特別背任罪は親告罪?告訴なしでも逮捕される?示談が重要な理由

特別背任罪は親告罪?
弁護士 若林翔
2025年01月06日更新

会社の利益を自分の利益のために使ってしまったら、「特別背任罪」に問われるおそれがあります。

「特別背任罪って親告罪?」

「親族経営だから、刑事事件にはならない?」

「特別背任罪で、被害者と示談する必要はあるの?」

こんな疑問を抱えて、本記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか?

結論から伝えると、特別背任罪は「親告罪」ではありません。そのため、会社が告訴する意向でなくても、逮捕・起訴される可能性があります。

従業員や取引先からの通報、第三者による告発、メディア報道など、様々なきっかけで事件が発覚し、捜査が開始される可能性があるのです。

特別背任罪は親告罪ではない

刑事事件になることを防ぐには、速やかに弁護士に依頼して、会社と示談を成立させることが必要です。スムーズに示談できれば、あなたの生活や人生に生じる影響を最小限に防ぐことができるでしょう。

本記事では次の点を取り上げました。

◉この記事で分かること

・親告罪と非親告罪の違い
・特別背任罪が非親告罪だと、刑事処分にどのような影響があるのか
・非親告罪でも示談が重要な理由
・特別背任罪で弁護士ができること

特別背任罪の疑いをかけられてしまった方は、是非ご一読ください。

特別背任罪は親告罪ではない

特別背任罪は、「親告罪」ではなく「非親告罪」に該当します。

つまり、被害者である会社からの告訴がなくても、捜査機関が事件を認知すれば、容疑者は逮捕・起訴される可能性があるのです。

また、従業員など第三者からの告発によって、刑事事件化するリスクもあります。この点は、特別背任罪を理解する上で非常に重要なポイントといえるでしょう。

そもそも親告罪とは?

親告罪とは、被害者の告訴がなければ、検察が起訴(公訴の提起)できない犯罪のことを指します。親告罪はさらに、絶対的親告罪と相対的親告罪の2つに分類されます。

絶対的親告罪は、常に告訴が必要な犯罪です。被害者の告訴がなければ刑事事件になることはありません。一方、相対的親告罪は、加害者と被害者の間に一定の身分関係(兄弟・従兄弟など)がある場合のみ親告罪となる犯罪です。例えば、窃盗罪や背任罪(刑法)が相対的親告罪の典型例です。

絶対的親告罪、相対的親告罪、非親告罪の違いをまとめると次のようになります。

【絶対的親告罪・相対的親告罪・非親告罪の違い】

 絶対的親告罪相対的親告罪非親告罪
定義告訴がなければ起訴できない犯罪一定の身分関係がある場合のみ、告訴が必要な犯罪告訴がなくても起訴できる犯罪
刑事事件化するきっかけ告訴のみ加害者と被害者の関係性によって異なる告訴に限られない
・第三者からの通報
・警察への相談
・内部告発など
該当する犯罪・名誉毀損罪
・侮辱罪
・過失傷害罪 など
背任罪(刑法)
・詐欺罪・横領罪 など
・特別背任罪
・傷害罪・強盗罪 など

※ほぼ全ての犯罪
告訴の必要性必要親族間なら必要不要

刑法上のほとんどの犯罪は、非親告罪に該当します。

前述の通り、特別背任罪も非親告罪の1つであり、被害者が告訴しなくても、検察官の判断で起訴される可能性があるのです。

特別背任罪は親告罪ではない

告訴・被害届・刑事告発の違い

「告訴」「被害届」「刑事告発」の違いについても、整理しておきましょう。

この3つは、いずれも捜査機関に被害内容を申告するという点では共通しています。しかし、法律上の意味合いは大きく異なります。

【告訴・被害届・告発の違い】

 告訴被害届告発
目的犯罪事実を申告して、処罰を求める意思表示犯罪事実を捜査機関に伝えること
(※処罰を求める意思表示は含まれない)
犯罪事実を申告して、処罰を求める意思表示
主体被害者本人または告訴権者
(法定代理人など)
被害者本人誰でも
法律上の効果犯罪を捜査する義務が発生する捜査するかは、捜査機関の判断に委ねられている犯罪を捜査する義務が発生する

被害届は、単に「こういった事件の被害に遭った」という事実を警察署へ届け出るものです。犯人の処罰を求める意思表示は含まれていません。

一方で、告訴は、被害者が犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示を行うものです。告訴を受けた捜査機関には、犯罪を捜査する義務が発生します。

刑事告発は、第三者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示を行うものです。告訴と異なり、誰でも行うことができるのが特徴です。

特別背任罪が非親告罪だとどのような影響がある?

前述の通り、非親告罪は、被害者が告訴しなくても刑事事件として取り扱われる犯罪です。そのため、特別背任罪が発覚すると、会社が告訴をしなかったとしても刑事事件化する可能性があります。

では、特別背任罪が発覚するきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか?

代表的なものとしては、以下の4つが挙げられます。

・従業員からの通報
・取引先からの告発
・第三者からのリーク
・メディアの報道

特別背任罪は不正会計などの大規模な犯罪と結びつくことが多いため、メディアの注目を集めやすい傾向にあります。一度報道されると、捜査機関も動かざるを得なくなるでしょう。

また、「特別背任罪」の場合、「背任罪(刑法)」とは異なり、親族間の特例はありません。つまり、親族経営の会社だからといって、立件されないわけではないのです。

特別背任罪は非親告罪であるがゆえに、様々なきっかけで刑事事件化するリスクがあるのです。たとえ会社が告訴しない方針であっても、安心することはできません。特別背任罪を犯してしまった場合は、早期の対応が何より重要だと言えるでしょう。

非親告罪であっても、特別背任罪では示談が重要

ここまで、特別背任罪が「非親告罪」であるため、被害者の告訴以外にも、様々なきっかけで刑事事件化するリスクがあることを説明しました。

そうすると、「それなら被害者と示談しても意味がないのでは?」と思った方もいるでしょう。

しかし、非親告罪であっても、特別背任罪で示談を成立させることは極めて重要です。なぜなら、刑事処分を決めるにあたっては、被害者の心情が大きく考慮されるからです。

親告罪ではない特別背任罪で示談するメリット

保釈が認められやすくなるのはもちろん、執行猶予を獲得できたり、刑が減軽されたりする可能性も高くなります。さらに、示談をするタイミングによっては、そもそも刑事事件化を阻止できる場合もあるのです。

特別背任罪で示談をするメリットについて、さらに詳しく説明します。

刑事事件化を阻止できるから

示談が成立すると、刑事事件化を阻止できる可能性が格段に高まります。

不正が公表される前であれば、示談によって告訴や被害届の提出を防ぐことで、捜査機関が事件を認知することを回避できるからです。

刑事事件化しなければ、逮捕・勾留によって長期間身柄を拘束されることはありません。裁判にかけられる負担や、起訴されて前科が付いたり、懲役刑となるリスクもなくなります。また、仮に内部告発があったとしても、当事者間で示談が成立していれば、立件される可能性は飛躍的に低下します。

加害者にとっては、不正が発覚する前に示談を成立させることが、最も負担の少ない解決策だと言えるでしょう。

保釈が認められやすくなるから

逮捕・起訴された場合も、示談が成立していれば保釈が認められやすくなります。

示談の成立によって、裁判所が「被疑者が逃亡や証拠隠滅をする可能性が低い」と判断しやすくなるからです。保釈が認められれば、自宅に戻れるため、刑事裁判の審理期間中も通常通りの生活を送ることができます。

裁判所の公表しているデータによれば、日本の刑事裁判の平均的な審理期間は4ヶ月〜11ヶ月程度だとされています。

【刑事裁判の平均的な審理期間】

不正(特別背任罪)を認める場合3.8ヶ月
否認する場合11.2ヶ月

(出典:地方裁判所における刑事通常第一審事件の概況及び実情|最高裁判所

特別背任を認める場合でも4ヶ月、否認する場合は1年近くも裁判が係属される可能性が高いのです。保釈が認められなければ、平均4ヶ月〜11ヶ月にわたって留置所での生活を余儀なくされてしまいます。

長期間の身柄拘束を防ぐには、スムーズに示談を成立させることが欠かせません。

執行猶予が付く可能性があるから

執行猶予判決を得るためにも、示談の有無は重要なポイントです。

当事者間で示談が成立しているかは、裁判官の量刑判断でも、刑を軽くする事情として考慮されるからです。示談によって被害回復がなされていることが伝われば、示談が成立していないケースと比べると、刑が軽くなる可能性は飛躍的に高まるでしょう。

因みに、特別背任罪の法定刑は「10年以下の懲役刑または1,000万円以下の罰金刑」と定められています。一方で、執行猶予付き判決を得るには、「3年以下の懲役・禁錮・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たすことが必要です(刑法第25条第1項)。

そうすると、何の対処もしていなければ、執行猶予が付かないケースも十分に想定できるでのです。仮に刑期が3年を超えてしまえば、初犯でも実刑として、長期間の刑務所生活を余儀なくされてしまいます。

特別背任罪では、まず被害者(会社)と示談を成立させて、刑の減軽を目指すことが不可欠だと言えるでしょう。

下記の記事で執行猶予について記載していますので、ご覧ください。

背任罪で執行猶予になる可能性は60%?執行猶予を獲得するポイント

 

特別背任罪を疑われたら、今すぐ弁護士へ依頼するべき

特別背任罪の疑いがかけられたら、できる限り早いタイミングで弁護士に相談してください。弁護士は、あなたの強力な味方として、様々な局面で力を発揮してくれるでしょう。

特別背任罪で弁護士ができることについて、さらに詳しく解説します。

特別背任罪で弁護士ができること

会社と示談して、刑事事件化を防いでくれる

弁護士に相談するタイミングが早いほど、会社との示談によって刑事事件化を阻止できる可能性が高まります。

どんなきっかけでも構いません。特別背任罪の疑いがかけられそうになったら、できる限り早いタイミングで、躊躇なく弁護士に相談してください。

・特別背任罪の疑いがかけられた
・不正なお金を受け取ってしまった
・内部リークがあって、犯人探しが始まった
・自分が関わった不正についての投稿をSNSで見かけた

弁護士はあなたから示談の相談を受けたら、速やかに会社に打診して示談交渉を開始してくれるでしょう。経験豊富な弁護士であれば、示談を成立させるためのポイントを熟知しているはずです。

刑事事件化を阻止するため、専門的な知識や経験を武器にして、会社と示談を成立させてくれるのです。

あなたの味方として、事実関係を調査してくれる

弁護士は、あなたの強力な味方として、不正(特別背任)の事実関係を調査してくれます。そもそも、特別背任罪となるような事件は単純ではありません。事実関係がはっきりしているケースは少なく、複雑な事情があるケースも珍しくはないのです。

おそらく、あなたにも様々な言い分があることでしょう。

「特別背任罪となることなんて知らなかった…」
「上司からの指示で行っただけなのに…」
「なぜ自分が責任を取らなければいけないのか…」
「きちんと内部規則に則ってこなしていたはずだ…」

こういったご事情を、(自分にとって不利な事実も含めて)包み隠さず正直に打ち明けてください。弁護士には守秘義務があるので、弁護士に打ち明けることで不利になることはありません。

弁護士は、客観的な状況や証拠の有無、あなたの言い分など、あらゆる要素を考慮して、問題となっている事実関係を調査してくれるでしょう。

あなたの味方として、「本当に特別背任罪が成立するのか」「否認できる可能性はあるのか」「逮捕・起訴される可能性はどの程度あるのか」「どういった刑が予想されるのか」について、的確に判断してくれるはずです。

自首・出頭するべきかアドバイスしてくれる

場合によっては、自首・出頭した方が良いケースもあるでしょう。

・あなたが不正を行ったことが明らかである
・特別背任罪となることが間違いない
・逮捕まで秒読みである可能性が高い

こういった状況でも、自ら自首・出頭して罪を自白すれば、刑は最大半分程度にまで減軽されます。ただし、当然ですが自首・出頭によって不正が発覚し、そのまま逮捕されてしまうリスクもあります。

自首・出頭する場合は、必ず弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。

弁護士によっては、自首当日も警察まで同行して、取調べ等のサポートをしてくれる場合もあります。証拠隠滅、逃亡のおそれがないと判断されれば、逮捕を防ぎ、自首した当日にそのまま自宅に帰れるケースも珍しくはありません。

逮捕を阻止、不起訴のために戦ってくれる

何より大きいのは、逮捕を回避・不起訴を獲得するために戦ってくれることです。

刑事事件に強い弁護士であれば、豊富な経験によって、どうすれば逮捕・起訴を阻止できる可能性が高くなるのかを熟知しています。会社との示談交渉、被害弁償、謝罪文の作成、身元引受人の確保など、あらゆる方面から、あなたのために弁護活動を進めてくれるでしょう。

特別背任事件があなたの生活や人生に与える影響を、最小限に抑えることができるはずです。

特別背任罪が疑われたら、グラディアトル法律事務所へご相談ください

特別背任罪を疑われてしまった方は、私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。弊所は、刑事事件を数多く取り扱っており、圧倒的なノウハウと実績を有している法律事務所です。

これまでにも多くの方からご相談をいただき、示談を成立させて刑事事件化を阻止し、逮捕・起訴を回避することに成功しています。

・それぞれ得意分野をもった13名の弁護士が在籍

・背任事件に強い弁護士が、粘り強く会社と交渉


・豊富な解決実績を活かして、示談成立へと導く

・最短で即日、夜間・土日祝日もご相談可能

・刑事事件に強い弁護士ならではの充実の刑事弁護を提供

弊所では、刑事事件の豊富な経験を持つ弁護士が、24時間365日・全国相談受付可能な体制でご相談を承っています。ご相談者に寄り添い、ご相談者の立場やご事情にも配慮して、最善の解決方法をご提案させていただきます。

特別背任罪は、社会的に注目されることも多い犯罪です。法定刑は重く、実刑判決となるリスクも低くはありません。だからこそ、刑事事件に強い弁護士に相談して、速やかに対処することが必要です。

ご相談をいただくタイミングが遅くなるほど、対処法も少なくなってしまいます。

「逮捕されるリスクがどの程度あるのか相談したい」
「どうすればいいか、専門家からアドバイスをもらいたい」
「まずは話だけでも聞いて欲しい」

こういった相談だけでも構いません。特別背任罪を起こしてしまったら、1人で抱え込まず、ぜひ私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。

まとめ

最後に、今回の記事のポイントをまとめます。

◉特別背任罪は親告罪ではない

◉従業員や取引先、第三者リークなど、様々なきっかけで捜査が開始される

◉非親告罪であっても、速やかに被害者と示談することが必要

◉示談するべき理由は次の3つ

・刑事事件を阻止できる
・保釈によって、早期の身柄解放を実現できる
・執行猶予がつきやすくなる

◉特別背任罪で弁護士ができること

・会社と示談して、刑事事件化を回避
・あなたの強力な味方として、事実関係を調査
・自首・出頭するべきかのアドバイス、当日の同行
・逮捕、起訴を防ぐための弁護活動

以上です。

特別背任罪を犯してしまった方は、この記事を読み終わったら、すぐに弁護士に相談して、逮捕を防ぐための行動を起こしましょう。

一刻も早く、事件が解決し、あなたの不安が解消されることを願っています。この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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