Googleマップ(Google Maps)とは,アメリカのカリフォルニア州に本社があるGoogle社が提供する地図サービスです。
今年に入ってゼンリン社との提携が解除されたのではないかという噂がネット上で広がりましたが,まだまだ日本ではゼンリン社のデータに基づいた地図が提供されているようですね。
近くの飲食店を探すときもそうですが,カーナビなどでも頻繁に使う機会があり大変便利なサービスではあります。
Googleマップ(公式サイト)を使う消費者側にとってはお店までのルートや口コミなどを気軽に確認することができ,これほど便利な地図アプリはないです。しかし,サービスを提供する側にとっては☆1の口コミが付けられただけで客足が遠のいてしまうことがあったりと,デメリットも多くあります。
そうはいっても,企業にとってGoogleマップのようなMEO(「Map Engine Optimization」の略称。ローカルSEOともいう。)対策はSEOと並んで売上アップに直結する非常に有用なツールです。
そこで今回はGoogleマップに投稿された口コミを自身で削除する方法を解説していきます。
Googleマップの口コミを自分でウェブフォームから削除請求する方法
Googleマップの口コミ削除には裁判手続きを除いて,
①Googleマップの口コミが表示されているページから「違反コンテンツ報告」を行う
②削除請求フォームから法的リクエストを送信する
の2つの方法があります。
①は手続きが簡単ですがポリシー違反のチェック項目しかないため判断が機械的にされ削除可能性は低い,②は手続きが面倒ですがなぜ消してもらいたいのかをGoogle社に対して詳細に説明できる,といった側面があります。
①Googleマップの口コミが表示されているページから「違反コンテンツ報告」を行う
まずは消したい口コミをスマホやパソコンで表示させます。
パソコンの場合は,口コミ右上にある点が3つある場所をクリックして「違反コンテンツを報告」を選択します。
スマホの場合も,同じ場所をクリックして「口コミを報告」を選択します。
(※下記パソコンのスクリーンショットはあくまで分かりやすく説明するために表示し,東京地方裁判所に対する悪質な口コミを削除するよう仕向ける意図ではありません。そのため投稿者にはモザイク処理をかけています。)
その後はスマホもパソコンも同じ画面が表示されます。
違反の種類: *
この投稿には悪意のあるコンテンツ、暴力的なコンテンツ、不適切なコンテンツのいずれかが含まれている
この投稿には広告またはスパムが含まれている
トピックに無関係な内容が含まれている
この投稿には利害対立に関係する内容が含まれている引用|ポリシー違反を報告
違反の種類は4つしかなく,必ずしも削除したい理由を反映させているわけではありません。
これは,Googleマップに投稿された口コミを機械的に判断するためだと思われます。
違反報告を1つ1つ担当者がチェックするのは到底無理だと思うので,AIで判断可能なコンテンツに関するポリシーのみが表示されているのではないでしょうか。
Googleマップでは,本来であれば詳細なコンテンツに関するポリシーで運用されていますが,その全ての判断をAIに処理させるのは難しいのでしょう。(参照:禁止および制限されているコンテンツ)
どのような投稿がコンテンツに関するポリシーに反しているか,Google社に対してどう説明したらよいのかは,のちほど解説していきます。「②削除請求フォームから法的リクエストを送信する」で特に重要となることかと思います。
②削除請求フォームから法的リクエストを送信する
まずはこちらをクリックして,Googleに対する削除請求フォームに飛びます。
そうすると以下のような画面が開くので
ページ下部にある「法的リクエストを送信する」というボタンをクリックしてください。そうすると説明書きが展開されるので,青くなっている「ツール」をクリックしてください。
このような画面が新しいタブで開くので
「Google マイビジネス(クチコミ、Q&A(質問と回答)、ビジネス リスティング)」を選択します。
【上記以外の法的な問題が発生した】
↓
【ビジネス リスティングに表示されているクチコミ、写真、動画、または個人情報を削除したい】
↓
【コンテンツの削除に関する他の法的問題】
にそれぞれチェックを付けて説明書きの一番下にある【法的な報告フォーム】をクリックします。
ここまできてやっと請求者であるあなたの氏名や口コミの内容などを入力するフォームに辿り着くことができます。
【権利侵害にあたるとお考えの URL 】は,削除したい口コミの下に「共有」ボタンがあると思うので,そこからURLをコピーしてみてください。
また,各項目を入力していくなかで,「法律のことなんてよく知らないよ」なんていう方の手が止まるのはおそらく,【上記の URL のコンテンツが違法であるとお考えの理由について、可能な限り具体的な法律の条文を引用し、詳しくご説明ください。】ここの部分でしょう。
ここは弁護士とまではいかないまでも法学を学んだことがないと書くのは難しいと思います。
そこで,誰でもコピペして使える書き方を解説していきます。
名誉権侵害の場合
例えば,お店のサービスの悪口が投稿された場合の書き方としては,「当該投稿の◯◯という部分は,●●の社会的評価を下げるものであり,真実ではなく公益目的もありません。また,◯◯を閲覧した他のユーザーが●●の利用を敬遠することになる結果,●●の将来の売上低下につながるおそれがあるため,●●が回復困難な損害を被るおそれがあるといえます。そのため,◯◯という部分を含めた当該投稿は,刑法230条の名誉毀損罪に該当しますので,削除を求めます。さらに,かかる損害を価格賠償で換算することは困難なこともあり,名誉を回復するのに適当な処分として削除を求めます(民法723条参照)。」といった感じでしょうか。
法律的には,名誉毀損罪に絡む要件の中で,上記3要件は公職選挙が絡んだ際の仮処分の判断に用いられるものであり,インターネットの誹謗中傷に関してそのまま適用されることになるかどうか一概には言えません。
Googleマップでの削除においては,もう少し緩やかな基準で認めらるべきでしょう。
また,プライバシー権とは異なり,名誉毀損の場合には民法723条によって別途,名誉回復措置というものが認められているので,この条文を引用することも有効でしょう。
ただし,ここまで権利が侵害されていることを説明しても任意で削除される可能性は低いです。
プライバシー権侵害の場合
名誉権侵害とは異なり,プライバシー権侵害の場合には少しだけ削除の可能性が高まります。
例えば,お店のスタッフの本名や電話番号などが口コミに投稿された場合の書き方としては,「当該投稿の◯◯という部分は,●●に在籍する一般私人でもある従業員の私生活上の事実です。また,一般人の感受性を基準にして公開を欲しない事柄です。さらに,一般の人々に未だ知られていない事柄でもあります。仮に,◯◯が他サイトを含めた既存の投稿であったとしても,新たな投稿により権利侵害の危険は高まります。そのため,◯◯という部分を含めた当該投稿は,プライバシー権を侵害しており,削除を求めます。」といった具合になるでしょう。
口コミに対する削除請求が公開される?
ここに書いてある説明書きに注意なのですが,削除請求をした場合にはそれが全世界に公開されます。これは,Googleが企業からお金をもらって恣意的にMEOを操作する疑いをかけられ,サービスの品質に疑問符を付けられないようにするための担保だと思われます。
とにかく早く削除したいと考えているとは思いますが,読み飛ばすことのないよう気をつけてください。
また,自身が入力した情報は口コミの投稿者に開示される場合もあります。もし,万が一にも自分の情報を開示されたくないという方は弁護士に頼むことをオススメします。弁護士であれば,Google社に対して削除請求フォームとは別に,第三者に依頼者の情報を公開されることのない仮処分という裁判手続きによって削除請求が可能なためです。
Googleマップの口コミ削除に強い弁護士は問い合わせフォームから。
Google が受領した法的な通知はすべてその写しが Lumen プロジェクト(lumendatabase.org (英語))に送付され、公開されたり注釈を付けられたりすることがありますのでご了承ください。なお、送信者の連絡先情報(電話番号、メール アドレス、住所など)は Lumen によって削除されますが、氏名・会社名・団体名などは公開されますので予めご了承ください(公開された通知の参考画像)。
また、通知の原本を侵害者とされる相手、またはお送りいただいた申し立ての有効性が疑わしいと判断する理由がある場合は権利所有者に送付することもあります。
また、お送りいただいた通知について同様の情報を Google の透明性レポートに公開する場合もあります。このレポートについて詳しくは、こちらをご覧ください。
引用|Google からコンテンツを削除する(注釈)
Googleマップの口コミが削除される基準
削除される基準は,なにも法律に従って全てが決まっているわけではなく,Google社がGoogleマップにとってふさわしくないと独自に判断したものになります。
そうはいっても,口コミのどの部分がどのような法律に違反しているかを書く必要があるため,Google独自の基準とはいっても日本の法律に違反しているような口コミであることが大前提となります。
具体的な基準はこちらで公開されています。
一部を抜粋して紹介すると,
評価を操作する目的での投稿
これは「自分の店やサービスのクチコミを投稿すること」や「競合他社に関するコンテンツを投稿して評価を操作すること」とも関連する基準かとは思いますが,Googleマップが公正・公平なサービスとして提供されていることを阻害するものとして禁止されているものと推測されます。
外部リンクの貼り付け
「規制されている商品やサービスを購入できるランディング ページへのリンク」や「規制されている商品を購入できるメールアドレスや電話番号などの連絡先」など,の情報を貼り付けて誘導するような投稿は制限されています。
「規制されている商品」というのは,「アルコール、ギャンブル、タバコ、銃、健康器具や医療機器、規制されている医薬品、成人向けのサービス、金融サービス」などのことです。
これは,これらの商品が国によって規制されている態様が異なっているからかもしれません。
というのも,アルコール一つとってみても,日本では20歳未満の青少年はアルコールの購入自体が禁止されていますが,一方,20歳以上であれば公道や公共の場での飲酒が認められています。しかし,諸外国では,20歳未満でもアルコール類の購入が許されている一方,屋外での飲酒は一律禁止されているようなところもあります。
こういったことから,世界中でサービスが提供されているGoogleマップを一貫した基準により管理することで,ユーザーの利便性を向上させているのではないでしょうか。
違法なコンテンツ
「著作権を含む他者の法的権利を侵害する画像または他のすべてのコンテンツ」は日本の法律にも反することになりますし,制限されているのは当然といえるでしょう。
また,その他刑罰法規に触れるような投稿も禁止されています。
この点に関しては,一般常識に照らして判断すれば難しくはないでしょう。
なりすまし
「Google マップを使って他人を欺くこと」や「不正なコンテンツ、虚偽の表示や説明」も禁止されています。「自分の店やサービスのクチコミを投稿すること」や「現在または過去の職場に関するコンテンツを掲載すること」とも関連しそうですが,やはりGoogleとしても,ステルスマーケティングのようなユーザーを誤認識させるような投稿を一律に禁止しているものと思われます。
店のサービスの質が低い等の口コミは禁止されているのか
飲食店や企業側の読者からすれば,この点が一番気になっているところでしょう。
内容にもよりますが,単に「料理がまずかった」「接客の質が低かった(悪かった)」というような投稿であれば,削除申請を行っても認められる可能性は低いでしょう。
さらにいえば,本末転倒にはなってしまいますが,Googleマップの口コミ削除(任意請求)に関してのGoogleの態度は一貫して「応じることができない」といった回答が大多数です。
そのため,当事務所にそういった口コミを削除したいという内容の相談があったとしても,任意での削除請求ではなく,裁判所に申し立てる仮処分手続きという手段をおすすめしています。
仮処分であれば,削除するか否かの判断はGoogleではなく担当の裁判官によってなされるため,Google側の恣意の入る余地がほとんどないからです。
飲食店や企業側としても,☆の少ない口コミや,主観的には店の品位を貶めているだろうと思われる口コミがされても,仮処分の手続きにおいても弁護士費用で20万円からかかってしまうことが多いので,経営面で弁護士費用を捻出できるような体力がない限り,傍観するしかないのが現状です。
最後に
そもそもGoogleマップに掲載されることすら望んでいない飲食店・企業も大勢いらっしゃることと思います。
しかし,一度投稿されてしまった悪意のある口コミをそのまま野放しにしておくと,思わぬリスクが生じてしまいます。
ユーザーが口コミを閲覧して利用を控えることになるのはまだしも,新たに迎え入れようとしていた仲間がその口コミを見て入社を辞退する,なんてことにもなりかねません。
当事務所では,Googleマップの口コミ削除に関して,無料での法律相談を実施しているのでお気軽にお問い合わせください。