特別背任罪の時効とは?刑事・民事上の時効と時効待ち以外の対処法

特別背任罪の時効とは?刑事・民事上の時効と時効待ち以外の対処法
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弁護士 若林翔
2025年02月10日更新

「特別背任罪は、何年で時効になる?」

「特別背任罪の民事と刑事の時効では何が違うの?」

「特別背任罪を犯したときに時効待ち以外にできることとは?」

特別背任罪は、取締役など一定の重要な地位にある人が会社の任務に背く行為により、会社に損害を与えた場合に成立する犯罪です。

特別背任罪には、公訴時効という刑事上の時効がありますので、任務違背行為から一定期間が経過すれば、処罰されることがなくなります。また、民事上の時効もありますので、一定期間が経過すれば会社への賠償義務も消滅します。

このように時効が成立することでさまざまなメリットが生じますが、実際に時効が成立するケースはほとんどありません。長期間会社に与えた損害を隠し通すことは難しいため、いずれは背任事件が発覚してしまうでしょう。

そのため、特別背任事件を起こしてしまったときは、時効待ちではなく、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、

・特別背任事件の公訴時効と消滅時効
・特別背任罪と類似する他の犯罪の時効
・特別背任罪の時効待ち以外にできる2つのこと

などについてわかりやすく解説します。

特別背任罪の時効に関する基本的な考え方から対処法まで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

特別背任罪の公訴時効は5年または7年

特別背任罪の公訴時効は5年または7年

公訴時効とは、犯罪が発生してから一定期間が経過すると検察官が事件を起訴することができなくなる制度です。

公訴時効の期間は、刑の種類や軽重によって定められており、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が法定刑として定められている特別背任罪の公訴時効期間は、7年になります。

すなわち、不正融資などの任務違背行為をしてから7年が経過すれば、特別背任罪として処罰されるリスクは消滅します。

特別背任罪の消滅時効は何年?

特別背任罪と類似する他の犯罪の時効

特別背任罪には、刑事上の時効である「公訴時効」以外にも民事上の時効である「消滅時効」があります。以下では、特別背任罪の民事上の時効である消滅時効について説明します。

債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効|5年または10年

特別背任事件は、取締役などが任務違背行為により会社に損害を与えていますので、会社は取締役などの役員に対して、債務不履行を理由として損害賠償請求を行うことができます(会社法423条1項)。

しかし、会社が有する損害賠償請求権には、消滅時効が適用されますので、権利行使をすることなく一定期間が経過すると時効により権利が消滅することになります。具体的な時効期間は、被害者である会社が特別背任事件に気付いたときから5年または任務違背行為により損害が発生したときから10年になります。

5年または10年の時効期間が経過した後に、時効による利益を受ける旨の意思表示(時効の援用)をすれば、会社による損害賠償請求権は消滅します。

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効|3年または20年

会社が取締役の任務違背行為を理由に損害賠償請求をする場合、会社法423条1項に基づき請求するのが一般的ですが、法律上は、不法行為に基づく損害賠償請求権も発生します。

不法行為に基づく損害賠償請求であれば、被害者である会社が損害および加害者を知ったときから3年または犯罪行為から20年が時効期間になります。

特別背任罪と類似する他の犯罪の時効

特別背任罪と類似する他の犯罪の時効

特別背任罪と類似する犯罪には、背任罪、横領罪、業務上横領罪があります。以下では、これらの犯罪の時効期間をみていきましょう。

背任罪の時効|5年

背任罪とは、他人のために事務を処理する者が自己または第三者の利益を図る目的で、その任務に背き、本人に損害を与えた場合に成立する犯罪です。

特別背任罪と背任罪は、基本的な構成要件は共通しますが、特別背任罪は、取締役など会社法上の一定の地位にある者しか成立しない点で、背任罪の加重類型になります。

背任罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められていますので、公訴時効は、5年になります。

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背任罪の時効は5年|時効待ち以外にできる3つの対処法を解説

横領罪の時効|5年

単純横領罪とは、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、他人から借りた本などを返さず自分の物にするような場合がこれにあたります。

単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役と定められていますので、公訴時効は、5年になります。

業務上横領罪の時効|7年

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、会社の経理担当者が会社名義の口座から私的に送金するような場合がこれにあたります。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められていますので、公訴時効は、7年になります。

特別背任罪の時効はいつからスタートする?時効の起算点

特別背任罪の時効はいつからスタートする?時効の起算点

時効期間がスタートする時点を「時効の起算点」といいます。特別背任罪の時効を考えるにあたっては、いつから時効期間がスタートするのかを理解しておくことが重要です。以下では、民事および刑事上の時効の起算点について説明します。

特別背任罪の刑事上の時効の起算点

刑事上の時効の起算点は、「犯罪行為が終わった時点」です。

特別背任罪の場合、任務違背行為により会社に損害が発生した時点が時効の起算点になりますので、その時点から7年の時効がスタートします。

ただし、特別背任罪には未遂の処罰規定もありますので、特別背任未遂罪の場合は、任務違背行為があった時点が時効の起算点になります。

特別背任罪の民事上の時効の起算点

民事上の時効の起算点は、債務不履行と不法行為のどちらの法律構成で損害賠償請求をされるのかによって変わってきます。

【債務不履行に基づく損害賠償請求】

債務不履行に基づく損害賠償請求の場合、2つの起算点がありますので、どちらか早い方が経過した時点で時効となります。

1つ目の起算点は、会社が取締役などの役員に対して、損害賠償請求権を行使できることを知ったときで、そこから5年の時効がスタートします。

2つ目の起算点は、特別背任事件が発生し、損害賠償請求権を行使できることになったときで、そこから10年の時効がスタートします。

【不法行為に基づく損害賠償請求】

不法行為に基づく損害賠償請求の場合も2つの起算点があり、どちらか早い方が経過した時点で時効になります。

1つ目の起算点は、会社が損害の発生と加害者を知ったときで、そこから3年の時効がスタートします。

2つ目の起算点は、特別背任事件が発生し、損害賠償請求権を行使できることになったときで、そこから20年の時効がスタートします。

特別背任罪の時効は一定の事由があるとストップすることがある

特別背任罪の時効は、一定の事由があると時効期間の進行がストップまたはリセットされることがあります。

特別背任罪の時効は一定の事由があるとストップする

特別背任罪の公訴時効の中断・停止

公訴時効は、一定の事由があると時効期間の進行がストップすることがあります。これを「公訴時効の停止事由」といいます。

公訴時効の停止事由には、以下のようなものがあります。

・事件が起訴された場合
・共犯者の事件が起訴された場合
・犯人が国外逃亡している場合
・犯人が逃げ隠れしていて起訴状を渡すことができない場合

たとえば、特別背任罪を犯して、海外に逃げていたとしても、その期間は時効期間が進行しませんので、日本に帰国したタイミングで逮捕される可能性があります。

特別背任罪の消滅時効の完成猶予・更新

消滅時効は、一定の事由があると時効期間がストップ(時効の完成猶予)またはリセット(時効の更新)することがあります。

それぞれに該当する事由には、以下のようなものがあります。

【時効の完成猶予事由】

・催告

・裁判上の請求(裁判上の請求、支払督促、訴え提起前の和解、調停、破産、再生、更生手続きへの参加)

・権利について協議を行う旨の書面による合意

【時効の更新事由】

・承認

・裁判上の請求(裁判上の請求、支払督促、訴え提起前の和解、調停、破産、再生、更生手続きへの参加)

・強制執行(強制執行、担保権の実行、形式競売、財産開示手続)

特別背任罪の時効待ち以外にできる3つのこと

特別背任罪の時効待ち以外にできる3つのこと

特別背任罪は、時効が成立すれば罪に問われなくなり、損害の賠償の不要となります。しかし、特別背任事件では多額の損害が発生することが多く、ほとんどのケースで事件が発覚してしまうため、時効待ちは得策ではありません。

そのため、特別背任事件を起こしてしまったときは、時効待ちではなく、以下のような対処法を検討しましょう。

被害を与えた会社との示談

特別背任罪は、会社に損害を与える犯罪ですので、会社と示談をして会社に生じた損害を賠償することが重要です。

会社としても被害が回復されれば、それ以上大事にしたくはありませんので、事件化される前に問題を解決することができます。また、会社が刑事告訴をした後であっても、示談ができていることは有利な事情になりますので、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。

このように時効待ちという消極的な行動ではなく、被害者との示談という積極的な行動により有利な結果になる可能性がありますので、早めに示談交渉に着手するようにしましょう。

警察への自首

捜査機関に特別背任事件が発覚する前であれば、警察に自首することで逮捕を回避できる可能性があります。

なぜなら、自首をすることで逮捕の要件である逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示すことができるからです。

ただし、自首により必ず逮捕を回避できるわけではありませんので、自首をするかどうかは、弁護士に相談して慎重に検討するようにしましょう。

弁護士に相談

特別背任事件では、被害者との示談が重要になりますが、事件の当事者同士では冷静な話し合いが難しいケースも少なくありません。このような場合には、弁護士が示談交渉を担当することで、冷静な交渉が可能になり、適正な条件で示談できる可能性が高くなります。

早期に示談がまとまれば事件化を回避することができますので、特別背任事件を起こしてしまったときはすぐに弁護士に相談するようにしてください。

特別背任罪は時効待ちではなくグラディアトル法律事務所にご相談ください

特別背任罪は時効待ちではなくグラディアトル法律事務所にご相談ください

特別背任罪には、刑事および民事上の時効がありますので、一定期間が経過すれば処罰されることがなくなり、賠償義務も消滅します。

しかし、特別背任事件は、犯人の特定が容易で損害も高額になるため、事件発覚後、会社が何もせずにそのまま放置するとはありません。会社内で調査を進め事実関係が明らかになれば、刑事告訴をされてしまうケースがほとんどです。

そのため、特別背任事件を起こしてしまったときは、時効待ちではなくすぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。特別背任事件は、会社法上の特別な犯罪類型になりますので、専門的な知識や経験がなければ対応が難しい犯罪です。当事務所には、刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士が多数在籍していますので、特別背任事件の弁護であっても、どうぞ安心してお任せください。

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。

刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

特別背任罪には、公訴時効や消滅時効が適用されますので、時効期間が経過するまで放置しようと考える方もいるかもしれません。しかし、実際には時効前に事件が発覚してしまう事件がほとんどですので、時効待ちは得策とはいえません。

早期に被害者と示談をすることで事件化を回避できる可能性がありますので、時効待ちではなく、まずは経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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