インターネット最大の匿名掲示板群とも評される「2ちゃんねる(5ちゃんねる)」。
その匿名性と「ハッキング」から「今晩のおかず」までカバーするその規模の大きさは、幅広く有用な情報を得られるポテンシャルを有している反面、違法な誹謗中傷や名誉毀損が広く拡散するリスクを秘めています。
そこで、今回は2ちゃんねる(2ch)と5ちゃんねる(5ch)の書込みの削除依頼方法及び犯人特定のための発信者情報開示請求の方法について弁護士が解説いたします。
2ちゃんねる?5ちゃんねる?書込み削除のためのその違い
まず、いわゆる「2ちゃんねる(2ch)」は1999年に誕生した巨大掲示板群です。略称として「にちゃん」などと呼ばれ長らく親しまれてきましたが、2014年に管理人まわりでトラブルが発生し、元管理人である西村博之氏が新たに2ちゃんねるを開設。世に「2ちゃんねる(2ch)」が2つ存在することになりました。
その後、両者は元々あった2ちゃんねるを「2ch.net」、西村博之氏が新たに開設した2ちゃんねるを「2ch.sc」として区別して呼ばれるようになりました。そして、2017年に2ch.net(元々あった2ちゃんねる)が名称を変更し、「5ちゃんねる(5ch)」と名乗るようになりました。
こうして、2021年現在では巨大掲示板群として「5ちゃんねる(5ch)」と「2ちゃんねる(2ch)」が存在することとなったのです。言うなれば、5ちゃんねるは元祖2ちゃんねるです。しかし、元祖2ちゃんねるを開設した管理人が今運営しているのは2ちゃんねる(2ch.sc)なのです。
やっぱり元祖の方が規模が大きいかと思われがちですが、それは違います。
なぜなら、2ちゃんねる(2ch.sc)は5ちゃんねるのスレッド・書込みをそのまま転載しているからです。そのため、両者共に巨大掲示板群としてインターネット上に存在し続けています。
また、この転載している事情から、5ちゃんねるで書込み削除を行ったとしても2ちゃんねる(2ch.sc)には転載された書込みが残っているため、2度削除しなければならないという事態になっています。これについては後述します。
5ちゃんねると2ちゃんねるの運営会社は?
5ちゃんねる(5ch)の運営会社は、フィリピン法人であるロキテクノロジーインク(Loki Technology,inc.)です。
2ちゃんねる(2ch)の運営会社は、シンガポール法人であるパケットモンスターインク(PACKET MONSTER INC. )です。
削除の仮処分の申立てや、発信者情報開示請求の仮処分の申立ての際には、資格証明としての登記の取得が必要ですが、いずれも海外法人であるため、取得が困難です。
日本の業者や販売を行なっている弁護士に依頼をして登記を取得する方法が一般的です。
削除依頼方法:5ちゃんねる・2ちゃんねる共通
ここでは、5ちゃんねる(5ch)と2ちゃんねる(2ch)の共通の削除方法について解説します。
もっとも、5ちゃんねる(5ch)では、メールで削除要請ができますので、原則としてメールでの削除依頼をすることになります。このメールでの削除依頼は後述します。
大きく分けて2種類の共通の削除方法があります。一つ目は削除専用スレッドを用いた削除依頼、もう一つは裁判所を通じた削除の仮処分手続きです。
削除専用スレッドを用いた方法
削除専用スレッドを用いた削除依頼の方法について紹介します。
5ちゃんねる及び2ちゃんねる(2ch.sc)では、削除依頼専用の掲示板が存在します。運営に対して削除を依頼するときには、その掲示板・スレッドに削除依頼を書き込む形になります。
削除依頼専用の掲示板は、通常の削除依頼をする「削除整理板」か重要事項について削除依頼をする「削除要請板」の2種類があります。
削除整理板:
5ちゃんねる https://qb5.5ch.net/saku/index2.html
2ちゃんねる http://macaron.2ch.sc/saku/index2.html
削除要請板:
5ちゃんねる https://qb5.5ch.net/saku2ch/index2.html
2ちゃんねる http://macaron.2ch.sc/saku2/index2.html
自分の削除したい書込みがどちらにあたるかは、「削除要請板」のトップページに判断基準が掲載されているのでそこで判断できます。
具体的には、削除要請版の対象は、個人情報・電話番号、差別・蔑視、荒らし削除、法人や団体の場合などが重要事項の削除にあたり、その対象とされています。
「警察に相談中」「裁判所に削除命令を受けている」など、5ちゃんねると2ちゃんねる(2ch.sc)では削除要請板にあたるかどうかが微妙に異なるため、よく判断基準を見て判断しましょう。
削除整理板及び削除要請板のどちらに書き込むかを判断した上で、その後の手順としては以下のようになります。
まずは削除整理版についてです。
① 削除専用掲示板のスレッド一覧を開く
② 単語検索(ctrl+F)等で削除したい書込みがあった掲示板用の削除専用スレッドを見つける
③ 当該スレッドにて、必要事項を書き込む
以上になります。なお、以上の手順を用いず削除整理板下部にある削除依頼フォームを用いても削除依頼できます。
「必要事項」についてですが、
・削除対象URL
・依頼の理由(削除理由)
の2つで十分なようです。
依頼の理由(削除理由)については、削除して欲しい理由を書くよりも、削除対象にあたる理由を書くと削除が認められる可能性が高まるようです。必死で切実な想いを書いた削除依頼は通らず、「削除理由:7. エロ・下品」とだけ書いた削除依頼が数多く認められています。
2ちゃんねる(2ch)の削除ガイドライン(http://info.2ch.sc/guide/adv.html#saku_guide)の4~9のどれにあたるのか、その中でもどのような事項にあたるのか、数字とガイドラインの文言を引用しながら依頼をするといいでしょう。
5ちゃんねる(5ch)の削除ガイドラインについては後述します。
次に削除要請板についてですが、こちらは削除依頼フォームを通じた削除依頼のみを受け付けているようです。
該当する重要事項対象にチェックを入れ、必要事項を記入していきます。
裁判所を通じた削除方法:仮処分の手続き
裁判所を通じた削除の仮処分手続きについて紹介します。
裁判所に対して申立てを行い、名誉権やプライバシー権といった権利が侵害されていることなどを説明することで、裁判所に「削除しなさい」という命令を出してもらうのです。
これは裁判所の手続きを経て行われるので、法的拘束力が生じます。また、5ちゃんねる2ちゃんねる(2ch.sc)共に裁判所による削除手続きについては削除ガイドラインの中で言及があり、「9. 裁判所の決定・判決 判決・仮処分の決定など 裁判所より削除の判断が出た書き込みは削除対象になります。」と述べています(両サイト同一文言です)。
参考:
5ch削除ガイドライン https://qb5.5ch.net/saku2ch/
2ch削除ガイドライン http://info.2ch.sc/guide/adv.html#saku_guide
裁判所手続なんて大事な…と抵抗感を覚える方も少なくないと思いますが、権利侵害性が明らかな場合には仮処分手続が削除の可能性が最も高くスムーズです。そういった権利の侵害の度合いが大きい場合、放置すればするほどその被害も拡大していきます。
以上の手続きは本人によっても不可能ではないですが、専門家ではない場合裁判所にどんな書面を準備したら良いのか、書面の書き方など手間取る可能性が高く、そのうちにも名誉毀損等の被害は拡大していきます。そこで、裁判所の仮処分の方法によって削除を求める場合には、法律事務所や弁護士に相談・依頼することが基本となるでしょう。
ただ、裁判所が削除の仮処分決定を出したとしても、5ch,2ch側が削除に応じてくれないリスクもあります。リスクも含めてネット上の誹謗中傷や削除・発信者情報開示に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
5ちゃんねるのメールでの削除依頼方法
ここでは、5ちゃんねる(5ch)特有の削除依頼方法であるメールによる削除依頼について解説します。
5ちゃんねる(5ch)の削除ガイドラインにて掲げられているものは2つです。
① メールによる削除依頼
② 5ちゃんねるが認めた弁護士からの請求
以上2つについて紹介していきます。
メールによる削除依頼
まず、①メールによる削除依頼については以下の項目について記載し、運営(meiyokison@5ch.net)に送信します。
件名:削除申し立て
内容:URL
レス番号:消したい書込みのレス番号
削除理由:書込みが削除対象となる理由
この際、メールには「理由を根拠付ける資料」「本人確認のための資料」も添付せよとガイドラインには記載があります。なお、「理由を根拠付ける資料」については任意のようで、なければないで問題はないようです。
メールに記載された理由と添付された資料を元に運営が削除の是非を判断し、削除対象と判断されれば、無事書込みが削除されることとなります。
「削除理由」については、その書込みがいかに酷いかを情感たっぷりに主観的に書くのではなく、ガイドラインに公開された削除判断基準に照らして客観的かつ簡潔に書くべきでしょう。
ガイドラインを参照すると、他人の権利を侵害するものを削除対象としており、具体的には以下のものが保護されるべき権利(利益)として掲げられています。
名誉:個人ないし法人の社会的評価を低下させる事実を摘示するもの
プライバシー:人の名前(イニシャル等であっても、個人の特定)、住所、電話番号等の組み合わせで、個人のプライバシーを侵害していると判断できるもの。
平穏に生活する利益:他人に危害を加えることを予告するもの。
社会に害悪が生じる現実的危険性がある情報:例えば、爆弾を製造する方法、薬物の売買をうかがわせる情報
最後の項目は権利というには趣が異なりそうですが、社会全体の利益を守るために削除対象として掲げられているものと考えられます。
ガイドライン上で明記はされていませんが、これらはあくまで例であると考えられます。したがって、肖像権や著作権侵害などガイドライン上掲げられていない権利侵害でも削除対象にあたり、削除される可能性はあるでしょう。
5ちゃんねるが認めた弁護士からの請求
次に、②5ちゃんねるが認めた弁護士からの請求について紹介します。
削除ガイドラインによれば、「5ちゃんねるが認めた弁護士」とは「5ちゃんねるが,過去に受けた請求から、表現の自由を配慮したリーガルマインドを持った弁護士と認めた者」のことを言います。
このような者からの削除請求については、正当な理由があるものについて原則対応するものとされています。
これまで紹介した方法では、表現の自由が守られることが原則であり、権利侵害のあるものについて例外的に削除対象となるルールのもと動いています。
したがって、5ちゃんねるが認めた弁護士の削除請求に置いては原則と例外が入れ替わった形となるため、通常よりも削除請求が認められる可能性が高まると言えるでしょう。
5ちゃんねると2ちゃんねるの削除依頼における特性の違い
5ちゃんねる(5ch)ではメールによる運営への削除依頼が認められていましたが、2ちゃんねる(2ch)ではそのような方法は認められていません。削除専用スレッドのみであって、この依頼は全て公開です。
したがって、2ちゃんねる(2ch.sc)の削除依頼は全て公開されることになります。ですので、削除依頼を通したいがために詳細に個人情報等を書き込んでしまうと二次被害が出るおそれがあります。上述しましたが、削除依頼を通すためには主観的な記述はあまり意味を成しません。むやみに詳細を書かないようにしましょう。
一方で、5ちゃんねるの削除依頼はメールによる削除依頼について非公開になります。削除専用スレッドについては2ちゃんねる(2ch.sc)同様公開ですので、削除依頼に公開されたくない情報を書く場合にはメールによる削除依頼をする方が無難でしょう。
5ch・2chの削除依頼をするにあたっての注意点
5ちゃんねる及び2ちゃんねる(2ch.sc)に削除依頼をするにあたっての注意点を紹介します。
まず、法人・団体の削除依頼はどちらも原則放置の体制を取っていることです。したがって、法人・団体が5ちゃんねる及び2ちゃんねる(2ch.sc)の書込みを削除したい場合は、5ちゃんねるが認めた弁護士に頼むか、裁判所の仮処分手続の方法を取るのがベターだと考えられます。
次に、5ちゃんねるへの書込みの特殊事情についてです。
実は、5ちゃんへの書込みは2ちゃん(2ch.sc)に転載されるシステムになっています。よって、5ちゃんねるへ書き込まれた書込みを削除する場合には、5ちゃんねるの削除と2ちゃんねる(2ch.sc)の削除の両方をやらなければ誹謗中傷等の対処法としては実効性がなくなってしまいます。
では、その書込みが5ちゃんねるのものか、2ちゃんねる(2ch.sc)のものかの判別はどうすればいいのでしょうか。2ちゃんねる(2ch.sc)における書込みの判別方法を紹介します。
5ちゃんねる及び2ちゃんねる(2ch.sc)の利用者なら当然ご存知のように、掲示板に書込みを行う際には原則としてIDが付与されます。レス番号、名前、書込み日時と並んでいる英数字の羅列ですね。その末尾に「.net」がついているかどうかが判別のキーとなります。
IDにある英数字の末尾が「.net」となっていなければ2ちゃんねる(2ch.sc)の書込みとなり、「.net」がついていれば5ちゃんねるの書込みが2ちゃんねる(2ch.sc)に転載されたものとなります。
したがって、2ちゃんねる(2ch.sc)で書込みを確認し、ID末尾に「.net」がついている場合には当該書込みが5ちゃんねると2ちゃんねる(2ch.sc)の2箇所に存在するため、両サイト対して削除の対処をする必要があります。
5ちゃんねる・2ちゃんねるの犯人特定・発信者情報開示請求
今まで書込みの削除について紹介してきましたが、ここからは誹謗中傷等の書き込みをした犯人を特定するための発信者情報開示請求と呼ばれる手法について解説します。
なぜ5ch・2chへの書込み者を特定するのか
書込みの削除という対処方法があり、被害を発生させているのは書込みなのになぜわざわざ犯人探しをするのでしょうか。
理由はいくつかありますが、最大の目的は再発防止です。
書込みが消えても、同内容の書込みが繰り返しなされてしまっては誹謗中傷等の被害は再発してしまいます。それをまた削除してもまた書き込まれ…のいたちごっこになってしまいます。そこで、書き込んだ人間を特定することで、その犯人への直接的な対処をし、被害を食い止めるのです。対症療法よりも根治を目指すということですね。
書き込んだ人間が誰か分かれば、その書込みが名誉毀損に当たれば名誉毀損罪で刑事告訴することも可能ですし、その書き込みにより生じた何らかの損害賠償を請求することも可能です。
こうした対処により最終的に逮捕、損害賠償に至ることもありますが、何より厳格な法的措置に出ていることを相手に伝えることで同内容の書込みを繰り返すことへの抑止効果が期待できます。
書込み自体を削除すれば事足りる場合も少なくないですが、書込みが繰り返される場合や当該書き込みによる被害が甚大な場合は、発信者情報開示の検討していくべきでしょう。
具体的な特定方法
まず、発信者情報を特定したいと思っても、上述の削除のように5ちゃんねる及び2ちゃんねる(2ch.sc)において情報開示依頼フォームなどは存在しません。仮にメール等でこの書込みをした人物の発信者情報を開示してほしいなどと求めても基本的に開示してくれることはないでしょう。
そこで、書込み者の特定にあたっては、削除の仮処分と同様に裁判所の手続きを用いることが一般的です。
5ちゃんねるないし2ちゃんねる(2ch.sc)に対して、まずIPアドレスとタイムスタンプの開示を求める仮処分手続きを行い、次に開示されたIPアドレスを基にインターネットプロバイダを特定し、当該プロバイダに対してプロバイダの保有する書き込んだ者の名前や住所を開示してもらうための訴訟を提起します。
発信者情報開示の仮処分では、5ちゃんねるも2ちゃんねるも運営会社が海外法人であるため、登記取得などに別途費用がかかります。
以上の手続きを経て、発信者の情報が開示されたら刑事告訴やまた別の訴訟を提起して損害賠償請求をしていくことも可能になります。
また訴訟等は提起せず、直接示談交渉をして損害を請求したりまた謝罪を求めたりなどの展開も考えられるでしょう。
まとめ
5ちゃんねると2ちゃんねる(2ch.sc)の書込みについて、削除や犯人特定する方法の紹介は以上になります。
リアルとインターネットの距離が格段に近づいている現代社会において、度を過ぎた誹謗中傷やプライバシーを暴露する書込みを放置することはとてもリスクです。かつ、その距離の接近から裁判所による削除や開示も認められるケースが増えています。決して泣き寝入りする必要はないので、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
当事務所ではこうした誹謗中傷に対する案件を数多く取り扱っています。
通常の民事事件とはまた異なるクセの強い法的措置になりますので、経験豊富な法律事務所に依頼することを強くオススメします。ぜひとも弊所もご検討に加えて頂ければ幸いです。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました。