BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用して、AV、音楽、漫画、映画などを違法にダウンロードやアップロードをしてしまい、プロバイダから開示請求の意見照会書が届いた。
違法ダウンロードだと聞き、逮捕されないか。
自分の住所などの個人情報がバレないか。
家族に知られてしまわないか。
訴訟を起こされないか。
そんなご不安を抱えている方がいるのではないでしょうか。
結論から言えば、トレントなどのファイル共有ソフトで違法ダウンロードや違法アップロードをしてしまったとしても、弁護士を通じて適切に示談を行えば、逮捕されたり、訴訟を起こされたりして、家族や職場にバレることはありません。
グラディアトル法律事務所の弁護士では、同様の相談を500件以上受けてきました。
具体的には、発信者情報開示に係る意見照会書や損害賠償請求書面が届いたため、どのように対処すればよいか教えてほしいというものです。
実際、呪術廻戦等の人気漫画、アニメ作品などがBitTorrent(ビットトレント)で違法にダウンロード、なおかつ同時にアップロードがされたことで上記のような事態を招くケースが相次いでおります。
AV(アダルトビデオ)作品についても、株式会社ケイ・エム・プロデュース(K.M.Produce、KMP)、株式会社WILL(ウィル)や株式会社ExStudio、ティーパワーズ株式会社(T-POWERS)、有限会社プレステージ、清水健、株式会社ブイアンドアールプランニング制作の作品において、同様の事例が増加しております。
音楽ファイルについて、トレントを使用して違法ダウンロード・違法アップロードをしてしまい、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたという事例も確認されております。株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ、エイベックス・エンタテイメント株式会社、株式会社バンダイナムコアーツなどが請求を行なっているようです。
さらに、発信者情報開示に係る意見照会書について、無視や開示に同意をせずに拒否をしていた人についても開示がなされ、損害賠償請求書面が届いている状況です。
これらの一連のトラブルに関して、決して侮ってはいけません。刑事事件として扱われたケースもあります。
詳細は後述しますが、2021年11月に、アニメ映画「機動戦士ガンダム」をBitTorrent(ビットトレント)で違法アップロードし、アニメ制作会社「サンライズ」(東京)の著作権を侵害した疑いで3名の方が書類送検されております。
なお、当法律事務所では、これらの案件に関する多数のご依頼を受け、すでにそのほとんどの事件が解決済みです。意見紹介書が届いたら、すぐに、弁護士に相談してください。
本記事では、BitTorrent(ビットトレント)中心にファイル共有ソフトの種類や簡単な仕 組みを紹介したうえで、違法アップロードによる著作権侵害のことや発信者情報開示請 求、逮捕事例、損害賠償請求と損害額…等幅広く取り上げ、解説をしていきます。
YouTubeで解説動画も撮りましたので、あわせてご覧ください。
ファイル共有ソフト(P2P)とは
ファイル共有ソフトとは、インターネットで不特定多数の利用者とファイルをやり取りする、いわゆるファイル共有のためのソフトウェアのことをいいます。
かつては、1対1でファイルを交換することが多く、ファイル交換ソフトと呼ばれておりましたが、現在は複数間のファイル共有が主流となっております。
通常のインターネットのネットワークでは、クライアントサーバー方式と呼ばれるシステムが使われております。これは、クライアントになるWebブラウザなどからの要求にサーバーが応答して処理をする方式です。
一方で、ファイル共有ソフトで使われるP2P(ピア・トゥ・ピア)方式は、クライアント・サーバーの区別なく、複数のコンピューターが相互に通信をする方式です。
それぞれのコンピュータがその保存するファイルをアップロードし、また、他のコンピュータからダウンロードできるシステムです。
この技術により、所有するファイルの共有が簡単にできるのです。
この技術自体は素晴らしく、現在、ビットコインなどの仮想通貨・暗号通貨にも使用されているブロックチェーン技術にも、このP2P方式が採用されています。
違法アップロードが問題視されるファイル共有ソフト
ファイル共有ソフトには、さまざまな種類があります。
ざっと例を挙げてみるだけでも、「Napster」、「Gnutella」、「WinMX」、「Winny」、「Share」、「BitTorrent」、「μtorrent」、「Perfect Dark」、「Bit Comet」、「Vuze(Azureus)」、「Shareaza、Cabos」…等々キリがありません。
しかし、そうしたなかでも現在、BitTorrent(ビットトレント)は筆頭格として使われています。実際のところ、発信者情報開示請求が多数提起されているのは、BitTorrent(ビ ットトレント)を利用した違法アップロードの問題です。
いずれにせよ、ファイル共有ソフトはひとたび使い方を誤ると、たちまち違法アップロー ドにつながります。そのため、慎重な扱い、注意が必要です。
今現在、発信者情報開示請求が多数提起されているのは、BitTorrentを利用した違法アップロードです。
BitTorrentの仕組みの詳細については、以下の記事をご参照ください。
トレントなどのファイル共有ソフトと著作権侵害
著作権とは、著作物を保護する権利で、著作権法により規定されております。
著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義されています。
ファイル共有ソフトと著作権法の関係でいえば、主に公衆送信権・送信可能化権(著作権法23条)の侵害が問題になります。
公衆送信権とは、著作者がその著作物について、公衆に直接受信されることを目的とした電気通信の送信(無線、有線を問わない)を専有できる権利です。
ファイル共有ソフトを使用して公衆に向けてファイルを送信したり、YouTubeで動画を流すことを独占して行えるのは当該著作物の著作者だけであるということです。
そのため、著作者でない第三者がファイル共有ソフトで他者が著作権を有する著作物を送信(アップロード)する行為は、公衆送信権を侵害する行為になります。
送信可能化権は、著作者が著作物を自動的に公衆送信ができる状態に置くことを専有しておこなうことができる権利です。
著作者以外の第三者が、著作物をファイル共有ソフトで自動的に第三者が受信できる状態におくことは、送信可能化権を侵害します。
(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトにおいてはデータをダウンロードすれば、他のユーザーの要求に応じて自動的に当該データが送信可能な状態になります。
すなわち、BitTorrent(ビットトレント)を利用して他者の著作物を違法ダウンロードすると、同時に、違法アップロードもしてしまうのです。
なお、現在は著作権法の改正により、違法アップロードのみならず、ダウンロードも著作権法上の処罰対象となっておりますので、ご注意ください。
また、著作権法違反のほかに、パブリシティー権侵害を理由に発信者情報開示請求をしてくる業者もございますので、まずは、弁護士に相談しましょう。
トレントなどのファイル共有ソフトと開示請求
トレントでの発信者情報開示請求の増加
発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷等の被害によりその権利を侵害された者が、加害者である投稿者・発信者を特定するために必要な情報の開示を求める請求です。
プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)の4条1項をその根拠としております。
(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
近年、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用して、著作権侵害をしたとして、発信者情報開示請求がなされるケースが非常に増えてきております。
音楽、映画、漫画、AV(アダルトビデオ)などについての著作者らが、複数の著作権侵害事例に対して、発信者情報開示請求をしております。
そして、当法律事務所の弁護士がご相談を受けている複数の事件において、発信者情報開示について、プロバイダが任意開示に応じている傾向にあります。
一般社団法人日本レコード協会の発表によると、2019年9月から11月までの間に、45のIPアドレスに対して発信者情報開示を求め、ログの保存が無かった2つのIPアドレスを除いた全てのIPアドレスについて発信者情報が開示されたとのことです(PRTIMES参照)。
任意開示に応じなかったケースにおいても、著作権者は発信者情報開示請求訴訟に踏み切り、裁判所により開示の判決がなされております。
トレントの開示請求については、以下の記事もご参照ください。
BitTorrent(ビットトレント)の発信者情報開示の判例
BitTorrent(ビットトレント)の発信者情報開示請求の裁判例について、直近のものですと、大阪地判令和3年4月22日判決があります。
【事案の概要】
この裁判例は、漫画「望まぬ不死の冒険者」の著者である漫画家の方が原告となった訴訟です。被告であるプロバイダとの契約者(以下「本件契約者」という。)が、P2P(ピアツーピア)ファイル共有ソフトウェアであるBitTorrent(ビットトレント)を利用して、原告が著作権を有する別紙著作物目録記載の漫画(以下「原告著作物」という。)の複製物である電子データ(以下「本件データ」という。)をインターネット上で不特定の者に対してアップロード送信したこと、及び本件契約者の行為は、原告の著作権 (公衆送信権)を侵害することは明らかであると主張して、発信者情報の開示を求めた事案です。
【特定の正確性】
この裁判例では、本件契約者の特定の正確性が問題になりましたが、裁判所は、IPアドレスやポート番号から、本件契約者を特定できると判断し、一般社団法人テレコムサービス協会プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が認定をしたファイル共有ソフト監視システムである「P2P FINDER」による特定までは必要ないと判断をしました。
【著作権 (公衆送信権)の侵害】
裁判所は、著作権 (公衆送信権)の侵害について、本件契約者が、ファイル共有ソフトウェアであるビットトレントを用いて、原告著作物を複製した本件データを、不特定多数の他のビットトレントの利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にして,原告代理人にこれを送信したことが認められ、原告の許諾、著作隣接権の権利制限事由その他の違法性阻却事由の存在を窺わせる事情は認められないことから、 権利侵害は明らかというべきである。と判断しました。
トレントなどのファイル共有ソフトの違法アップロードの罰則と逮捕事例
前述のごとく、ファイル共有ソフトを使用した違法アップロードなどは著作権法に違反します。
そして、著作権法違反は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金です。
また、法人の場合には、三億円以下の罰金刑が定められています。
第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第百二十四条 法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第百十九条第一項若しくは第二項第三号から第六号まで又は第百二十二条の二第一項 三億円以下の罰金刑
このように、重い罰則が定められている著作権法ですが、実際に、逮捕されて刑事処罰を受けたケースもありますので、ご紹介していきます。
BitTorrent(ビットトレント)の逮捕事例・書類送検事例
アニメ動画を違法公開 容疑の男逮捕 被害18億円
ファイル共有ソフトを使ってアニメの動画をインターネット上に違法に公開したとして、大阪府警サイバー犯罪対策課などは15日、三重県四日市市中川原2の会社員で韓国籍、〇〇容疑者(29)を著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕した。同課によると、アニメやテレビ番組など計約170作品を公開しており、被害額は約18億円に上るとみられる。
逮捕容疑は2018年9月5日、テレビアニメの映像を制作会社の許可を得ずにファイル共有ソフト「ビットトレント」を使ってネット上に公開し、誰でもダウンロードできる状態にして著作権を侵害した疑い。
サイバー犯罪対策課によると、〇〇容疑者は「自分が編集した動画をみんなに見てほしかった」と話しているという。
逮捕容疑となったアニメ1作品(73話、販売価格計14万1600円)だけで250件の違法ダウンロードがあり、被害額は約3500万円に上るという。
ビットトレントは容量の大きいファイルを送ることができ、特定のサイトにアクセスすれば、市販されているのと同水準の画質の動画が見られるとされる。
同課は、ビットトレントを使って著作権侵害の疑いがあるアニメ動画がアップロードされたことを確認。動画公開者のアカウント情報やIPアドレスから〇〇容疑者を特定した。
日本経済新聞 2019年4月15日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43732930V10C19A4AC8000/
この事件は、BitTorrent(ビットトレント)を使用して、アニメやテレビ番組を違法にアップロードしたとして、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕された事件です。
前述した判例でも指摘されておりますが、BitTorrent(ビットトレント)は他のファイル共有ソフトなどに比して、特定が容易な仕様になっております。今回の事件でも、動画公開者のアカウント情報やIPアドレスから容疑者が特定されております。
ファイル共有ソフト「BitTorrent」によるマンガの著作権侵害を摘発
株式会社講談社と株式会社集英社と一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は3月18日、ファイル共有ソフト「BitTorrent」を利用しマンガ作品を無断アップロードしていた長崎県の30代男性を、長崎県警生活環境課サイバー犯罪対策室と長崎署が著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで長崎地検に送致したことを発表した。
この男性は、トレントトラッカーサイト「Nyaa.si」を利用して多数の海賊版データを所持し、BitTorrentを通じてアップロードしていたという。長崎県警の捜査員がサイバーパトロールで発見し、ACCSを通じて著作権者に連絡した。講談社『鬼灯の冷徹』26巻と集英社『僕のヒーローアカデミア』18巻を無断アップロードしていた疑い。
BitTorrentでの著作権侵害の摘発事例は珍しく、講談社と集英社は非常に画期的なこととしている。また、これ契機として安易なファイル共有ソフトの利用行為が深刻な著作権侵害を引き起こすことへの理解が深まり、抑止効果に繋がることを願っていると声明している。そして今後も、作家の創作努力を踏みにじるような悪質な著作権侵害行為に対し、刑事告訴・民事提訴など、断固たる姿勢で望んでいくとしている。
HON.jp 2019.3.18 https://hon.jp/news/1.0/0/21845
この事件では、講談社、集英社発行の漫画について、BitTorrent(ビットトレント)を使用して違法アップロードした男性が、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで書類送検されています。
講談社と集英社が、今後も、著作権侵害行為に対して刑事告訴・民事提訴など、断固たる姿勢で望んでいくと発表しています。
実際に、現在、ファイル共有ソフトを使用した漫画の違法アップロードについて、両者とも精力的に活動をしているようで、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたとの弁護士への相談が増えてきています。
とりわけ『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』など人気の漫画(アニメ)となると、ダウンロード数もおのずと多くなり、権利者からの損害賠償請求額が跳ね上がるケースが散見されております。
ガンダム映画をネットに違法アップロード 容疑の男3人書類送検 茨城県警
アニメ映画「機動戦士ガンダム 閃光(せんこう)のハサウェイ」をネット上に違法アップロードしたとして、茨城県警ひたちなか、日立、古河の3署と県警サイバー犯罪対策課は24日までに、著作権法違反の疑いで、山形県中山町、会社員、男性(48)、横浜市保土ケ谷区、会社員、男性(41)、埼玉県越谷市、アルバイト作業員、男性(33)の3人を水戸地検や同地検下妻支部に書類送致した。
書類送検容疑は6月14~18日ごろまでの間、パソコンのファイル共有ソフトを使ってアニメ映画を違法に公開し、アニメ制作会社「サンライズ」(東京)の著作権を侵害した疑い。
同課によると、3人は個別にファイル共有ソフト「ビットトレント」を使って視聴し、面識はなかった。ソフトは動画を保存すると同時にアップロードする仕組みだった。3人は容疑を認め、それぞれ「コロナ禍の影響で劇場に行けず見てしまった」「普段からソフトを使用していた」「コロナ禍でお金がなくなり節約のためだった」などと供述している。
同作品は6月11日に劇場公開され、入場者に限定販売されたブルーレイディスク(BD)の内容が違法に公開されていた。BDの一般販売は今月26日からの予定。
茨城新聞社 2021,11,24 https://news.yahoo.co.jp/articles/f992086560a9158bc0e20f155e39a627f19de3c8
冒頭でも触れたこのニュースは、2021年6月頃にBitTorrent(ビットトレント)を使用して、アニメ映画「機動戦士ガンダム」を違法アップロードした事実について、同年11月24日までに3名の違法アップロード者が書類送検された事件です。
2021年は、各著作権者がビットトレントでの違法アップロード・違法ダウンロードに対して積極的に法的措置を採っており、被害届や刑事告訴などの刑事事件化に向けても動き出しているものと思われます。
その一つの事例が本件でしょう。
2022年においても、逮捕者や書類送検により有罪になるなどの事例が増えてくるのではないかと予測しております。
トレントと逮捕については、以下の記事もご参照ください。
Share(シェア)の逮捕事例
P2P悪用の著作権侵害、全国一斉摘発 27人逮捕
全国47都道府県警は2月19~21日にかけ、P2Pファイル共有ソフトを悪用した著作権法違反の一斉摘発を行い、22日までに27人を逮捕した。
警察庁によると、全国で124カ所を捜索。漫画「Q.E.D.証明終了」をShareで違法公開していた疑いの秋田県横手市の歯科医師の男(37)などが摘発された。
一斉摘発は2009年から実施され、4回目。
ITmedia 2013,2,25 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1302/25/news061.html
ファイル共有ソフトの問題は、BitTorrent(ビットトレント)に限りません。また、この事件は一斉摘発がされたことでも話題になりました。
このケースでは、全国で27名が逮捕されており、その多くがShare(シェア)の使用でした。
著作権法が改正されたこともあり、今後も一斉摘発などの大規模捜査が行われる可能性もあるでしょう。
著作権法違反の逮捕事例と罰則・量刑相場・判例についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
リンク:著作権法違反の逮捕事例と罰則・量刑相場・判例について弁護士が解説!
トレントなどのファイル共有ソフトの違法アップロードと損害賠償請求
BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用して、漫画、映画やAV(アダルトビデオ)を違法にアップロードしてしまった場合、前述のように、発信者情報開示請求がなされ、これにより個人情報が開示されてしまうことがあります。
その後、著作権者からの損害賠償請求書面が届き、あせって弁護士に相談にくる事例も多いです。
著作権者からの損害賠償請求書面には、極めて高額な請求額が記載されていることも少なくないからです。
損害賠償の請求額が、数千万円になることや、1億円を超える請求がなされている事案もあります。
損害賠償請求の法的根拠
損害賠償請求の法的な根拠は、民法上の不法行為になります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用した著作権法違反の事案では、故意又は過失による不法行為が成立することにはほとんど争いがないでしょう。
損害賠償請求自体は妥当なものと扱われることが多いです。
ファイル共有ソフトの著作権侵害と損害額
ファイル共有ソフトの損害賠償で算出される額には一定のルールがあります。
不法行為で認められる損害額は、違法アップロードという不法行為と因果関係のある損害額です。具体的には、違法アップロードがなければ著作権者が得られただろう利益(逸失利益)が損害額になります。
もっとも、その算定は極めて困難であるため、著作権法では、損害額についての推定規定(著作権法114条1項)が定められております。
その損害額の推定の算定式は、以下のようになります。
著作権を侵害する公衆送信の受信数✖️利益の単価
実際の事件においては、著作権者からの損害賠償請求書面では、利益の単価ではなく、販売価格にダウンロード数をかけた金額を損害額として請求されることがほとんどです。
このような場合には、販売価格から経費等を引くべきであるなどの主張をして金額を下げる交渉をしていくことになります。
(損害の額の推定等)
第百十四条 著作権者等が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
また、上記推定規定によっても正確な損害額の立証が困難な事件も多く、このような場合には、裁判所が損害額を認定することができると定められています(著作権法114条の5)。
(相当な損害額の認定)
第百十四条の五 著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
著作権侵害の損害賠償の裁判例
そして、著作権侵害が問題になった判例を見てみても、請求金額に比して、認められる認容額は大幅に低くなる傾向にあるようです。
「東京地判令和2年2月14日」は、自社サイトにおいて漫画の違法アップロードがなされた事案です。
この事件では、原告が、原告の著作権(公衆送信権)を侵害したと主張して、被告会社に対し、民法709条及び著作権法114条1項に基づき、損害賠償金1億9324万3288円と遅延損害金を請求しましたが、裁判所は、219万2215円の損害のみを因果関係のある損害と認めました。
「東京地判平成28年4月21日」は、FC2動画でAV(アダルトビデオ)2本が違法にアップロードされた事案です。
原告が、被告に対し、原告は映像作品(AV(アダルトビデオ))の著作権を有するところ、被告が当該動画を動画共有サイトのサーバーにアップロードした行為が公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して、民法709条及び著作権法114条1項(主位的)又は3項(予備的)に基づき、損害賠償金1475万4090円を請求しましたが、裁判所は、動画1本について50万円、合計100万円と弁護士費用10万円の損害のみを因果関係のある損害と認めました。
このように、請求額と同じ額が必ずしも裁判で実際に命じられるわけではありません。
とはいえ、高を括ってはいけません。前述した逮捕や刑事罰のリスクがあることや、損害賠償額自体も決して軽くは無いことをしっかり受け止め、対処するようにしましょう。
トレントと裁判・判例については、以下の記事をご参照ください。
トレントの違法アップロードで「身に覚えがない」は通用するか?
ビットトレント(BitTorrent)は、データをダウンロードした場合、アップロードもされてしまう仕組みになっています。
一方で、BitTorrentを利用して他人の著作物をダウンロードした人のなかには、「自分はダウンロードはしたけど、アップロードまでされるとは知らなかった」と思う人もいるのではないでしょうか。
実際に、BitTorrentを利用している人は、目当てのファイルを手に入れたい、すなわちダウンロードしたいというだけで、そのファイルを第三者に提供したい、すなわちアップロードしたいとは考えていない場合が多いと思われます。
では、そのような主張は意味があるのでしょうか。
インストール時に警告されている場合
発信者情報開示請求は、その権利を侵害した人を特定するためにあります。
では、なぜ特定するかというと、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)や著作権侵害をした犯人を処罰して欲しいと刑事告訴などをするためとなります。
損害賠償にあたっては、権利の侵害に際して故意又は過失があることが必要となってきます。すなわち、アップロードまでされるとは知らなかったという場合に故意や過失がなかったということができるのかが問題となります。
故意とは、他人の権利の侵害に対する認識・予見のことをいいます。一方で過失とは、権利侵害の結果を認識・予見することが可能でありながら、認識・予見をしなかったことをいいます。
BitTorrentを利用してデータをダウンロードするためには、クライアントソフトウェアを利用しなくてはなりません。クライアントソフトウェアの中には、BitTorrentからデータをダウンロードした場合には、アップロードも同時にされてしまう仕組みになっていることを告知しているものもあります。
たとえばqBitTorrentでは、インストールの際にダウンロードと同時にアップロードが行われる旨が告知されるようになっています。
利用者は、「同意する」を押すよう求められますから、qBitTorrentの利用者は基本的に全員がアップロードまでされることを知っていた、故意があったといえそうです。
仮に漫然と利用していて通知自体を見ていなかったとしても、ダウンロードと同時にアップロードもされる仕組みになっているということを知る機会はあったでしょうから、少なくとも過失はあったといえるでしょう。
インストール時に警告されていない場合
では、このような警告がないクライアントソフトウェアを利用している場合はどうでしょうか。
クライアントソフトウェアの導入の段階で、通常はどのようにしてクライアントソフトウェアを導入するか、どうやってBitTorrentからデータをダウンロードするかを調べるはずです。
そうすると、その過程でBitTorrentはどのような仕組みになっているか知ることは可能であったということができます。実際にBitTorrentのクライアントソフトウェアの導入方法に関してまとめたWebサイトにおいては、BitTorrentのしくみに加えて、ダウンロードしたファイルが同時にアップロードされることが明示されているものがあります。
そのため、BitTorrentを利用すれば、アップロードまでしてしまう、つまり著作権侵害がありうることは、認識・予見可能であったということができます。そのため、少なくとも過失はあったといえそうです。
したがって、「自分はダウンロードはしたけど、アップロードまでされるとは知らなかった」「身に覚えがない」という主張は、ほとんどの場合は、意味がないということになりそうです。
発信者情報開示についての上記裁判例でも、以下のように判断しております。
被告は、ビットトレント利用者が、ビットトレントを利用してファイルをダウンロードした者が、同時にアップロード者となる仕組みを知っているとは限らず、本件契約者についても著作権侵害の故意又は過失を欠く可能性があるから、権利侵害が明らかとはいえない、あるいは正当な理由があるとはいえないと主張する。
しかしながら、プロバイダ責任制限法4条1項1号の文言に照らし、原告が本件契約者の故意、過失といった主観的要素を立証する必要があるとはいえない。また、証拠(甲12の1、2、甲13、16)によれば、ビットトレントを利用してデータをダウンロードすれば、他のビットトレント利用者の要求に応じて自動的に当該データを送信可能な状態になることは、インターネット上で説明されていることが認められ、前記1(2)で認定したところによれば、本件契約者は、本件IPアドレスの端末において、本件データ以外にも、多数の電子ファイルを公衆に送信可能な状態にしていたことが認められるのに対し、被告は、本件契約者に故意、過失が存しない可能性がある旨を抽象的に主張するにとどまるから、権利侵害の明白性、あるいは開示を受けるべき正当な理由は否定されない。
トレントを使用して開示請求の意見照会書が届いたら示談をすべき
BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用し、ファイルのアップロ ードを行っていると、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届くこ とがあります。
結論から言えば、トレントを使用して、AV、音楽、漫画などの作品をダウンロードしてしまった場合には、意見紹介書に同意をして、早期に示談をすべきです。
以下、その理由を説明します。
意見照会書とは
発信者情報開示に係る意見照会書とは、発信者情報開示請求を受けたプロバイダなどが、発信者情報を開示するかどうかの意見を発信者(投稿者)に確認をするための書面です。
プロバイダ責任制限法4条2項は、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならないと定めており、同条項に基づいて、発信者の意見を聞くための書面が意見照会書になります。
同条項は、発信者情報の開示請求への対応に当たって、プライバシーや表現の自由、通信の秘密等、発信者の権利利益が不当に侵害されることのないよう配慮するため、発信者の意見を聞く規定を設けております。
(発信者情報の開示請求等)
第四条
2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
では、実際に発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら、どうすれば良いでしょうか?
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときの3つの対処法
プロバイダから意見照会書が届いたときの対処法は、以下の3つの方法があります。
- 無視する
- 拒否の回答をする
- 同意の回答をする
無視する
「無視する」は推奨しません。
無視しても開示がなされる可能性がある以上、拒否か同意の回答をすべきでしょう。
拒否の回答をする
権利侵害性など、発信者情報開示請求の要件が認められない可能性がある場合には、「拒否の回答をする」ことも有効です。この場合には、要件を満たさないことをしっかりと主張・立証していくことにより、開示がなされないことがあるからです。
同意の回答をする
「同意の回答をする」場合とは、権利侵害性など、発信者情報開示請求の要件が認められる可能性が高い場合です。
なお近時、権利者が株式会社クロスワープの提供する調査ツール「P2P Finder」により調査を行い、当該調査結果を元に発信者情報開示請求を行う事例が増加しています。
「P2P Finder」の調査結果に関しては、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会において信頼性があると認定されており、意見照会に対して無視や不同意の対応をしても、プロバイダの判断により個人情報が開示される可能性が非常に高いものとなっています。
権利者が民事訴訟を刑事告訴を選択した場合、金銭的にも社会的にも大きな不利益を被るおそれがあります。
ですので、このような場合には、弁護士を通じて速やかにプロバイダと権利者に対して謝意を示し、示談によって早期の解決を図らねばなりません。
また前述したように、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用した著作権法違反の事案では、逮捕されて刑事処罰を受ける可能性があります。
刑事処罰を避けるために、早めに同意をして、相手方と示談をすることが必要になる場合があります。
また、開示がなされて多額の損害賠償請求がなされる可能性もありますので、早期に和解交渉を進めることにより、和解金額を低く抑えられることもあります。
発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときの対応方法については、以下の記事もご参照ください。
トレントを使用して開示請求の意見照会書が届いたら示談をすべき
トレントを使用して開示請求の意見紹介書が届いた場合には、①無視する、②拒否する、③同意するという3つの選択肢があります。
しかし、無視しても、拒否しても、違法な著作権侵害行為をしている以上、開示が認められて、あなたの個人情報が特定される可能性が高いです。
その場合、著作権者としては、開示請求にかかった弁護士費用等も上乗せして請求をしたいと考えるでしょう。
他方で、早期に開示請求に同意をして、示談をしてくれるのであれば、訴訟での請求金額よりも和解する金額を減額してくれる可能性があります。
実際に、早期の示談対応により、低額の示談に成功している事例も多いです。
そのため、トレントを使用して開示請求の意見照会書が届いたら、早急に示談をすべきです。
トレントと示談・示談金については、以下の記事もご参照ください。
ファイル共有ソフトの違法アップロードについてのまとめ
以上、BitTorrent(ビットトレント)を中心に、ファイル共有ソフトの違法アップロード について解説してきました。著作権侵害、発信者情報開示請求、逮捕事例、損害賠償請求 と損害額……等々、基礎知識から実際にあった事例まで網羅的に取り上げたので、ぜひ参 考にしていただけますと幸いです。
ファイル共有ソフトを使用して、映画、音楽、漫画、AV(アダルトビデオ)を違法アップロードしてしまい、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた、損害賠償請求書面が届いたケースが増加しています。
著作権者側もネットの発達による著作権侵害には敏感になっているようで、厳格な対応をしているようです。
実際に、ファイル共有ソフトを利用した違法アップロードで逮捕されて刑事処罰されているケースもあります。
また、民事での損害賠償請求も極めて高額な金額が請求されてしまうこともあります。
BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトは、違法ダウンロードをすると、違法アップロードもしてしまう仕組みになっているため、著作権侵害をしないよう注意して使用してください。
著作権侵害行為をしてしまった場合には、できる限りすみやかに、弁護士に相談するのがいいでしょう。
グラディアトル法律事務所では、LINEでの無料相談も受け付けています。
以下のリンクからLINE相談ページにとび、簡単に相談できますので、まずは、お気軽にご相談ください。