「会社の盗撮がバレたらどうなる?」
「実名報道されるって本当?」
「懲戒解雇される可能性もある?」
盗撮が発覚すると、「罰金・懲役」といった刑事罰だけでなく、会社からも懲戒処分が下されます。
内容は会社によって異なりますが、社会的信頼の高い仕事ほど、重い処分が下される傾向が強いです。
・大企業や公務員:実名報道、懲戒解雇など
・医師や教師:免許の取消など
処分を軽くするためには、速やかに弁護士に相談し、被害の回復に向けて行動を起こすことが必要です。
本記事では、次の点について取り上げました。
・会社の盗撮で成立する犯罪
・職種別の懲戒処分の内容
・社内の盗撮が発覚するきっかけ
・盗撮が発覚した場合のリスク
会社の盗撮で不安を感じている方は、是非ご一読ください。
目次
会社の盗撮で成立する犯罪
会社で盗撮を行った場合、様々な犯罪が成立する可能性があります。
ここでは、会社内の盗撮で問題となりやすい犯罪について解説します。
撮影罪(盗撮罪)
会社内で盗撮を行った場合、基本的には「撮影罪(盗撮罪)」として処罰されます。
撮影罪は、正式名称を「性的姿態等撮影罪」といい、次のような行為が処罰の対象です。
・人の性的な部位や下着を、正当な理由なく、ひそかに撮影する行為(撮影罪)
・撮影された写真や動画を人に提供する行為(提供罪)
撮影罪が成立すると、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科せられます。
※関連記事
「撮影罪とは?構成要件や盗撮での迷惑防止条例との違いなど徹底解説!」
迷惑防止条例違反
盗撮行為によっては「迷惑防止条例違反」に問われることがあります。
迷惑防止条例は、各都道府県で制定されている条例で、性的な部位や下着などの盗撮を禁止しています。
都道府県によって、処罰される行為や罰則が異なるのが迷惑防止条例違反の特徴です。
例えば、東京都の迷惑防止条例では、「トイレ・更衣室・事務所などでの盗撮行為」に対して、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が罰則として定められています。
軽犯罪法違反
会社のトイレやシャワー室などをのぞき見すると、軽犯罪法違反となる可能性もあります。
軽犯罪法第1条23
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
軽犯罪法で処罰されるのは、「場所」に対する「のぞき見」行為です。
実際に人がいたか、撮影をしていたか等に関わらず、次のようなケースでは「軽犯罪法違反」が成立する可能性があります。
・(無人の)女性用シャワー室をのぞき見する。
・(無人の)女性更衣室をのぞき見する。
「軽犯罪法違反」は、「撮影罪」や「迷惑防止条例違反」とならないような場面でも成立する犯罪です。
建造物等侵入罪
盗撮目的で、会社内に立ち入る行為は、建造物等侵入罪(刑法130条前段)になる可能性もあります。
建造物侵入罪が成立する要件
① 正当な理由がなく
② 人の管理する建造物に
③ 侵入すること
自分の所属する会社であったとしても、盗撮目的の立ち入りは「正当な理由がなく侵入する行為」に該当してしまうのです。
建造物侵入罪が成立すると、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が科せられます。
会社内での盗撮が発覚するきっかけ
会社内での盗撮行為は、様々なきっかけで発覚します。
被害者が会社に相談する
盗撮の被害にあった人が、会社に相談するケースがあります。
被害者が上司や人事部門などに報告することで、会社が盗撮の事実を把握し、内部調査を開始します。
特にここ数年、多くの会社で
・セキュリティカードなどで入退室が管理されている
・入口に防犯カメラが設置されている
・会社が性犯罪に対して敏感になっている
などの傾向があるため、被害者の相談によって発覚するケースが増えています。
盗撮を目撃した同僚が会社に報告する
盗撮の現場を目撃した同僚が、会社に報告するパターンも多いです。
例えば、次のようなケースが挙げられます。
・会議中に、スマートフォンを不自然な角度で構えているのを目撃した
・女子トイレや更衣室から、男性社員が出てくるところを見かけた
社内で不審な行動を発見した場合、本人に確かめるよりも、まず会社に報告される可能性が高いです。
顔を知っている間柄である程、関係の悪化を避けようとして、直接伝えることが難しくなるからです。
自分が気づかない内に、同僚から会社に報告されて、水面下で調査が進んでいるケースもあります。
カメラが発見される
盗撮に使用されたカメラが発見されることで、発覚するパターンもあります。
設置していた隠しカメラを、清掃員や設備業者などが偶然見つけ、会社に連絡するようなケースです。
発見されたカメラは警察に提出されて、捜査機関によって犯人が特定されます。
警察に被害届が提出される
盗撮の被害者が、直接警察に相談して、被害届を提出するケースもあります。
この場合、会社にも警察から連絡が入ります。
社内でヒヤリングが実施されたり、現場検証や防犯カメラのチェック、入退館証の確認など、様々な捜査が行われるでしょう。
会社内の撮影は全て盗撮?
会社内の撮影行為が、全てが「盗撮」になるわけではありません。
状況によっては、盗撮に該当しないケースもあります。
盗撮に該当するケース
会社内の撮影が「盗撮」に該当するのは、次のようなケースです。
・トイレや更衣室など、プライバシーが守られるべき場所での撮影
・スカートの中やブラウスの胸元など、服の中を盗み見るような撮影
・性的な興味や好奇心から行われる撮影
これらは、人のプライバシーを侵害し、性的欲求を満たすことを目的とした撮影であるため、明らかに盗撮に該当します。
犯罪として厳しく処罰される可能性が高いでしょう。
盗撮に該当しないケース
一方で、会社内の撮影が全て盗撮になるわけではありません。
業務上必要な撮影など、正当な理由に基づく撮影は、適法な撮影と見なされます。
例えば、次のような撮影は「盗撮」に該当しない可能性が高いです。
・本人の同意を得た上で行う、業務上の撮影
・社内イベントの記録や広報用に行う写真撮影
・セキュリティ目的で行う、防犯カメラの撮影
ただし、これらの撮影であっても、撮影の方法によっては注意が必要です。
例えば、盗難防止が目的だったとしても、更衣室やシャワー室などに防犯カメラを設置すると違法と判断される可能性があります。
・カメラを設置する目的は正当なのか
・代わりの方法は無いのか
・保護される利益とのバランスが取れているのか
などについて、法律的な検討が必要です。
会社内の盗撮が発覚するリスク
会社内で盗撮行為が発覚すると、様々なリスクが発生します。
実名で報道される
会社内の盗撮事件は、メディアで実名報道されるリスクがあります。
「公務員」や「大企業」で勤務していたり、「医師」や「弁護士」などの資格を持っていたり、社会的信用が高い仕事である程、実名報道のリスクは高くなります。
【公務員の盗撮が、実名報道されたケース】
銭湯で盗撮しようとしたとして、警視庁は外務省職員の⚫⚫容疑者(⚫)=東京都墨田区=を性的姿態撮影等処罰法違反(撮影未遂)と建造物侵入の疑いで現行犯逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。「盗撮はしていない」などと容疑を否認しているという。
逮捕は10日。捜査関係者によると、逮捕容疑は10日午後9時半ごろ、墨田区内の銭湯に裏口から侵入し、女湯の外気浴スペースをスマートフォンで撮影しようとしたもの。
⚫⚫容疑者が塀の隙間からスマホを差し込んでいるところを従業員が発見し、取り押さえたという。
外務省によると、⚫⚫容疑者は大臣官房⚫⚫課の事務官。
同省は「職員の逮捕は極めて遺憾。厳粛に受け止めている」としている。
(引用:2024年7月12日 朝日新聞デジタル)
※⚫はプライバシーの観点から、弊所で黒塗り
逮捕される
会社内の盗撮行為が発覚すると、逮捕されるリスクもあります。
盗撮で逮捕されると、最長23日間に渡って拘束されて、外部との連絡も厳しく制限されてしまいます。
会社に出勤できないのはもちろん、家族との連絡も制限されるでしょう。
早期に釈放されるには、弁護士に接見を依頼して、速やかに弁護活動を開始することが必要です。
刑罰が科せられる
裁判で有罪判決を受けると、刑罰が科されてしまいます。
撮影罪(盗撮罪)の法定刑は、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。
初犯であれば「罰金」で済むケースもありますが、常習性が高かったり、悪質だと判断されると、最大3年の「懲役」が科されます。
特に、盗撮行為と併せて「建造物侵入罪」などが成立していると、量刑が重くなる可能性が高まります。
損害賠償請求をされる
会社内での盗撮行為は、(民事上の)損害賠償請求にも発展します。
例えば、次のようなケースです。
【被害者から、損害賠償請求されるケース】
・精神的な苦痛に対する慰謝料
・盗撮で休業した場合の休業損害
【会社から、損害賠償請求されるケース】
・盗撮で従業員が辞めてしまった場合の損害賠償
・盗撮の調査で営業できなかった場合の休業損害
・盗撮で評判が落ちたことへの損害賠償
いずれのケースでも、刑事上の「罰金」とは別に支払いが発生します。
多額の支払いを命じられれば、経済的に深刻なダメージを受けるでしょう。
懲戒解雇される
会社内での盗撮が発覚すると、職場から懲戒解雇される可能性も高いです。
就業規則や法律に沿って、「厳重注意・出勤停止・減給・降格・停職・懲戒解雇・懲戒免職」などの処分が下されるでしょう。
どのような処分となるかは、職種によって異なります。
職種別の処分は、次章で詳しく解説します。
【職種別】盗撮に対する会社内の処分は?
会社内で盗撮行為が発覚した場合、懲戒処分の内容は職種によって異なります。
職種ごとの処分内容を説明します。
民間企業の場合
民間企業の場合、懲戒処分の内容は、就業規則に基づいて決定されます。
就業規則は企業によって異なりますが、厚生労働省の「モデル就業規則」では、次のような内容が示されています。
(懲戒の事由)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
・会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)
・素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
通常であれば、社内での盗撮は、「素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱す行為」に該当します。
被害者に与える苦痛の大きさや、社内への悪影響も踏まえると、懲戒解雇となる可能性は低くありません。
公務員の場合
公務員の場合、法律に則った懲戒処分が下されます。
例えば、国家公務員のケースでは、次のように決められています。
(禁錮以上の刑に処せられた場合)
・当然に失職する(国家公務員法76条、38条1号)
(その他の場合)
・停職又は減給など(懲戒処分の指針について(人事院))
撮影罪で起訴されて懲役刑が確定すると、当然失職となり、退職金も支給されません。
執行猶予が付いたとしても、「禁錮以上の刑」である以上失職は免れず、民間企業以上に重い処分が下されるのです。
罰金や不起訴の場合は、人事院の定める「懲戒処分の指針」によって処分されます。
地方公務員の場合は、条例で決められているため、各自治体によって異なります。
基本的には「国家公務員」を参考に、懲戒処分の指針が作成されていることが多いです。
教師の場合
教師が盗撮をした場合も、法律に基づいた処分が下されます、
(禁錮以上の刑に処せられた場合)
・失職する(学校教育法9条)
・教員免許を失う(教師職員免許法5条1項3号)
(その他の場合)
・免職、停職、減給、戒告など(各教育委員会又は学校法人の決定による)
禁錮以上の刑(禁錮・懲役)が確定すると、公立・私立を問わず、教師として勤務できなくなります。
教員免許も失ってしまうため、免許を再び取得しない限り、教師として再就職することはできません。
罰金や不起訴となった場合の処分は、公立・私立によって異なります。
公立学校に勤務する場合は、教育委員会によって懲戒処分の内容が決められます。
私立学校の場合は、就業規則によることが通常です。
医師の場合
医師が盗撮した場合も、重い処分が下されます。
勤務医・開業医問わず、罰金以上の刑が確定すると、次のような処分を受ける可能性があります。
・医師免許の取り消し
・3年以内の業務停止(医業の停止)
(医師法4条第3号、7条)
実名報道される可能性もあるため、早急な対処が必要です。
会社の盗撮がバレたら自首するべき?
会社内で盗撮してしまい、それを反省しているのであれば、自首することも選択肢の一つです。
盗撮が発覚する前に自首をすれば、反省の態度が評価され、刑が減刑される可能性は高くなるでしょう。
ただし、自首をすれば、盗撮の事実が会社に伝わることは避けられません。
たとえ逮捕は免れたとしても、就業規則に基づく懲戒処分を受ける可能性が高いです。
また、自首することで、そのまま逮捕されるリスクもあります。
自首による減刑は、あくまでも裁判所の判断によって行われるため、罰金や懲役を確実に回避できる保証はありません。
むしろ、被害者と示談交渉して、被害届の取下げ等を求めた方が良いケースも多いです。
自首は選択肢の一つではありますが、1人で決断するべきではありません。
必ず事前に弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けましょう。
最終的に自首する場合も、当日、弁護士に同行してもらうことを強くおすすめします。
会社の盗撮を弁護士に相談するメリット
会社内で盗撮してしまった場合は、早急に弁護士へ相談しましょう。
速やかに弁護士に相談することで、次のようなメリットが期待できます。
懲戒解雇を防げる可能性が高まる
盗撮行為が発覚したからといって、必ずしも懲戒解雇が認められるわけではありません。
懲戒解雇が有効となるためには、「合理的な理由」や「社会通念上相当であること」が必要だからです。
弁護士に相談すれば、同様の事例などを参考にしつつ、懲戒解雇の妥当性を判断してもらえます。
不当に重い処分となっている場合は、処分を軽くするよう、会社に掛け合ってもらえるでしょう。
退職金の減額・没収を防げる
万が一、懲戒解雇されてしまった場合も、退職金の減額・没収を防げる可能性が高まります。
懲戒解雇の場合、多くの企業では、就業規則によって「退職金の減額・没収」が定められています。
しかし、実は就業規則だけで、退職金を不支給とすることは認められていません。
退職金は、「賃金の後払い」的な性格を持っているからです。
裁判でも「それまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信行為」がある場合のみ、不支給が認められていることが通常です。
弁護士に依頼すれば、会社との交渉も一任できます。
法律的な観点から交渉することで、きちんと退職金を受け取れる可能性は格段に高くなります。
刑事処分の回避が期待できる
早期に弁護士に相談すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性も高くなります。
例えば、
・被害者と示談を成立させる
・被害届を取り下げてもらう
・再犯防止策をアピールする
・上申書などで、反省の状況を伝える
など、あらゆる角度から弁護活動を行うことで、刑事処分が軽くなる可能性が高まるのです。
不起訴になることができれば、盗撮事件の影響を最小限に抑えられるでしょう。
できる限り早く弁護士に相談することが、会社の盗撮トラブルを解決する最善の方策です。
【Q&A】会社の盗撮に関するよくある質問
Q.盗撮事件を起こすと会社に連絡がいく?
社内で起こった盗撮であれば、会社に連絡がいくケースが大半です。
会社の外で起こった盗撮であれば、基本的に連絡はされません。ただし、逮捕によって外部との連絡が取れなくなると、発覚する可能性があります。
Q.盗撮が会社にバレる理由は?
「被害者が会社に相談する」「目撃した同僚から報告される」など様々です。
清掃業者などによって、カメラが発見される場合もあります。
Q.盗撮すると会社から解雇される?
盗撮が原因で、懲戒解雇される可能性はあります。
状況によって異なるため弁護士への相談をおすすめします。
Q.性的な目的ではない盗撮も犯罪になる?
ケースによって異なります。
性的な目的でなくとも、同意なく性的姿態を盗撮すると犯罪となる可能性があります。
Q.従業員が盗撮被害にあったら会社はどうすればいい?
従業員が盗撮被害にあった場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
会社には安全配慮義務があるため、再発防止に向けた取り組みが必要です。
会社の盗撮トラブルで悩んだらグラディアトル法律事務所へ
最後に、今回の記事の要点を整理します。
・会社の盗撮では、「撮影罪」や「建造物等侵入罪」等が成立する
・会社への通報、カメラの発見など、盗撮が発覚する原因は様々
・実名報道や損害賠償など、発覚した場合のリスクは非常に大きい
・懲戒解雇や、資格の取消になる場合もある
会社で盗撮してしまった場合は、速やかに弁護士に相談することが必要です。
早期に弁護活動を開始することで、刑事処分を回避できたり、懲戒解雇を防止できたり、盗撮事件の影響を最小限に抑えることができるでしょう。
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