盗撮は軽犯罪法違反?新設された撮影罪との違いや検挙後の流れを解説

盗撮は軽犯罪法違反?新設された撮影罪との違いや検挙後の流れを解説
弁護士 若林翔
2024年08月28日更新

「盗撮は軽犯罪法違反として処罰されるのか」

「軽犯罪法違反と新設された撮影罪は何が違うのか」

現在では、ほとんどの盗撮行為に対して撮影罪が適用されています。

しかし、2023年7月の法改正によって撮影罪が新設される以前、盗撮は各都道府県の迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反として処罰されることがありました

そのため、結局のところ盗撮は何の罪になるのかよくわからず、不安に感じている人も多いのではないでしょうか。

本記事は、盗撮は軽犯罪法違反となるのか、新設された撮影罪とは何なのかについて、わかりやすく解説します。

盗撮による逮捕・起訴を回避するためにできることなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

盗撮は軽犯罪法の「窃視の罪」に該当する

盗撮行為は軽犯罪法に違反します。

なぜなら、軽犯罪法では第1条23号で「窃視の罪」が定められているためです。

「窃視の罪」の処罰対象となるのは、以下のような行為です。

軽犯罪法第1条23号「窃視の罪」と盗撮

このうち、「その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」とは、旅館の客室・キャンプ場のテント・寝台列車や船の一室などが挙げられます。

なお、エスカレーターなどでスカートの中を見る行為や、女性を見下ろして胸元を見る行為は、「場所」をのぞいているわけではないので、軽犯罪法の要件は満たしません

「衣服をつけないでいる」は、必ずしも全裸・半裸である必要はなく、通常隠している部分が露出している状態のことをいいます。

「ひそかに」に関しては、のぞきが第三者に知られているかどうかは関係ありません

のぞきの対象としている人物に知られないようにしていれば、「ひそかに」のぞきをしたことになります。

「のぞき見た」は、気づかれないようにこっそり見たことを指します。

ビデオカメラ・スマートフォンなどで撮影している場合は、画面を通してのぞいた時点で「のぞき見る」に該当するといえるでしょう。

また、隠しカメラを設置する行為は、回収後に再生したかどうかは関係なく、撮影・録画した段階で「のぞき見た」にあたるとされています。

多くの盗撮行為は、上記のような「窃視の罪」の成立要件を満たすため、軽犯罪法違反となるのです。

盗撮は軽犯罪法違反として処罰される

盗撮は軽犯罪法違反「窃視の罪」として処罰されます。

ここでは、軽犯罪法違反として、どのような盗撮行為がどのような刑罰に処されているのか詳しく見ていきましょう。

軽犯罪法違反の概要

処罰の対象|主に公共の場以外での盗撮行為

軽犯罪法違反として処罰の対象とされていたのは、主に公共の場所以外での盗撮行為です。

公共の場所以外での盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例の処罰対象外であることが多く、迷惑防止条例で対応できない盗撮について、軽犯罪法で逮捕・摘発していたからです。

「公共の場所以外」とは、住居・浴場・更衣場・ビルのトイレなどを指します。

たとえば、隣人のベランダに忍び込み、カーテンの隙間から盗撮した場合には、軽犯罪法違反として処罰されることがあったのです。

なお、電車・バス・駅構内など「公共の場所」での盗撮は、各都道府県が定める迷惑防止条例によって規制されていました。

もっとも、現在では、撮影罪(性的姿態等撮影等処罰法)が新設されたので、撮影罪で逮捕・摘発されることが多いです。

刑罰|拘留または科料

軽犯罪法違反の罪に問われた場合の刑罰は、「拘留または科料」です。

  • ・拘留:1日以上30日未満の間、刑事施設で身柄拘束される
  • ・科料:1,000円以上1万円未満の金銭を徴収される

拘留も科料も、刑罰のなかでは比較的軽い刑に分類されます。

とはいえ、前科がつくことには変わりないため、社会的生活における影響は決して無視できるものではありません。

盗撮の軽犯罪法違反で逮捕された事例

男性警察官が性風俗店の性的サービスを盗撮し、逮捕された事例を紹介します。

大阪府警の警部「後で見返そうと」 性的サービス中に盗撮の疑い 

大阪市内のホテルで性的サービスを受けた際、女性従業員(30代)を盗撮した疑いで、大阪府警少年課の男性警部(52)が現行犯逮捕されました。

軽犯罪法違反(窃視)の疑いで現行犯逮捕されたのは、大阪府警少年課に所属する男性警部(52)です。男性警部は、20日午後4時ごろから約1時間にわたり、大阪市中央区のホテルで、派遣型性風俗店の女性従業員(30代)から性的サービスを受けた際、女性に無断で、スマートフォンで動画を撮影した疑いがもたれています。男性警部は、ベッドの横に置いていた自分のショルダーバックのポケットにスマートフォンを入れて盗撮していたということです。女性が撮影に気付き、連絡を受けた店長(30代)と従業員(50代)が、男性警部を取り押さえて110番しました。男性警部は、府警の取り調べに対し「性的サービスを隠し撮りしていた。後で見返そうと思った」と容疑を認めているということです。男性警部は、20日中に釈放されました。

2023/3/21(日) ABCニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/556ddce655eae025b819f4432927db4ac35429e7

なお、本件のように加害者自身が録画データを見る前に盗撮が発覚したとしても、撮影した時点で軽犯罪法における窃視の罪が成立し得ることを覚えておきましょう。

盗撮の軽犯罪法違反で有罪になった判例

男性がスーパーの女子トイレに侵入し、個室の間仕切りの隙間からビデオカメラで女性の排泄行為を盗撮しようとした事例です。(気仙沼簡易裁判所平成3年11月5日判決)

不審な動きをする男性を怪しんだ女性従業員たちが協力し、1人がおとりとして女子トイレ内に入ったところ、男性が後を追い、隣室との間仕切りの下側から鏡のようなものを使って覗き込んでいる様子を確認。

その場に駆けつけた男性従業員が加害者を取り押さえ、警察に通報しました。

実際には女性従業員が盗撮を予測していたため、排泄行為はせずに水を流しただけであり、男性が映像を確認することもありませんでした。

しかし、男性がおこなった行為の違法性が失われることはなく、軽犯罪法の窃視罪の要件を満たすものとして有罪となり、科料9,000円に処されました。

法改正後は性的姿態撮影等処罰法の撮影罪で逮捕・起訴されることが多い

2023年7月の法改正後、盗撮行為に対しては、性的姿態撮影等処罰法の撮影罪が原則適用されるようになりました。

撮影罪が新設された理由はいくつかありますが、ひとつは、軽犯罪法違反の罰則が軽いことです。

もう一つは、盗撮は各都道府県の迷惑防止条例でも規制されていましたが、規制範囲や刑罰の内容が地域ごとに異なっていおり、盗撮全般を処罰できなかったからです。

法改正で撮影罪が新設

そこで、全国一律の基準を設けて、実効的に盗撮を取り締まるために撮影罪が新設されたのです。

現在では、ほとんどの盗撮行為が撮影罪によって処罰されています。

新設された撮影罪とは?

次に、2023年7月に新設された撮影罪の成立要件と刑罰の内容を詳しく見ていきましょう。

撮影罪の概要

成立要件|正当な理由なく性的姿態をひそかに撮影すること

撮影罪の成立要件は、正当な理由なく性的姿態をひそかに撮影することです。

「性的姿態」とは、主に以下の3つを指します。

  • ・性器、肛門、胸部、臀部などの性的な部位
  • ・性的な部位を直接または間接に覆っている下着
  • ・わいせつな行為や性行為に及んでいる様子

上記のような部位や様子を、スマートフォンや隠しカメラなどを使用して、相手に気づかれないように撮影した場合に撮影罪が成立します。

なお、撮影罪は未遂も処罰対象とされているため、「カメラを設置したがデータが保存されていなかった」「撮影しようしたが相手にバレたのでシャッターは押さなかった」など、撮影行為が完遂していないケースでも罰せられる可能性があります。

刑罰|3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑

撮影罪の刑罰は、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。

従来まで盗撮行為に適用されていた軽犯罪法や都道府県条例に比べて、重たい刑罰が定められています。

もちろん、量刑の判断にあたっては示談の有無や反省の態度などが考慮されるため、起訴された場合でも減刑の獲得を目指して対策を講じることが大切です。

なお、拘禁刑は懲役刑と禁錮刑を統合した新しい刑罰ですが、現在は施行されていません。

拘禁刑の施行は令和7年6月からとされており、当面の間は代わりに懲役刑が科せられることになっています。

処罰の対象となる盗撮行為の具体例

処罰の対象となる盗撮行為としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • ・階段やエスカレーターなどで、スカートの中をスマートフォンで撮影する
  • ・トイレや更衣室に隠しカメラを仕掛けて、下着姿などを撮影する  
  • ・ホテルにカメラを設置し、恋人との性行為を無断で撮影する 
  • ・泥酔した女性の胸元を撮影する

また、相手の同意を得て撮影したとしても、性的な意味合いがないと誤信させていた場合や、相手が16歳未満だった場合(13歳以上16歳未満の場合は加害者が5歳以上年長である場合)などは、撮影罪の罪に問われるおそれがあります。

盗撮で検挙されたあとの流れ

盗撮で検挙されたあとの流れは、おおむね以下のとおりです。

盗撮で検挙されたあとの流れ

盗撮で逮捕された場合は、警察署内の留置所で身柄拘束を受け、48時間以内に検察に送致されます。

そして、送致を受けた検察官は、24時間以内に勾留するかどうかを決定します。

勾留が決定すると原則10日間、最大20日間の身柄拘束を受けなければなりません。

そして、勾留期間中に検察官が捜査を進め、起訴・不起訴の判断をおこないます。

逮捕されずに在宅事件となった場合は、検察や検察からの呼び出しに対して、その都度対応していくことになるでしょう。

最終的に不起訴となれば、その時点で釈放され、元の生活に戻ることが可能です。

起訴された場合には、刑事裁判が開かれ、有罪・無罪の判決が下されることになります。

とはいえ、日本の記事裁判における起訴後の有罪率は99%以上です。

そのため、盗撮で検挙された場合には、まず不起訴処分の獲得を目指すことが大切です。

盗撮による逮捕・起訴を回避するためにできること

ここでは、盗撮による逮捕・起訴を回避するためにできることを解説します。

盗撮による逮捕・起訴を回避するためにできること

事件後の対応次第でその後の人生が大きく変わるので、できるだけ迅速な行動を心掛けましょう。

被害者との示談を成立させる

盗撮による逮捕や起訴を回避するためには、被害者との示談を成立させることが重要です。

示談のなかで金銭的な補償をおこない、反省の態度を示せば、被害者が被害届や告訴状の提出を踏みとどまることがあります。

その結果、事件化する前に問題を解決できるケースも少なくありません。

また、示談が成立すれば、当事者間で和解していることを捜査機関に示せるため、逮捕や起訴を見送ってもらえる可能性は高くなるでしょう。

とはいえ、怒りや恐怖の感情を抱いた被害者に対して、加害者が直接示談交渉を持ち掛けることはおすすめしません。

余計なトラブルを起こさないためにも、示談交渉は弁護士に一任するのが賢明な判断といえます。

できるだけ早く弁護士に相談する

盗撮事件を起こしたときは、できるだけ早く弁護士に相談してください。

早期に弁護士に相談すれば、関係法律や過去の事例などをもとに、個々の状況に応じた最善の対応策を提案してくれます。

また、被害者との示談交渉を迅速に進めてもらえるほか、捜査機関への働きかけもおこなってくれるので、逮捕や起訴を回避できる可能性は格段に高まるでしょう。

犯罪を犯してしまった状況で弁護士という味方ができることは、精神的にも大きな支えになるはずです。

ただし、弁護士にはそれぞれ得意とする分野がある点には注意してください。

盗撮事件の解決実績がない弁護士に依頼しても、思うような成果を得られないおそれがあります。

そのため、盗撮事件を起こしてしまった場合は、盗撮事件に注力している法律事務所のなかから、相談先を選ぶようにしましょう。

グラディアトル法律事務所では、経験豊富な弁護士が24時間365日いつでも対応可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。

盗撮事件を起こした場合はグラディアトル法律事務所に相談を

盗撮事件を起こした場合、現在は原則として撮影罪が適用されます。

従来適用されていた軽犯罪法や迷惑防止条例よりも重たい刑罰が設けられているため、不起訴や減刑に向けてしかるべき対処を講じることが重要です。

しかし、法的な知識のない個人が自己判断で行動しても、事態を余計に悪化させてしまうおそれがあります。

そのため、盗撮をしてしまった場合は、できるだけ早く弁護士にサポートを求めるようにしましょう。

弁護士であれば、個々の状況に応じて考え得る最善の策を提案することができます。

実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数々の盗撮事件を解決してきました。

初回相談は無料、LINEでの相談も受け付けているので、手遅れになる前にまずは一度ご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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