【電車内で盗撮】逮捕の可能性は?成立する犯罪・逮捕回避の方法を解説

電車内で盗撮】逮捕の可能性は?成立する犯罪・逮捕回避の方法を解説
弁護士 若林翔
2024年10月06日更新

「電車で盗撮をしてしまった。思わず逃げてしまったけどバレないのだろうか」

もしあなたが電車内で盗撮された被害者だとして、逃げた相手の顔が判明していて、犯人が落としたと思われる証拠、付近に防犯カメラがあるのを確認…それだけの状況、物的証拠が残っていた場合、被害届を出すか出さないかで言ったら、おそらく前者ではないでしょうか。

さらに電車内という不特定多数の人がいる状況下では、盗撮行為の一部始終を見ていた第三者がいる可能性も十分に考えられます。

つまり何が言いたいのかというと、電車で盗撮をして、たとえその場は逃げられたとしても、思わぬ証拠や証言から捜査が進行し、あなたの家に警察が来て逮捕される可能性があるということです。

盗撮で逮捕されてしまった場合の流れを図にまとめましたので、まずはご覧ください。

痴漢事件の身柄の流れ

逮捕後は、留置場にて警察の取り調べを受けることになり、最短24時間で検察官に引き継がれます(検察官送致)。さらに24時間の取り調べを受け、勾留となれば最大20日間の身柄拘束を受けます。

起訴されればさらに数ヶ月の身柄拘束は覚悟する必要があるでしょう。

2~3日の身柄拘束ならまだしも、10日以上の拘束ともなれば、会社の解雇、学校からの処分が科されるリスクが高まるので、迅速な対応・早期解決が求められます。

とはいえ“個人”で解決するには限界がありますので、法律のプロである弁護士に相談することが大切です。

まだ逮捕されていない状況であれば、自首を促し逮捕回避に努めたり、逮捕後であっても警察や検察官に意見書を提出し早期釈放を目指すことができるためです。

ただし、弁護士選びにもコツがあります。

  • ・初回相談料が無料の弁護士を選ぶ
  • ・盗撮の解決実績が豊富にある弁護士を選ぶ
  • ・依頼後すぐに駆けつけてくれる弁護士を選ぶ

上記3つのポイントを押さえて弁護士を探さなければ、時間ばかりが過ぎていき逮捕回避は難しくなるかもしれません。

事件前の平和な日常生活を取り戻すためにも、まずは当記事をお読みください。

この記事を簡単にまとめますと、

  • ◎電車内における盗撮になる行為、ならない行為の違い
  • ◎電車内での盗撮は現行犯逮捕が多いが後日逮捕の可能性もある
  • ◎逮捕された場合、大きく分けて5つの流れで進行する
  • ◎盗撮は、「迷惑防止条例違反」や「撮影罪」が成立する
  • ◎盗撮事件に強い弁護士の選び方

といったことが分かります。

ぜひこの記事を参考に、逮捕回避を目指しましょう!

電車内での盗撮で逮捕される行為

~盗撮で成立する犯罪~

罪名刑罰
撮影罪3年以下の拘禁または300万円以下の罰金
  迷惑防止条例違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金 ※罰則は各都道府県によって異なる ※上記は東京都の場合

電車内で盗撮を行った場合、上記の犯罪に該当する可能性があります。

2023年7月以前は各都道府県が定める迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反などで罰するしかありませんでしたが、2023年7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法(=撮影罪)」により、盗撮行為は厳罰化されることとなりました。

現在では撮影罪で処されることが増えたものの、犯行態様によっては迷惑防止条例違反で処さることもあるため、この章では、

  • ◎電車内の盗撮行為で成立する犯罪
  • ◎具体的にどのような行為が盗撮になるのか
  • ◎撮影罪と迷惑防止条例違反が成立する要件

上記3点について深堀りしていきます。

スカート内など下着の撮影は撮影罪・迷惑防止条例に違反し逮捕される

電車内での盗撮だと、女性のスカートや下着を撮る目的で行為に及ぶケースが多いですが、性的な姿態を撮影することは撮影罪や迷惑防止条例違反が成立します。

例えば、撮影罪の条文を確認してみると、

イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

参照:e-GOV法令検索「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」より

上記に当てはめると、スカート内や下着の撮影は、「性的な部位を直接もしくは間接に覆っている部分」に該当するので、電車内の盗撮行為は撮影罪が成立する可能性が高いです。

また、撮影罪の場合は未遂であっても逮捕されることがあります。

  • 例)魔が差してスマホのカメラを向けたが、結果撮らなかった。が、カメラを向けた一部始終を見ていた第三者が「盗撮してたよね」言って、拘束(現行犯逮捕)されてしまった。

状況証拠だけですぐ撮影罪になるわけではありませんが、被害者や第三者の証言、行為態様を収めたカメラなどの証拠などが揃った場合は、逮捕される可能性は十分にありますので注意しましょう。

関連コラム:

スカートは外から盗撮しても逮捕される?逮捕を回避する方法も解説!

胸や尻の接写は迷惑防止条例(卑猥な言動)で逮捕される

上記の通り、性的な部分の撮影は撮影罪や迷惑防止条例違反に該当します。

では、「スカートの中ではなく後ろ姿を撮影(盗撮)した場合」はどうなるのでしょうか。

結論から申し上げますと、迷惑防止条例の卑猥な言動に当てはまるため、条例違反となります。

迷惑防止条例(東京都の場合)の条文を見てみると、

第5条

(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

背中を撮影しただけであれば、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体」には当てはまらないので、条例上の盗撮にはあたりません。

ただし、胸や尻などを強調して撮影(接写)した場合は「卑猥な言動」に抵触しますので、迷惑防止条例違反になる可能性があります。

特に電車などの狭い空間では、カメラを向ける(撮影する)≒卑猥な言動と判断される事例も増えてきておりますので、「背中だけ撮影した」という言い分は通用しない可能性は高いとみるべきでしょう。

性的ではない顔などの撮影は犯罪にならない

撮影罪や迷惑防止条例の条文を読み解く限りでは、「性的ではない顔などの撮影は当てはまらないので大丈夫では?」と思うかもしれませんね。

ですが、本人に無断で写真や動画を撮る行為は「肖像権の侵害」となり、損害賠償請求をかけられる可能性があります。

民法709条

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照:e-GOV法令検索「民法七百九条」より

撮影罪や迷惑防止条例違反のように刑罰に発展する可能性は低いものの、ゼロではありません。特に、電車内という狭い空間での撮影行為は、性的姿態の盗撮と誤認されてしまう可能性もあります。

肖像権侵害による損害賠償請求を回避するためにも、誤って撮影してしまったり、盗撮を疑われた場合には、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。

電車内での盗撮は逮捕の可能性あり|逮捕の種類は2つ

電車内での盗撮は逮捕の可能性あり

電車内での盗撮行為は逮捕の可能性が高いことをお分かりいただけたのではないでしょうか。

では次に、どのような方法で逮捕されてしまうのかについて触れたいと思います。

現行犯逮捕犯行態様が明らかor犯行直後なら即座に逮捕できる手続き。一般人でも逮捕可能
通常(後日)逮捕裁判官が発行する逮捕状を以って逮捕する手続き

電車での盗撮行為は犯行態様が明らかであることが多いので、現行犯逮捕が用いられることが多いです。

その情報からきているのか、「盗撮は現行犯逮捕でしか逮捕されない」という誤信が生まれているようですが、決してそんなことはありません。

被害者が被害届を出していたり、状況・物的証拠、第三者の証言が揃っている状況では警察は捜査に踏み切ることが多いので、通常(後日)逮捕の可能性も十分に考えられます。

「盗撮したけど逃げられたから大丈夫」は安心材料にはなりませんので、逮捕回避に向けた適切な行動を取ることが大切です。

  • ◎なぜ盗撮は現行犯逮捕が多いのか
  • ◎通常(後日)逮捕までの流れ

上記について、もう少し踏み込んで解説していきます。

現行犯逮捕

現行犯逮捕は、現に犯罪したことが明らか、または犯行直後で犯行態様が明らかであった場合に“逮捕状なし”で“誰でも”逮捕できる方法です。

(刑事訴訟法213条)

警察や検察官が裁判官に逮捕状を請求し、それが受理(発行)された場合にのみ逮捕する(通常逮捕)のが本来のやり方なので、現行犯逮捕は例外的な方法といえるでしょう。

では、どのようにして「犯行態様が明らか」「犯行直後で犯行態様が明らか」かと判断するのかというと、刑事訴訟法212条でこのように定められています。

現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。

2.左の各号の一にあたる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる時は、これを現行犯人とみなす。

一、犯人として追呼されているとき。

二、贓物(ぞうぶつ)又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器(きょうき)その他の物を所持しているとき。

三、身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。

四、誰何されて逃走しようとするとき。

参照:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」より

要約すると、

  • ・「あの人が犯人です!」と声をあげている
  • ・犯行に使われたもの(カメラ、スマホなど)を所持している
  • ・身体または衣類に証拠が残っている
  • ・逃走している

上記のケースは現行犯逮捕の要件を満たしているということになります。

このことからも、電車内での盗撮行為は、

  • ・不特定多数の目につきやすい
  • ・電車内という閉鎖空間では逃走経路が限られる
  • ・逃走+スマホ所持で犯行直後をみなされるケースが多い

上記の理由から現行犯逮捕が多いとされています。

電車内で現行犯逮捕となれば、その場で身柄を拘束され警察署に連行されてしまいます。

逮捕後最大72時間は外部との面会が禁止され、家族であっても例外ではありません。

逮捕後の面会禁止期間で唯一面会できるのは弁護士のみですので、もし身内逮捕の一報が届いた場合は、本人に代わり速やかに弁護士へ依頼しましょう。

盗撮の現行犯逮捕については、

盗撮で現行犯逮捕!?家族は何をすればいい?今すぐできる3つの行動

で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

通常(後日)逮捕

通常逮捕は、警察や検察官が裁判官に逮捕状を請求し、受理された場合に逮捕できる方法です。

条文では、以下のように定められています。

第199条

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

参照:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」より

逮捕状を請求し裁判官による審理が必要になるため、現行犯逮捕と比較して「時間がかかる」という特徴があります。

流れとして、逮捕状が発行された翌日早朝に警察が自宅に来て逮捕が一般的ですが、逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合には、請求後数時間で発行され、当日中に通常逮捕となるケースもありますので、「逮捕まで時間あるから大丈夫」という考えは危険です。

また逮捕状が発行されるということは、罪を犯したと考えるに十分な証拠が揃っている状態ともいえますので、(現行犯逮捕と比べ)罪が重くなりやすく、起訴されやすい点も挙げられます。

電車で盗撮してしまい思わず逃げてしまったような状況では、通常逮捕の可能性が高いので、心当たりがある場合は速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。

盗撮事件の逮捕については、

【半年〜1年後も】盗撮の後日逮捕はある!今できる回避策を解説

 

盗撮で逮捕!余罪は発覚する?スマホ解析はどこまで?NG行動4選!

上記で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

電車内での盗撮で逮捕された場合の流れ

電車で盗撮してしまった場合は、現行犯逮捕だけでなく通常(後日)逮捕の可能性もあることはご理解いただけたのではと思います。

では、逮捕されてしまった場合はどのような流れで進んでしまうのか。

盗撮で逮捕された場合、すぐに取り調べが行われ、検察官送致、勾留、起訴、刑事裁判とあなたが思っている以上に早く進行していきます。 下記の図をご覧ください。

盗撮事件の身柄の流れ

早期釈放に向けた迅速な行動が求められますが、何もしなければ被害者に有利な状況で進行しますので、起訴され前科がつく可能性が高まります。

逮捕後どのように進むのか、そしてすでに逮捕された家族に起こることを把握するためにも、ぜひ参考にしてください。

関連コラム:

【盗撮で身内が逮捕】家族へ及ぼす4つの影響と前科回避の方法を解説

盗撮で逮捕!釈放までの流れと成立する犯罪について解説

警察官の取り調べ(最大48時間)

まず逮捕された場合、すぐに警察による取り調べが行われます。

取り調べでは、盗撮をした事実確認や犯行態様、個人情報(氏名・連絡先・職業・家族構成など)、犯行の動機など根掘り葉掘り聴取されることになります。

この時、盗撮の事実を認めた上でしっかり反省しており、被害者とも和解ができていれば釈放される可能性もあります。逆に、犯行を否認していたり(冤罪であれば別)、被害者が厳罰を求めている場合などは検察官送致される可能性が高いです。

取り調べは48時間以内で検察官に引き継ぐ(検察官送致)と定められていますが、多くの場合24時間で送致するかどうかが判断されますので、僅かな時間で釈放に向けた行動を起こす必要があります。

検察官送致(最大24時間)

検察官に引き継がれると、検察官は24時間以内に10日間身柄を拘束するか(勾留)、釈放するかを判断します。

勾留が妥当だと判断されれば、検察官は裁判官に勾留請求を行い、裁判官が可否を決定します。勾留請求されるケースとして、

  • ・逃亡、証拠隠滅の恐れがある
  • ・否認、黙秘を貫いている
  • ・反省していない
  • ・被害者が厳罰を望んでいる
  • ・住所不定、身元引受人がいない

上記に該当する場合は、勾留の可能性が高いと思ったほうがいいでしょう。

ただし、必ずしも勾留請求=受理されるわけではなく、請求が却下され釈放される可能性もあります。

勾留(10日間の身柄拘束)を回避できれば、会社や学校への影響も軽微で済むため、早期釈放に向けた行動が求められます。

盗撮事件の検察官送致(書類送検)について、

盗撮で書類送検された!送検後の流れや会社にバレる可能性などを解説

上記で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

勾留(10~20日間)

勾留決定となれば、10日間身柄を拘束されます。

その間も取り調べが行われるわけですが、引き続き捜査が必要と判断されれば、さらに10日間の勾留が継続されます。(合計20日間)

ここまでで最大23日間の身柄拘束期間になるため、会社や学校への誤魔化しもきかなくなり、解雇・学校からの処分は避けられないでしょう。

関連コラム:

盗撮で不起訴になるには?不起訴率や示談の重要性を弁護士が解説

【勾留後】起訴か不起訴か決まる

勾留後、検察官は起訴するか不起訴にするかを決定します。

起訴には、裁判なしの罰金刑で終了する略式起訴と裁判所で判決が下される正式起訴(公判請求)の2種類に分かれますが、どちらも前科が付くことには変わりありません。

盗撮で起訴された後の流れ

「正式起訴(公判請求)で無罪を勝ち取れば…」と思うかもしれませんが、日本の有罪率は99.9%を誇り、余程のことがない限り有罪になりますので期待はできないでしょう。

また、正式起訴(公判請求)となった場合は、裁判が開かれるまでの数ヶ月間身柄が拘束されますので、逮捕前の生活を取り戻すことは非常に困難になります。

前科がつくことも避けられませんので、会社の規定により解雇、学校からの処分、さらには進学・就職(再就職)にも悪影響を及ぼしてしまうことは覚悟する必要があるでしょう。

盗撮事件の裁判について、

盗撮で裁判になる確率は?裁判の流れと対策!無罪になった判例も紹介

 

盗撮で罰金刑になる場合は?不起訴や懲役刑との分岐点と罰金相場を解説

上記で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

電車内での盗撮で逮捕された場合に成立する犯罪

電車内での盗撮で逮捕されてしまった場合は、以下の犯罪が成立します。

盗撮で逮捕された場合に成立する犯罪
罪名具体例刑罰
撮影罪スカート内や下着を盗撮する 胸の部分を盗撮する3年以下の拘禁または300万円以下の罰金
迷惑防止条例違反(※)尻や胸を接写する1年以下の懲役または100万円以下の罰金

※各都道府県で異なる(上記は東京都の場合)

2023年7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法」が新設されてからは撮影罪で処されるケースが増えましたが、行為態様や状況によっては迷惑防止条例違反でも処される場合もあるので、一概にどちらが成立すると断言するのは難しい状況です。

撮影罪(性的姿態等撮影罪)

撮影罪スカート内や下着を盗撮する 胸の部分を盗撮する3年以下の拘禁または300万円以下の罰金

前述の通り、撮影罪は2023年7月に新設された犯罪です。

これまでは盗撮行為そのものを罰する法律が存在せず、各都道府県が定める迷惑防止条例で罰するしかなかったのですが、撮影罪の新設で明確な罰則規定ができた経緯があります。

条文では、以下のように定義しています。

(性的姿態等撮影)

第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為

イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

前項の罪の未遂は、罰する

参照:e-Gov法令検索「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」より

条文にある通り、撮影罪は未遂であっても罰せられることになりますので、スマホやカメラなどに記録が残ってなかったとしても、行為態様が明らかであれば成立する可能性があります。

特に電車内での盗撮行為は犯行態様が明らかであることが多いので、盗撮で逮捕された場合は撮影罪で争うことになると思ったほうがいいでしょう。

撮影罪の刑罰は、「3年以下の拘禁または300万円以下の罰金」が科されます。

※拘禁刑とは、禁錮刑と懲役刑が統合して創設された新しい刑罰です。

撮影罪については、

撮影罪とは?構成要件や盗撮での迷惑防止条例との違いなど徹底解説!

盗撮は未遂でも処罰される?問われる罪や不起訴に向けた対処法を解説

上記で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

迷惑防止条例違反

迷惑防止条例違反(※)尻や胸を接写する1年以下の懲役または100万円以下の罰金

※各都道府県で異なる(上記は東京都の場合)

迷惑防止条例は各都道府県によって規定が異なり、東京都の場合は「粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止」にあたります。

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は

出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

参照:警視庁「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」より

撮影罪同様、衣類で隠されている部分(スカートの中や下着など)を盗撮した場合は迷惑防止条例違反に該当します。

また、「1-2.胸や尻の接写は迷惑防止条例(卑猥な言動)で逮捕される」でもお話したように、たとえ衣服の上からであっても性的姿態(尻や胸など)を強調して撮影(接写)した場合は、卑猥な言動に該当するため、迷惑防止条例に抵触する可能性があります。

罰則は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。

撮影罪と迷惑防止条例、どちらが成立するかは一概にはいえませんが、

  • ◎犯行態様が軽微→迷惑防止条例
  • ◎犯行態様が悪質→撮影罪

このように、犯行態様の悪質性が影響してくる場合が多いです。

関連コラム:盗撮は軽犯罪法違反?新設された撮影罪との違いや検挙後の流れを解説

電車内での盗撮が未成年だった場合はどうなる?

盗撮行為に及んだのが“未成年”だった場合はどうなるのか、気になりますよね。

電車内での盗撮が未成年だった場合はどうなる?

未成年は、「13歳未満」と「14歳以上」で分類され、処罰については以下のように定められています。

13歳未満(触法少年)刑罰は科されない(逮捕されない)
14歳以上刑罰が科される(逮捕される)

13歳未満の場合は、刑法で「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められていますので、盗撮行為に及んでも刑罰が科されることはありません。

※ただし保護者や学校には連絡がいきます。

一方、14歳以上の場合は成人同様、逮捕される可能性があります。

逮捕・勾留後、家庭裁判所送致される点は成人とは大きく違いますが、数日~数週間身柄が拘束されてしまうことには変わりありません。そのため、未成年であっても早期釈放・不起訴処分獲得に向けた行動が重要になります。

よくある質問

盗撮事件に関するよくある質問

電車内での盗撮行為は逮捕される可能性があり、撮影罪や迷惑防止条例違反に該当することをお話しました。

これまでのまとめも兼ねて、下記の質問について回答していきたいと思います。

  • ◎盗撮動画・画像をネットで販売・UPしたら何罪になりますか?
  • ◎盗撮動画・画像をネットからダウンロードしたら何罪になりますか?
  • ◎パンチラではなく、顔などを無断撮影する行為は違法ですか?
  • ◎顔などを無断撮影した動画をSNSにあげるのは違法?

新たに新設された「性的姿態撮影等処罰法」についてもかかわりがある内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。

盗撮動画・画像をネットで販売・UPしたら何罪になりますか?

提供罪①盗撮画像を第三者に提供する
②盗撮画像をネット(不特定多数)で販売・UPする
①3年以下の拘禁または300万円以下の罰金
②5年以下の拘禁または500万円以下の罰金

撮影罪を規定する「性的姿態撮影等処罰法」には、撮影罪以外にも規定する処罰があります。

その一つとして提供罪(3条)が挙げられますが、主に盗撮画像の提供・販売を行った場合に成立します。

条文は、以下の通りです。

(性的影像記録提供等)

第三条性的影像記録(前条第一項各号に掲げる行為若しくは第六条第一項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第一項第四号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第五条第一項第四号に掲げる行為により同項第一号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

2性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する

参照:e-Gov法令検索「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」より

盗撮画像を第三者に提供した場合は、「3年以下の拘禁または300万円以下の罰金」が科されますが、不特定または多数の者に対して提供した場合罪が重くなり、「5年以下の拘禁または500万円以下の罰金」が科されることになります。

盗撮動画・画像をネットからダウンロードしたら何罪になりますか?

保管罪盗撮動画・画像を保管する(ネットからダウンロードする)2年以下の拘禁または200万円以下の罰金

盗撮動画・画像などを保管した場合には、性的姿態撮影等処罰法4条で定める保管罪が成立します。

条文は、以下の通りです。

(性的影像記録保管)

第四条前条の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。

参照:e-Gov法令検索「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」より

刑罰は、「2年以下の拘禁または200万円以下の罰金」が科されます。

パンチラではなく、顔などを無断撮影する行為は違法ですか?

・肖像権侵害 ・プライバシー権侵害顔などを無断撮影する 無断撮影した動画・画像をSNSにUPする損害賠償請求の対象

パンチラや胸を盗撮することは、性的姿態撮影等処罰法で定義する性的姿態に該当しますので撮影罪が成立しますが、顔については定義に当てはまらないので、刑法上の罰則はありません。

ですが、民法709条で定める「不法行為による損害賠償(肖像権・プライバシー権侵害)」に抵触しますので、損害賠償を請求されるおそれがあります。

条文については、以下の通りです。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

参照:e-Gov法令検索「民法709条」より

肖像権侵害・プライバシー権侵害になるケースとして、

  • ・無断撮影した動画、画像がモザイク加工されていない
  • ・ネットやSNS上にUPされている
  • ・本人の許可を得ず撮影、公開に及んだ

といった行為が挙げられます。

盗撮で逮捕を回避するには被害者との示談が重要

「3.電車内での盗撮で逮捕された場合の流れ」でもお話したように、逮捕後は送致、勾留、起訴とスピード感を持って進行していきますので、身柄拘束を阻止、早期釈放、不起訴処分の獲得に向けた迅速な行動が求められます。

最も確実な方法として、「被害者との示談を成立させること」が挙げられますが、当事者間での示談交渉は決裂のおそれがあること、そもそも被害者の連絡先が分からず行動にすらうつせない場合が多いので、自力交渉はおすすめしません。

電車で盗撮して逃げられたとしても、いつ逮捕されるかもわからない恐怖や罪悪感で、平和な日常生活にはほど遠いものになってしまいます。

逮捕前の生活を取り戻すには、被害者との示談を成立させる他ほかないのです。

では、どのようにして被害者と示談交渉をするのか。

それは、「盗撮事件に強い弁護士に依頼すること」です。

関連コラム:

盗撮の示談金相場は10~100万円!適正な金額の早期解決法を紹介

盗撮事件の実績豊富な「グラディアトル法律事務所」にお任せください

盗撮事件の実績豊富な「グラディアトル法律事務所」にお任せください

先ほど、被害者との示談成立には盗撮事件の実績豊富な弁護士に依頼することが重要だとお話しました。

「弁護士なら誰でもいいのでは?」と思うかもしれませんが、誰しも得意・不得意が存在するように弁護士にも得意・不得意があります。

仮に盗撮事件に不得手(経験が浅い)な弁護士に依頼してしまうと、思ったような成果が得られず、示談は難航し身柄拘束が長期化、起訴されてしまうリスクも高くなってしまうのです。

逮捕を回避したい、逮捕された家族の未来を守りたいのなら、盗撮事件に強い「グラディアトル法律事務所」にお任せください。当事務所を強くおすすめする理由は、次の3つです。

  • ①性犯罪に強く、盗撮事件を解決に導いた実績が豊富にある
  • ②24時間365日対応でスピーディーに解決できる
  • ③初回相談料が無料なので気軽に相談できる

以下で詳しく説明していきますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

性犯罪に強く、盗撮事件を解決に導いた実績が豊富にある

当事務所は性犯罪に強く、数々の事件を解決に導いてきました。盗撮事件の解決実績も豊富にあり、依頼者が望む未来に可能な限り近づけるノウハウを身につけています。

例えば、下記のような盗撮事件を解決してきました。

・興味本位で店内を撮影し、それが盗撮を疑われ念書を書かされたものの、示談金0円で解決

・友人の盗撮トラブルに巻き込まれ、100万円請求されるも5万円で解決

・盗撮の常習行為が確認されたが、迅速かつ粘り強い交渉で、示談金の大幅減額、被害届の取り下げに成功

数々の事案を解決に導けるのは、私たちが盗撮事件に強い弁護士だからです。

特に被害者との示談交渉は、弁護士であっても困難を極めます。

盗撮事件の実績が豊富だからこそ、被害者の心情を汲み取りながらも、平和的かつ円滑な交渉を提案し成功に導くことができるのです。

24時間365日対応でスピーディーに解決できる

当事務所は、いつどこで起こるかわからない盗撮事件に対応するため、24時間365日全国対応できるノウハウを持っています。

何度もお話ししているように、盗撮事件で逮捕されたらあなたが思っている以上に早く進行していきます。そのため、「電話したけど繋がらない…」「依頼してから数日後に来た」では手遅れになる可能性があるのです。

実際に、当事務所は依頼をいただいて数時間後に被疑者のもとに駆けつけたこともありますし、早朝・深夜帯であってもすぐに受付ができる体制を整えております。

初回相談料が無料なので気軽に相談できる

~相談料の相場~

相談料5,000円~10,000円/1時間

弁護士へ相談する場合、相談料が発生します。

必要なこととはわかっていても、相談料が発生するとなると、相談自体をためらってしまう部分も出てくると思います。過ぎていく時間ばかりが気になって相談内容も浅くなってしまうこともあるでしょう。

そういった事態を防ぐために、そして依頼者様の本当の悩みを打ち明けていいただくためにも、当事務所は「初回相談料無料」サービスを実施しております。

「電車内で盗撮して思わず逃げてしまったけどどうしたら…」「家族が盗撮で逮捕されて気が気じゃない」このような悩みに当事務所は真摯に向き合っていきますので、お気軽にご相談ください。

関連コラム:盗撮がバレたら弁護士に依頼!メリットと盗撮に強い弁護士の探し方

まとめ

いかがでしたか?

盗撮事件で逮捕を回避する方法や逮捕後の流れについて詳しく説明してきました。最後にこの記事をまとめましょう。

◎電車内の盗撮行為・成立する犯罪は次の通り

罪名具体例刑罰
撮影罪スカート内や下着を盗撮する 胸の部分を盗撮する3年以下の拘禁または300万円以下の罰金
迷惑防止条例違反(※)尻や胸を接写する1年以下の懲役または100万円以下の罰金

◎盗撮で逮捕された場合の流れは次の通り

  • ①警察の取り調べ
  • ②検察官による取り調べで勾留かどうかを決定(検察官送致)
  • ③10~20日間の身柄拘束(勾留)
  • ④起訴or不起訴
  • ⑤略式起訴or正式起訴(公判請求)

◎盗撮事件に強い弁護士を選ぶポイントは次の通り

  • ①盗撮事件の実績豊富な弁護士を選ぶ
  • ②24時間365日スピーディーに動いてくれる弁護士を選ぶ
  • ③初回相談料無料の弁護士を選ぶ

以上になります。

盗撮で逮捕されると、逮捕、勾留、起訴…とあなたが思っている以上に早く事態が進んでいきます。

「電車で盗撮しちゃったけど現行犯逮捕じゃないから大丈夫」という方がいるかもわかりませんが、被害届や証拠・証言が揃っている状況では、後日警察が自宅に来て逮捕も十分に考えられます。

逮捕回避、前科がつかないようにするためにも、一刻も早く弁護士に依頼することが必要です。 あなたの平穏な日常が取り戻せることを願っています。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード