家族が覚醒剤で逮捕されたらどうなる?流れと対処法を徹底解説!

家族が覚醒剤で逮捕された!流れと対処法を解説
弁護士 若林翔
2025年03月10日更新

「覚せい剤で捕まってしまった…」

「家族が覚せい剤で逮捕されたけれど、これからどうなるの?」

覚せい剤の事件では、逮捕されるとすぐに厳しい取調べが開始され、最長で23日間も自由を奪われる可能性があります。別の容疑で再逮捕されたり勾留が延長されたりすれば、拘束期間がさらに長くなることも珍しくはありません。

覚醒剤逮捕の流れ

しかし、逮捕直後からすぐに正しく行動できれば、状況を好転させるチャンスはあります。

勾留を防いで自宅に戻る、検察から不起訴の決定を得る、あるいは執行猶予が付いて実刑を避けられるなど、さまざまな道が開ける可能性があるのです。

本記事では、覚せい剤で逮捕された後の流れや、釈放する方法、弁護士ができることなどを、分かりやすく解説していきます。逮捕された方やそのご家族にこれから何が起こるのか、どう対応すべきかを理解するために、是非ご一読ください。

目次

覚醒剤で逮捕された場合の流れ

覚せい剤取締法違反で逮捕されると、警察の取調べから始まり、検察による捜査、刑事裁判といった流れで事件が進行します。

逮捕から判決までの流れを見ていきましょう。

覚醒剤逮捕の流れ

【逮捕後すぐ】警察で取調べが行われる

覚せい剤事件で逮捕されると、まず警察署に連行されて取調べが行われます。

取調べは、事実関係を明らかにすることを目的として進められ、場合によっては長時間に及ぶこともあります。

被疑者には黙秘権が認められていますが、黙秘すると不利になるのではないかと不安になり、自白してしまうケースもあります。しかし、事実と異なる内容を話してしまうと、後に不利な状況を招く可能性があるため、できるだけ早く弁護士に相談し、アドバイスを受けることが大切です。

【逮捕後24時間〜72時間】検察へ移動して、勾留されるか釈放されるかが決まる

逮捕後48時間以内に、警察は事件を検察に送致(送検)します。

検察官は、送られてきた証拠や調書などを検討した上で、さらに被疑者の取調べを行います。そして、逮捕から72時間以内に、検察官は「勾留請求」をするか「釈放」するかを決定するのです。

勾留請求とは、被疑者の身体拘束を続けるために、裁判官に対して行う請求です。

勾留が認められれば、最長10日間(延長されれば最大20日間)、拘置所などの施設に勾留されることになります。

覚せい剤事件では、再犯防止や証拠隠滅防止のため、ほとんどのケースで勾留が認められています。

【接見禁止となるケースもある】

覚せい剤事件では、「接見禁止」となる可能性もあります。

接見禁止とは、弁護士以外の人との面会や手紙のやり取りが禁止される措置です。共犯者や関係者との連絡を防いだり、証拠隠滅を防ぐために検察官が請求するのです。

通常であれば、逮捕後72時間が経過すると家族の面会が認められますが、接見禁止が認められると、72時間経っても面会ができなくなります。

覚せい剤の単純使用や少量所持のケースでは認められないこともありますが、大量所持や密売などの場合は接見禁止となる可能性が高まります。

【10日〜20日間】身体拘束され続けて、起訴・不起訴が決まる

勾留請求が認められると、最長10日間の身体拘束が続きます。

この期間中も警察や検察による取り調べが行われ、起訴するかどうかが検討されます。

さらに、検察官が必要と判断すれば、10日間の勾留延長が認められる可能性もあります。

つまり、最大で20日間(逮捕から23日間)の身体拘束を受ける可能性があるのです。この間、会社や学校を休まなければならず、日常生活にも大きな影響が生じます。

勾留期間中に、検察官は集めた証拠をもとに起訴するか不起訴にするかを決定します。

起訴されると刑事裁判が始まり、不起訴なら釈放されます。不起訴となるには、積極的な弁護活動を行い、起訴する必要性が低いことを検察官に伝えることが必要です。

【再逮捕・再勾留のおそれもある】

覚せい剤事件では、一つの犯罪に対する逮捕後、別の容疑で再逮捕されることがあります。

例えば、覚せい剤の「所持」の疑いで逮捕された後、「使用」の疑いで再逮捕されたり、「譲渡」の疑いでも再逮捕されたりするケースです。また、他の薬物(大麻など)も使用していたことが判明して再逮捕されることもあります。

再逮捕されると、それぞれ別の犯罪が成立するため、拘束期間が大幅に延びる可能性があります。

【起訴から1ヶ月〜2ヶ月】判決が言い渡される

起訴されると、1〜2ヶ月後に刑事裁判が始まります。

検察側の主張と弁護側の主張を踏まえて、裁判官によって有罪・無罪の判断と刑の重さが決められるのです。

覚せい剤の場合、証拠関係が明らかなので、情状弁護によってどれだけ刑を軽くできるかが争点となります。「被告人の反省」や「家族の監督」、「治療」や「就労」など社会復帰に向けて取り組んでいることを主張していくことが、執行猶予付きの判決を獲得するためのポイントです。

執行猶予がつくと、刑務所に入らずに社会生活を続けることができます。

特に初犯で使用・所持のみの場合は、執行猶予がつく可能性が高いです。家族のサポートや更生するための計画など、執行猶予を獲得するための活動を弁護士と共に進めていきましょう。

覚醒剤で逮捕されるケース

覚醒剤逮捕されるケース

覚せい剤で逮捕されるケースは、大きく「使用・所持・譲渡・譲受・輸出入・製造」などに分かれます。どういった形で覚せい剤に関わったのかによって、刑の内容が異なるのです。

このうち、検挙数が多いのは覚せい剤を「使用・所持」したケースです。

「譲渡・譲受・輸出入・製造」で検挙されるケースはあまり多くはありませんが、「使用・所持」以上に重い刑罰が科せられます。

覚醒剤の違反態様別検挙人員

(画像引用:法務省|令和5年版 犯罪白書

覚醒剤を「使用」したケース

覚せい剤を使用する行為は、覚せい剤取締法違反として「10年以下の懲役」の対象となります。

例えば、次のようなケースでは、「覚せい剤の使用」によって逮捕される可能性があります。

・友人から誘われて、断りきれずに使用した

・好奇心から一度だけ試してみた

・その場の雰囲気に流されて使用した

覚せい剤の使用は、様々なきっかけで発覚します。

職務質問で不審な様子を見せて尿検査を求められることもありますし、関係者の供述から使用が疑われることもあります。

営利目的で使用した場合は刑罰がさらに重くなり、最大で「1年以上10年以下の懲役刑」に加えて「500万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

覚醒剤を「所持」したケース

覚せい剤を持っているだけでも逮捕される可能性があります。

例えば、自宅で保管していた場合や、カバンやポケットに入れて持ち歩いていた場合など、量の多少に関わらず「10年以下の懲役」の対象です。

覚せい剤の所持が発覚するきっかけは、警察による所持品検査や家宅捜索が多いです。

また、覚せい剤の販売者が逮捕され、その供述から購入者が特定されるケースもあります。

営利目的がある場合は、最大で「1年以上10年以下の懲役」に加えて「500万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。特に、大量に所持していた場合や密売が疑われる場合は、より重い罰則となるでしょう。

覚醒剤を「譲渡・譲受」したケース

覚せい剤を誰かに渡したり、逆に誰かから受け取ったりする行為も、「覚せい剤取締法違反」として処罰の対象です。

例えば、以下のようなケースが「譲渡・譲受」に該当します。

・友人に覚せい剤を渡した

・SNSで知り合った人から覚せい剤を購入した

・恋人や家族のために覚せい剤を渡した

・お金をもらわずに覚せい剤を分けてあげた

譲渡・譲受の罰則は所持や使用と同様に「10年以下の懲役」ですが、営利目的がある場合は「1年以上10年以下の懲役」となり、さらに「500万円以下の罰金」が科せられる可能性もあります。

特に、SNSや通販サイトを通じて覚せい剤を購入するケースが増えています。

こうしたやり取りは電子記録として残りやすいので、発覚するリスクも非常に高くなります。

覚醒剤を「輸出・輸入・製造」したケース

覚せい剤を海外から持ち込んだり、日本から海外に持ち出したり、自分で製造したりする行為は、最も重い罰則の対象です。

例えば、以下のようなケースが「輸出・輸入・製造」に該当します。

・海外旅行の際にスーツケースに隠して持ち込んだ

・海外から郵便や宅配便で取り寄せた

・自宅で覚せい剤を製造した

・製造器具を所持していた

輸出・輸入・製造の罰則は「1年以上20年以下の懲役」と、懲役の下限・上限が重くなっています。
さらに営利目的の場合は「3年以上の懲役または無期懲役」となり、「1000万円以下の罰金」が科せられる可能性もあります。

覚醒剤で逮捕・起訴される確率は?

覚せい剤取締法違反の事件では、他の刑事事件と比較して、逮捕率や起訴率が高い傾向にあります。
これは、覚せい剤事件の特性や社会的影響の大きさ、立証のしやすさなどが関係しています。覚せい剤事件の逮捕率・起訴率を見ていきましょう。

覚醒剤取締法違反の逮捕率(身柄率)は70%以上

覚せい剤取締法違反による逮捕率(身柄率)は「70.4%」となっています。

つまり、「10人中7人以上」が逮捕されており、これは一般的な刑事事件の約2倍という非常に高い水準です。

【覚せい剤取締法の身柄率(逮捕率)】

 総数警察で逮捕・身柄付送致検察庁で逮捕身柄率
覚せい剤取締法9,7046,827370.4%
(参考)刑法犯1,818,64689,48016534.3%

(出典:法務省|令和5年版 犯罪白書「検察庁既済事件の身柄状況(罪名別)」を加工して作成)

覚せい剤事件では、「証拠隠滅のおそれ」が認められやすいという特徴があります。

使用した覚せい剤は簡単に隠滅できる上、尿や毛髪などの証拠も時間の経過とともに消えていくからです。そのため、逮捕の必要性が高いと判断されやすいことが、逮捕率の高さにつながっています。

起訴率も70%を超えている

覚せい剤取締法違反で逮捕された場合、約73%が起訴されています。

一般的な刑事事件の起訴率は36%なので、逮捕率と同様にかなり高い数字です。

【覚せい剤取締法の起訴率】

 起訴総数不起訴総数(起訴猶予)起訴率
覚せい剤取締法6,7552,85583732%
(参考)刑法犯227,597479,092(419,846)70%

(出典:法務省|令和5年版 犯罪白書「検察庁終局処理人員(罪名別)」を加工して作成)

起訴猶予(罪は認められるものの、情状を考慮して起訴しないこと)」の割合が低いことも大きな特徴です。覚せい剤事件が「起訴猶予」になった割合は「10.9%」なので、刑法犯の「53.6%」と比べて極めて低いです。

これには、覚せい剤事件では検察側の立証が比較的容易なことも影響しています。

例えば、尿から覚せい剤の成分が検出されれば、「自分の意思で使用した」という推定が働くきます。そうすると、被疑者側で「覚せい剤を使用したのは自分の意思ではなかった」ことを立証しなければいけません。

十分な証拠がなければ、否定することは難しいでしょう。

特に、営利目的や大量所持の場合は、起訴されて実刑判決を受ける可能性が極めて高くなります。

行為(ケース)別|覚醒剤取締法違反の法定刑

覚せい剤取締法では、違反行為の種類によって法定刑が異なります。

「単純所持」や「使用」も決して軽くはありませんが、譲渡・譲受、さらに輸出・輸入・製造と社会的影響が大きくなるほど、刑は重くなる傾向です。

また、営利目的の有無があるかによっても刑の重さが変わります。

【覚せい剤取締法の法定刑】

行為の態様営利目的なし営利目的あり
輸出・輸入・製造1年〜20年の懲役3年~20年の懲役または無期懲役、情状により1000万円以下の罰金を併科
使用、所持、譲渡、譲受10年以下の懲役1年~20年の懲役、情状により500万円以下の罰金を併科

個人での少量の使用・所持は比較的軽く処罰されるケースが多いですが、それでも「10年以下の懲役」という罰則の対象です。

最も重く処罰されるのは覚せい剤の輸出入・製造で、「1年以上10年以下の懲役」です。

営利目的で輸出入・製造を行った場合は、「3年以上の懲役または無期懲役」という非常に重い刑罰となり、悪質な場合は「1000万円以下の罰金」が併科される可能性もあります。また、営利目的でなくても「常習性」が認められると刑が重くなる傾向があるので注意が必要です。

覚醒剤取締法違反の量刑は懲役何年が目安?

覚せい剤取締法違反での有罪判決を受けた場合、どの程度の刑罰が科されるのでしょうか。

統計データから見る実際の量刑の傾向や、執行猶予がつく可能性、再犯の場合の刑の重さについて解説します。

覚醒剤逮捕の科刑状況

(引用:法務省|覚せい剤取締法違反等 地方裁判所における有期刑(懲役)科刑状況別構成比

1年〜3年の懲役が90%以上

法務省のデータによると、覚せい剤事件で有罪判決を受けた人のうち、約93%が1年以上3年以下の懲役刑となっています。特に、「1年以上2年未満の懲役」となるケースが最も多く、約50%を占めています。

初犯で「使用・少量所持」などのケースでは懲役1年から2年程度になる可能性が高いでしょう。

【覚せい剤事件の量刑分布】

 1年未満1年以上2年未満2年以上3年以下3年超え5年以下5年超え
人数12人2,444人2,074人330人52人
割合0.2%50%42%7%1%

(引用:法務省|令和5年版 犯罪白書「第3節 処遇」を加工して作成

ただし、営利目的だったり、大量に所持していたり、複数回の前科があったりすると、重い刑罰となる可能性が高まります。特に、密売や輸入などの事案では、初犯であっても実刑判決になる可能性が高くなります。

執行猶予がつくのは50%以下

覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた場合、執行猶予がつく確率は50%以下です。

執行猶予とは、一定期間刑の執行を猶予する制度で、その期間内に再犯がなければ刑の執行が免除されるものです。執行猶予がつけば、刑務所に入らずに社会生活を続けることができます。

【覚せい剤事件の執行猶予率】

項目実刑(一部執行猶予含む)全部執行猶予
人数3,077人1,835
割合63%37%

(引用:法務省|令和5年版 犯罪白書「第3節 処遇」を加工して作成

覚せい剤事件における執行猶予の可能性は、違反行為の種類・前科の有無などによって大きく異なります。

例えば、使用や少量所持の初犯であれば、執行猶予がつく可能性は比較的高いでしょう。
真摯に反省しており、社会復帰や更生の環境が整っている場合は、執行猶予判決が言い渡されるケースも十分に考えられます。

一方で、営利目的があったり、輸出・輸入・製造を行っていると、執行猶予判決が出る確率は低くなります。

2回目以降(再犯)なら刑は重くなる

覚せい剤事件では刑法の再犯加重の規定が適用されます。

覚せい剤の再犯が、前の刑の執行終了から5年以内であれば、懲役の上限が「長期の2倍以下」まで引き上げられてしまうのです。

(例)覚せい剤の「使用」で逮捕されたケース
・初犯 → 懲役10年以下
・再犯 → 懲役20年以下

実際の量刑でも、「使用」かつ「初犯」の場合なら、懲役1〜2年程度で執行猶予がつくケースが多いですが、「2回目」では懲役2〜3年の実刑となることが少なくありません。

初犯では酌むべき事情として考慮されることも、再犯では考慮されにくくなるのです。
3回目以降の常習的な再犯の場合は、さらに刑が重くなり、執行猶予が付くことはほぼないと考えるべきでしょう。

覚醒剤の所持や使用の初犯なら執行猶予がつく可能性が高い!

ここまで、覚せい剤で執行猶予がつく確率は50%以下だと説明しました。

もっとも、上記のデータは「再犯者」や「輸出・輸入・製造」などで逮捕された人も含まれたデータです。「所持」や「使用」の初犯であれば、執行猶予がつく可能性は高いでしょう。

特に、次のようなケースでは、執行猶予が付きやすくなります。

項目具体的なケース
犯行の動機や経緯に酌むべき事情がある・知人に勧められて断りきれずに使用した
・一時的な好奇心から使用した など
本人が真摯に反省している・覚せい剤を使ったことを深く後悔している
・二度と手を出さないという強い決意している
依存症治療に取り組んでいる・専門機関へ通院している
・自助グループへ参加している など
更生の可能性が高い・就職または就職活動をしている
・家族が監督している など

上記のような条件を満たしていることを、裁判で主張していけば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性は十分にあるのです。

家族が覚醒剤で逮捕されたらするべきこと

家族が覚せい剤で逮捕されたとき、ご家族はどのように対応すべきでしょうか。

まず何をすべきなのか、時系列に沿って説明します。

覚醒剤逮捕後にすべきこと

弁護士に面会を依頼して、家族の状況を確認する

家族が覚せい剤で逮捕されたら、まず最初に弁護士に依頼しましょう。

覚せい剤事件では、逮捕後の初期対応が極めて重要です。弁護士のサポートがあるかないかで、その後の展開は大きく変わってきます。

速やかに弁護士に接見を依頼して、逮捕された家族の状況を確認してもらうことが必要です。

・家族の健康状態や精神状態
・どのような取調べが行われているか
・どのような供述をしているか
・今後の見通しや対応方針 など

弁護士から状況を聞くことで、家族も安心でき、今後の対応を具体的に考えられるでしょう。
また、「家族はあなたのことを心配している」「必ず力になるから」といったメッセージを弁護士を通じて伝えることもできます。

家族からの前向きなメッセージは本人にとって大きな支えになるでしょう。

会社や学校へ休みの連絡をする

逮捕から判決までは長期間かかる可能性があるため、会社や学校にも連絡を入れる必要があります。ただし、どのように伝えるかは慎重に検討すべきです。

全ての事実を正直に伝える必要はありません。

例えば「体調不良で入院した」「家庭の事情で休む必要がある」など、プライバシーに配慮した説明でも構いません。弁護士に相談した上で、状況に応じた説明を考えましょう。

本人が釈放された後の復職・復学も視野に入れて連絡することが大切です。

会社の就業規則で解雇事由となっていないか、学校の校則で退学処分となるかなども確認しておくと良いでしょう。

早めに対応することで、社会復帰の可能性を高めることができます。

家族の身柄拘束を解く手続きをとる

覚醒剤逮捕から早期釈放する方法

家族が覚せい剤で逮捕された場合、できるだけ早く身柄の解放を目指すことも重要です。

逮捕後、すぐに釈放に向けて動き出すことで身柄拘束を短縮できる可能性があります。

身柄拘束を解く方法は、タイミングによって異なります。

タイミング釈放する方法
逮捕直後(72時間以内)勾留請求を阻止する
勾留決定後準抗告する
起訴後保釈請求する

逮捕から72時間以内|勾留を阻止する

逮捕から72時間以内に、検察官が「勾留請求」をするかどうか判断します。そのため勾留を阻止できれば、逮捕から72時間以内に釈放することができます。

勾留を阻止するためには、「犯罪の嫌疑がない」または「勾留の必要性がない」ことを裁判官に示す必要があります。

覚せい剤事件では、証拠関係が明らかなケースが多いので、「勾留の必要性がない」ことを主張するケースが多いです。具体的には、家族が身元引受人となり、以下のような事情を説明していきます。

・家族が再犯防止の監督をする

・治療のために医療機関に通院させる

・安定した住居があり、逃亡の恐れがない

実務上、覚せい剤事件では勾留が認められる確率が高く、勾留阻止の成功率は高くありません。
それでも、家族としてできる限りの対応をすることが重要です。

勾留決定後|準抗告によって勾留決定を争う

勾留が決定された後も、「準抗告」という方法で不服を申し立てられます。
準抗告とは、勾留決定の取り消しを求める手続きです。認められれば、勾留が取り消されて釈放されます。

勾留請求の認容率は90%以上ですが、その後、弁護士が勾留決定に対する準抗告を行って釈放されるケースは珍しくありません。

起訴後|保釈請求をする

起訴された後は、「保釈請求」によって身柄拘束を解放することができます。

保釈とは、保釈保証金を納付することで、裁判の間、身柄拘束から解放される制度です。起訴後であれば、いつでも保釈を請求できます。

【保釈が認められる条件】

  • 証拠隠滅や逃亡のおそれがない
  • 保釈保証金を納付できる
  • 身元引受人がいる など

覚せい剤事件の場合、被疑事実を認めている方が保釈は認められやすいとは言われています。しかし、否認していても保釈が認められる可能性はあるので、弁護士に相談してみましょう。

再犯防止、治療の方法を考える

家族が釈放された後も、再犯防止に向けた取り組みが重要です。

覚せい剤には強い依存性があるため、専門的な治療やサポートが必要となることが多いです。家族として、以下のような対応を考えておくと良いでしょう。

・精神科医やカウンセラーによる治療

・依存症回復プログラムへの参加

・生活環境の改善

・薬物関係者との接触を断つ など

特に、医療機関での治療は、執行猶予判決を得るためにも、その後の再犯防止のためにも非常に重要です。弁護士へも相談しながら、専門の医療機関を探し、依存症を治療する方法を考えましょう。

覚醒剤逮捕の保釈金は150万~300万円

覚せい剤事件で起訴された後、裁判中に自宅で過ごすには「保釈」という制度を利用することになります。保釈が認められるためには「保釈金」の納付が必要で、覚せい剤事件の場合、通常150万円から300万円程度が必要です。

保釈金の相場は、次のような要素で変わってきます。

・犯罪の重大性

・逃亡のおそれ

・本人の社会的地位

・収入や資産の状況

・身元引受人の有無 など

例えば、覚せい剤の輸出入・製造をしていたり、高額の収入や資産を持っていたりすると、保釈金も高額になる傾向があります。一方で、安定した職に就いていたり、身元引受人がいると、逃亡のおそれが低いと考えられて、保釈金の相場も低くなります。

なお、保釈金は判決が確定して、全ての手続きが終了すると返還されます。

覚醒剤で逮捕されたとき弁護士ができること

逮捕された方のために弁護士は何ができるのでしょうか?

覚せい剤事件で弁護士にできることを説明します。

覚醒剤逮捕で弁護士ができること

罪を認める場合|有利な情状を作り出して、警察・検察に主張する

覚せい剤に関わったことを認める場合は、情状面から弁護活動を行っていきます。

覚せい剤事件は「被害者のいない犯罪」とされるため、示談などによる解決はできません。そのため、被疑者・被告人にとって有利な事情(情状)を積極的に主張していくことが重要になります。

有利な情状として評価されるのは、真摯な反省の気持ちや更生への意欲です。

・専門医療機関での治療を始めている
・薬物関連の人物との関係を断ち切っている
・就労や資格取得など社会復帰に向けた努力をしている
・家族のサポート体制が整っている など

弁護士は、これらの情状を警察や検察に伝え、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得するための弁護活動を行います。特に初犯の場合は、しっかりと反省しており、再犯防止に向けて行動していることを示すことで、実刑を回避できる可能性が高まります

無罪を主張する場合|理由を確認して、不起訴を目指す

一方で、覚せい剤に関わった事実がなかったり、覚せい剤だと知らなかった場合は、無罪を主張するための弁護活動を行います。

例えば、「知らない間に飲み物に混入された」「強制的に使用させられた」「所持品が覚せい剤だと知らなかった」といったケースが考えらるでしょう。

まずは詳しく状況を聞き取り、主張の根拠となる証拠を収集します。

覚せい剤事件では尿検査の陽性反応などが重要な証拠になりますが、採取手続きに問題がなかったか、正確な検査が行われたかなどを確認していくのです。

さらに、捜査手続きに違法や不当な点がなかったかも徹底的に調査します。

例えば、令状なしの捜索・差押えがあった場合や、違法な取調べが行われた場合は、その証拠が違法であることを主張できる可能性があります。

覚せい剤事件で無罪を主張することは決して容易ではありません。しかし、経験豊富な弁護士が積極的な弁護活動を行うことで、不起訴や無罪判決を勝ち取れるケースもあります。

事実と異なる容疑をかけられた場合は、覚せい剤事件に強い弁護士に相談してみましょう。

覚醒剤で逮捕されたときの弁護士の選び方

覚せい剤事件では、信頼できる弁護士を選ぶことが欠かせません。

逮捕を防げるか、不起訴処分を得られるか、執行猶予判決を獲得できるかは、いずれも弁護活動の進め方によって変わってきます。

なお、勾留が決まると「国選弁護人」を利用することもできますが、できる限り「私選弁護人」を選ぶことをお勧めします。逮捕から「72時間」弁護士のサポートを受けられないうえ、覚せい剤事件に詳しくない弁護士が担当する可能性もあるからです。

私選弁護人を選ぶときは、次のようなポイントをチェックしましょう。

覚醒剤逮捕に強い弁護士を選ぶポイント

費用面で心配がある場合は、初回相談時に支払い方法について相談してみるとよいでしょう。明確な料金体系を示してくれることも、信頼のおける弁護士の条件です。

上記のようなポイントをしっかりと確認して、信頼できる弁護士を選ぶことが、覚せい剤事件を解決して、最善の結果を目指すことにつながるのです。

※関連コラム
「薬物事件に強い弁護士を選ぶ8つのポイントとは?解決事例や費用も紹介」

【グラディアトルの解決事例】覚醒剤で逮捕→「やっていない」ことを主張して不起訴に!

覚醒剤逮捕の解決事例

弊所「グラディアトル法律事務所」では、尿検査で覚せい剤の陽性反応が出てしまった方からご相談をいただき、不起訴を獲得した事例があります。

【依頼者/30代前半の女性】

◎事件の発端
ご依頼者様は、クラブから帰宅途中に警察官から職務質問を受けました。やましいことは何もなかったため、荷物検査や尿検査にも素直に応じましたが、予想に反して尿検査で覚せい剤の陽性反応が出てしまいました。過去に大麻使用の経験はあったものの、覚せい剤を使用した覚えは全くありませんでした。

◎相談のきっかけ
逮捕後、ご主人から当事務所に連絡があり、ご依頼いただきました。


◎弁護活動の内容

取調べでは「覚せい剤を使用していなければ陽性反応は出ない」と厳しく追及され、「認めれば早く出られる」などと言われる中、弁護士は連日接見に通い、取調べ対応のアドバイスと精神的なサポートを続けました。同時に、勾留に対する準抗告など、あらゆる法的手続きを駆使して身柄の早期解放を目指しました。



結果 【不起訴処分を獲得】

この事例の解決のポイントは以下の3点です。

・早期に弁護士に依頼したことで、虚偽の自白を防ぐことができた・弁護士が何度も接見に行き、家族からの伝言や差し入れ、励ましなどを弁護士から伝えることで、過酷な取調べを乗り切ることができた・薬物事件に強い弁護士が粘り強く弁護活動を行った

尿検査で陽性反応が出てしまったような状態からでも、諦めることなく弁護活動を行えば、刑務所に入ることなく事件を解決できるのです。

弊所では、覚せい剤事件について豊富な経験を持つ弁護士が、24時間365日・全国相談受付可能な体制でご相談を承っています。覚せい剤で逮捕されてしまった方は、是非グラディアトル法律事務所へご相談ください。

まとめ

記事のポイントをまとめます。

◉覚せい剤で逮捕された場合の流れ

①逮捕〜48時間|警察での取り調べ
  ↓
②逮捕〜72時間|検察庁へ送致される
  ↓
③4日目〜13日目|勾留(最大10日間)
  ↓
④14日目〜23日目|勾留延長(最大10日間)
  ↓
⑤起訴後1〜2ヶ月|刑事裁判※ただし、再逮捕・再勾留もある

◉覚せい剤事件のポイント

・逮捕率(身柄率)は70%で、一般刑法犯より2倍も高い
・起訴率は73%で一般刑法犯より2倍も高い
・1年以上3年未満の懲役が93%で、執行猶予率は43%
・初犯なら執行猶予がつく可能性が高い
・再犯なら実刑になる可能性が高い

◉身体拘束から早期釈放する方法

・逮捕から72時間以内の場合なら、勾留請求を阻止する
・勾留が決定されたら、準抗告によって勾留決定を取り消す
・起訴されたら、保釈請求して釈放を目指す
・保釈金の目安は150万〜300万

◉覚せい剤事件で弁護士ができること

・罪を認めるなら、情状弁護で不起訴
・執行猶予付き判決を目指す
・覚せい剤に関わった事実がなかったり、覚せい剤だと知らなければ、無罪を主張するために弁護活動をする

以上です。

覚せい剤の逮捕が不安な方や、すでに逮捕された方のご家族は、一刻も早く弁護士に相談してください。早期の対応が、その後の人生を大きく左右します。

この記事が参考になったと感じましたら、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。一日も早く事件が解決し、平穏な日常を取り戻せることを願っています。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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