「痴漢をすると何罪に問われるのだろうか?」
「痴漢態様ごとに成立する可能性のある犯罪を知りたい」
「痴漢の刑罰はどのくらい?」
痴漢により何罪が成立するかは、具体的な犯行態様によって異なります。典型的な痴漢行為であれば、迷惑防止条例違反になるケースが多いですが、悪質な痴漢行為だと不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などに問われる可能性もあります。何罪が成立するかによって科される刑罰も変わってきますのでしっかりと押さえておくことが大切です。
実際の事例として、電車内で女子高生のお尻などを触るなどした痴漢行為で不同意性交等罪に問われていた男性に対して、懲役4年の実刑判決が下されたというものもあります。痴漢というと軽い犯罪というイメージがあるかもしれませんが、一発で実刑になることもありますので注意が必要です。
本記事では、
・痴漢行為をすると何罪が成立するか
・痴漢をした場合に科される刑罰
・痴漢をしたときに弁護士に相談すべき理由
などについてわかりやすく解説します。
痴漢をしてしまったときは弁護士に相談して、弁護活動をしてもらうことで処分を軽くできる可能性もありますので、一刻も早く弁護士に相談するようにしましょう。
目次
痴漢が何罪かは行為態様により異なる
痴漢をすると何罪が成立するのでしょうか。以下では、痴漢行為ごとに成立し得る犯罪を説明します。
痴漢により成立する罪名 | 具体的な行為 |
---|---|
迷惑防止条例違反(痴漢) | ・着衣の上から身体を触る・自分の下半身を相手に押し付ける(押し付け痴漢) |
迷惑防止条例違反(卑わいな言動) | ・耳元で卑わいな言葉をささやく |
不同意わいせつ罪 | ・下着の中に手を入れて身体を直接触る・被害者の性器に指を入れる・執拗に胸や臀部を撫で続ける |
不同意性交等罪 | ・被害者の性器に指を入れる |
器物損壊罪 | ・着衣に精液をかける |
典型的な痴漢行為で適用される犯罪
典型的な痴漢としては、以下のような行為が想定されます。
・着衣の上から身体を触る
・自分の下半身を相手に押し付ける(押し付け痴漢)
このような典型的な痴漢行為をすると、迷惑防止条例違反となる可能性があります。迷惑防止条例は、公衆に対する迷惑行為を防止する目的で、都道府県ごとに定められている条例で、実際の規定内容や刑罰は、都道府県によって異なります。
たとえば、東京都では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で、痴漢行為に関して以下のような規制をしています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に
人の身体に触れること。
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悪質な痴漢行為で適用される犯罪
悪質な痴漢としては、以下のような行為が想定されます。
・下着の中に手を入れて身体を直接触る
・被害者の性器に指を入れる
・執拗に胸や臀部を撫で続ける
このような悪質な痴漢行為をすると、迷惑防止条例違反ではなく、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪により処罰される可能性があります。
【不同意わいせつ罪】
不同意わいせつ罪とは、以下のような行為または事由により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態になることに乗じて、わいせつな行為をすることで成立する犯罪です(刑法176条1項)。以前は、「強制わいせつ罪」と呼ばれていましたが、刑法改正により「不同意わいせつ罪」に名称が変更されました。
・暴行または脅迫
・心身の障害
・アルコールまたは薬物の摂取
・睡眠または意識不明瞭
・拒絶するいとまを与えない
・恐怖または驚愕させる
・虐待
・立場による影響力
悪質な痴漢行為のうち、下着の中に手を入れて身体を直接触る行為や執拗に胸・臀部を撫で続けるなどの行為については、不同意わいせつ罪で処罰される可能性があります。
【不同性交等罪】
不同意性交等罪とは、不同意わいせつ罪と同様の行為または事由により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態になることに乗じて、性交等をすることで成立する犯罪です(刑法177条1項)。
不同意性交等罪の「性交等」とは、以下の行為を指します。
・性交
・肛門性交
・口腔性交
・膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為でありわいせつなもの
悪質な痴漢行為のうち、被害者の性器に指を入れるなどの行為については、不同意性交等罪で処罰される可能性があります。
その他の痴漢行為で適用される犯罪
痴漢行為というと被害者の身体を触るなどの行為を想定される方が多いと思います。しかし、以下のような直接被害者に触れない行為ついても痴漢に該当する可能性があります。
・耳元で卑わいな言葉をささやく
・着衣に精液をかける
このようなその他の痴漢行為があった場合には、迷惑防止条例違反や器物損壊罪で処罰される可能性があります。
【迷惑防止条例違反】
迷惑防止条例では、直接被害者の身体に触る行為だけでなく、卑わいな言動についても規制対象としています。
たとえば、東京都では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で、以下のように規定されています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(略)
三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
たとえば、被害者の耳元で卑わいな言葉をささやくなどの行為は、迷惑防止条例違反となる可能性があります。
【器物損壊罪】
器物損壊罪とは、他人の物を壊してしまったり、使えない状態にした場合に成立する犯罪です(刑法261条)。
満員電車などで衣服に精液をかけられると、被害者は、心理的にその衣服を使用するのが困難になりますので、器物損壊罪が成立します。
痴漢をするとどのような刑罰が科される?
痴漢をするとどのような刑罰が科されるのでしょうか。以下では、痴漢で成立する犯罪ごとの法定刑をみていきましょう。
痴漢で適用される刑罰
痴漢行為は、犯行態様によってさまざまな犯罪が成立する可能性があります。何罪が成立するかによって、法定刑の重さは大きく変わってきますので、痴漢行為をして何罪が適用されるかは、今後の対応を考えるにあたって非常に重要となります。
痴漢行為で成立する犯罪ごとの法定刑をまとめると、以下のようになります。
罪名 | 法定刑 |
---|---|
迷惑防止条例違反(痴漢・卑わいな言動) | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 常習の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金 (※東京都の場合) |
不同意わいせつ罪 | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
不同意性交等罪 | 5年以上の有期拘禁刑 |
器物損壊罪 | 3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料 |
痴漢で執行猶予はつく?
日本の刑事司法では、検察官により起訴された事件は、99.9%以上の割合で有罪になりますので、痴漢で起訴されてしまうとほとんどのケースで有罪となってしまいます。
しかし、有罪判決が言い渡されたとしても、執行猶予が付けば直ちに刑務所に収容されることはありませんので、執行猶予付き判決が獲得できるかどうかが重要となります。
痴漢で執行猶予が付くかどうかは、犯行態様や成立する犯罪にもよりますが、迷惑防止条例違反にあたるような軽微な痴漢であり、初犯だった場合には、執行猶予が付く可能性も十分にあります。
他方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に該当するような悪質な痴漢行為であった場合、被害者との示談などの適切な対応をしなければ、執行猶予の付かない実刑判決が言い渡され、直ちに刑務所に収容されるおそれもありますので注意が必要です。
痴漢の再犯だとどうなる?
痴漢の量刑を判断するにあたって、初犯であるか再犯であるかは重要な一つの要素となります。過去に痴漢行為で有罪となっているようなケースで再び犯行に及んだ場合、再犯可能性が高いといえますので、初犯に比べて厳しい刑罰が科される可能性が高くなります。
初犯であれば起訴猶予や執行猶予が付くような事案であっても、再犯だと起訴され、実刑判決が言い渡される可能性も十分にあります。
痴漢の再犯の場合には、特に弁護士によるきめ細かなサポートが必要になりますので、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
痴漢をして何罪に問われるかわからず不安な方は弁護士に相談を
痴漢をして何罪に問われるかわからず不安を感じているという方は、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
成立する可能性のある犯罪を把握できる
痴漢は、「痴漢罪」という犯罪があるわけではなく、犯行態様によってさまざまな犯罪が成立する可能性があります。同様の行為であったとしても、事案によっては成立する犯罪が異なるケースもありますので、正確に判断するには、専門家である弁護士のアドバイスが不可欠となります。
成立する犯罪によって刑罰も大きく変わりますので、ご自身の行った痴漢がどのような犯罪にあたるのかを正確に把握するためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
被害者との示談交渉を任せることができる
痴漢事件では、被害者との示談を成立させることで早期の身柄解放や不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
しかし、加害者自身では被害者と示談交渉をしたくても、拒絶されてしまったり、連絡先がわからず交渉することができないということも珍しくありません。被害者との示談交渉をスムーズに進めるためにも、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士であれば、加害者に代わって被害者と交渉することができますので、被害者としても安心して交渉に臨むことができます。また、弁護士は、捜査機関を通じて被害者と連絡を取ることができますので、連絡先がわからなかったとしても示談交渉を進めることが可能です。
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早期釈放や不起訴処分に向けた弁護活動ができる
痴漢で逮捕・勾留されてしまうと最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。身柄拘束中は、自由に外部と連絡を取ることができませんので、仕事や私生活に多大な支障が生じてしまいます。
また、痴漢事件が起訴されてしまうと99.9%の割合で有罪になってしまいますので、前科を避けるためには不起訴処分を獲得することが重要になってきます。
早期に弁護士に依頼をすれば、事案に応じた適切な弁護活動を行うことで、早期釈放や不起訴処分を獲得できる可能性を高めることができるといえます。
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痴漢事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
痴漢事件を犯してしまったという場合には、すぐに弁護士に相談し、被害者との示談などの弁護活動を行ってもらうことが大切です。その際には、弁護士であれば誰でもよいというわけではなく、痴漢事件に強い弁護士に依頼する必要があります。
グラディアトル法律事務所では、多数の痴漢事件を取り扱った経験がありますので、被害者との示談交渉の進め方や不起訴処分を獲得するためのノウハウなどを熟知しています。早めにご相談・ご依頼いただければ不利な結果になるのを回避できる可能性が高くなりますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。
当事務所では、痴漢事件にすぐに対応できるように24時間365日相談の受付を行っています。初回相談料無料で、LINE相談も受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
まとめ
痴漢事件は、犯行態様によって成立する犯罪が異なり、犯罪よって科される刑罰も大きく変わってきます。痴漢行為をしてしまったという場合には、まずはどのような犯罪が成立するのかを把握するのが重要になりますので、痴漢事件に詳しい弁護士にすぐに相談するようにしましょう。
痴漢をしてしまいお困りの方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。