「階段で知らない男性からスカート内を盗撮されてしまった」
「盗撮の被害届を提出したいが、どうすればいいかわからない」
「盗撮の被害届はいつまでに提出すればよい?」
盗撮の被害にあった場合には、犯人を捕まえてほしいと思うのは当然の気持ちです。しかし、ほとんどの被害者の方は、盗撮被害にあうのが初めての経験ですので、被害届の提出方法や示談の流れなどわからないことも多いと思います。
被害届の提出方法がわからず、手間取ってしまうと、犯人を捕まえる機会を逃してしまう可能性もありますので、適切なタイミングで行うことが大切です。
本記事では、
- 盗撮被害にあった場合の被害届の提出方法
- 被害届を提出することで生じる効果
- 盗撮の被害届を提出する際の注意点
などについて、わかりやすく解説します。
目次
盗撮被害にあった場合の被害届の提出方法
被害届とは、犯罪の被害にあった事実を捜査機関に申告する書類です。盗撮被害にあった場合には、以下のような方法で被害届を提出します。
最寄りの警察署に行く
盗撮の被害にあった場合には、被害届を提出するために、まずは盗撮被害にあった現場の最寄りの警察署に行きます。
警察署ではなく交番でも被害届の提出は可能です。しかし、交番だと警察官の人員も限られており、時間をかけて対応するのが難しいこともありますので、できる限り警察署に行くべきでしょう。
警察署に被害届の提出に行く場合には、事前に警察署に連絡して、事件の概要と被害届の提出に行く日時を伝えておくと、その後の手続きがスムーズです。また、以下のようなものを準備しておくとよいでしょう。
- ・身分証明書(運転免許証など)
- ・印鑑
- ・盗撮の被害状況(日時、場所、方法など)をまとめたメモ
被害届の作成
被害届は、被害者自身が作成したものを警察署に提出するという方法もありますが、警察で犯罪事実を申告し、その内容を踏まえて警察官が作成するのが一般的です。
被害届には、決まった書き方はありませんが、以下のような内容を記載することが多いため、警察官に聞かれてもすぐに答えられるようにあらかじめメモなどにまとめておくとよいでしょう。
- ・被害者の住所、氏名、年齢、職業
- ・被害が発生した日時
- ・被害が発生した場所
- ・被害状況、犯行態様
- ・犯人の特徴(性別、年齢、体格、服装など)
たとえば、盗撮被害であれば、「○年○月〇日午前○時○分に、○○駅の1番ホームに向かう階段で、後ろにいた30代くらいの中肉中背の男性から、スカート内にスマートフォンを差し向けるといった盗撮被害にあった。犯人は、黒い帽子をかぶり、黒いTシャツとジーンズを身に着けており、赤色のスニーカーを履いていた。」といった内容を警察官に申告することになります。
被害届を提出
警察官は、被害者からの申告内容に基づいて被害届を作成します。被害者は、その内容を確認して、間違いないようであれば被害届に署名押印をします。これで被害届は完成です。
完成した被害届は、担当の警察官に提出すれば、被害届の提出は完了です。
盗撮の被害届の提出はスピードが大事
盗撮の被害届を提出する場合は、被害にあった時点からできる限り早いタイミングで提出することが大切です。
法律上は被害届の提出期限は、特に設けられていませんので、盗撮被害から時間が経ってからの提出も可能です。しかし、盗撮被害から時間が経ってからでは、犯人を特定するために必要になる証拠がなくなってしまう可能性が高くなります。
たとえば、防犯カメラの映像であれば、1週間から1か月程度しか保存されていません。そのため、保存期間を超えてしまうと防犯カメラに犯人の姿が捉えられていたとしても、証拠として利用することができません。
また、警察官によっては、盗撮被害から時間が経ってからの被害届の提出に消極的なケースもあります。
そのため、被害届を提出するなら盗撮被害にあった当日または数日以内に行うようにしましょう。
盗撮で被害届を提出するとどのような効果が生じる?
盗撮で被害届を提出することで、一般的に以下のような効果が生じます。
警察が捜査を開始する
被害届の提出は、警察が盗撮という犯罪行為が行われたことを知るきっかけになります。
被害届が警察により受理されたということは、事件性があり、犯人を処罰する必要性があるということを認めたことになりますので、犯人の特定や処罰に向けて捜査を開始することになります。
ただし、被害届をしたとしても、警察が捜査に着手するタイミングについては法律上の決まりはありません。そのため、事件の内容や捜査体制によっては、すぐに捜査に着手されずに放置されてしまう可能性もあります。
犯人が特定される
警察が捜査に着手すると、犯行現場の客観的証拠(防犯カメラ、ICカードの利用履歴など)や目撃者の証言などから犯人の特定が進められます。
捜査の結果、犯人と疑われる人物が特定できた場合には、任意の事情聴取などにより、犯人であるかの特定が進められ、状況によっては、犯人が逮捕されることもあります。
示談交渉により示談金が支払われる
警察による捜査の結果、盗撮事件の犯人が特定された場合、犯人(または犯人の代理人弁護士)から被害者に対して、示談の話が持ちかけられることがあります。
犯人側との示談交渉により、示談を成立させて示談金を受け取るというのも、被害者が受けた被害を回復するひとつの方法です。納得できる示談金が提示されたのであれば、示談もひとつの選択肢として検討してみるとよいでしょう。
ただし、犯人との間で示談を成立させると、不起訴処分になるなど犯人にとって有利な処分が下される可能性が高くなりますので注意が必要です。
盗撮の示談金・慰謝料の相場は10万円〜100万円程度です。具体的な事情により異なります。
示談をせず、慰謝料請求については、被害届を提出して、刑事処分が行われた後に民事訴訟を提起するという方法もあります。
盗撮と民事訴訟・慰謝料請求についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
犯人が刑事処分を受ける
犯人が特定された後は、警察での取り調べ、検察での取り調べを経て、最終的に検察官により、事件を起訴するか不起訴するかの判断が行われます。
事件が起訴された場合、公開の法廷で裁判が開かれ、審理の結果、犯人の処罰が決定されます。ただし、盗撮事件の場合には、罰金になるケースが多いため、略式手続きという簡略化された手続きで処分が決定されることもあります。
なお、犯人に対して、どのような処分が下されたか(公判請求、略式起訴、不起訴など)については、担当の検察官から被害者に対して通知されるのが一般的です。
盗撮で被害届を提出する際の注意点
盗撮事件の被害者が被害届を提出する際には、以下の点に注意が必要です。
被害届を受理してもらえないこともある
犯罪捜査規範61条1項では「警察官は、犯罪による被害の届出をするものがあったとき(略)これを受理しなければならない」と定められていますが、実際には、被害届を素直に受理してくれないこともあります。
なぜなら、被害者からの被害申告のすべて事件性・犯罪性があるとは限らないからです。また、事件性・犯罪性があったとしても、軽微な事件にまで限られた人員を割きたくないといった事情もあると考えられます。
特に、盗撮事件の場合には、盗撮被害から時間が経っていると、犯人の特定が難しいという事情もあるため、被害届を受理してくれないケースも少なくありません。そのため、盗撮被害にあった場合には、できる限り早めに被害届を提出することが大切です。
被害者も捜査への協力を求められる
被害届を提出すればそれで終わりというわけではありません。被害者もその後の捜査の協力を求められることがありますので、それに対応しなければならないという負担が生じます。
たとえば、犯行状況を明らかにするために、被害者立ち合いのもとで被害状況の再現見分が行われることがあります。また、犯人の特徴や人相などを確認するために警察署での事情聴取が行われることもあります。
被害者としては、その都度、盗撮という嫌な経験を思い出さなければなりませんので、精神的ストレスを感じることもあるかもしれません。
盗撮動画・画像が捜査官に見られる
盗撮の犯人が特定されると、警察では、証拠を確保するために、犯人のパソコンやスマートフォンなどの解析を行います。その結果、盗撮動画や画像が残されていた場合には、その動画や画像が捜査官の目に触れてしまいます。
捜査のためにやむを得ないものであったとしても、被害者としては、下着姿など他人には決して見られたくない姿を見られてしまいます。被害届を提出することにより、このような精神的負担が生じることもありますので注意が必要です。
盗撮被害を受けたときは弁護士に相談を
盗撮被害を受けて、被害届の提出をお考えの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
被害届の提出に同行してもらえる
盗撮被害を受けた被害者は、非常の心細く、不安な気持ちでいっぱいだと思います。そのような状況で不慣れな被害届の提出までしなければならないのは、大きな負担といえるでしょう。
そのような不安を感じている方は、弁護士への依頼をご検討ください。弁護士に依頼をすれば、警察署への被害届の提出に同行してくれますので、警察への被害申告も不安なく進めることができます。被害者の方からの説明では不足する部分については、弁護士が補足して説明することもできますので、警察に被害届が受理される可能性も高くなるでしょう。
犯人との示談交渉を任せることができる
被害者が盗撮をした犯人と直接示談交渉をしなければならないのは、大きな負担となります。また、示談金の相場などを知らずに示談に応じてしまうと、不利な条件での示談になってしまうおそれもあります。
そのような負担やリスクを回避するためにも示談交渉は弁護士にお任せください。弁護士であれば、被害者に代わって示談交渉を行うことができますので、被害者自身の負担は大幅に軽減します。また、示談書に被害者自身の情報(住所、氏名、口座番号など)を記載する必要もなくなりますので、個人情報が相手に伝わるという不安もありません。
まとめ
盗撮の被害にあった場合には、すぐに被害届を提出することが大切です。時間が経ってからでは、犯人の特定に必要な証拠が失われてしまいますし、警察に被害届を受理してもらえない可能性が高くなります。
ご自身で盗撮の被害届を提出することに不安や負担を感じるようであれば、弁護士に相談することで、被害届の提出の同行や示談交渉の代行などのサポートを受けることができます。盗撮事件で被害届の提出をお考えの方は、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。