振り込め詐欺は初犯でも実刑?執行猶予を獲得するための対処法を解説

振り込め詐欺は初犯でも実刑?執行猶予を獲得するための対処法を解説
弁護士 若林翔
2025年01月15日更新

「振り込め詐欺に加担すると初犯でも実刑になる?」

「振り込め詐欺の初犯で執行猶予を獲得するにはどうしたらいい?」

「振り込め詐欺の事案を弁護士に依頼するとどのようなメリットがある?」

振り込め詐欺は、組織的な詐欺犯罪であり、被害額も高額になるため、詐欺事件の中でも特に重い処罰がなされる犯罪類型になります。そのため、振り込め詐欺に加担してしまうと、初犯であっても実刑判決が言い渡される可能性があります。

最近、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)によるSNSなどを利用した闇バイトの募集が増えていますので、誰でも振り込め詐欺の当事者にある可能性があります。高額な報酬に釣られて安易な気持ちで犯罪に加担してしまうと、人生を棒に振る可能性もありますので十分に注意が必要です。

本記事では、

・振り込め詐欺は初犯でも実刑判決の可能性がある
・振り込め詐欺の初犯で実刑を回避して執行猶予が付く可能性のあるケース
・初犯の振り込め詐欺事件を弁護士に依頼する3つのメリット

などについてわかりやすく解説します。

振り込め詐欺事件に加担してしまったときは、弁護士のサポートが不可欠ですので、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談するようにしてください。

振り込め詐欺は初犯でも実刑の可能性あり!

令和3年版犯罪白書では、特殊詐欺事犯者に関する調査結果をまとめています。それによると特殊詐欺事犯者の有期刑(懲役)科刑状況は以下のようになっています。

全部執行猶予(33.2%)全部実刑(66.8%)
1年未満1年以上2年未満2年以上3年以下1年以上2年未満2年以上3年以下3年超4年以下4年超5年以下5年超10年以下
0.5%0.5%32.2%7.4%27.2%17.3%5.0%9.9%

また、振り込め詐欺の事案では、複数の共犯者が関与し、主犯・指示役、架け子、犯行準備役、受け子・出し子などの役割があります。それぞれの役割に応じて実刑になる確率が異なりますので、役割ごとの実刑・執行猶予の割合をまとめると以下のようになります。

役割全部執行猶予全部実刑
主犯・指示役15.8%84.2%
架け子16.4%83.6%
犯行準備役35.5%64.5%
受け子・出し子45.1%54.9%

振り込め詐欺の主犯・指示役や架け子は、主要な役割を担っていますので、有罪になった場合の責任も重く、8割以上が実刑となります。前回の有無に応じた科刑状況の資料がないため、初犯の実刑の確率まではわかりませんが、一般的な詐欺の事案に比べて、実刑になる可能性の高い犯罪であるといえるでしょう。

振り込め詐欺の初犯で実刑・執行猶予になった実際の裁判例

振り込め詐欺の初犯で実刑・執行猶予になった実際の裁判例を紹介します。

り込め詐欺の初犯で実刑・執行猶予になった実際の裁判例

大津地裁令和6年5月24日判決|懲役3年【実刑】

【事案の概要】

被告人は、高齢の被害者を狙い、還付金を受け取るなどの手続をするために、キャッシュカードを交換する必要があるなどとうそを言って、キャッシュカードをだまし取り、そのキャッシュカードを使用して現金を窃取したという事案で、懲役3年の実刑判決を言い渡されました。

【量刑の理由】

本件犯行は、巧妙な手口で敢行され、計画性もあり、悪質で、被害額は合計868万5000円と高額である。そして、被告人は、受け子や出し子役をする共犯者を送迎する役割を担っており、重要な役割を果たしている。被告人は、ギャンブルをしていた中で生活に困窮するなどして犯行に及んだというのであるが、その経緯に酌量すべき点はない。そうすると、被告人の刑事責任は重い。

他方、被告人が受け取っていた報酬が1日1万5000円程度と他の共犯者に比して少額に留まり、組織の中において末端で従属的な立場にあったことは被告人のために相応に考慮する必要がある。その他、被告人が事実を認めて謝罪文を作成し、反省の態度を示していること、被告人が再犯を防止するためにギャンブル依存症の治療を受けていくと述べていること、前科前歴がないこと、母親が出廷して被告人を監督すると誓約していることなどの被告人のために酌むべき事情が認められるが、これらの事情を最大限考慮しても、弁護人の求める執行猶予を付すのは相当ではなく、被告人に対しては、主文の刑に処するのが相当と判断した。

宇都宮地裁足利支部令和3年3月17日判決|懲役2年6月・執行猶予5年

【事案の概要】

被告人は、市役所職員および銀行員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、共犯者と共謀の上、市役所職員および銀行員になりすました共犯者らが、被害者(当時86歳)に電話をかけ、「保険料の返戻金があるが、キャッシュカードが古いと出金できないから、確認する必要があるため職員を向かわせる」と嘘を言い、銀行員になりすました被告人が、キャッシュカードのすり替えをするため被害者宅付近に赴いたもののその目的を遂げなかったという事案で、懲役2年6月・執行猶予5年の有罪判決が言い渡されました。

【量刑の理由】

本件は、高齢者を狙い、周到な役割分担の下で実行された組織的かつ職業的な犯行である。被告人は、指示役の指示に従って行動したにとどまり、本件への関与は従属的であったとはいえ、被害者方の訪問という特殊詐欺の犯行計画に欠かせない重要な役割を担っていた。被告人は、借金返済や生活費に窮し、SNSで闇バイトを探し、本件以外にも闇バイトの募集に応募するなどしており、犯罪であると分かりながら本件に関与したものであるが、経緯や動機に酌むべき点は見当たらず、被告人の規範意識は著しく低下していたといわざるを得ない。

他方で、本件は未遂の事案であるところ、被告人が被害者方の特定に至らず検挙されたこと、更には、一般情状として、被告人が被告人質問では黙秘しており、真摯な反省は認められないものの、外形的な事実自体は一応認めていること、被告人に前科前歴がないことなど、被告人のために酌むべき事情を考慮すると、被告人には、主文の刑を科した上、社会内で更生する機会を与えるのが相当である。

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避して執行猶予が付く可能性のあるケース

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避して執行猶予が付く可能性のあるケース

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避して執行猶予が付く可能性のあるケースとしては、以下のようなケースが考えられます。

被害者との間で示談が成立している

振り込め詐欺の被害者との間で示談が成立していれば、執行猶予が付く可能性が高いです。

なぜなら、詐欺罪は、個人の財産を保護法益とする犯罪ですので、示談により被害が回復されれば、処罰の必要性が低減するからです。そのため、振り込め詐欺事件に関与してしまったときは、すぐに被害者との示談交渉に着手して示談成立を目指すことが大切です。

もっとも、振り込め詐欺事件は、被害者が複数いたり、被害金額が高額であるなどの理由で全額の被害回復ができないケースも少なくありません。そのような場合には、示談ができたとしても実刑になる可能性もあります。

関連記事:

詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説

振り込め詐欺が未遂にとどまった

振り込め詐欺の事案では、被害者が途中で詐欺に気付いて財産的被害が生じないケースもあります。このようなケースでは、詐欺未遂罪が成立しますが、詐欺既遂罪と詐欺未遂罪とでは、詐欺未遂罪の方が非難の程度が低いため、量刑も軽くなる傾向にあります。

そのため、振り込め詐欺が未遂にとどまった事案であれば、実刑を回避して執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。

被害金額が小さい

振り込め詐欺の事案が既遂となったとしても、被害金額が小さければ執行猶予が付く可能性があります

詐欺罪は、個人の財産を保護法益としていますので、財産的被害の程度は量刑を判断する際の重要な要素の一つになります。被害金額が小さければ悪質性が低いと評価される可能性があり、被害者と示談をする際にも全額の被害弁償をしやすいため、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性が高くなります。

犯行への関与の程度が低い

振り込め詐欺には、さまざまな役割があり、主な役割としては、以下のようなものが挙げられます。

・主犯、指示役
・架け子
・犯行準備役
・受け子
・出し子

このうち受け子や出し子などは、主犯や指示役から犯行を指示されて、それに従っているだけであり、詐欺グループの中でも末端の役割でしかありません。そのため、犯行に主要な役割を担っている主犯・指示役や架け子などと比べて、受け子や出し子の方が犯行への関与が低いといえますので、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性があります。

下記の記事で受け子や出し子についても詳しく記載していますので、ご覧ください。

振り込め詐欺の受け子・出し子とは?問われる罪や逮捕のきっかけ

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避するなら示談が重要

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避するなら示談が重要

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避するなら、被害者との示談が重要です。以下では、被害者との示談により期待できる効果について説明します。

早期の身柄解放を実現できる可能性がある

振り込め詐欺の事案では、捜査機関に犯行が発覚すると、ほとんどのケースで逮捕されてしまいます。

しかし、逮捕後すぐに被害者との示談を成立させることができれば、勾留を阻止して早期に身柄解放を実現できる可能性があります。勾留を阻止するには、逮捕から72時間以内に示談をまとめる必要がありますので、急いで示談交渉を進めなければなりません。

ただし、振り込め詐欺の事案は、複数の共犯者がいますので、全容が解明されていない段階では、示談が成立していても逃亡や証拠隠滅のおそれを理由に勾留が認められてしまうケースもありますので注意が必要です。

不起訴処分を獲得できる可能性がある

被害者との間で示談が成立していれば、被害が回復されたと評価され、不起訴処分を獲得できる可能性があります。

事件を起訴するか不起訴にするかは最終的には検察官が判断しますが、罪を犯したことが証拠上明らかであっても、さまざまな事情を考慮して不起訴処分(起訴猶予)にすることも認められています。

被害者との示談は、不起訴処分を獲得する際の重要な要素になりますので、示談が成立し、全額の被害弁償ができていれば不起訴処分を獲得できる可能性もあるでしょう。

起訴されたとしても執行猶予になる可能性が高い

振り込め詐欺で起訴されてしまうと約7割の事案で実刑判決が言い渡されます。一般的な詐欺事件に比べると実刑になる可能性が非常に高い犯罪になりますので、初犯であっても実刑になる可能性があります。

しかし、被害者との間で示談が成立していれば被告人にとって有利な情状として考慮してもらえますので、被害弁償の程度によっては、初犯であることも含めて考慮してもらうことで執行猶予付きの判決を獲得できる可能性があるでしょう。

初犯の振り込め詐欺事件を弁護士に依頼する3つのメリット

初犯の振り込め詐欺事件を弁護士に依頼する3つのメリット

初犯の振り込め詐欺事件を弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

被害者との示談交渉をスムーズに進められる

振り込め詐欺事件を弁護士に依頼すると被害者との示談交渉を任せることができます。

振り込め詐欺事件の被害者は、詐欺グループに騙されたことで犯人に対して、怒りや不信感を抱いていますので、加害者本人では被害者と接触することすら困難です。しかし、弁護士が窓口になれば被害者も安心して交渉に応じられますので、スムーズに示談交渉を進めることができます。

また、複数の被害者がいる場合には、それぞれの被害者に対応しなければなりませんが、刑事事件に強い弁護士であればそのようなケースも滞りなく対応してくれます。

執行猶予の可能性を高めることができる

振り込め詐欺事件は、詐欺事件の中でも悪質な犯罪類型にあたりますので、起訴される可能性が非常に高いです。また、起訴されてしまうと約7割の事件が実刑になりますので、適切な弁護活動をしなければ、そのまま刑務所に収監されてしまうでしょう。

弁護士に依頼をすれば、被害者との示談交渉などの弁護活動を行うことで、執行猶予の可能性を高めることができます。執行猶予が付くかどうかによってその後の人生を大きく左右しますので、早めに刑事事件に強い弁護士によるサポートを受けるようにしましょう。

振り込め詐欺に関与した未成年者のサポートができる

最近では、SNSなどを利用した闇バイトの募集をみた未成年者が高額な報酬に釣られて、振り込め詐欺に関与するといったケースも増えてきています。

未成年者の犯罪については、成人の刑事事件とはことなり、少年事件として処理されますので、成人の場合とは異なる特殊性があります。弁護士に依頼をすれば、環境調整などの活動により振り込め詐欺に関与した未成年者へのサポートも可能です。

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避できた当事務所の事例

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避できた当事務所の事例

振り込め詐欺の初犯で出し子として逮捕された事例について紹介します。振り込め詐欺の量刑は重く、初犯でも実刑になるケースも多いですが、本件では、示談が成立し、なんとか執行猶予判決となりました。

【事案の概要】

今回の依頼者は、20代男性のTさんです。

Tさんは、振り込め詐欺・特殊詐欺の「受け子」と「出し子」として逮捕されました。

以前から借金や生活費に困っており、「高時給バイト」という言葉に惹かれて、詐欺かもしれないと感じながらも加担してしまったのです。

その手口は、「被害者から騙し取ったキャッシュカードを使い、ATMでお金を引き出し、報酬を受け取った後、残りの現金を近くの公園に隠す」というものでした。

【弁護方針】

振り込め詐欺を含む、詐欺事件では、執行猶予をとるために、示談や被害弁償の成立が最も重要な要素となります。そこで、弁護士は、まず、被害者への謝罪と弁済のため、検察官を通じて示談交渉を進め、被害金額の弁済を行いました。

また、Tさんの深い反省と更生への強い意思を裁判所に理解してもらうことが最も重要と考え、「情状に関する意見書」を作成しました。

同時に、Tさんの更生を支える環境を整えるため、家族との連携を図りました。

ご両親は当初、「Tさんと関わりたくない」と私たちとの連絡を拒否していましたが、粘り強く説得を続け、最終的には裁判で情状証人として証言してくれることになりました。

祖父母も「Sの将来のために」と、情状証人となることを快諾してくれました。

裁判では、Tさんの深い反省、若年であること、前科がないこと、具体的な更生プラン、そしてご両親と祖父母の支えがあることを強く主張し、執行猶予付き判決を求めました。

【結果】

結果として、Tさんには執行猶予付きの判決が言い渡されました。

実刑判決も覚悟していたTさんは、涙を流して喜んでいました。

ご両親も、Tさんの更生を支えていくことを改めて約束してくれました。

そして、Tさんは働きながら、被害者への弁済を続け、更生の道を歩み始めました。

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避したいならグラディアトル法律事務所にお任せください

振り込め詐欺の初犯で実刑を回避したいならグラディアトル法律事務所にお任せください

振り込め詐欺は、詐欺事件の中でも悪質性の高い犯罪類型ですので、初犯であっても実刑になる可能性は十分にあります。実刑を回避するには、刑事事件に強い弁護士によるサポートが必要になりますので、すぐに弁護士に相談・依頼するようにしてください。

グラディアトル法律事務所では、振り込め詐欺の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、実刑を回避するためのポイントを熟知しています。初犯であれば、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性もありますので、実刑の回避を希望される方は、一刻も早く当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が示談交渉などのサポートを通じて、実刑を回避できるよう全力でサポートいたします。

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)による闇バイトの募集などから安易な気持ちで振り込め詐欺に加担してしまう方もいますが、振り込め詐欺は、詐欺事件の中でも非常に悪質な類型にあたり、初犯であっても実刑判決になる可能性がある重罪です。

振り込め詐欺で実刑を回避するには、刑事事件に強い弁護士によるサポートが必要になりますので、まずは実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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