【盗撮で逮捕】準抗告が認められ早期の釈放を実現できた事例

撮影罪とは?構成要件や盗撮での迷惑防止条例との違いなど徹底解説!
弁護士 若林翔
2025年02月19日更新

「息子や夫が盗撮で逮捕されてしまった」

「いつ釈放されるのか心配」

などの悩みを抱えている方もいるでしょう。

今回は、息子さんがトイレの盗撮で逮捕・勾留されてしまったものの、弁護士が準抗告を申し立て、3日間での早期釈放ができた事例を紹介します。

 

盗撮で逮捕・勾留された経緯

痴漢で逮捕されると何罪になるの?罰金や懲役を解説

当事者は、東京都新宿区にてコンビニの店長を勤める30代前半の未婚男性。
相談者は、当事者と同居している父親でした。

ある日の昼頃、相談者の自宅電話に警察から連絡が。

何事かと話を聞くと、息子さんを職場で盗撮した疑いで逮捕したとのこと。
ただ息子さんは盗撮したことを認めているので、ある程度取調べが終われば釈放して、あとはいわゆる在宅で捜査する見込みであるとのことでした。

在宅の捜査であれば、取調べなどで呼ばれたときだけ警察署等に出向けばいいので、生活に支障は少なくてすみます。

相談者はなぜ息子がそんなことに不安に感じたものの、しばらくして釈放されるのであれば直接息子に話を聞けばいいと思って、息子の帰りを待っていました。

ところが夕方ごろ、再度警察から連絡。
事情が変わり、息子さんを釈放せずに逮捕したとの連絡でした。

しかも、その次に警察からきた連絡は、息子を勾留したという内容でした。

勾留となると、原則10日間、最大で20日間もの長期間、留置所に身体拘束されてしまうこととなります。

このような長期間の身体拘束は肉体的・精神的に負担が大きいものですし、勾留されている間は職場にも行くことができないので、仕事を辞めざるを得なくなるケースもあります。

盗撮の逮捕については、以下の記事もご参照ください。

【盗撮逮捕を全解説】逮捕されるケースや流れ、前科リスク回避策を解説

【半年〜1年後も】盗撮の後日逮捕はある!今できる回避策を解説

 

 

【盗撮で逮捕・勾留】弁護士への相談・依頼と初回接見

相談者は、慌ててインターネットで「盗撮トラブル」について調べ、当事務所を発見、初回無料相談の連絡をいただきました。

早速、弊所弁護士との相談となりましたが、相談者はあくまでも警察から聞いた内容しか知らないため、弁護士は当該男性に直接話を聞く必要があると考え、警察署に接見を行くことを提案しました。

接見とは、身柄を拘束されている被疑者あるいは被告人と弁護士が面会することを指します。

接見は、被疑者・被告人が取り調べでどのような話せばいいのかを弁護士と打ち合わせできたりする重要な制度です。

弁護士は、被疑者の人権保護のために活動しますので、制約のない自由な接見が保証されています(一般の方の面会は、面会可能時間は9:30ころから16:15頃と制限されますし(※留置所によって異なります)、面会時間も15分程度と短時間に限られることが通常です。

また、事件に関する会話は警察官にメモされてしまうので、自由な会話もできない状態となります。急ぎ伝えたいことがあれば、弁護士に代行を頼むこともできます。なお、面会は、家族以外にも友人や恋人でも可能です。)。

相談者の了承を得て、弁護士が警察署に電話して、当該男性の在監を確認し、警察署に向かいました。

在監の確認とは、実際に接見ができるか、警察署に確認をいれることです。現に取り調べ中などの場合は、弁護士といえども、すぐさま取り調べを中断させて接見を開始することはできません。もっとも、不当に長期間接見をさせないような場合には、弁護士から積極的に抗議して、できるだけはやく接見をすることを目指していきます。

本件では、警察署の接見室にて、弁護士が男性本人と直接対面し、早速詳しい事情を聴取することができました。
・ 店長を勤めるコンビニの女子トイレにスマートフォンの動画機能を起動させたままの状態で設置、盗撮をした。
・ それが、女子従業員に見つかり、発覚。警察に通報され、逮捕される。
・ 警察や検察に対し、盗撮行為をしたことは認めている。
・ 盗撮していた動画は、自宅PC等に保存しておらず、盗撮に使用していたスマートフォンにしか保存していない(当該スマートフォンは警察が押収されて、手元にはない。)。

 

本件盗撮事件における弁護士の方針

上記事情を聴取し、弁護士は、以下の弁護方針を伝えました。

1 勾留は、上記のとおり最大20日間もの長い時間、身柄拘束される可能性があり、精神的・身体的負担も大きく、それだけの期間拘束されてしまっては職を失う可能性がある。そこで、早期の身柄解放のために、勾留決定に対する準抗告を申し立てること。
(準抗告とは、勾留の決定に対して不服がある場合に、裁判所に対して勾留の決定の取消し又は変更を請求することです。)

2 盗撮の被害にあった女性従業員と示談をし、不起訴処分を目指すこと。
起訴をされると、裁判がはじまることになります。裁判となると、有罪となる可能性が高く、有罪判決が下されれば、前科つくこととなります。前科がつくと、履歴書の賞罰欄に記載しなくてならず、そのため就職が難しくなったり、隠して就職したとしてもそれがバレてしまうと解雇事由にもなる等、社会生活に様々な支障が出ることとなります。

起訴するか否かは、検察官が決定するのですが、被害者との示談の成立は、不起訴に傾く重要な要素となります。

上記弁護方針に納得してもらい、男性から正式に私選弁護人となる依頼をいただきました。

 

盗撮事件での早期釈放のための準抗告の申立て

勾留決定に対する準抗告とは、前述のとおり裁判官が行った勾留決定に対して不服がある場合に、裁判所に対して(行うことができる手続きで)、勾留決定の取消し又は変更を請求することです。

準抗告が認められた場合、在宅捜査に切り替わり、留置所にずっと居なければならない状況から解放されることになり、当然職場にも行けるようになります。

準抗告が認められるためには、一度下された裁判官の勾留決定を覆すだけの「相応の理由」が必要となります。相応の理由として、重視されるのは、罪証隠滅のおそれがないこと、逃亡のおそれがないことです。勾留決定は裁判官の決定ですので、覆すことのハードルが高く、簡単に認められるものではありませんが、絶対に認められないというものでもありません。

本件で、弁護士は、被疑者には仕事や同居の家族がいて逃亡のおそれがなく、また、唯一動画を保存していたスマートフォンは警察が押収済みであり、もはや被疑者の手元にはないため、動画を削除するなどの証拠を隠滅する蓋然性がないこと等を丁寧に裁判所に説明しました。

その結果、裁判所に準抗告が認められ、勾留決定が取り消すという決定を勝ち取ることができました。

こうして依頼者は逮捕されてから3日後に、無事に釈放されました

盗撮で逮捕された場合の釈放までの流れや9つの釈放のタイミングについては、以下の記事をご参照ください。

盗撮で逮捕!釈放までの流れと成立する犯罪について解説

 

示談により不起訴処分を狙う

示談書

身柄が解放されたからといって、事件が終了したわけではありません。

上述のとおり、勾留から解放されても、在宅捜査が続き、その後起訴される恐れが残っています。
弁護士は、盗撮被害にあった女性従業員と示談をすべく、警察を通して、当該女性従業員と接触しました。

弁護士は、女性従業員に対し、本件について真摯に謝罪、盗撮された動画についてはすべて削除済みであり、拡散等されるおそれがないことを丁寧に説明しました。その上で、示談金を支払うことを提案。

女性従業員は、盗撮された動画等が拡散してしまうことを恐れていたのであり、その心配がないのであればと示談を受け入れていただきました

被害者である女性従業員との示談が成立したため、その結果を不起訴処分が相当であるという意見書と共に検察へと伝えました。上述のとおり示談が成立しているかは、検察の不起訴とするかの判断にとって重大な影響を与えます。

本件では、最終的な処分として、無事不起訴処分となりました。

盗撮の示談・示談交渉、不起訴処分については、以下の記事をご参照ください。

盗撮の示談金相場は10~100万円!適正な金額の早期解決法を紹介

盗撮で不起訴になるには?不起訴率や示談の重要性を弁護士が解説

 

【まとめ】

依頼者は、早期に身柄を解放され、刑事処分も不起訴処分となったため、無事元の職場で今後も働くことができることになりました。

逮捕され、その後勾留決定が出たとしても準抗告で争うことができます。実際、勾留されずに済むような事案だったのに弁護士に相談しなかったために勾留されてしまうということは多くあります。その結果、職を失ったり、長い身柄拘束で体調を崩したりなど取り返しのつかない被害を被ることも珍しくありません。

そのため、早期釈放を目指し早めに弁護士に相談してください。

盗撮がバレたら弁護士に依頼!メリットと盗撮に強い弁護士の探し方

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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