「振り込め詐欺をすると逮捕される?」
「振り込め詐欺で逮捕されるパターンにはどのようなものがある?」
「振り込め詐欺で逮捕されるとどのようなリスクが生じる?」
振り込め詐欺とは、電話・メール・ハガキなどを使って相手を騙して、お金の振り込みや手渡しなどを要求する犯罪行為です。従来は、「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」などと呼ばれていましたが、2004年に警察庁により「振り込め詐欺」へと呼称が統一されました。
このような振り込め詐欺は、その名のとおり「詐欺罪」にあたりますが、組織的に行われ、被害額も高額になるため、犯行が発覚すればほとんどのケースで逮捕・起訴されてしまいます。
また、起訴されてしまうと、初犯であっても実刑判決になる可能性が高いなど非常に重い犯罪類型となっています。
本記事では、
・振り込め詐欺で逮捕される条件や可能性 ・振り込め詐欺で逮捕される可能性や条件振り込め詐欺で逮捕される3つのパターン ・振り込め詐欺による逮捕後に有利な処分を獲得するためにできること |
などについてわかりやすく解説します。
万が一、振り込め詐欺で逮捕されてしまった場合には、不起訴処分や量刑を下げるための対策が重要になりますので、すぐに弁護士に連絡するようにしましょう。
目次
振り込め詐欺で逮捕される条件
振り込め詐欺で逮捕されるのは、以下の条件を満たした場合です。
逮捕の理由|犯罪の嫌疑があること
逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由をいいます。簡単に言えば、客観的な証拠や状況からその人が犯人である疑いがあるということです。
だまされたふり作戦により現行犯逮捕になるケースであれば、犯人であることが明らかですので、逮捕の理由は満たされます。また、防犯カメラの映像などから犯人が特定されれば、同様に被疑者が罪を犯した合理的な疑いが生じますので逮捕の理由が満たされます。
逮捕の必要性|逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれがあること
逮捕の必要性とは、逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれがあることをいいます。
振り込め詐欺は、組織的な犯罪ですので、共犯者と口裏合わせをしたり、詐欺に用いた証拠を処分することが容易なため、逃亡のおそれが認められやすいです。また、振り込め詐欺は、実刑になる可能性の高い犯罪であるため、処罰をおそれて逃亡するおそれが高いといえます。
そのため、振り込め詐欺は、逮捕の必要性が認められやすい犯罪といえるでしょう。
鷺の成立要件についての記事もありますので、併せてご覧ください。
詐欺罪の成立要件とは?詐欺罪に問われる主な犯罪の手口と種類を解説
振り込め詐欺の特殊性から逮捕の可能性は高い
振り込め詐欺は、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)をはじめとした組織的な犯罪で複数の共犯者が存在しています。そのため、被疑者が特定された場合には、他の共犯者との口裏合わせを防ぐために、逮捕される可能性が高いといえます。
また、振り込め詐欺の被害金は、犯罪組織や反社会的勢力の収益源になるなど、全容解明の必要性が高い犯罪類型です。そのため、警察としても全容解明のために在宅事件ではなく、身柄事件として集中的な取り調べを行う傾向にあります。
このような振り込め詐欺の特殊性から、犯行が発覚し、犯人が特定されれば、ほぼ確実に逮捕となりますので、逮捕の可能性が非常に高いといえるでしょう。
振り込め詐欺で逮捕される3つのパターン
振り込め詐欺で逮捕されるパターンには、主に以下の3つが考えられます。
現行犯逮捕|だまされたふり作戦により逮捕
現行犯逮捕とは、現に犯罪が行われている状況または犯行直後の犯人を逮捕令状なしで逮捕する手続きをいいます。
振り込め詐欺で現行犯逮捕になる典型的なケースとしては、「だまされたふり作戦」があります。だまされたふり作戦とは、詐欺に気付いた被害者が警察官と協力して、だまさされたふりをしながら自宅などに現金を受け取りに来た犯人を検挙する方法です。
被害者から現金を受け取る受け子は、振り込め詐欺グループの一員であることが明らかですので、その場で現行犯逮捕となります。
通常逮捕|ATMの防犯カメラから特定されて逮捕
通常逮捕とは、犯人による犯行後に犯人を特定し、裁判所から発布された逮捕状に基づいて逮捕する手続きをいいます。犯行があった後日に逮捕されることから「後日逮捕」と呼ばれることもあります。
被害者がお金を騙し取られた後に詐欺に気付いたような事案では、すでに詐欺グループの犯人に逃げられてしまっています。しかし、被害者から現金を受け取る際やATMからお金を引き出す際などに防犯カメラで犯人が撮影されていれば、そこから犯人を特定することが可能です。客観的証拠から犯人であることが明らかになれば、逮捕状が請求され、後日逮捕となります。
緊急逮捕|犯行後の職務質問で発覚し逮捕
緊急逮捕とは、一定の重大犯罪を犯した被疑者について、逮捕状を請求する時間的余裕がない場合に、事後的に逮捕状を請求することで、例外的に無令状で逮捕することができる手続きです。詐欺罪も緊急逮捕の対象となる犯罪に含まれていますので、振り込め詐欺の事案でも緊急逮捕になる可能性があります。
たとえば、犯行後の職務質問で振り込め詐欺の犯人である強い嫌疑が生じ、そのままでは犯人に逃亡されてしまうような場合には、緊急逮捕となります。
振り込め詐欺で逮捕された実際の事例3つ
以下では、振り込め詐欺で逮捕された最近の事例を紹介します。
だまされたふり作戦でオレオレ詐欺の受け子が逮捕された事例
焼津市に住む80代男性の自宅に、孫を名乗る男から「書類をなくした」「すぐにお金が必要」などと電話があったということです。男はさらに「勤務先の上司の息子が取りに行く」とも話し、不審に思った男性は「自宅にオレオレ詐欺の電話があった」と交番に通報しました。
その後、男性の自宅を訪ねてきた男を、警戒していた警察官が詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕しました。
(引用:静岡朝日テレビ)
「オレオレ詐欺の電話があった」…『だまされたふり作戦』で受け子の28歳男を現行犯逮捕
受け子役のリクルーターが逮捕された事例
兵庫県加西市の80代男性宅に息子を装って「妊娠させてしまった。示談金500万円を段取りしてほしい」などとうその電話をし、現金計500万円をだまし取った疑いで、職業不詳の男(25歳)が詐欺の疑いで逮捕されました。
男はリクルーター役と現金の回収役を担い、茨城県ひたちなか市の少年(17歳)を受け子役に勧誘し、少年が被害者から受け取った現金はいずれも男に手渡されていたということです。
男も少年も別の人間から秘匿性の高い通信アプリを通じて指示を受けていたとみられ、同課は指示役の存在や組織的な背景などついて調べています。
(引用:神戸新聞)
高3生、高齢男性から500万円だまし取る 息子名乗り「女の子妊娠させ示談金いる」 3回目の逮捕
金融機関の職員が詐欺に気付いて逮捕された事例
静岡県牧之原市の80代女性に息子をかたる男から「至急現金が必要」「郵便局員が取りに来るから現金を渡して」と80代女性に電話がありました。
女性は金融機関で多額の現金をおろそうとしましたが、詐欺に遭っているのではないかと不審に思った職員が警察に連絡して、詐欺と判明しました。
このため複数の警察官が女性の家を警戒していたところ、郵便局員を装った男が女性宅に現れたため、詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕となりました。
(引用:静岡朝日テレビ)
多額の現金おろそうとするお年寄りにピンときた…金融機関職員お手柄 オレオレ詐欺の受け子を現行犯逮捕 静岡・牧之原市
振り込め詐欺で逮捕された場合の3つのリスク
振り込め詐欺で逮捕されてしまうと、以下のような3つのリスクが生じます。
実名報道されてしまうリスク
刑事事件で逮捕された場合に実名報道されるかどうかは、報道機関の判断に委ねられています。報道機関では、犯罪の重大性、社会的関心の程度、当事者の職業などを考慮して実名報道をするかどうかの判断をしますが、振り込め詐欺は社会的関心の高い事件ですので、振り込め詐欺で逮捕されてしまうと実名報道される可能性があります。
実名報道されてしまうと、犯罪者であると広く周知されるだけでなく、インターネット上で半永久的に実名報道の記事が残ってしまいますので、今後の生活にも重大な影響を及ぼします。
職場を解雇・学校を退学となるリスク
振り込め詐欺で逮捕されたことが職場に知られてしまうと、解雇されてしまうリスクがあります。また、同様に学校に知られてしまうと退学処分になるリスクがあります。
振り込め詐欺は、世間の関心も高く非常に重い犯罪ですので、解雇や退学になるリスクは高いといえます。
仮に、解雇や退学にならなかったとしても、周囲からは振り込め詐欺に関与した犯罪者であるという目で見られてしまいますので、職場や学校に居づらくなり、自分から辞めてしまうケースも少なくありません。
逮捕・勾留中は家族との面会も制限されるリスク
振り込め詐欺で逮捕・勾留されてしまうと、共犯者との接触を避けるため、ほぼ確実に接見禁止命令が出されます。
接見禁止命令が出されると、弁護士以外の第三者との面会が禁止されますので、家族や友人であっても被疑者と面会することができなくなります。そのため、家族や職場に伝えたいことがあったとしても、身柄拘束をされている状態では、自由に外部と連絡を取ることができません。
振り込め詐欺で逮捕された場合の流れ
振り込め詐欺で逮捕された場合、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。
逮捕・取り調べ
振り込め詐欺で逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄が拘束され、警察官による取り調べを受けることになります。
振り込め詐欺は、組織的な犯行になりますので他にも複数の共犯者が存在しています。そのため、警察では、全容解明のために逮捕した被疑者に対して厳しい取り調べが行われます。
なお、逮捕には時間制限がありますので、警察は、被疑者の逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、勾留請求をするかどうかの判断を行います。
振り込め詐欺の事案は、逃亡または証拠隠滅のおそれが高いため、ほとんどの事案で勾留請求がなされます。検察官は、勾留請求をする場合、送致から24時間以内に裁判官に勾留請求を行わなければなりません。
勾留・勾留延長
勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施した上で、勾留を許可するかどうかの判断を行います。勾留が許可されると、そこから原則として10日間の身柄拘束がなされます。また、その後勾留延長も許可されるとさらに最大10日間の身柄拘束となります。
そのため、逮捕から数えると合計で最長23日間にも及ぶ身柄拘束になる可能性があります。
特に、振り込め詐欺の事案では、全容解明のため取り調べに長期間を要するケースが多いため、上限いっぱい身柄拘束をされる可能性が高いでしょう。
起訴または不起訴の決定
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、事件を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。起訴されれば刑事裁判で事件の審理が行われ、最終的に有罪・無罪の判決が下されます。日本の刑事司法では、起訴された事件の99%以上が有罪になりますので、振り込め詐欺で起訴されてしまうと、有罪となるのは避けられないでしょう。
他方、不起訴になればその時点で釈放になり、前科が付くこともありません。
振り込め詐欺による逮捕後に有利な処分を獲得するためにできること
振り込め詐欺は逮捕される可能性が非常に高い犯罪ですので、逮捕の回避よりも不起訴処分や執行猶予付きの判決の獲得を目指していくことになります。以下では、そのためにできる2つのことを説明します。
被害者との示談を成立させる
振り込め詐欺の事件では、お金を騙し取られた被害者がいますので、被害者との示談が重要になります。
被害者との示談を成立させることができれば、不起訴処分になる可能性がありますし、起訴されたとしても執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。
もっとも、受け子や出し子など詐欺グループの末端の人間だと、騙し取ったお金を指示役に渡してしまい手元には被害者に返すことのできるお金が残っていないことが多いです。また、大規模な振り込め詐欺の事案になると被害者が複数いて、被害金額も高額になるため、被害者全員と示談をするのが困難なケースも少なくありません。
そのため、基本的には逮捕容疑となった詐欺事件を中心にできる限りの被害弁償を提案していくようにしましょう。
関連記事:
詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説
弁護士に相談する
振り込め詐欺の事案が捜査機関に発覚すると、ほとんどのケースが逮捕に至りますので、被疑者本人では被害者と示談交渉をすることはできません。
そのため、被害者との示談交渉は弁護士に任せるのがおすすめです。弁護士が窓口となって示談交渉をすることで、被害者も安心して示談交渉を行うことができますので、スムーズに示談を成立させることが可能です。また、被害者との示談交渉以外にも有利な処分の獲得に向けたさまざまなサポートができますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
振り込め詐欺の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
振り込め詐欺を犯してしまった方や家族が振り込め詐欺で逮捕されてしまったという方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。
当事務所では、刑事事件の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、振り込め詐欺の事案についての弁護活動のポイントも熟知しています。振り込め詐欺は、組織的な犯行で、被害額も高額になる傾向がありますので、適切な弁護活動をせずに起訴されてしまうと初犯であっても実刑判決になる可能性があります。今後の処分を少しでも軽くするには、経験豊富な弁護士によるサポートが不可欠となりますので、振り込め詐欺事件の弁護は、当事務所の弁護士にお任せください。
当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。
まとめ
最近では、SNSなどで「闇バイト」と称して、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)が振り込め詐欺の受け子や出し子などの募集をするケースもあり、誰でも振り込め詐欺の加害者になり得ます。
振り込め詐欺は、詐欺罪のなかでも悪質な類型とされていますので、軽い気持ちに振り込め詐欺に加担することがないよう十分に気を付けなければなりません。万が一、振り込め詐欺に加担してしまったときは、すぐに弁護士にサポートしてもらうことで処分を軽減できる可能性がありますので、一刻も早く弁護士に相談するようにしてください。
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