行為が構成要件となります。
不特定「又は」多数の者への提供等が処罰対象なので、以下の行為も構成要件に該当することになります。
・少数でも不特定の者への提供
・特定された多数の人々への提供
(私事性的画像記録提供等)第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。リベンジポルノ防止法 e-gov参照
【公表目的提供罪】公表目的で提供すること
公表目的提供罪は、私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供・公然陳列する目的で、提供する行為が構成要件となっています。
公表目的提供罪は、公表罪よりは軽い罪になっています。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する
リベンジポルノ防止法3条3項 e-gov参照
リベンジポルノ防止法の罰則・量刑は?
リベンジポルノ防止法の罰則は以下のとおりです。
公表罪の罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
公表目的提供罪の罰則:年1以下の懲役又は30万円以下の罰金
リベンジポルノ防止法については、強要罪等の別罪と同時に起訴されることも多く、リベンジポルノ防止法違反単体での量刑データは多くはないです。
また、量刑との関係で言うと、被害者と示談ができているかどうかが大きな要素になります。示談が成立すれば不起訴の可能性もありますし、起訴されたとしても執行猶予がつく可能性が高いです。
また、初犯であれば、執行猶予付きの判決となることが多いです。
リベンジポルノ防止法違反の逮捕事例
ここでは、リベンジポルノ防止法での実際の逮捕事例を紹介します。
被害者の住む集合住宅の複数世帯にリベンジポルノ画像をばら撒いた事例
知人女性のわいせつ画像を複数世帯に投函 会社員の男(49)をリベンジポルノ防止法違反の疑いで再逮捕 広島
知人女性のわいせつ画像が印刷された紙を、女性が住む集合住宅の複数世帯に投函したとして、会社員の男(49)が再逮捕されました。男は、女性を脅迫した疑いで先月、逮捕されていました。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)違反の疑いで再逮捕されたのは、広島県尾道市高須町の会社員の男(49)です。
警察によりますと、男は3月28日から29日までの間、竹原市の知人女性(40代)が住む集合住宅で、複数の世帯の玄関ドアの郵便受けに女性のわいせつな画像が印刷された紙が入った封筒を投函して提供した疑いがもたれています。
調べに対して男は「まちがいありません」と容疑を認めているということです。
女性が警察に相談し、警察が捜査していました。男は女性に対して、1月から2月にかけて「犯してやる」などとメッセージを送ったとして、3月31日、脅迫の疑いで逮捕されていました。(4月10日処分保留)
警察が事件のいきさつを調べています。
TBS NEWS 2023年4月10日 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/426519?display=1
この事件は、被害女性の住む集合住宅の複数世帯にリベンジポルノ画像をばら撒いた事件です。
被害者からしてみれば、自身の生活圏、ご近所さんの家にリベンジポルノ画像をばら撒かれており、その被害や精神的苦痛の大きい事案です。
元交際相手のリベンジポルノ画像をインスタグラムにアップした事例
元交際女性の下着姿をSNSに無断投稿か 20代男を逮捕
交際していた女性の下着姿をSNSに投稿したとして、兵庫県警人身安全対策課と洲本警察署は25日、徳島県に住む20代の男を逮捕しました。
リベンジポルノ防止法違反の疑いで逮捕されたのは、徳島県に住む24歳の無職の男です。
警察によりますと男は、2022年8月に、元交際相手の女性の下着姿や下半身などを写したわいせつな画像3枚を無断でインスタグラムに投稿した疑いが持たれています。
女性から別れ話を切り出されたことに男が腹を立て、投稿したということです。
画像は女性の知人が発見しました。
警察の調べに対し男は、容疑を認めているということです。
警察は、男が他にも画像を投稿していないかなど、詳しく調べています。
サンテレビNEWS 2022年08月25日 https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2022/08/25/56969/
元交際相手が、別れ話をきっかけに恨みを持ち、リベンジポルノに走るという典型的な事例です。
もっとも、本件では、アダルトサイト等ではなく、インスタグラムに投稿しており、被害女性の知人・友人や家族が見る可能性もあり、悪質であるといえるでしょう。
リベンジポルノをLINEで拡散した事例
女性の裸をLINEで拡散…リベンジポルノ初摘発、男2人逮捕
警視庁は22日までに、無料通信アプリLINE(ライン)に女性の上半身裸の写真を投稿したとして、私事性的画像記録の提供被害防止法違反と名誉毀損の疑いで、川崎市の無職、〇〇容疑者(27)と金沢市の無職、〇〇容疑者(26)を逮捕した。警視庁によると、ラインを使ったリベンジポルノ(復讐目的の画像投稿)事件での逮捕は全国初という。
サンスポ 2015/06/23 https://www.sanspo.com/article/20150623-2TVI527WIZJ5BENTHBGKO3MMLQ/
この事例では、リベンジポルノ写真をLINEで拡散させたという事案だ。
本件では、リベンジポルノ防止法のほか、名誉毀損罪でも逮捕されている。
リベンジポルノ防止法についての判例
リベンジポルノ防止法違反で有罪判決となった判例を紹介します。
【福岡地判平成28年11月16日】トイレ盗撮動画を盗撮サイトに販売した公表目的提供罪
罪名:公表目的提供罪
判決:懲役6月の実刑判決
この判例は、商業施設内の男女兼用トイレ内を盗撮した動画を盗撮動画販売サイトに買い取らせた事例です。
盗撮動画を買い取った盗撮動画販売サイトが不特定多数に盗撮動画を公表することを知りながら、そこに盗撮動画を提供することは、公表目的提供罪に該当するとして有罪判決となった。
本件では、執行猶予のつかない実刑判決となっています。
その大きな理由としては、被告人の前科があります。
盗撮行為での前科が3犯あり、罰金、罰金、執行猶予付き判決となっており、執行猶予期間経過後2年も経たずに本件犯行が行われており、この判例では、実刑判決となっております。
【神戸地判平成27年10月27日】元交際相手の裸の画像をネット上の掲示板にアップした公表罪・名誉毀損罪
罪名:公表罪(公然陳列罪)、名誉毀損罪
判決:懲役1年、執行猶予2年
この判例は、交際中に、交際相手の承諾を得て撮影をしていた全裸の画像を、別れた後に、インターネット上の掲示板にアップロードした事例です。
公表罪(公然陳列罪)のほか、名誉毀損罪でも起訴されています。
継続的に犯行を行い、次第に行動をエスカレートさせており、無制限に画像を拡散させるおそれを招いたこと、信頼していた被告人に裏切られたことにより被害者が被った精神的苦痛の大きさに照らし、結果も重大であるとしています。
しかし、被告人が被害者に800万円の示談金を払い、示談が成立していることから、執行猶予付きの判決となっています。
【横浜地判平成27年6月12日】元交際相手を脅迫し、無修正動画等をネットにアップした公表罪・脅迫罪・わいせつ電磁的記録記録媒体陳列
罪名:公表罪(公然陳列罪)、脅迫罪、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列
判決:懲役2年6月、執行猶予4年、保護観察付き
この判例は、被告人が、元交際相手に対して、自慰行為を見せるよう要求したところ、被害者がこれを断ったことなどに立腹して、「しなかったので写真ばらまきます後悔させてやる」「脅しだとおもっとればいいよばら撒かれてからきずいてもおそいで」などと脅迫をし、インターネット上に被害者の無修正画像をアップロードした事例です。
被告人は、その後も、被害者に対して執拗に「マンションにビラまくかな~」「マンションより学校かいいかい?(笑)」「パパの会社にするかな?」「殺してシマウマえに死んでくれ」「えw今流行のストーカー殺人www」などと脅迫をしている悪質な事案です。
犯行は悪質であるものの、被告人には懲役前科がないことなどが考慮されて、ぎりぎり執行猶予がついた事案です。
また、この判例では、被告人が、被害者の抱く恐怖心を被告人として容易に理解できないという認知のゆがみを有している点を重視して、被告人に対し、認知のゆがみを解消するプログラムを受けさせ、今後の更生及び再犯防止に資することを専門機関に期待して、被告人を保護観察に付すことにしております。
リベンジポルノ被害にあった場合の対処法
リベンジポルノ被害にあってしまった場合、以下の3つの対処法があります。
① リベンジポルノ動画の削除依頼
② 損害賠償請求
③ 被害届・刑事告訴で犯人逮捕
【① リベンジポルノ動画の削除依頼】について
リベンジポルノの被害にあってしまい、アダルトサイトなどに動画がアップされてしまった場合、早急な削除依頼が必要です。
早く削除しないと、ネット上のリベンジポルノ動画を別の人がダウンロードして保存し、再度別のサイトにアップロードするなどして被害が拡散してしまうからです。
リベンジポルノの削除方法として、自分でアダルト動画サイトの問い合わせフォームなどから削除依頼するという方法もあります。
しかし、削除依頼フォームが明確でないサイト、日本語には対応しておらず、英語や中国語での削除依頼が必要なサイトなどもあり、自分で削除依頼するのが難しいことも多いです。
そのため、リベンジポルノの削除依頼についての経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。
リベンジポルノの削除の詳細は、以下の記事をご参照ください。
【② 損害賠償請求】について
リベンジポルノの被害に遭ってしまった場合、多大なる精神的な苦痛・被害にあったのですから、リベンジポルノ動画を撮影した人や、動画をインターネット上などに流出させた人、加害者に対して慰謝料などの損害賠償請求をしたいと思うでしょう。
リベンジポルノの被害に遭った場合、加害者に対して、損害賠償請求ができます。
リベンジポルノの被害にあった場合、民事上、不法行為(民法709条)に該当するとして、損害賠償請求ができます。
リベンジポルノ被害の損害賠償請求額の相場は、100万円〜200万円程度です。
もっとも、前述の判例のように、800万円で示談が成立している事例もあります。リベンジポルノ防止法等による被害届や刑事告訴により、捜査が既にされている場合の方が、加害者に対する交渉力は強くなるでしょう。
リベンジポルノの損害賠償請求についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
【③ 被害届・刑事告訴で犯人逮捕】について
ここまで見てきたように、リベンジポルノは、公表罪や公表目的提供罪に該当する場合には、リベンジポルノ防止法に違反する犯罪行為です。
また、名誉毀損罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪、わいせつ電磁的記録の送信頒布罪等にも該当することが多いです。
警察に被害届や刑事告訴状を提出することにより、刑事事件化してもらい、犯人を逮捕・起訴してもらうという対策があります。
もっとも、警察がなかなか被害届等を受理してくれないこともありますので、被害届や刑事告訴について、弁護士に依頼をするのがいいでしょう。
リベンジポルノ被害の対策についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
リベンジポルノ防止法以外では、どのような法律に該当するか
リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法以外の法律に違反することが多いです。
・撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)
・わいせつ電磁的記録の送信頒布罪
・脅迫・恐喝・強要罪
・名誉毀損罪
【撮影罪】
「撮影罪」は、2023年7月に施行された性的姿態撮影等処罰法により新設されたもので、裸や下着、性行為など性的な姿態についての盗撮を禁止する罪です。
リベンジポルノ被害においても、盗撮された動画がネット上で販売されるなどの被害があり、そのような場合、この撮影罪に該当します。
「撮影罪」は、刑法ではなく、「性的な姿勢を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿勢の撮影に係わる電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」によって規定されています。
撮影罪は、3年以下の拘禁(懲役)刑、300万円以下の罰金が定められています。
この法律では、撮影罪のほか、提供罪、公然陳列罪、保管罪なども定められています。
また、盗撮された動画のデータの削除等についても規定されているので、リベンジポルノ動画の拡散防止が期待できます。
【わいせつ電磁的記録の送信頒布罪】
リベンジポルノ被害において、無修正の動画がインターネット上で販売・拡散されていたような場合には、わいせつ電磁的記録の送信頒布罪や公然陳列罪に該当します。
同罪は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金です。
【脅迫・恐喝・強要罪】
脅迫罪は、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、畏怖させるに足りる程度の害悪を告知することで成立します。
リベンジポルノ動画を拡散するぞと脅すことは、被害者の名誉等に対する害悪の告知であって、畏怖させるに足りるものですから、脅迫罪が成立します。
脅迫罪・恐喝罪・強要罪の違いは、以下のとおりです。
脅迫のみ → 脅迫罪
脅迫+金銭要求 → 恐喝罪
脅迫+義務のない行為の要求 → 強要罪
リベンジポルノ動画を晒されたくなければ、金を払えと脅された場合には、恐喝罪になります。
リベンジポルノ動画を晒されたくなければ、付き合えなどと義務のない行為を要求された場合には、強要罪になります。
脅迫罪は、2年以下の懲役、30万円以下の罰金です。
恐喝罪は、10年以下の懲役です。
強要罪は、3年以下の懲役です。
【名誉毀損罪】
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為を処罰するものです。
3年以下の懲役、50万円以下の罰金です。
リベンジポルノ防止法ができる前は、名誉毀損罪で対応していました。
前述した判例の事案でもそうですが、リベンジポルノ防止法と名誉毀損罪の両方で起訴されるケースもあります。
リベンジポルノ防止法についてのQ &A
Q リベンジポルノ防止法は親告罪ですか?
A リベンジポルノ防止法は親告罪です。
親告罪とは、被害者からの告訴がなければ、起訴できない罪のことです。
リベンジポルノ防止法3条4項は、公表罪・公表目的提供罪について、告訴がなければ公訴提起(起訴)できないと定められており、親告罪です。
(私事性的画像記録提供等)
第三条
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。リベンジポルノ防止法3条4項 e-gov参照
Q リベンジポルノ防止法には、未遂罪はありますか?
A リベンジポルノ防止法の公表罪や公表目的提供罪には、未遂罪の規定はありません。
もっとも、盗撮行為や、公表目的があるのにそれを隠して同意させて撮影する行為については、2023年7月に新設された撮影罪・誤信撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)に該当し、こちらで処罰される可能性があります。
また、性的姿態撮影等処罰法では、保管罪(提供目的で保管する行為が処罰される)も規定されており、こちらで処罰される可能性もあります。
Q リベンジポルノ防止法ができたきっかけは?
A リベンジポルノ防止法ができたきっかけは、2013年10月に発生した三鷹ストーカー殺人事件(ストーカー殺人をした被告人が被害者と交際していた際に撮影した性的な画像・動画をアダルトサイトにアップロードしていた事件)です。
この事件をきっかけにして、リベンジポルノへ対処する契機が強まり、2014年11月に成立しました。
Q リベンジポルノが名誉毀損罪になる理由は?
A リベンジポルノに該当するような性的な画像・動画が撮影されたという事実を摘示し、そのような性的な画像・動画を撮らせるような人物であると判断されて、その社会的な評価が低下すると考えられるため、名誉毀損罪に該当します。
東京地判平成14年3月14日では、入浴中の盗撮風の動画について、被写体である被害女性が出演に同意したやらせにも見えるという点を指摘し、名誉毀損罪の成立要件である「事実の摘示」について、上記のような内容の本件ビデオテープに上記K子ら3名の全裸の姿態が録画されているという事実を摘示したものということができると判断しました。
また、事情を知らない者が見れば,撮影されている女性が,不特定多数の者に販売されるビデオテープに録画されることを承知の上,自ら進んで裸体をさらしているのではないかという印象を与えかねないことを理由に社会的評価を低下させる名誉毀損であると判断しました。
その他、女性アスリートの下着が透けて見える動画を販売したとして名誉毀損罪で逮捕された事例もあります。
この事例については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
リベンジポルノ防止法は、その正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といい、三鷹ストーカー殺人事件がきっかけで施行されました。
リベンジポルノ防止法の構成要件は、以下のとおりです。
- 「私事性的画像記録」に該当すること
- 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で
- 公表(公然陳列)or 公表目的で提供すること
また、リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法以外の法律に違反することが多いです。
・撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)
・わいせつ電磁的記録の送信頒布罪
・脅迫・恐喝・強要罪
・名誉毀損罪
リベンジポルノ被害にあった場合には、削除、損害賠償、被害届・刑事告訴など、早期かつ適切な対応が重要です。
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