目次
逮捕された後の流れは?
はじめに
夫や妻、親や子ども、知人が急に逮捕されてしまった。警察官などに連れていかれたあと、逮捕された人がどこに行き、何をしており、いつ戻ってこれるのか、分からない……。会社に解雇されてしまうのか、学校に行くことはできないのか……。
2018年11月19日にカルロス・ゴーン氏が逮捕されたことで、日本の逮捕・勾留システムが日本だけでなく海外でも話題になっています。「人質司法」などと言われ、一度逮捕されると長い期間捕まったままというイメージを持ってしまいますが、そもそも逮捕された後のことについてはよく知らないという方も多いと思います。
逮捕された後の流れについては具体的なイメージがつきにくいかと思います。逮捕された後はどうなるのかお話していきたいと思います。また、弁護士に依頼したときは何をしてもらえるのか、いつ依頼するべきなのかについてもお話ししたいと思います。
逮捕後の流れについて
逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕と3種類ありますが、いずれも逮捕された人の動きに大差はありません。今回は逮捕された場合の一般的な刑事手続の流れをお話ししたいと思います。
まず、逮捕された人は、犯罪をした疑いがある人という意味で、刑事訴訟法上「被疑者」と呼ばれます。テレビや新聞では、「容疑者」などと呼ばれていますね。
逮捕されたときから48時間以内に、警察官は、送検(検察官に事件と被疑者の身柄を送ること)します。検察官は24時間以内に裁判官に対して勾留請求をします。
警察官も検察官も、身柄を拘束しておく必要がないと判断して、それぞれ被疑者を釈放することもあります。以上のように、逮捕されたときからおよそ3日間は逮捕された状態になることが多いです。
裁判官により勾留が決定されると、その後10日間勾留され、延長してさらに10日間勾留されることもあります。
そして、勾留されている間に検察官は、被疑者を起訴するか、不起訴とするか判断することになります。
被疑者が起訴され、裁判所が被告人(被疑者は起訴されると被告人となります)の勾留を続けることを決めると、1ヶ月間勾留されることになります。そして、刑事裁判が終わるまでは、勾留が継続されることが多いです。
このように、逮捕でおよそ3日間、勾留で20日間拘束されることになります。そのあと、起訴されてしまえば、刑事裁判が終わるまで拘束が続くということになります。
より早く拘束を解かれるためには、後に述べるような方法をとる必要があります。
逮捕とは
逮捕された人の生活ってどうなってるの?
逮捕とは、強制的に身柄を拘束し、最長3日間拘束することをいいます。
逮捕されると、通常そのまま警察署等で取調べが行われ、そのあと拘置所や警察署内にある留置施設にいれられることになります。
それぞれの施設は、単独室や相部屋など様々ですが、相部屋となることが多いみたいです。
食事は施設側から提供されます。逮捕・勾留中は各自が自分のお金を持つことができるので、自弁を頼む,決まった時間に施設の職員にお願いをして、コンビニなどでの買い物をお願いできる場合があります。
有罪と決まったわけではないので刑務所ほど規律は厳しくありませんが、それなりに自由が制限される場所です。
そして、日中は取調べのために警察署や検察庁に移送され、そこで取調べを受けることとなります。
逮捕されている3日間は、警察官や検察官が釈放してもいいと判断しない限り、弁護士を通しても被疑者が釈放されることはありません。
逮捕されている3日間であっても、弁護士であれば接見によって被疑者と顔を合わせることは可能です。ドラマでよく見るようなアクリル板の仕切りがある接見室と呼ばれる部屋で会話をすることができ、衣服などを差し入れることもできます。また、先ほどのとおり、拘置所・留置施設内でお金を使うこともできるので、お金の差し入れもすることができます。
逮捕直後においても弁護士にできることはある
被疑者に接見をし、刑事や検事からの取調べに対して、どのような対応をとるべきかアドバイスをすることができます。被疑者の周りには相談できるひとはいませんし、逮捕された後にスマホなどで連絡することもできません。専門家である弁護士によるアドバイスは重要といえます。
また、接見をした際に、被疑者から伝言を預かることができます。家族に対して「会社に連絡してほしい」とか「服を差し入れてほしい」などの伝言を預かることもあります。
そして、逮捕されていることが不当であると思われるときは、弁護士が検事や裁判官に対し、この後に続く勾留を阻止する活動として意見書を提出することができます。勾留をするためには刑事訴訟法60条などに定めた要件をみたす必要があるますが、これは法的知識と経験のある弁護人がこの要件をみたさないと主張することで、釈放される確率が高まることとなります。
被害者がいる事件では、弁護士が被害者と示談交渉をすることができます。被害者にとっては、加害者本人やその家族などと会いたくないという場合もありますが、弁護士であればその抵抗感も少しは薄まることがあります。弁護士には交渉の経験がありますから、示談交渉を依頼することで示談が成立しやすくなります。
示談がまとまれば、検察官が勾留する必要がないと判断する可能性が高まりますから、釈放される可能性も高まることとなります。
勾留とは
逮捕と勾留の違い
勾留とは、逮捕に比べ長期間の身柄拘束をいいます。
検察官が裁判官に対して勾留請求すると、被疑者は裁判所に移送され、裁判官から勾留質問というものをされます。これは裁判官が被疑者を勾留してもいいか判断する材料を集めるための質問です。
裁判官が「被疑者を勾留するべきだ」と判断すると、被疑者は10日間勾留されることになります。
10日間経つ前に、検察官が被疑者をさらに勾留しておく必要があると判断したときは、検察官は勾留延長請求することになります。裁判官が「やむを得ない事由」があると判断すれば、さらに10日間勾留が延長されることになります。
ゴーン氏の場合には、12月20日に検察官の勾留延長請求が却下されています。「やむを得ない事由」といいつつ、勾留延長請求が認められることが多いという実情はありますが、ゴーン氏のように勾留延長請求が却下されることもあります。弁護士が勾留延長請求却下に向けて動いていたと思われます。
勾留されている期間は、逮捕されているときと同じように、拘置所又は警察署の留置施設で過ごすことになります。そして、日中は警察署や検察庁に赴き、刑事や検事から取調べを受けることになります。
この期間には家族や友人も被疑者と接見することができます。
ただし、裁判官により接見が禁止されることがあり、このときは家族等は接見することができません。このときに接見することができるのは、弁護人又は弁護人となろうとする者だけです(刑事訴訟法81条、207条)。よって、家族は弁護人を通じて被疑者に伝えたいことを伝え、物を差し入れることになります。、接見が禁止されていれば家族等は接見することができないのも逮捕のときと同じです。
勾留の場合、逮捕のときと異なり、準抗告という手段により釈放を求めることが可能です。準抗告により釈放される割合は約19%(2015年)であり、近年では準抗告により釈放される数も増加傾向にあります。
被疑者本人も準抗告をすることはできますが、本人は拘置所の中にいて証拠を集めることはできませんし、専門的な知識があったほうが有利ですから、弁護士に依頼することをおすすめします。
勾留中に弁護士にできることは?
逮捕されている場合と同じく、引続き接見や示談交渉をすることができます。
釈放のために、勾留取消しや準抗告という手続きをとることができます。また、勾留が延長された場合には、延長に対して異議を申し立てる準抗告をすることができます。いずれも裁判所に認められれば、被疑者は釈放されることになります。
勾留理由開示という手続きもあります。これは、勾留されている被疑者・被告人が、なぜ自分が勾留されているのかという理由を、公開の法廷で裁判官から開示してもらうという手続きです。
この手続きをしても釈放されることはありませんが、公開の法廷で行われるため、誰でも手続きを見ることができます。接見禁止とされていて、被疑者と家族が顔を合わせることができない場合でも、被疑者と顔を合わせることができるという方法としても利用されることがあります。
ゴーン氏の場合、逮捕以降初めて公の場に姿を見せたということで傍聴希望者の抽選が行われるなどニュースになりましたね。
また、検察官は勾留されている期間に起訴するかどうかを決めることが多いので、弁護人の観点から、被疑者を起訴するべきではないという意見書を検察官に提出することもできます。弁護人の意見書が必ず起訴に影響するとは限りませんが、証拠に基づいて法律的な観点から書かれた意見書が検察官の意見を変え、不起訴とすることもあります。
いつ家に帰ることができるのか?家族にできることは?
家に帰ることができるタイミングは様々
前述ように、逮捕された場合、最長で23日間拘束されることとなります。
また、起訴されて勾留されれば、さらに刑事裁判が終わるまで家に帰ることができないおそれもありますし、執行猶予がつかない懲役刑が下された場合には、そのまま刑務所に入ることになりますから、刑期が終了するまで家に帰ることができないこととなります。
では、必ず長い期間家に帰ることができないかと言われると、そこまで長いとも限りません。
途中で家に帰るための手段は次のとおりです。
①逮捕されて、身柄を拘束しておく必要がないと警察官・検察官が判断した場合に、72時間以内に釈放される
②検察官が勾留する必要がないと判断したとき、72時間以内に処分保留で釈放される
③検察官が勾留請求をしたものの、裁判官が勾留を認めないことで勾留満期として釈放される
④勾留された後、勾留に対する準抗告・勾留延長許可に対する準抗告が認められ、勾留期間の途中で釈放される
⑤勾留の必要がないなどの理由で勾留取消しの請求をし、認められる
⑥起訴された場合、保釈を請求することで、釈放される
このように、勾留以降は、様々な方法により釈放される制度があることから、これらの制度について詳しく理解し、利用することで、早く家に帰ることができます。
家族にできることはなにか?
接見し、被疑者が身柄解放手続きを利用する手伝いをすることもできると思います。しかし、現実に法律の専門家でない者が手伝うのは困難だと思われます。
接見禁止とされている場合でも、弁護人であれば接見することができますし、接見禁止解除請求をすることもできます。家族であれば、条件付きで接見禁止を解除されやすいです。弁護人に接見禁止解除をお願いすることができます。
拘置所などの慣れない環境で、弁護人としか話すことができないというのは、想像以上に辛いものです。接見するということも家族にできることだと思われます。
裁判になるのか?
裁判にするかどうかを決めるのは、検察官
裁判(刑事裁判)になるのかは、検察官が決定します。
検察官が起訴すれば、刑事裁判が開かれることになります。
略式起訴という方法もあり、その場合にはイメージしやすい法廷での刑事裁判が開かれることはありません。
検察官が不起訴とする場合には、2パターンあります。
1つは、証拠が不十分である場合。
2つ目は、証拠は揃っているが、様々な事情を踏まえ、起訴する必要はないと考えた場合です。
検察官がどの選択肢をとるかは、事件ごとの異なるのでどれということはできません。
弁護士が入ることで裁判を回避できることも
弁護士が介入した場合、刑事裁判において無罪を狙ったり、軽い刑になることを狙ったりできるだけでなく、そもそも不起訴で事件を終わらせることを狙いに行くこともあります。
釈放が認められないニュースや有罪率が99.9パーセントであるというニュースを聞いて、「逮捕されたら有罪となるのではないか」と諦める必要はありません。
近年では弁護士に依頼をすることで、釈放されたり、不起訴となる事例も増えてきています。また、起訴されたとしても求刑よりも軽い判決で終わらせることもあります。弁護士に依頼することを検討されることをおすすめします。
まとめ
逮捕された場合、最長で23日間拘束され、場合によっては刑事裁判にかけられることになります。
一方で、弁護士が介入することで、23日以内に釈放されることや、不起訴となることもありえます。
家族ができることについても、けっして多いことではないかもしれませんが、身柄拘束されている被疑者にとっては重要なことです。
刑事手続は逮捕後の素早い動きが重要ですから、もし家族が逮捕された場合には、法律事務所に相談するなどの早めの対応をご検討されることをおすすめします。