詐欺罪の成立要件とは?詐欺罪に問われる主な犯罪の手口と種類を解説

詐欺罪の成立要件とは?詐欺罪に問われる主な犯罪の手口と種類を解説
弁護士 若林翔
2024年12月28日更新

「詐欺罪の成立要件を知りたい」

「詐欺罪に問われる具体的な手口にはどのようなものがある?」

「詐欺罪を犯してしまったときはどうすればいい?」

詐欺罪とは、他人を欺いて財産を騙し取ることによって成立する犯罪です。「詐欺」という言葉は日常生活でもよく聞く言葉ですが、詐欺罪の成立要件は非常に複雑ですので、各成立要件の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。

また、詐欺罪にはさまざまな手口がありますので、詐欺罪の成立要件を理解するにあたっては、具体的な犯罪の手口を把握することが効果的です。

本記事では、

・詐欺罪の成立要件

・詐欺罪の成立要件を満たす主な犯罪の種類と手口

・詐欺罪を犯してしまった場合の示談の重要性

などについてわかりやすく解説します。

ご自身が詐欺罪の加害者になってしまったときは、すぐに示談を成立させることで逮捕や起訴を回避できる可能性があります。被害者との示談交渉は、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、できる限り早く弁護士に相談するようにしましょう。

詐欺罪の成立要件

詐欺罪の成立要件には、

・人を欺く行為(欺罔行為)
・被害者が錯誤に陥ること
・財物の処分行為・交付行為
・利益や財産の移転
・因果関係

の5つがあります。以下では、5つの成立要件の詳しい内容について説明します。

成立要件説明例外・注意点
欺罔行為(人を欺く行為)被害者を騙すための嘘をつくこと。ただし、財産を騙し取る目的が必要。– 嘘をついた時点で財産を奪う意図がない場合は詐欺罪は不成立。
被害者が錯誤に陥ること加害者の嘘により被害者が誤った認識(錯誤)に陥ること。– 被害者が嘘に気付いた場合は錯誤が成立せず、詐欺未遂罪にとどまる。
財物の処分行為・交付行為被害者が騙された結果、自らの意思で財産を渡す行為。– 被害者の意思に反して財産を奪う場合は窃盗罪が適用される。
利益や財産の移転被害者が財産や利益を加害者に移転させること。– 財産の移転がなければ詐欺未遂罪にとどまる。
因果関係上記の要件が一連の因果関係でつながっていること。– 嘘が途中で見破られるなど、因果関係が途切れた場合は詐欺罪ではなく未遂罪になる。

人を欺く行為(欺罔行為)

人を欺く行為のことを「欺罔行為」といいます。詐欺罪が成立するには、まずは被害者に対する欺罔行為が必要になります。

欺罔行為とは、簡単にいえば嘘をつくことをですが、財産を騙し取る目的で嘘をついたといえなければなりません。たとえば、友人に「給料日になったら必ず返済する」と言ってお金を借りたものの、他の支払いが多く返済ができなかったようなケースでは、お金を借りた時点で嘘を言っていたわけではありませんので詐欺罪は成立しません。

被害者が錯誤に陥ること

欺罔行為によって被害者が錯誤に陥ることが2つ目の成立要件になります。

錯誤とは、被害者の認識と事実が異なっている状態のことで、簡単にいえば嘘をついて騙されている状態をいいます。被害者が加害者による嘘に気付いたようなケースでは、被害者の錯誤が存在しませんので詐欺罪は成立しません。この場合には、詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

財物の処分行為・交付行為

被害者が錯誤に基づいて財物の処分行為または交付行為をすることが3つ目の成立要件になります。

処分行為・交付行為とは、被害者が自らの意思に基づいて財産を渡すことをいいます。被害者の意思に反して財物が処分・交付されたようなケースでは、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用されます。

利益や財産の移転

被害者による処分行為または交付行為によって、利益や財産が移転することが4つ目の成立要件になります。

利益や財産の移転がなされた時点で詐欺罪は既遂になりますので、最終的に利益や財産の移転がなければ詐欺未遂罪にとどまります。

因果関係

詐欺罪が成立するには、上記のすべてが一連の因果関係でつながっていることが成立要件になります。

たとえば、欺罔行為により財産を騙し取ることができたとしても、被害者が途中で嘘を見破ったようなケースでは「欺罔行為→錯誤」の間に因果関係がないため詐欺罪は成立しません。

このように4つの成立要件の間の因果関係が1つでも途切れていると、詐欺罪は既遂にはならず詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

詐欺罪の成立要件を満たす主な犯罪の種類と手口

詐欺罪の成立要件を満たす主な犯罪の種類と手口

詐欺罪の成立要件を満たす主な犯罪の種類と手口には、以下のようなものがあります。

保険金・還付金・給付金詐欺

保険金・還付金・給付金詐欺とは、保険会社や自治体に対して、虚偽の申請をすることにより保険金、還付金、給付金を騙し取る手口です。

少し前に問題になった新型コロナウイルスの影響により売り上げが減少した事業者に給付される「持続化給付金」の不正申請も給付金詐欺の一類型です。

振り込め詐欺・オレオレ詐欺

振り込め詐欺とは、親族を装うなどして電話をかけ、さまざまな名目でお金が必要であると偽り、被害者にお金を振り込ませる手口です。電話をする際に「オレ、オレ」と名乗ることが多いため「オレオレ詐欺」と呼ばれることもあります。

最近では手口が巧妙化してきており、複数の犯人が役割分担してさまざまな役割を演じることから、振り込め詐欺・オレオレ詐欺の被害者が増えてきています。

 

結婚詐欺

結婚詐欺とは、本当は結婚するつもりがないにもかかわらず、結婚することを告げて被害者から金品を騙し取る手口です。

マッチングアプリやSNSなどを通じて近づいてきて、お互いに親密になったところでお金を要求してきます。被害者自身も恋愛感情を抱いているため、詐欺被害に気付きづらいのが特徴です。

無銭飲食(食い逃げ)

無銭飲食とは、最初から代金を支払うつもりがないにもかかわらず、お店で注文をして、飲食後代金を支払わずにそのまま逃走する手口です。

 

架空請求詐欺

架空請求詐欺とは、実際には金銭を請求する根拠がないにもかかわらず、それがあるかのように偽って金銭をだまし取る手口です。

インターネットサイトの未納料金が発生しているなどの名目でスマートフォンにメッセージが届いたり、自宅にハガキが送付されるなどの手口で金銭をだまし取ろうとしてきます。

詐欺罪の成立要件を満たした場合に科される刑罰

詐欺罪の成立要件を満たした場合に科される刑罰

詐欺罪の成立要件を満たした場合、10年以下の懲役が科されます。

詐欺罪には罰金刑がありませんので、詐欺罪で有罪になると必ず懲役刑となり、執行猶予が付かなければ刑務所に収監されてしまいます。

なお、令和5年犯罪白書によると、詐欺罪の量刑相場は懲役1~3年程度、執行猶予になる確率は、約59%となっています。

詐欺罪の成立要件を満たす行為をしてしまったときは示談が重要!

詐欺罪の成立要件を満たす行為をしてしまったときは、すぐに被害者との示談をすることが重要です。

詐欺罪の成立要件を満たす行為をしてしまったときは示談が重要!

逮捕を回避できる可能性がある

詐欺罪を犯したとしても被害者との間で早期に示談を成立させることができれば、被害届の提出や告訴を防ぐことができます。被害届の提出や告訴がなければ捜査機関に詐欺事件が発覚することはありませんので、逮捕される心配もありません。

逮捕されても早期釈放を実現できる可能性がある

詐欺罪で逮捕されてしまうと、その後の勾留と合わせて最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受ける可能性があります。身柄拘束期間が長期間に及ぶと職場を解雇されるなどのリスクが高くなりますので、早期の釈放が重要になります。

逮捕されたとしても早期に被害者との示談が成立すれば、勾留を阻止することができますので、最長で72時間の身柄拘束で済む可能性があります。また、勾留をされた後でも示談が成立すれば準抗告や勾留取消請求などにより早期の身柄解放を実現できる可能性があります。

不起訴処分を獲得できる可能性がある

詐欺事件を起訴するかどうかは、検察官の判断に委ねられています。被害者との間で示談が成立していれば、有利な情状として考慮してもらうことができますので、不起訴処分になる可能性が高くなります。

不起訴処分を獲得するなら検察官による処分決定前に被害者との示談を成立させなければなりません。そのため、早期に弁護士に依頼して被害者との示談交渉を進めてもらうことが大切です。

執行猶予付き判決を獲得できる可能性がある

詐欺罪で起訴されてしまうと、ほとんどの事件で有罪になってしまいますので、起訴された被告人としては執行猶予付き判決の獲得を目指していくことになります。

執行猶予が付くかどうかはさまざまな事情を考慮して裁判官が判断することになりますが、被害者との間で示談が成立しているという事情は、執行猶予を付けるにあたって重要な要素となります。示談が成立していれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなりますので、刑事事件に強い弁護士に依頼して被害者との示談を進めてもらいましょう。

詐欺罪の弁護は実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください

詐欺罪の弁護は実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください

詐欺罪の法定刑には懲役刑しか存在しないため、とても重い犯罪だといえます。起訴されて有罪判決が下されると、事案によっては長期にわたり刑務所に収監されてしまう可能性がありますので、早急な対策が必要になります。

このような詐欺事件では、被害者との示談が有利な処分獲得にあたって特に重要な要素となりますので、被害者との示談交渉をお考えの方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。当事務所では、これまで数多くの刑事事件の弁護を行ってきており、被害者との示談交渉についても豊富な経験と実績があります。示談を成立させるためのポイントを熟知していますので、詐欺事件による不利益を最小限に抑えるためにも、まずは当事務所にご相談ください。

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

詐欺罪の成立要件は、非常に複雑ですので、被害者から「詐欺罪で被害届を提出する」と言われたときは、本当に詐欺罪が成立するかどうか判断してもらうために、まずは弁護士にご相談ください。

詐欺罪が成立するようなケースであっても、弁護士が早期に被害者との示談をまとめることで逮捕や起訴を回避する可能性を高めることができます。

詐欺罪の弁護を希望される方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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