同性カップル・同性間の不貞慰謝料を認めた判例を弁護士が解説!

令和3年(2021年)3月17日には、同性カップルの一方による不貞慰謝料についての最高裁判決が出ました。

この最高裁判決の内容は、同性カップルの一方が不倫をした場合にも、もう一方は不倫をしたパートナーに対して慰謝料を請求できるというものです。

また、令和3年(2021年)3月17日、東京地裁は、異性間の夫婦の妻が女性と不倫をした事件について、夫から不貞相手の女性に対する慰謝料請求を認めました

前者は、同性カップルの一方の他方に対する不貞を理由とした慰謝料請求を認めた判例です。

後者は、夫婦の一方が同性と不貞をしたことを理由に慰謝料請求を認めた判例です。

本記事では、上記判例を解説しつつ、同性と不貞慰謝料について解説をしていきます。

同性と不貞についての過去の傾向

そもそもの前提として、結婚している夫婦(婚姻関係にある異性愛カップル)において、片方が不倫をしている場合には、もう片方が、不倫をしている配偶者と不倫相手に不貞慰謝料(民法709条、770条1項)を請求できます。

この場合、不倫・不貞により、「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」「婚姻による夫婦共同生活の維持という権利」が侵害されたことを理由に不法行為の損害賠償を請求します。

そして、男女間においては、婚姻関係類似の内縁関係・事実婚関係についても、内縁は「婚姻に準ずる関係」であるとして、内縁関係(事実婚関係)の者による不倫の場合にも不貞慰謝料請求が認められてきました(昭和33年4月11日最高裁判決)

現行婚姻制度下では、これまで法律上、男女間での婚姻しか認められてこなかったので、内縁関係は当然に男女間を前提とするものだと考えられてきました。

そのため、同性カップルについては、「不貞行為」の事実が生じないことを理由に、不貞慰謝料請求は認められないと解されてきました

同性カップルは、日本の現行婚姻制度は異性愛者(夫と妻)による結婚しか許されないとする政府解釈の下に、同性婚の法整備もされず、事実婚や内縁状態・交際状態を強いられてきました。

それに対抗するように、左記の不貞慰謝料請求権の存在が認められる裁判例が現れたり、現在係属中の「すべての人に結婚の自由を」訴訟(別名:同性婚訴訟)が展開されたりしています。

また、社会的にみても、国際的には、同性婚の導入など同性パートナーの法的権利を認める動きが加速しています。日本でも、パートナーシップ制度を導入した地方自治体が、43%以上にものぼり(2022年1月現在)、地方自治体や司法から同性カップルの権利保障を進める動きがみられます。

そのような状況下で出た今回の判決は、どのようなものなのでしょうか?

まずは、今回紹介する二つの判決の争点となる法律上の問題点について整理してみます。

同性と不貞慰謝料の問題点

不貞慰謝料請求の法的な根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法710条・709条)です。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法

不法行為に基づく損害賠償請求の要件は、以下の通りです。

①故意又は過失によって

②法律上保護される利益を

③侵害したことに

④よって生じた(因果関係)

⑤損害があること

同性カップルの一方に対する不貞慰謝料請求や、夫婦の一方が同棲と不倫した場合の慰謝料請求では、以下の点が問題となります。

争点1[法律上保護される利益があるか(要件②)]

争点2[故意又は過失によって、法的利益を侵害したか(要件①③)]

争点1の法律上保護される利益については、異性間の婚姻関係この場合、「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」「婚姻による夫婦共同生活の維持という権利」がこれにあたります。

同性カップルの不貞については、内縁関係の場合と同様に、婚姻に類する関係として、法律上保護される利益があるかどうかが問題になります。

他方で、夫婦や同性カップルの一方が同棲と不倫した場合には、争点2[故意又は過失によって、法的利益を侵害したか(要件①③)]が問題になります。

男女間の不倫関係では、性行為の有無が不貞行為の大きな基準になるところ、同性間の性的関係を不貞行為ないしはそれに準ずるものとして不法行為に該当するのかどうかという問題意識があるからです。

同性間の不貞についての判例(東京地判令和3年2月16日)

ここでは、東京地判令和3年2月16日を紹介します。

この判例は、夫婦の妻の方が女性と不倫をした事案について、同性カップルの性的行為も「不貞行為」に当たるとして不貞慰謝料請求を認めました。

同性間の不貞慰謝料を認めた東京地判令和3年2月16日の関係図

この判例の事案の概要は以下のとおりです。

  • 夫X(原告)は、同性愛に偏見はもっておらず、妻AとB(被告)が仲良く付き合うのであれば特に問題はないと考えていた。
  • 妻AとB(被告)は、女性同士の出会い系サイトで出会った。
  • 二人で外出したり、食事したり、映画を見るようになった。
  • インターネットカフェなどで、お互いの首筋にキス、胸や下半身をなめたり,陰部を直接触るなどの性的行為を行った。
  • ラブホテルで性的行為を行った。

この判例は、異性間で法律上の婚姻関係にある夫婦の妻が同棲である女性と不倫をしたという事案です。

そのため、この夫婦間の「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」や「婚姻による夫婦共同生活の維持という権利」が法律上保護される利益であることに争いはありません。

ここでの争点は、女性同士、同性間の性的関係が不貞行為、不法行為に該当するのかどうかという点です。

この点について、判例は、不貞行為を婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為と定義し、性行為(陰茎の挿入行為)がなくとも、夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為が存在すればこれにあたるとしました。

そして、このことは、同性間の性行為や性交類似行為においても同様に妥当するとしています。

その上で、本件の妻AとB(被告)との間の行為は、夫X(原告)と妻Aの婚姻共同生活の平穏を害しかねない性行為類似行為であるとして、損害賠償請求を認めました

3 争点(1)(不法行為の成否)
(1)不貞行為とは,端的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことであるが,これに限らず,婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為と解するのが相当であり,必ずしも,性行為(陰茎の挿入行為)の存在が不可欠であるとは解されず,夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為が存在すれば,これに該当するものと解するのが相当である。
 そして,同性同士の間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として,既存の夫婦共同生活が離婚の危機にさらされたり,離婚に至らないまでも形骸化するなど,婚姻共同生活の平穏が害される事態もまた想定されるところである。

(2)本件各行為は,前記2のとおり,被告がAの意思に反して行ったものとまでは認められないが,いずれも前記1(2)の本件行為1と同様の態様で行われた(被告本人3~7,16頁)とのことであるから,原告とAの婚姻共同生活の平穏を害しかねない性行為類似行為であるといえ,不貞行為に該当する

(3)なお,原告は,Aが同性愛について関心を有しており,同性である被告と親しく付き合うこと自体については許容していたが,本件各行為のような性的行為を行うことまでは許容していなかった(甲11,原告本人2頁)以上,被告がAに対し本件各行為を行ったことについて,原告に対する不法行為が成立する。

東京地判令和3年2月16日

以上のように、東京地判令和3年2月16日は、同性間の不倫についても、性行為や性交類似行為があれば、不貞行為に該当し、慰謝料等の損害賠償請求が認められると判断しました。

なお、本件では、X・Aの夫婦が離婚をしていないことや、Xが性行為までは認めていないものの親しく付き合うことは認めていたことなどから、慰謝料10万円、弁護士費用1万円を損害として認めました。

同性カップルの不貞慰謝料請求判例(最判令和3年3月17日)

最判令和3年3月17日は、同性カップルの一方が不倫をした場合に、他方に対する慰謝料請求を認めた判例です。

最高裁は、不貞をした被告からの上告を棄却し、110万円の損害賠償を認め一審、二審の判決が確定しました。

一審:令和元年9月18日 宇都宮地方裁判所真岡支部

二審:令和2年3月4日 東京高等裁判所

同性カップルの不定慰謝料請求 最判令和3年3月17日

この判例の第一審では、原告Xは、同性カップルの相手方である被告Aだけではなく、被告Aの不貞相手である被告Bに対しても慰謝料等の損害賠償請求をしております。

そして、被告Aに対する請求は認められたものの、被告Bに対する請求は否定されました

しかし、本件での原告は、「離婚慰謝料」を請求しており、「不貞慰謝料」を請求しなかったという特殊性があります。

「不貞慰謝料」ではなく、「離婚慰謝料」類似の法的構成で損害賠償請求をしたため、不貞慰謝料請求とは異なる判断枠組み(最判平成31年2月19日が採用した「特段の事情」の要件)で損害賠償の可否を判断されてしまったのです。

この事情については後述しますが、被告Bへの請求が否定されたからといって、同性カップルの不貞相手に対して慰謝料請求が認められないとは考えないでください

原告が離婚慰謝料ではなく、不貞慰謝料を請求した場合には、被告Aのみならず、被告Bに対する請求も認められると考えられます。詳細な理由については後述します。

同性カップルの不貞慰謝料請求図

同性カップル不貞事案の概要

本件は、原告Xと被告Aの女性同士の同性カップルにおいて、被告Aと男性B(性同一性障害と主張)との不倫を原因として、原告Xが被告Aと被告Bに対して、離婚慰謝料類似の構成により、慰謝料等の損害賠償請求をした事件です。

【原告Xと被告Aの関係】

  • 7年間同居で共同生活
  • ニューヨーク州で婚姻登録証明書を出し、挙式
  • 日本でも結婚式を挙げ、披露宴も開催し、親しい人たちには明らかに(カミングアウト)していた
  • 2人で育児するために、第三者からの精子提供を受けたり、マンションの購入を進めていた

【被告Aと被告Bとの不貞】

  • 被告Bは、被告Aの人工授精のための精子提供者として被告Aと知り合った
  • 被告Aと被告Bは、複数回、キスやペッティング(挿入を伴わない性行為)を行った

【原告Xと被告Aの関係解消】

  • 原告X、被告A、被告Bは、話し合いをした
  • 被告Aは、原告Xのことも被告Bのことも好きで選べない
  • 被告Bは、2番目でもやむを得ない。原告Xと被告Aと二人で話し合って決めて欲しい
  • その後、被告Aは、原告Xではなく被告Bを選び、原告Xとの関係が解消された

同性カップルの一方への不貞慰謝料請求(X→A)

前述した判例(東京地判令和3年2月16日)では、異性間の法律上の夫婦の一方が同性の相手と不倫をした事例でしたので、争点1[法律上保護される利益があるか(要件②)]という要件は問題にはなりませんでした。

しかし、本件では、同性カップルの一方が不倫をした事案ですので、同性カップルが男女間の内縁・事実婚カップルと同様に不貞行為に対して[法律上保護される利益があるか(要件②)]という争点が生じます。

同性カップルに不貞から保護される利益があるか

この点について、最判令和3年3月17日は、同性カップルにおいても、内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められると判断しました。

その理由として、国際的にみて同性カップルに婚姻や婚姻に準ずる法的なサポートが整備されていること、国内でも自治体レベルではパートナーシップ制度を採用する自治体が増えてきていることが指摘されています。

内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される(最高裁判所昭和33年4月11日判決・民集12巻5号789頁参照)ところ,現在の我が国においては,法律上男女間での婚姻しか認められていないことから,これまでの判例・学説上も,内縁関係は当然に男女間を前提とするものと解されてきたところである。
 しかしながら,近時,価値観や生活形態が多様化し,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても,同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし,法律上の婚姻までは認めないとしても,同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること,日本国内においても,このような制度を採用する地方自治体が現れてきていること(甲13)は,公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると,同性のカップルであっても,その実態に応じて,一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて,法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に,およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また,憲法24条1項が「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し」としているのも,憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず,およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから,前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。
 そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては,それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ,不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である(なお,現行法上,婚姻が男女間に限られていることからすると,婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は,少なくとも現時点においては,飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり,同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。)。

宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日(最判令和3年3月17日の第一審)

その上で、以下のような事情がある本件では、男女間の婚姻と何ら変わらない実態を有しているということができ,内縁関係と同視できる生活関係にあったとして、内縁関係に準じた法的保護に値する利益を認めました

  • 7年間同居で共同生活
  • ニューヨーク州で婚姻登録証明書を出し、挙式
  • 日本でも結婚式を挙げ、披露宴も開催し、親しい人たちには明らかに(カミングアウト)していた
  • 2人で育児するために、第三者からの精子提供を受けたり、マンションの購入を進めていた

不貞行為・不法行為があったか

東京地判令和3年2月16日では、妻が女性と不倫をしたという事案でした。

本件では、女性の同性カップルの被告Aの不倫相手である被告Bは男性です。もっとも、被告Bは、性同一性障害、男性機能障害(勃起不能)であったため、挿入を伴う性行為は無かったと主張ました。

この点について、本判決は、数日間共に過ごし、複数回にわたってキスやペッティング(挿入なしの性行為)をしていたことからすれば、内縁関係に準じて認められる原告の法的保護に値する利益を侵害する不貞行為に該当すると判断しました。

挿入を伴う性行為は行っていないという被告らの主張を容れるとしても,不貞行為は,挿入を伴う性行為がその典型例ではあるものの,前記2(1)のとおり,内縁関係に準じて認められる原告の法的保護に値する利益が侵害されているか否かが本件の不法行為の成否を左右すると解する以上,必ずしも挿入を伴う性行為を不貞行為の不可欠な要素とするものではないと解するのが相当であり,かかる解釈に立つ以上,被告らが被告B宅で数日間を共にし,被告Bも認めるキスやペッティング(挿入を除いた性行為)をしたことだけであっても,前記の利益を侵害するものとして不貞行為に当たることは明らかである。

宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日(最判令和3年3月17日の第一審)

同性カップルの不貞相手への慰謝料請求(離婚慰謝料類似の請求をしたため否定)

本判決(最判令和3年3月17日)の第一審である、宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日は、同性カップルの不貞相手である被告Bに対する慰謝料請求を否定しました。

この点について原告が控訴しなかったため、この部分は第一審で確定してしまいました。

しかし、一般論として、同性カップルの不貞相手への慰謝料請求が認められないという話ではありません。グラディアトル法律事務所では、本判決の趣旨からすれば、同性カップルの不貞相手に対する慰謝料請求も認められうると考えています

なぜなら、本判決の原告は、不貞相手である被告Bに対して、「不貞慰謝料」ではなく「離婚慰謝料」類似の構成で請求をしたからです。

不倫をした相手方への請求は、通常不貞慰謝料として請求をします。

この点について、時効との関係で不貞慰謝料請求ができず、やむを得ず離婚慰謝料請求をした事案があり、その事案において、最判平成31年2月19日は、「特段の事情」が無い限り、離婚慰謝料を請求できないと判示しました。

この判決では、不貞についての不法行為責任を負うべき場合があることは離婚慰謝料とは別枠だとも指摘しています。

夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

最判平成31年2月19日

本判決においても、なぜか原告が離婚慰謝料類似の損害賠償請求の構成を採用したため、最判平成31年判決の枠組みにより、特段の事情が必要とされ、本件では特段の事情がないとして、原告Xの被告Bに対する慰謝料請求が否定されました。

この点については、本判決でも以下のように言及されている。

平成31年判決も指摘するとおり,不貞行為自体を理由とする不法行為責任を負うべき場合があるとしても,本件において,被告らが原告に対し,本件における慰謝料の根拠(不貞慰謝料か離婚慰謝料か)について求釈明をしたのに対し,原告は,原告準備書面2において離婚慰謝料に係る前記特段の事情があるとの回答しかしておらず,同準備書面3においても離婚についての精神的苦痛を求めるとしていることに照らすと,原告がいわゆる不貞慰謝料を請求しているとは解されない

宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日(最判令和3年3月17日の第一審)

以上からすれば、本判決と同様の事例でも、原告Xが同性カップルの不貞相手である被告Bに対して、離婚慰謝料ではなく、不貞慰謝料を請求していたのであれば、被告Bに対する請求も認められていたものと考えられる

平成31年判決の詳細については、以下の記事もご参照ください。

同性の場合の不貞慰謝料の損害額

本件(最判令和3年3月17日)では、Aが不貞行為をしたことによって、Xに精神的苦痛を与えたとして、裁判所は100万円の賠償額を認定しています。

この金額自体は不貞慰謝料請求の相場感からして、必ずしも低すぎるものではありません。

しかし、本判決は、損害額の理由として、法律上認められていない同性婚の関係であることから、法律婚や内縁関係と比べて法的保護に値する利益の程度は低いものと評価をして、損害額を決めております。

もっとも,原告と被告Aとの関係は,日本の法律上認められている男女間の婚姻やこれに準ずる内縁関係とは異なり,現在の法律上では認められていない同性婚の関係であることからすると,少なくとも現時点では,その関係に基づき原告に認められる法的保護に値する利益の程度は,法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異があるといわざるを得ず,そのほか,本件の一切の事情を踏まえると,原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる額としては,100万円を認めるのが相当である。

宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日(最判令和3年3月17日の第一審)

この点,被控訴人は,事実上の夫婦でありながら,異性と同性とで法律上の保護に値する利益に差異を設けることは性別による取扱いの差別である旨主張するが,性別によって差異を設けているのではなく,婚姻に準ずる程度とその保護の程度は,それぞれの関係の実態に基づいて判断することが相当であるから,被控訴人の上記主張は採用できない。

東京高判令和2年3月4日(最判令和3年3月17日の第二審)

同性と不貞慰謝料のまとめ

時代は変化しており、かつては認められていなかった同性カップルの不貞慰謝料や、同棲との不貞に対する慰謝料請求が認められました。

しかし、その慰謝料の金額の算定においては、法律婚や男女間の内縁関係よりも低く評価がされています。

さらに時代が進み、裁判官の意識、ひいては国民の意識が変わってくれば、この点も改善されてくるのではないでしょうか。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。