盗撮で裁判になる確率は?裁判の流れと対策!無罪になった判例も紹介

盗撮で裁判になる確率は?
弁護士 若林翔
2024年07月30日更新

「盗撮はどの程度が裁判になる?」

「刑事裁判の流れが知りたい」

「裁判にならないためにはどうするべき?」

盗撮事件を起こすと、刑事裁判・民事裁判に発展します。

弁護士に依頼すれば、必要な手続きは一任できますが、裁判全体の流れを知っておくことは不安の解消につながります。

本記事では次の点を取り上げました。

盗撮が刑事裁判になる可能性

盗撮による刑事裁判の流れ

民事裁判の流れ

盗撮が裁判になるのを防ぐ方法

盗撮が裁判になるか不安な方は、是非ご一読ください。

盗撮は刑事裁判になる?起訴率は50%以上?

盗撮で逮捕されると、どの程度が起訴されて、刑事裁判になるのでしょうか。

結論からいうと、盗撮の起訴率は「50%以上」だと考えられます。

その理由としては、次のとおりです。

・盗撮は「迷惑防止条例(地方公共団体条例)」で起訴されていたケースが多い

・「迷惑防止条例」の起訴率は「50%」以上

・盗撮で同時に成立することの多い「住居侵入罪」の起訴率は「40%」

盗撮で起訴されて裁判になる割合

(引用:令和5年版 犯罪白書 被疑事件の処理

2023年7月に施行された「撮影罪」の起訴率はまだ公表されていませんが、一定の参考にはなるはずです。

撮影罪の施行によって、盗撮の起訴率がどう変化するかは不明確です。

ただし、性犯罪が厳罰化している流れを踏まえると、今後、起訴率が高くなることも十分に予想されます。

※関連記事

盗撮で不起訴になるには?不起訴率や示談の重要性を弁護士が解説

 

盗撮が刑事裁判(正式起訴)になるのは20%弱?

盗撮が起訴されても、必ずしも刑事裁判に発展するわけではありません。

略式裁判となって、書面審理だけで終了するケースもあるからです。

※略式裁判とは?

主に100万円以下の罰金又は科料の事件について、公開の法廷で裁判をせず、書面だけで審査する裁判手続のこと。

起訴された盗撮が、刑事裁判(正式起訴)になる割合を「迷惑防止条例(地方公共団体条例)」「住居侵入罪」で確認してみましょう。

(※撮影罪(盗撮罪)のデータは、現時点で公表されていません。)

盗撮で刑事裁判になる割合

(引用:令和5年版 犯罪白書 被疑事件の処理

迷惑防止条例違反では「18%」住居侵入罪では「60%」が刑事裁判になっています。

いずれも、盗撮だけのデータではありませんが、書面審理だけで終わるケースも一定程度あることが分かります。

なお、略式裁判になった場合も

前科が付く

必ず罰金刑となる(無罪にはならない)

といったデメリットが発生します。

前科を防ぐには、弁護士に相談して、不起訴を得ることが必要です。

盗撮が刑事裁判になった場合の流れ

盗撮で刑事裁判になった場合の流れは、次のとおりです。

盗撮で刑事裁判になった場合の流れ

冒頭手続

冒頭手続は、次の流れで進みます。

・人定質問(本人確認のようなもの)

・検察官による起訴状の読み上げ

・裁判官による「黙秘権」の告知

・罪状の認否

罪状認否では、被告人と刑事弁護人が、それぞれ盗撮事件について陳述します。

・起訴状に間違っている事実はあるか

・どのように間違っているのか

などについて裁判官から、被告人に質問されるため、

「間違いありません」

「〇〇については覚えがありません」

といった陳述を行います。

その後、弁護人が法律的な見解を交えて陳述し、冒頭手続は終了です。

「罪状認否」で述べる内容は、裁判の流れに決定的な影響を与えるため、事前の打ち合わせが不可欠です。

証拠調べ手続き

証拠調べ手続きでは、検察官が、犯罪事実(盗撮)や情状についての立証を行います。

具体的には

・盗撮された画像や動画

・被害者の証言

・防犯カメラの映像

・目撃者の証言

などの証拠を提出して、盗撮事件の内容を裁判所に説明するのです。

その後、弁護人も意見を述べて証拠を提出します。

最後に、検察官や弁護人、裁判官からの被告人質問が行われ、証拠調べ手続きは終了です。

弁論手続き〜結審

弁論手続きでは、双方が「有罪・無罪」「刑の重さ」等についての意見を表明します。

具体的な流れは次のとおりです。

1.論告(検察官が、盗撮の事実関係や法律的な問題を述べる)

2.求刑(検察官が、妥当だと考える刑の重さを述べる)

3.弁論(弁護人が、被告人の立場から意見を述べる)

4.最終陳述(被告人本人が意見を述べる)

最終陳述では、被告人本人も自由に意見を述べることができます。

弁論手続が終わったら「結審」となり、次回の公判期日で「判決」が言い渡されます。

判決の言い渡し

結審を迎えたら、1〜2週間で判決が言い渡されます。

判決では、弁護人・検察官の立証した内容をもとに、裁判官から刑が告げられます。

・罰金刑

・懲役刑(実刑)

・懲役刑(執行猶予付き)

・無罪 など

判決後の流れは、「実刑かそれ以外か」「在宅事件か身柄事件か」「控訴するのか」等によって変わってきます。

※判決後の流れについては、次の記事で詳しく解説しています。

「【盗撮で実刑になる?】危険な4つのケースと判決後の流れを解説」

盗撮の刑事裁判は何罪で起訴される?

盗撮で刑事裁判になる場合、どのような罪で起訴されるのでしょうか。

主な罪名としては次の4つが挙げられます。

盗撮で裁判になると何罪で起訴される?

性的姿態等撮影罪

2023年7月以降の盗撮は、基本的に「性的姿態等撮影罪(撮影罪)」で起訴されます。

具体的には、次のような行為が処罰の対象です。

性的な部位・下着を、正当な理由なく盗撮する行為

同意できない状態で撮影する行為

誤信させて撮影する行為

盗撮した画像を提供する行為(提供罪) など

刑事裁判で「撮影罪」が言い渡されると、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられます。

※関連記事

撮影罪とは?構成要件や盗撮での迷惑防止条例との違いなど徹底解説!

 

迷惑防止条例違反

各都道府県の迷惑防止条例でも、盗撮行為は禁止されています。

迷惑防止条例で起訴された場合の求刑は、各都道府県によって異なります。

例えば、東京都の場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となるケースが通常です。

軽犯罪法違反

盗撮は「軽犯罪法違反」によって起訴される可能性もあります。

軽犯罪法23条では、「人が通常衣服をつけない場所」に対する「のぞき見」行為について、罰則(拘留又は科料)が定められています。

異性のトイレをのぞき見する

無人のシャワー室をのぞき見する

といったケースでは、盗撮行為の有無に関わらず、軽犯罪法違反となる可能性があります。

住居侵入など

盗撮するために、住居などに不法に侵入した場合は「住居侵入・建造物侵入罪」で起訴されるケースもあります。

刑事裁判で「住居侵入罪など」が言い渡されると、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」に処せられます

盗撮が刑事裁判になるのを防ぐ方法

盗撮が裁判になるのを防ぐには、どうすれば良いのでしょうか?

盗撮事件を起こしてしまった場合の対応を解説します。

盗撮で刑事裁判になるのを防ぐ方法

盗撮事件に強い弁護士に相談する

盗撮事件を起こしてしまったら、まずは弁護士に相談しましょう。

刑事裁判になる前に相談・依頼することができれば、その後の影響を最小限に押さえることができます。

警察による逮捕や勾留を防ぐ

逮捕されても、早期に釈放されやすくなる

不起訴となる可能性が高まる など

ここで大切なのは、盗撮事件の経験が豊富な弁護士を選ぶことです。

弁護士にも得意・不得意があるため、弁護活動の方法によって、判決の内容が大きく変わってきます。

盗撮事件に強い弁護人に依頼できれば、刑事処分を軽くできる可能性が格段に高くなります。

被害者と示談する

盗撮事件では、被害者と示談することも重要です。

早期に示談を成立させることができれば、次のようなメリットが得られます。

被害届を取り下げてもらえる

民事裁判になることを防げる

不起訴となる可能性が高まる

刑事裁判の判決にも良い影響を与える

当事者同士で示談が成立したことで、捜査が中止されるケースも珍しくありません。

ただし、盗撮事件の示談交渉は必ず弁護士に依頼しましょう。

被害者側は、盗撮した人と会いたくないと思っていることが通常です。

盗撮した本人・家族が、事件後に被害者に接触することは、絶対に避けましょう。

盗撮を弁護士に依頼するメリット等についての詳細は、以下の記事もご参照ください。

盗撮がバレたら弁護士に依頼!メリットと盗撮に強い弁護士の探し方

刑事裁判で無罪になるケースはある?盗撮の裁判例

盗撮の刑事裁判で無罪になるケースはあるのでしょうか?

一般的には、日本の刑事裁判の「99%」は有罪だと言われています。

しかし状況によっては、盗撮が「無罪」となるケースもゼロではありません。

ここでは、実際に盗撮が「無罪」となった裁判例を紹介します。

盗撮で無罪になった裁判例

福岡地判平成30年9月7日 福岡県迷惑行為防止条例違反被告事件

(検察官の主張(公訴事実))

「被告人は,正当な理由がないのに,平成29年4月21日午後4時8分ころ,福岡市a区bc丁目d番e号の甲株式会社乙店3階丙店において,A(当時24歳)に対し,同人のワンピース内の下着を撮影する目的で,その背後から同人着用のワンピース下方に,動画撮影機能を起動させた携帯電話機を差し入れ,もって公共の場所において,人を著しく羞恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような方法で,写真機等を他人の身体に向けた。」

(弁護人の主張)

「被告人は、公訴事実記載の日時場所にいたことは間違いないものの,Aのワンピース下方に携帯電話機を差し入れていないと述べており,弁護人は,被告人の述べる事実関係を前提として,福岡県迷惑行為防止条例違反の罪は成立せず,無罪である」

さらに、この裁判では、捜査段階で被告人が自白を行っていました。

しかし、裁判所によって、「自白の信用性は低い」と判断されました。

(自白の信用性)

「本件自白には,不自然不合理な点,信用できるAの供述と整合しない点,客観的な動画の状況と整合しない点が存在し,これらの点は,本件自白の根幹にかかわるものであるから,そのような本件自白の信用性は全体的に低いものといわざるを得ない。

 本件自白に至るまでの取調状況については,被告人の公判供述を前提としても,自白の任意性や信用性に大きく影響を及ぼすようなものとはいえないものの,被告人は,後述するように,当公判廷においても,Aの身体等を撮影しようとしたこと自体は認めた上,そのような行為について罪悪感を感じているところ,これまで警察による取調べの経験も乏しいと窺われる被告人において,繰り返し任意での出頭・取調べを受ける中で,そのような罪悪感などから取調官の誘導にのる形で本件自白ができあがってしまったとしても何ら不自然とはいえない。

 そうすると,本件自白の信用性を認めることはできない。

そして、最終的に次のような判決が下されました。

(裁判所の判断)

「被告人は,丙店内において,本件携帯電話の動画撮影機能を起動させて録画を開始してAの身体等を撮影しようとして動画を撮影しつつAに近づくなどし,第2動画の撮影を終了した際に,Aに気付かれたため逃走したという限度では事実が認められるものの,被告人が,午後4時8分ころ,Aのワンピース内の下着を撮影する目的で,その背後から同人着用のワンピース下方に,動画撮影機能を起動させた携帯電話機を差し入れたとの事実を認めるには合理的な疑いが残るというべき」

盗撮で刑事裁判になったとしても、諦めずに弁護活動を行えば、無罪となる可能性はゼロではありません。

盗撮は民事裁判になる可能性も

盗撮では、刑事裁判だけでなく、民事裁判になる可能性もあります。

精神的な損害に対する慰謝料

仕事を休んだことに対する休業損害

メンタルクリニック等の通院費 など

示談をしていない場合、民事上の責任も追求されるため、被害者から損害賠償請求される可能性があるのです。

民事裁判を防ぐためには、示談を成立させて、被害者からの許しを得ることが必要です。

盗撮による民事裁判の流れ

盗撮が民事裁判になった場合の流れは次のとおりです。

1.訴状の提出

2.口頭弁論〜争点整理

3.和解または判決

民事裁判は、「訴状の提出」によってスタートします。

その後、第1回口頭弁論期日を経て、争点整理手続きに移行します。

「争点整理」といっても、刑事裁判のように法廷で争われることは少ないです。

特にここ数年は「書面による準備手続き」が中心となっているため、電話会議システム等により、当事者が出頭せずに進められるケースもあります。

争点整理が進み、双方から主張立証が行われて裁判所の心証が固まると、和解の打診が行われます。

裁判所の和解案に合意すれば、民事裁判は終了です。

和解が成立しない場合、審理が続行され、判決が言い渡されます。

※盗撮による民事裁判については、次の記事で詳しく解説しています。

「盗撮事件における民事訴訟の流れとは?慰謝料相場と時効について解説」

盗撮の裁判に関するよくある質問

盗撮の裁判についてよくある質問

Q.盗撮の刑事裁判を家族は傍聴できる?

刑事裁判は、自由に傍聴できます。

ただし、家族だからといって傍聴席から発言することはできません。

刑事裁判で証言したい場合は「情状証人」になることが必要です。

必ず認められるわけではないため、弁護士に相談しましょう。

Q.盗撮の証拠が無くても刑事裁判になる?

本当に証拠が無ければ、起訴されない可能性が高いです。

ただし、盗撮の証拠は様々な要因で発見されます。

(削除したデータがスマホやPCから復元される、防犯カメラなどに盗撮シーンが映っている等)

Q.盗撮の刑事裁判で、判決が出るまでの期間は?

軽微な事件であれば、起訴されてから2〜3ヶ月が目安です。

刑事裁判は、通常であれば、起訴されて1〜2ヶ月程度で第1回公判期日となります。第2回公判で判決が言い渡されるケースが多いです。

ただし、事件の内容によっては、判決まで1年以上かかる場合もあります。

Q.民事裁判で訴えられたらどうすればいい?

民事訴訟を提起されたら、弁護士に相談することをオススメします。

Q.慰謝料(示談金)の相場は?

盗撮事件の慰謝料相場は、10万円〜100万円が目安だと言われています。

ただし、盗撮事件の内容によって大きく異なります。

※盗撮事件の慰謝料相場については、次の記事で詳しく解説しています。

「盗撮事件における民事訴訟の流れとは?慰謝料相場と時効について解説」

Q.盗撮の罰金相場は?

盗撮の罰金相場(迷惑防止条例)は、20万〜40万円が目安だと言われています。

ただし、2023年7月に撮影罪が新設されたため、重くなる可能性があります。

※盗撮の罰金相場については、次の記事で詳しく解説しています。

「盗撮で罰金刑になる場合は?不起訴や懲役刑との分岐点と罰金相場を解説」

Q.刑事裁判と民事裁判の違いは?

刑事裁判は、犯罪を起こした人に対して、国家がどのような刑罰を与えるべきかを決定するための手続きです。検察官(国)vs被告人(弁護人)という構図で行われます。

一方、民事裁判は、一般人同士のトラブルを解決するための手続きです。

金銭等による被害回復を目的としており、私人vs私人という構図で進められます。

盗撮事件を起こしたらグラディアトル法律事務所へ

最後に、今回の記事の要点を整理します。

・盗撮の起訴率は50%以上と考えられる

・起訴された事件のうち、裁判になる事件は「20%」が目安

・裁判で無罪になるケースもある

・盗撮事件の解決には弁護士への相談が必要

・示談の成立も大きく影響する

・示談をしないと民事裁判になる可能性も高い

盗撮事件を起こすと、刑事裁判・民事裁判になって、大きな負担が発生します。

裁判を回避するには、弁護士に相談して、被害の回復に向けて速やかに行動を起こすことが必要です。

グラディアトル法律事務所では、これまでにも数多くの盗撮事件の相談を受けて、警察や検察と交渉を行ったり、被害者との示談を成立させる等の弁護活動を行ってきました。

勇気をもってご相談いただいたことで、事態が好転したご相談者様は数え切れません。

盗撮事件で悩んだら、刑事事件に強いグラディアトル法律事務所へご相談ください。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日、全国対応可能な体制を整備しています。

LINEでの無料法律相談も受け付けているので、是非お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード