- 性行為や裸の動画・画像がインターネット上に流出してしまった。
- リベンジポルノの被害に苦しんでいる。
- 周囲の人が自分の性行為の動画を見ているのではないか疑心暗鬼になってしまい、日常生活もままならない。
このように、リベンジポルノ被害による、精神的な苦痛は計り知れません。
グラディアトル法律事務所の弁護士は、リベンジポルノの被害について、数多くのご相談・ご依頼を受けてきました。
リベンジポルノ被害の対策として、その動画を削除するという方法もあります。
しかし、一度、インターネット上に流出してしまったリベンジポルノ動画は、これを完全に消し去るのは困難です。流出した動画を保存し、再度アップロードをする第三者が現れるからです。
また、多大なる精神的な苦痛・被害にあったのですから、リベンジポルノ動画を撮影した人や、動画をインターネット上などに流出させた人、加害者に対して慰謝料などの損害賠償請求をしたいと思うでしょう。
リベンジポルノの被害に遭った場合、加害者に対して、損害賠償請求ができます。
本記事では、リベンジポルノの損害賠償請求について、請求できる理由、請求額の相場、増額要素、実際に損害賠償請求をした事例・判例、損害賠償請求の方法について、弁護士が解説します。
リベンジポルノの削除依頼については、以下の記事をご参照ください。
リベンジポルノ被害では損害賠償請求ができる
リベンジポルノとは、同意なく撮影された性行為や裸の画像や動画を公表する行為のことをいいます。
リベンジポルノは、刑事罰のある違法行為であり、民事上も損害賠償請求ができます。
リベンジポルノは違法な犯罪行為
リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)により禁止された犯罪行為です。
以下の二つの要件を満たす行為がリベンジポルノ防止法で禁止される行為です。
- 「私事性的画像記録」に該当すること(同意なく撮影された性行為や裸の画像・動画)
- 公表(公然陳列)or公表目的で提供すること
罰則は、公表罪(3年以下 50万円以下)、公表目的提供罪(1年以下 30万円以下)となります。
リベンジポルノ防止法の構成要件や判例等の詳細については、以下の記事をご参照ください。
リベンジポルノの被害に遭ったら損害賠償請求ができる
リベンジポルノの被害にあった場合、民事上、不法行為(民法709条)に該当するとして、損害賠償請求ができます。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
リベンジポルノ被害によって被った精神的損害である慰謝料や、リベンジポルノによって仕事ができなくなった遺失利益などの損害を請求することができます。
なお、損害賠償以外のリベンジポルノ被害の対処法や相談先などについては、以下の記事もご参照ください。
リベンジポルノの損害賠償請求額の相場
リベンジポルノ被害の損害賠償請求額の相場は、100万円〜200万円程度です。
もっとも、リベンジポルノ被害の損害賠償請求事例、判例は多くありませんので、相場が固まっているとは言いづらい状況です。
また、同じリベンジポルノの被害でも、その状況によって、損害額は異なってくるでしょう。
限られた知人数人に写真や動画を提供された場合と、インターネット上で販売されて広く拡散されてしまったケースでは被害の大きさや損害額は異なるでしょう。
このように、リベンジポルノの損害賠償請求では、その状況次第で金額が変わってきます。
次章で、リベンジポルノの損害賠償請求額の増額要素について解説をします。
リベンジポルノの損害賠償請求額の増額要素
リベンジポルノの損害賠償請求額については、その被害状況等によって変わってきます。
リベンジポルノの損害賠償請求額の増額要素として、以下の6つが挙げられます。
- 動画内容の過激さ
- 撮影方法の悪質性
- 動画の拡散の程度
- 拡散行為の悪質性
- 被害結果の重大性
- 休業損害がある
動画内容の過激さ
動画内容が過激である方が、精神的苦痛が大きく、慰謝料額・損害額が高くなります。
服の上から局部を触られているだけの動画と、全裸で性行為をしている無修正の動画であれば、後者の方が、流出した際の精神的苦痛が大きいといえるでしょう。
撮影方法の悪質性
撮影方法が悪質である方が、精神的苦痛が大きく、慰謝料額・損害額が高くなります。
撮影自体には同意していた場合、撮影行為自体の悪質性は低くなるでしょう。
他方で、盗撮した動画を流出させたようなケースでは、撮影行為自体が悪質といえるでしょう。
動画拡散の程度
動画が広く拡散されてしまう場合の方が、精神的苦痛が大きく、慰謝料額・損害額が高くなります。
知人等に動画を提供しただけのケースと、インターネット上で広く拡散されてしまうケースでは、後者の方が流出した際の精神的苦痛が大きいといえるでしょう。
拡散行為の悪質性
拡散行為の悪質性が高い場合の方が、慰謝料額・損害額が高くなります。
拡散行為自体の悪質性が高い場合としては、インターネット上のアダルト動画サイト等でリベンジポルノ動画を販売するなどして、収益を得ているようなケースが考えられます。
被害結果の重大性
被害結果が重大である方が、精神的苦痛が大きく、慰謝料額・損害額が高くなります。
被害結果が重大である場合の例としては、リベンジポルノ被害を苦に自殺をしてしまった場合、自傷行為をしてしまった場合、精神的な病気になってしまった場合などが考えられます。
休業損害がある
リベンジポルノ被害によって、仕事ができなくなってしまい、休業していた場合には、慰謝料とは別に、休業損害を請求できます。
リベンジポルノ被害を理由に精神的に病んでしまい、仕事ができなくなってしまった場合などです。医師の診断書などがあるとこの因果関係の立証がしやすくなるでしょう。
リベンジポルノ動画・画像は証拠化前の削除はNG
リベンジポルノ被害にあってしまったら、早急に削除等の適切な対応を取らないと、ネット上にアップされた動画をダウンロードした人が、再度別のサイトにアップするなどして、被害が拡大してしまうリスクがあります。
そのため、リベンジポルノ被害は、早急な対応が重要です。
しかし、削除する前にしっかりと証拠化する必要があります。
リベンジポルノ被害で損害賠償請求するには証拠が必要
リベンジポルノ被害にあって、相手に対して損害賠償請求をするには、証拠が必要です。
どのような動画が、どこにアップされていたのか、その動画をアップした犯人が誰なのか、などを証拠から認定する必要があるからです。
これは、損害賠償請求に限らず、リベンジポルノ防止法違反などの罪で刑事告訴・被害届の提出をする際も同様です。
そのため、早急に削除をすべきではありますが、その前に、しっかりと証拠を取りましょう。
リベンジポルノ被害の証拠とは
リベンジポルノ被害で損害賠償請求をする際に必要な証拠は以下のようなものです。
- 動画・画像の内容(動画をダウンロードして保存する)
- どこに流出していたのか(アップされているサイトをURL付きでスクリーンショット)
- 誰が撮影したのか(撮影者が分かるLINE等の履歴)
- 誰が流出させたのか(発信者情報開示請求等←弁護士や警察に頼む)
個人で、しっかりと証拠を残すのは難しいので、リベンジポルノの被害が発覚したら、すぐに、専門家である弁護士や警察に相談してください!
リベンジポルノの損害賠償請求の方法
リベンジポルノ被害にあった場合の損害賠償請求の方法として、以下の3つの方法があります。
- 内容証明の送付・交渉
- 被害届・刑事告訴からの示談交渉
- 民事訴訟の提起
内容証明の送付・交渉
リベンジポルノの被害に遭った場合の損害賠償請求の方法として、内容証明郵便を送付し、交渉をするという方法が考えられます。
内容証明郵便は、その内容を証拠化できるものです。
リベンジポルノ行為の違法性、特に、リベンジポルノ防止法やわいせつ電磁的記録の頒布罪等の犯罪行為に該当することを指摘し、支払いがなされないようであれば刑事告訴をする予定であることを記載し、相手の支払いを促します。
損害賠償額について、交渉でまとめることができれば、短時間・低コストで解決することができるというメリットがあります。
もっとも、交渉には強制力がないので、相手方が納得しないと解決できないというデメリットはあります。
被害届・刑事告訴からの示談交渉
リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法やわいせつ電磁的記録の頒布罪等の犯罪行為に該当する場合があります。
そのため、警察に被害届や刑事告訴上を提出し、捜査をしてもらうことができます。
被害届や告訴状が受理されると、捜査が開始され、ガサ入れと言われる捜索差押えが行われたり、被疑者である相手方が逮捕されたりします。
被疑者である相手方としては、被害者であるあなたと示談をすることが、早期に警察の留置場から釈放され、自らの刑を軽くするために重要な事項になります。
そのため、相手方から示談の申し入れが来ることが多いです。
相手方は早期に釈放されたい、刑を軽くしたいと思っていますので、交渉力が高い状況で交渉をできるメリットがあります。
相場よりも高額な金額で示談できることもあります。
民事訴訟の提起
リベンジポルノの被害にあってしまい、損害賠償請求をする旨の内容証明郵便の送付や交渉を行ったとしても、話し合いがまとまらず、解決できないこともあります。
また、刑事告訴等による刑事事件化については、警察や検察といった捜査機関の判断に左右される部分があり、確実に事件かして逮捕等がなされるわけではありません。
そこで、民事訴訟の提起という手段が有効です。
民事訴訟において、リベンジポルノ被害の損害賠償請求をして、請求が認められば、強制力が生じます。
具体的には、判決で決められた慰謝料等の損害賠償金について、相手が任意に支払わない場合、相手の資産、不動産、預貯金や給与を差し押さえることができます。
示談を受けるか、民事訴訟を提起するかの判断基準は?
以上で見てきたように、リベンジポルノ被害の損害賠償請求の方法としては、内容証明郵便を送付し任意交渉をする、刑事告訴をして示談交渉をする、民事訴訟を提起するという方法があります。
被害届や刑事告訴をして、警察が捜査を開始し、相手方やその弁護人から示談の申し入れが来た場合、その示談を受けた方が良いのでしょうか?それとも、示談を拒絶して民事訴訟をした方がいいのでしょうか?
この点については、いくつかの判断基準があります。
【示談金額の妥当性】
まずは、提示された金額が妥当かどうかが基準になります。
刑事事件化をしている場合には、相手方は、示談を成立させて、早期の釈放や罪を軽くしたいという思惑が生じるので、交渉力が高い状況で交渉できることが多いです。
そのため、民事訴訟で妥当とされる損害賠償額よりも高額な金額で示談できる可能性があります。
このような場合には、経済的な観点からすれば、この段階が最も高額な金額を得られる可能性が高いので、示談をすべきだといえます。
【相手方の資力】
示談交渉の際には、相手方の資力、すなわち、お金を持っているかどうかも重要な判断要素になります。
民事訴訟で勝ったとしても、お金の無い相手からはお金を取ることはできないからです。
他方で、刑事事件化した後の示談交渉の場合には、親族が示談金を出してくれるなどの可能性があるので、相手方にお金はないものの親族等からお金を出してもらえるという示談状況の場合には、示談をした方が回収率は高まります。
【刑事罰を与えたいという処罰感情】
示談に応じると、リベンジポルノの加害者である相手方が、早期に釈放されたり、その刑が軽くなる可能性があります。
そのため、お金よりも相手にしっかりと罰を与えたいという処罰感情が強いのであれば、示談をしない方がいいでしょう。
その場合には、その後に、民事の損害賠償請求をしていくことになります。
リベンジポルノ被害の損害賠償についての判例・解決事例
ここでは、リベンジポルノ被害での損害賠償請求について、100万円が認められた判例、当事務所で刑事告訴・損害賠償請求の示談交渉をして200万円を獲得した解決事例について、紹介します。
リベンジポルノ被害の損害賠償についての判例(宮崎地判平成28年3月28日)
この判例は、無許可で性行為の動画を撮影し、消去するように言われたものの消去しなかったことを理由に、100万円の損害賠償請求を認めた判例です。
この判例では、無許可で性行為等の動画を撮影したものの、インターネット等への流出はされていない事例です。
リベンジポルノ動画について、撮影はしたものの、流出はさせていなくても、100万円の慰謝料が認められました。
【事案の概要】
アロママッサージ店を営む被告と被害女性である原告(訴訟では被告兼反訴原告であるが、ここでは分かりやすいので単に「原告」という。)は、SNSで知り合った。
被告の店舗兼住居に被害女性である原告が訪れた。
その際、被告は原告にマッサージを行い、その後、性行為をした。
被告は、その様子を原告に無断でビデオ撮影をした。
被告は、原告からビデオの破棄を求められたが、応じなかった。
【判決内容(原告→加害者である反訴被告のこと。被告→被害女性である反訴原告のこと)】
そうすると,原告は,被告の,乳房があらわになった様子(本件ビデオ2 )や性行為の様子(本件ビデオ1)など,通常他人に見せるものでない私的な姿を被告の同意なく動画撮影し,被告から映像記録を消去するよう要求されたにもかかわらずこれを保持しているのであり,原告の行為は,被告の人格的利益を侵害し,不法行為を構成すると解される。
また,原告は,本件各ビデオを第三者に見せるなどする目的はなかったと主張する。 しかし,上記のとおり,被告は,原告が被告の同意なく裸体や性行為の様子を動画撮影し,被告が映像記録を消去するよう要求したにもかかわらず原告がこれを保持していることに精神的苦痛を受け,人格的利益を損なわれているのであり,原告が第三者に当該映像を公表する意図を持っていたか否かは,不法行為の成否を左右する事情ではない。
被告が,裸体や性行為の様子という,私的な姿を同意なく撮影され,映像記録を消去するよう求めても原告がこれを保持していることなど,本件に現れた事実関係に照らせば,原告が本件各ビデオを無断撮影したことによる被告の精神的苦痛に対す る慰謝料は,100万円と認めるのが相当である。
リベンジポルノ被害の刑事告訴・示談交渉で200万円の損害賠償をさせた事例
グラディアトル法律事務所の弁護士が被害者側から依頼を受けて担当した事件で、リベンジポルノ被害について、刑事告訴をして、相手が逮捕され、示談交渉にて200万円の損害賠償が支払われた事例です。
【事案の概要】
被害者はデリヘル(風俗店)で働く女性です。
デリヘルの男性客から盗撮をされ、盗撮された動画が無修正で、インターネット上で販売されてしまったという事例です。
【解決について】
被害女性から相談を受けた弁護士が、証拠を集め、刑事告訴状を作成しました。
警察と相談しつつ、わいせつ電磁的記録の送信頒布罪で刑事告訴をし、警察の捜査が開始されました。
その後、リベンジポルノの加害者が逮捕され、加害者に弁護人がついて、示談交渉についての申し入れがありました。
本件逮捕を理由に妻との離婚の話も出ており、経済的に厳しい状況ではあるものの、両親から示談金についての援助が期待できるとのことでした。
弊所弁護士と加害者側弁護士との交渉により、200万円で示談が成立しました。
リベンジポルノの弁護士相談はグラディアトル法律事務所へ!
ここまで見てきたように、リベンジポルノの被害にあった場合には、削除請求のほか、損害賠償請求をすることができます。
損害賠償請求額は、100万円〜200万円程度が相場となることが多いです。
もっとも、具体的な事情により、その金額が異なってきます。
リベンジポルノの損害賠償請求額の増額要素として、以下の6つが挙げられます。
- 動画内容の過激さ
- 撮影方法の悪質性
- 動画の拡散の程度
- 拡散行為の悪質性
- 被害結果の重大性
- 休業損害がある
また、損害賠償請求の方法としては、以下の3つがあります。
- 内容証明郵便の送付・交渉
- 被害届・刑事告訴からの示談
- 民事訴訟の提起
リベンジポルノ被害の対応は、早期に対応する必要があり、また、その手段も複数あり複雑な部分があります。
そのため、法律の専門家である弁護士に相談し、対応すべきです。
グラディアトル法律事務所では、数多くのリベンジポルノ被害事件を扱ってきました。
削除依頼については、どのサイトがどのような対応をするかなどの経験も蓄積されています。
また、被害届・刑事告訴からの示談や、民事上の損害賠償請求についても多数の実績があります。
風俗店やAV業界など、リベンジポルノ被害と密接に関連する業界からの依頼も多く、関連法令を含めた知識、経験に基づき、適切な対応が可能です。
グラディアトル法律事務所では、LINEでの無料法律相談も可能ですので、是非一度、ご連絡ください。