デジタルタトゥーとは?事例・類型別の5つの消し方を弁護士が解説!

弁護士 若林翔
2022年12月31日更新

一度インターネットに流れたコンテンツはとめどなく広がり、容易に流れを止められるものではありません。SNSや掲示板などに投稿した画像や書き込みは、一度公開してしまうと完全に削除することが難しく、半永久的にネット上に残り続けることから、消すことが難しい入れ墨にたとえられ「デジタルタトゥー」と呼ばれています。

デジタルタトゥーは、その内容しだいで人生を大きく左右しかねない存在です。

自身にとって不利益となる情報が投稿されてしまった。すでに被害に遭っていてすぐに対処したいという方のために、本記事では、デジタルタトゥーの概要、リスクに触れたうえで、事例や消し方を解説していきます。

デジタルタトゥーとは

デジタルタトゥーとは、インターネット上に流れた自身の写真や動画、個人情報、書き込みといったコンテンツのなかでも、拡散されて完全に削除することが難しくなってしまったものを指します。

一度体に掘ると完全に消すのが難しい「入れ墨(タトゥー)」になぞらえ、消したいのに消せないというネガティブな意味で使われます。

デジタルタトゥーの恐ろしさは、削除が難しいことに加え、一度炎上したり、インターネット上にアップされてしまうと、それをスクショしたり、ダウンロードした人が別の場所に拡散し、増殖し、被害が拡大し続けてしまう可能性があることです。

例えば、リベンジポルノ動画などが、インターネット上のアダルトサイトにアップされてしまうと、そのサイト上で動画を削除したとしても、その動画をダウンロードした別の人が他のサイトにアップするなどして、被害が拡大してしまうことがあります。

デジタルタトゥーはいつまで残るのでしょうか?

デジタルタトゥーは、被害者や投稿者本人が削除請求をして、削除がなされるまで、半永久的に残り続けます。投稿者本人だとしても、SNSのログインパスワードを忘れてしまうなどして、自己の投稿を削除できず、ネット上に残り続けてしまうこともあります。

 

デジタルタトゥーの事例

デジタルタトゥーを現実的に捉えるにあたって、その種類や事例について知っておくことは大きな意味を持ちます。事前知識によってデジタルタトゥーの誕生を防げるケースもあるでしょう。

誹謗中傷・デマ

近年、ネット上の誹謗中傷は大きな問題になっています。

対象者の社会的な評価を低下させ、その名誉を毀損するような投稿がデジタルタトゥーとしてネット上に残ってしまうことがあります。

また、真実に反するデマ情報がネット上に残ってしまうこともあります。

真実だと信じて発信した場合であっても、悪意をもって発信した場合であっても、同様にデジタルタトゥーとなり得るでしょう。

たとえ間違った情報であっても、それがインパクトのあるものなら瞬く間に拡散されてしまいます。拡散されてしまった側は根拠にもとづいた主張によって誤りを払拭できることもありますが、一度拡散された情報の修正は極めて難しいでしょう。

他方で、誤情報を拡散してしまった側は弁解が聞き入れてもらえないことも少なくないでしょう。むしろ、不用意に誤りを発信した責任を問われる可能性もあります。

悪意がない場合でも、誰かに大きな影響を与える可能性のある発言や情報については特に正確性が求められています。

リベンジポルノ・性的なコンテンツ

性的なコンテンツもデジタルタトゥーになり得ます。具体的には、自身の性的な発言、画像、動画が挙げられるでしょう。

なかでも被害が拡大しているのが、過去に関係を持った相手によって自身の性的な画像や動画をネット上に公開、拡散されてしまう「リベンジポルノ」です。相手との関係がこじれてしまった末に嫌がらせとして行われることが多く、一度関係を持っただけの相手に拡散されるケースもあります。

そういった流れを受けて、2014年には「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)」が可決・成立しましたが、それ以降も被害相談件数は年々増加しているのが実状です。

どのような相手・シチュエーションであっても、自身を取り巻く性的なコンテンツをネット上に公開、投稿しないこと。また撮影させないことが、確実に被害に遭わない唯一の方法です。

リベンジポルノの削除依頼や犯人特定のための発信者情報開示請求の詳細については、以下の記事もご参照ください。

リベンジポルノ被害の3つの対処法と相談先3選【早期対応が重要!】

迷惑行為・悪ふざけ

動画投稿サイトやSNSの広がりによってよく目にするようになったのが、迷惑行為や悪ふざけといわれるものです。

件数が増加したのは2010年代。それにともなって、アルバイト中の従業員による悪ふざけ行為を指す「バイトテロ」、迷惑行為をTwitterに投稿している人を指す「バカッター」、迷惑行為を軸に活動しているYouTuberを指す「迷惑系YouTuber」という言葉が広まっていきました。

これらは徐々に人目につきやすくなり、個人情報を特定された当事者が、所属する職場や学校、内定が決まっている企業を去らなければならなくなるケースもいまでは珍しくありません。特にバイトテロの場合、アルバイト先の企業が悪影響を被る場合が少なくなく、高額な損害賠償の請求や刑事告訴につながることもあります。

昨今では、Twitterの鍵アカウントやInstagramストーリーズの「親しい友達」のように、一部の人しか見ることができないはずのプライベートな投稿が公になって問題になるケースも増えています。もはや、迷惑行為や悪ふざけをしたい方が安心して投稿できる場所はほとんどないのかもしれません。

いかなる環境でも、一瞬の気の迷いでも、想定を超えて取り返しのつかない結果を招く可能性があることを認識しておく必要があります。

 

個人情報

デジタルタトゥーになり得る個人情報には、住所や職場、本名はもちろん、現代においては検索履歴や閲覧履歴、位置情報といったものも挙げられます。

個人情報を扱ううえで警戒しなければならないのは、直接的な流出だけではありません

昨今では、自宅付近の様子やよく行っているお店の情報、窓や家具の反射による映り込みから、行動圏や住んでいる建物が特定されてしまうケースがあります。あえて珍しいものを道端に落としておいて、見つけた人のSNS投稿から行動圏や個人を特定するという手口も話題になりました。間接的に個人情報を手に入れる「特定」の方法は高度化と多様化の一途を辿っており、特定されると家族や友達が犯罪に巻き込まれる危険性もあります。

現代においては、WebサイトやSNSで顔や本名、職業、勤務先、生年月日といった個人情報を公開しているケースも少なくありません。過敏になりすぎることはありませんが、いかなる個人情報の公開も犯罪や事件につながらないとはいえず、危険と隣り合わせであることは常に頭の片隅に置いていた方がいいでしょう。

 

逮捕歴・犯罪歴

これまで主流だったテレビやラジオ、新聞ではなく、TwitterやLINEをはじめとしたSNSやニュースアプリ、YouTubeやTikTokといった動画投稿サイトでニュースを閲覧する方が増えています。そのため、SNSを通じて拡散されるようになり、注目度が下がってもインターネット上に残り続けるようになりました。これによってデジタルタトゥーになりやすくなったのが、逮捕歴や犯罪歴です。

犯罪のニュースは、逮捕された段階で報道されます。本来、冤罪や不起訴であれば罪に問われることはありませんが、報道された時点で人の目には触れてしまうため、罪が確定する前に拡散されてしまう可能性があるのです。容疑者の名前や事件の状況が報道されてしまえば、たとえあとで冤罪や不起訴になったとしても、すでに拡散されてしまった情報を全て払拭するのは難しいかもしれません。

またしっかりと罪を償ったとしても、デジタルタトゥーとなった逮捕歴や犯罪歴が消えず、家族や本人の社会復帰において大きな障害になる可能性もあります。特に注目を集めた事件の当事者になってしまった場合は、好奇の目にさらされてしまうこともあるでしょう。

インターネット上の逮捕歴・前科の削除方法については、以下の記事をご参照ください。

ネットの逮捕歴・前科は削除可能!素早く高確率で消す3つの方法とは

 

デジタルタトゥーが人生を台無しにする場合も

先述したように、デジタルタトゥーは完全に消すことが非常に難しいものです。この特性は、当事者の社会活動にとって大きなネガティブ要素となるでしょう。

デジタルタトゥーは誰の目にも触れる可能性があります。それは当事者がこれまで関わっていた人、これから関わっていこうとしている人についても同様です。

拡散された情報のせいで勤務先を辞めさせられるかもしれませんし、就職活動においては内定先から内定を取り消されたり、面接に応じてもらえなかったりするかもしれません。家族が犯罪に巻き込まれてしまう可能性や、結婚や交際になかなか結びつかない可能性もあるでしょう。

ひとたび抱えてしまったデジタルタトゥーは、インターネット上から人生に直接影響を与え続け、その後の人生も台無しにしてしまう可能性があるのです。

 

デジタルタトゥーの消し方5選

現代において、デジタルタトゥーの影響は大きく、完全に消すことが難しいものです。しかし生み出してしまったからといって、ただ諦めるしか方法がないわけでもありません。

ここからは、デジタルタトゥーを消す方法を紹介します。

自分で削除をお願いする

まず、デジタルタトゥーとなった情報を掲載しているサイトの管理者や投稿主に削除をお願いする方法があります。

サイトの問い合わせ(メッセージ)欄やSNSのDM(ダイレクトメッセージ)、管理者や投稿主のメールアドレスが掲載されている場合はそこから連絡するのがいいでしょう。自分で行えば費用がかかることはありませんが、拡散の範囲が広ければ地道で途方もない作業になる場合があります。

お願いした相手に無視されたり応じてもらえなかったりする可能性も低くなく、コストを抑えられる一方、確実性はあまり高くない方法といえます。

風評対策業者に依頼する

風評被害への対策を専門に請け負っている風評対策業者に依頼することで、デジタルタトゥーを目立たなくすることができます。一方で注意しなければいけないのが、風評対策業者はデジタルタトゥーを消せないということです。

デジタルタトゥーに対し、プライバシー侵害等を訴えて正式に削除を申請できるのは本人と弁護士のみです。仮に風評対策業者が本人を代行して削除を申請した場合、「非弁行為」と呼ばれる法律違反に該当してしまいます

依頼にはある程度まとまった費用が必要になるので、できることとできないことをしっかりと理解したうえで依頼を検討するようにしましょう。

「セーフライン」や「誹謗中傷ホットライン」に通報する

セーフライン」「誹謗中傷ホットライン」とは、インターネット企業有志によって運営される一般社団法人セーファーインターネット協会のサービスです。

セーフラインは、インターネット上の違法・有害情報を見つけて通報できるというシステムで、リベンジポルノをはじめとした違法なコンテンツに対して、相談や削除の申請を請け負っています。また誹謗中傷ホットラインは、インターネット上の誹謗中傷に対して、削除をはじめサイトの利用規約等に沿った対応を促す通知をしてくれます。

費用はかからないもののそれほど強い対応が望めるわけでもないので、一刻も早く削除してほしいというより、まず誰かに相談したいという方におすすめのサービスといえます。

警察に届ける

刑事事件に発展しそうな状況であれば、警察に届けるのも選択肢のひとつです。特にリベンジポルノの被害をはじめ顔見知りの犯行で被害を受けている場合は、対応してもらいやすい傾向にあります。

費用がかからない一方、いかなる場合でも対応してもらえるわけではないので、その点は認識しておいた方がいいでしょう。

弁護士に相談する

最も柔軟かつ効果的な対応が期待できるのは、弁護士に相談する方法です。法的な手続きはもちろんのこと、デジタルタトゥーの削除に向けて独自のノウハウを駆使してあらゆるアプローチを試みてもらえるでしょう。

投稿を削除したいのか、情報源に対して責任を追求するのか、要望に合わせて柔軟な対応が望めます。相手がなかなか削除に応じてくれないという場合は、裁判所に仮処分の申し立てを行い、強制的に削除へと追い込むことも可能です。

ある程度の費用がかかること、結果が出るまでに時間がかかる場合もあることを覚悟しなくてはいけませんが、デジタルタトゥーの消し方として最も効果が期待できる手段だといえます。

 

デジタルタトゥーの対処は、まず弁護士に相談を

デジタルタトゥーをたかがインターネット上のことだと侮ってはいけません。いまやインターネットは社会活動と密接に関わっており、人生を大きく揺るがすだけの影響力を秘めています。

デジタルタトゥーに対抗する方法はいくつかあります。緊急性やデジタルタトゥーの種類によっても選択肢は変わってきますが、いかなる場合においても最も柔軟性があり、確実性が高いのは弁護士に相談する方法だといえるでしょう。

初回無料相談を実施している弁護士事務所も多いので、デジタルタトゥーで人生を台無しにしてしまう前に、まずはそういったところに相談してみるのがおすすめです。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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