パパ活は違法?相手にお金を返す義務はある?弁護士が解説

今回は、パパ活について多くの相談や問い合わせがある中で、よくある下記のような事例における質問につき解説したいと思います。

これについては、弊所の代表弁護士若林翔が動画で解説もしておりますので、よければご覧ください。

パパ活のトラブル事例

相手方との出会いは、パパ活アプリ。

条件は、食事やデートはするが、キスや性行為(肉体関係)はNG。
相手方はそれでもいいというので、実際に会うことに。

会って気に入ってくれたのか、当日に次に会う日も約束

そこから複数回食事やデートをしていくうちに、相手方がパパであること以上の恋愛感情を持ち始めていることに気づきました。

そして実際ある日、「交際してくれないか。」と相手方から告白を受けました。

しかし相手方にパパである以上の感情はなかったため、「あなたとは付き合えません。」とはっきり断りました。

これで相手方とのパパ活が終わるなと思っていたところ、「縁を切りたくない。当初の約束どおりパパ活でいいから、このまま続けてほしい。」と相手方から言われました。

そこで「パパ活の関係のままなら。」と伝え、変わらず食事やデートに行っていました。

ただしばらくしたのち、彼氏ができることになりました。

さすがに彼氏ができたのにパパ活をそのまま続けることはできないと思い、相手方に「パパ活を終わりにしたい。」と告げました。

すると相手方は怒り、「今まで渡した金銭やプレゼントを返せ。返さなければパパ活は違法だから訴える。」と言われました。

パパ活トラブルに対する質問

パパ活で受け取っていた金銭は、食事やデートをともにする報酬(対価)として受け取っていました。
またプレゼントも、ねだったものではありませんので、相手方の好意で贈与されたものだと思っています。
そもそもパパ活は違法なのでしょうか?
そして、金銭やプレゼントを返さなければいけないのでしょうか?

パパ活トラブルの解説

1.パパ活は違法?

結論から言うと、パパ活で行った内容により違法かどうか異なります。
以下,分けて解説したいと思います。
なお未成年者であると様々な法律に触れるため、成年者であることを前提とします。

【性行為(肉体関係)がないパパ活の場合】

今回の事例のように、性行為(肉体関係)がなく、デートや食事などを行う本来のパパ活です。

この場合は、金銭についてはパパとの間でどのように受け取るように決まっていたかで契約類型が異なりますが、いずれにせよ基本的には違法とまではいえないと思われます。

たとえば食事やデートが終わるたびに、いわばお礼というかたちでパパがそのときに自ら決めた金銭を受け取っていたような場合には、負担付贈与契約(民法553条)ということになるでしょう。
「負担」というのは、食事やデートをともにすることになります。

一方、食事であればランチやディナー、デートであれば一緒にいる時間の長さなどによって金額を取り決めていた場合には、有償の準委任契約(民法656条、民法648条)ということになるでしょう。

「有償」とは、当事者双方が相互に対価的意味を有する給付を行うことを意味します。
パパ活でいえば、女性がデートや食事をともにする対価としてパパが金銭を支払うということになります。

「準委任」とは、法律行為でない事務の処理を委託する契約です。
パパ活では、パパが女性に食事やデートという事務(仕事)の処理を委託するということになります。

その他、負担付贈与契約とも有償の準委任契約とも判別つかない場合は、非典型契約(無名契約)となることもあるでしょう。

非典型契約(無名契約)とは、民法などの法律が一定の名称をつけている契約のいずれにもあたらない契約です。
契約自由の原則により、非典型契約(無名契約)であっても自由に締結することができるとされています。

そしていずれの契約類型になるにせよ、後述する公序良俗違反となるような事情がない限り、性行為(肉体関係)のないパパ活が違法とまではいえないでしょう。

なおプレゼントについては、単なる贈与契約(民法549条)といえます。

【性行為(肉体関係)があるパパ活の場合】

性行為(肉体関係)があるパパ活の場合は、私見とはなりますが、前述したいずれの契約類型になるにせよ公序良俗(民法90条)に反するものとして違法となるでしょう。

公序良俗とは社会的妥当性を意味するものとされているところ、性行為(肉体関係)に対し金銭を贈与したり、報酬などとして支払うことは、社会的妥当性を欠くといえるからです。

なおプレゼントも同様に、性行為(肉体関係)を持つことを条件としたものであれば公序良俗に反し違法となるでしょう。

また、パパが既婚者であった場合で、既婚者であることを知ったうえで性行為(肉体関係)を持った際には、不貞による共同不法行為(民法719条)となります。
この際は、パパの妻(配偶者)から不貞慰謝料として損害賠償請求(民法710条、民法709条)をされる可能性があります。

2.金銭やプレゼントは返す必要がある?

性行為(肉体関係)がないパパ活の場合には、公序良俗に反するような事情がない限り、契約における贈与や報酬などとなりますので、金銭やプレゼントを返す必要はない(返還義務はない)といえるでしょう。

他方、性行為(肉体関係)があるパパ活のように公序良俗に反する場合も、違法ではあるものの不法原因給付(民法708条)となり返還請求できないことから、結果として金銭やプレゼントを返す必要はない(返還義務はない)といえます。

どういうことかというと、公序良俗に反する贈与や報酬など違法な給付の返還を認めると、いわば国家が違法に手を貸すということになるがゆえに、それは認めないということです。

ですので、パパ活で受け取った金銭やプレゼントは、性行為(肉体関係)など公序良俗に反することがあろうとなかろうと、基本的に返す必要(返還義務)はありません。

ただし、たとえ不法原因給付であったとしてもパパ活を終えた際に、合意の下で金銭やプレゼントを返還すると約束した場合には、返す必要(返還義務)があることになります。

3.補足

デートや食事などパパ活自体に対する贈与や報酬のほかに、生活費や学費などを援助してもらうケースもあるでしょう。

この際、借りたのか貰ったのか、言い換えれば金銭消費貸借契約(民法587条)だったのか、それとも贈与契約だったのかによって生活費や学費を返す必要(返還義務)があるかどうか異なってきます。

もっとも、性行為(肉体関係)を持つことを条件にするなど公序良俗に反する援助であった場合には、金銭消費貸借契約であれ贈与契約であれ、前述のとおり不法原因給付となり、結果として返す必要(返還義務)はありません。

他方、公序良俗に反しない援助であった場合には、返還合意があったかどうかがポイントになります。

たとえば援助の際に借用書を書いていた場合には、金銭消費貸借契約として返還合意があった証拠となりますので、援助された生活費や学費は返す必要(返還義務)があるということになります。

借用書がない場合にはメールやLINEなどで、どのようなやり取りがあったかによります。

「貸してほしい」や「返すから」などのやり取りがある場合には、金銭消費貸借契約として返還合意があった証拠といえ、 援助された生活費や学費は返す必要(返還義務)があるということになるでしょう。

逆に「プレゼント」や「あげるよ」などのやり取りがある場合には、贈与契約として返還合意はなく、援助された生活費や学費は返す必要(返還義務)がないということになるでしょう。

最後に

パパ活においては、良好な関係のうちはいいものの、関係性がこじれると思わぬトラブルに発展するケースが多くあります。

今回の事例のように「金銭やプレゼントを返せ。返せなければ訴える」など言われたりすることはもちろん、脅迫や恐喝、強要など犯罪被害に遭う事例もあります。

パパ活で何らかのトラブル、被害に遭った際には、自力で解決しようとせず遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。