あとで見返すために画像や動画を撮影したものの、盗撮行為がバレているのではないかと不安に感じ、加害者が証拠隠滅を図るケースは決して珍しくありません。
確かに証拠がなくなれば、捜査機関も簡単には動くことができなくなります。
とはいえ、「証拠隠滅しようとすると犯罪になるかもしれない」「データが復元されると状況が悪化するのでは…」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、盗撮したあとに証拠隠滅すること自体は犯罪ではありません。
しかし、逮捕の可能性が高まってしまうので、盗撮してしまった場合には証拠隠滅を図るのではなく、まずは弁護士に相談し、今後の動きについて助言を受けることが大切です。
本記事では、盗撮の証拠隠滅によって生じるリスクなどを解説します。
警察にデータを復元される可能性や今後やるべきことについても記載しているので、参考にしてみてください。
目次
盗撮の証拠隠滅行為自体は犯罪ではない!
盗撮の証拠隠滅行為自体は、犯罪にはあたりません。
刑法上の証拠隠滅等罪は、「他人の刑事事件に関する証拠」を対象としています。
つまり、自分自身の犯罪に関する証拠を隠滅することは、証拠隠滅等罪に該当しないのです。
たとえば、盗撮事件では、スマートフォンで撮影したあとに発覚をおそれてデータを削除するようなケースは多く見られます。
この場合、盗撮自体はもちろん犯罪ですが、データを削除することは法的な処罰の対象外です。
ただし、後述するように、証拠隠滅行為は逮捕の可能性を高めてしまうので、正しい選択とはいえないことを覚えておきましょう。
盗撮の証拠隠滅をすると逮捕されやすくなる
盗撮の証拠隠滅は犯罪にならないものの、逮捕されやすくなる点には十分注意しておきましょう。
なぜなら「証拠隠滅のおそれがあること」は、逮捕の要件のひとつになっているためです。
たとえば、盗撮がバレそうになったときに、スマートフォンのデータを削除したり、機器自体を破壊したりする行為は、逮捕のリスクを逆に高めてしまいます。
逮捕されて身柄が拘束されてしまうと、家族や会社に盗撮がバレる可能性も高くなるので、証拠隠滅行為は絶対にしてはいけません。
できるだけ穏便に済ませたいのであれば、証拠はそのままにした状態で弁護士のアドバイスを受けるようにしましょう。
盗撮の証拠隠滅をしても警察にデータ復元される可能性がある
盗撮の証拠隠滅を試みても、警察によってデータが復元される可能性はあります。
電子機器を用いた犯罪が多様化するなか、警察が特に力を入れているのがデジタル・フォレンジックの強化です。
デジタル・フォレンジックとは、PC・HDD・USBメモリなどのデバイスにあるデータを取得・解析し、犯罪の証拠を押さえるための技術を指します。
例えば、スマートフォンで撮影した盗撮画像・動画が削除されていても、内部メモリやストレージの痕跡をたどり、専門的な解析ツールを使用して、データを復元することができるのです。
実際、警察が盗撮データを復元したことにより、解決に至った事件も数多くあります。
【事案】
県警は、男が勤務していた保育園の女児の保護者から1月に相談を受けて捜査を開始。男のスマートフォンなどを押収したが、わいせつな行為を撮影した動画などは消去されていた。県警から依頼を受けた中部管区警察局は、スマートフォンなどをデジタル・フォレンジックで解析。動画などの復元に成功した。幼い被害者からの詳細な聞き取りは難しく、目撃者もいなかったため、動画などは重要な証拠となった。県警は4月、男の逮捕を発表。7月には強制わいせつ罪などで地裁の実刑判決が確定した。 |
また、盗撮機器自体を破壊しても、内部が傷ついていなければ、データ復元の可能性は残ります。
そのため、盗撮してしまった場合は証拠隠滅を図るのではなく、盗撮の事実を認めたうえで、不起訴や減刑の獲得に向けて行動することが大切です。
盗撮してしまった場合にやるべきこと
次に、盗撮してしまった場合にやるべきことを解説します。
盗撮したあとの対応次第では、不起訴や減刑を勝ち取れる可能性も十分あるので、迅速な行動を心掛けましょう。
盗撮で不起訴になるには?不起訴率や示談の重要性を弁護士が解説
警察に自首する
盗撮をしてしまった場合、警察に自首することが重要な選択肢のひとつとなります。
自ら罪を認めて自首に踏み切れば、「証拠隠滅や逃亡のおそれはない」と判断され、逮捕されにくくなります。
また、自首によって反省の態度を示すことができるので、不起訴処分や減刑を獲得できる可能性も大きく高まるでしょう。
警察署に出頭する際に画像や動画データを提出し、より誠実な態度を示すためにも、証拠隠滅行為は絶対にNGです。
ただし、自首が必ずしも有利な結果をもたらすとは限りません。
隠し通せていたかもしれない事件が必然的に明るみに出るリスクもあるので、自首を検討する場合は、まず弁護士のアドバイスを受けるようにしましょう。
被害者に示談を申し入れる
盗撮してしまった場合は、被害者に示談を申し入れることを優先的に考えましょう。
示談のなかで謝罪と金銭的な補償をおこなえば、被害者の処罰感情が和らぎ、被害届や告訴状の提出を踏みとどまってもらえる可能性があります。
また、示談の成立は当事者間が和解していることの証明でもあるため、検察官が「あえて刑罰を与える必要はない」と判断し、起訴を見送る可能性が高くなるのです。
ただし、示談交渉は被害者の心情に配慮しつつ、慎重に進めなければなりません。
加害者と被害者が直接やり取りすると余計なトラブルを招くおそれもあるので、示談交渉は弁護士に任せることをおすすめします。
盗撮の示談金相場は10~100万円!適正な金額の早期解決法を紹介
できるだけ早く弁護士に相談する
盗撮をしてしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
盗撮事件を得意とする弁護士であれば、関係する法律や過去の事例をもとに、個々の状況にあわせた最善の解決策を提案してくれます。
また、示談交渉や捜査機関への働きかけなども進めてくれるため、逮捕を回避し、不起訴処分となる可能性が格段に高まるはずです。
自首する場合でも弁護士に同行してもらえば、証拠隠滅・逃亡のおそれがないことを説明してくれたり、取り調べでの振舞い方をアドバイスしてもらえたりとさまざまなメリットがあります。
ただし、相談するタイミング次第では手遅れになってしまうので、少しでも早く信頼できる弁護士を見つけるようにしてください。
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盗撮の証拠隠滅に関するよくある質問
最後に、盗撮の証拠隠滅に関するよくある質問を紹介します。
同様の疑問を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
証拠がなければ盗撮で逮捕されない?
一切証拠がなければ、盗撮で逮捕される可能性は低くなります。
逮捕は人の自由を奪う重大な手続きなので、一切の証拠がないなかで実行に移すことは基本的に考えられません。
とはいえ、想定外の証拠が見つかり、逮捕される可能性はあります。
実際に警察が捜査を進めるなかで、目撃者の証言や防犯カメラの映像などの証拠が見つかり、逮捕に至るケースも少なくありません。
そのため、証拠がないからといって安心せず、まずは弁護士に相談し、今後の対応について助言を受けることが重要です。
盗撮の証拠になり得るものは?
盗撮の証拠になり得るものは、おおむね以下のとおりです。
- ・端末のデータ
- ・自宅のHD
- ・クラウドのデータ
- ・カメラを仕込んだ鞄や靴
- ・被害者や目撃者の証言
- ・防犯カメラ映像
上記のほか、加害者の自白も証拠のひとつです。
ただし、法律上、自白だけでは有罪にできないと定められているため、捜査機関は自白以外の証拠も集めていくことになります。
警察はどこまでデータを復元できる?
警察によるデータ復元の具体的な範囲は明確ではありません。
しかし、先述したように「デジタル・フォレンジック」と呼ばれる、高度な技術を有していることは確かです。
端末上でデータを削除したり、機器を破壊したりした程度では、完全に復元される可能性も十分あります。
そのため、証拠隠滅によって盗撮の罪を免れようとすることは考えないようにしてください。
盗撮の余罪が見つかるとどうなる?
盗撮の余罪が見つかっても、新たに立件される可能性は低いといえます。
なぜなら、盗撮データから犯行現場や被害者を特定することは難しく、すべての余罪を詳細に捜査するのは現実的ではないためです。
しかし、余罪があることで、常習性があり悪質性も高いものと判断され、本罪が起訴されやすくなったり、本罪の量刑が加重されたりするケースはあります。
なお、盗撮に適用される罪は主に撮影罪であり、罰則は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。
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盗撮事件を起こしたときはグラディアトル法律事務所に相談を
盗撮後に、証拠隠滅を図ること自体は犯罪になりません。
しかし、削除したデータは警察に復元されることがあるうえ、証拠隠滅行為が発覚すると逮捕の可能性も高まります。
そのため、盗撮してしまった場合には証拠隠滅を図るのではなく、まずは弁護士に相談し、法的に正しい解決方法を模索していくことが大切です。
弁護士のサポートのもと、示談を早期に成立させることができれば、事件化する前に解決できる可能性も十分あります。
実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数々の盗撮事件を解決してきました。
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