業務上横領で逮捕までの流れは?7つのステップに分けて具体的に解説

業務上横領の逮捕までの流れ
弁護士 若林翔
2025年02月02日更新

業務上横領をした場合、どのような流れで逮捕されるのでしょうか?

また、逮捕を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?

本記事では、業務上横領罪の逮捕までの流れを、7つの段階に分けて具体的に解説します。

業務上横領で逮捕までの流れ

また、逮捕後の流れや、逮捕までの流れに関するよくある質問にもお答えします。

「逮捕される可能性」や「逮捕の時期」「自首した方が良いのか」「弁護士へはいつ相談するべきなのか」など気になるポイントを解説していきます。

業務上横領の疑いをかけられて不安を感じている方、逮捕を防ぎたいとお考えの方は、是非ご一読ください。

業務上横領罪の逮捕までの流れ

業務上横領が発覚してから実際に逮捕されるまでの流れを、7つの段階に分けて見ていきましょう。

業務上横領で逮捕までの流れ

①業務上横領が発覚する

業務上横領は、様々なきっかけで発覚します。

・仕入れた商品の行方が分からなくなった

・税務調査で金額が合わなかった

・経理担当者の交代時に不審な点が見つかった

・帳簿が合わなかったり、不自然な送金記録があった など

すぐに発覚するとは限らず、2回、3回と繰り返しているうちに会社が気づくケースも多いです。横領から数年が経ってから発覚するケースも珍しくはありません。

なお、横領が発覚しても、すぐに警察に被害申告されるとは限りません。会社としても、横領事件が外部に知られることで、会社の信用に悪影響が出たり、管理責任を問われることを恐れているからです。

そのため、警察に届け出る前に、まず事実確認を行い、被害の回復を最優先に考えるのです。多くの場合は、まずは内部で調査が行われた後、被害申告がされて、後日逮捕されるという流れになります。

②会社の調査が進められる

横領が発覚すると、まずは事実関係の調査が進められます。

すぐに本人に事実確認がされる場合もありますが、通常はある程度調査が進んでから本人に告げられます。すぐに話をしてしまうと、証拠を隠滅される恐れがあるからです。

横領の事実を確認するため、本人に気づかれないように配慮されて、帳簿や領収書の確認、防犯カメラのチェック、関係者への聞き取りなどが行われるでしょう。

なお、このタイミングで次のような変化が見られるケースもあります。

・過去の業務内容に関する質問が増える

・会社のデータへのアクセスが制限される

・社内の監査部門や、第三者機関が調査を行っている兆候がある

・人事部などとの面談を求められる・周囲の態度が変化する

疑われていると感じたら感情的になるのではなく、すぐに弁護士に相談しましょう。

③会社から事情聴取が行われる

ある程度の裏付けが取れた段階で、会社から事情聴取が行われます。

上司から呼び出しを受けたり、懲罰委員会にかけられたりして、次のような内容が確認されます。

・どのように横領をしたのか(回数・期間・金額、方法など)

・他にどのような不正行為を行ったか

・横領した金銭は何に使ったのか

・弁済する意思や弁済資力はあるのか

・どうやって返済するのか

・協力した同僚がいるか

・他に利益を受け取った人物がいるか など

ここで回答した内容や発言は、全て記録されると考えたほうがよいでしょう。

会社としては、この段階で横領したことを認めさせて、被害弁償を約束させたいと考えています。すぐに被害弁償して会社と示談すれば、逮捕を防げる可能性は高くなります。

④被害届や告訴状が提出される

内部調査の結果、横領の事実が確認されて、かつ被害弁償に応じない場合、会社は警察に被害届や告訴状を提出します。これによって警察が事件を認知するため、刑事事件として扱われることになります。

被害申告がされなければ、警察が事件を認知することはありません。したがって、まずは民事的に解決して被害届・告訴状の提出を防ぐことが大切です。

また、業務上横領の被害届や告訴状は、必ず受理されるわけではありません。

事実関係の調査が不十分だったり、証拠が揃っていなかったりすると、警察に受理されない可能性も十分に考えられます。

⑤捜査が開始される

刑事告訴が受理されると、警察の捜査が開始されます。

証拠を収集して、横領の事実を明らかにするため様々な手段が用いられるでしょう。

・会社の帳簿、決算書、領収書などの金銭記録の確認

・PCのデータや電子メール、システムログのチェック

・防犯カメラの映像解析

・関係者への聞き取り調査・被疑者の家宅捜索 など 

⑥警察の取調べを受ける

捜査の過程で、警察から任意の事情聴取を求められることもあります。

この段階の出頭要請はあくまで任意なので、法的には応じる義務はありません。ただし、出頭を拒んだり捜査に協力しなかったりすると、状況が悪化する可能性があるため慎重な対応が必要です。

また、ここで供述した内容はそのまま証拠となります。やっていないことを認めたり、不正確なことを話したりしないよう十分に注意してください。

自分で判断するのではなく、出頭する前に弁護士に相談して、アドバイスを受けたほうがよいでしょう。

⑦逮捕される

任意の事情聴取や捜査によって、犯罪の嫌疑が認められれば逮捕される可能性があります。

ただし、必ず逮捕されるわけではなく、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」などの逮捕要件が認められる場合に限られます。

業務上横領罪では、次のようなケースが考えられるでしょう。

【証拠隠滅の恐れがある場合】

・帳簿を改ざんしたり、証拠となるデータを削除する可能性がある

・横領した金銭を他の口座に移したり、現金化したりして隠匿する可能性がある

【逃亡の恐れがある場合】

・横領金額が高額で、国外に逃げる可能性がある

・家族や関係者と協力して、行方をくらませる可能性がある

逮捕要件が認められると、裁判官によって逮捕状(令状)が発行されて、逮捕にいたります。

業務上横領で逮捕された後の流れは?

業務上横領罪で逮捕されてしまったら、その後はどのような流れになるのでしょうか?

逮捕後の一般的な流れも見ていきましょう。

業務上横領の逮捕後の流れ

逮捕後〜48時間以内|警察で取調べを受ける

逮捕されると、まず警察署に連行されて取り調べが開始されます。

外部との接触が厳しく制限された上で、事件に関する内容が徹底的に追求されるでしょう。

・いつから横領を始めたのか

・どのような手口で横領したのか

・合計いくら横領したのか

・金銭をどのように使ったのか など

突然の拘束と取調官からのプレッシャーで混乱することが多いですが、曖昧な内容を話さないことが重要です。回答した内容は全て供述調書として記録されて、裁判で強力な証拠となってしまいます。

どうしてよいか分からない場合は、とにかく黙秘を貫いて弁護士に連絡しましょう。

48時間〜72時間(3日以内)|検察へ送致されて勾留請求される

警察の取調べが終わると、事件は警察から検察へと送られます。

検察官が警察の調書や証拠を精査した上で、さらに取り調べを行い、勾留請求が必要か判断するのです。

ただし、勾留請求は必ず認められるわけではありません。

勾留が認められるには、「住居不定」「証拠を隠滅するおそれ」「逃亡するおそれ」のいずれかの要件を満たすことが必要だからです。裁判官の判断によっては、勾留が認められずに釈放されるケースもあります。

4日目〜23日目|起訴決定がされる

勾留決定がされると、身柄拘束が継続されます。

勾留期間は10日間が原則ですが、最長20日間まで延長される場合もあります。

留置場に拘束されたまま、検察の取調べが続けられて、業務上横領が「起訴」されるか「不起訴」となるかが判断されるのです。

起訴されると有罪率は「99%」にも上りますが、起訴決定前に示談できれば、不起訴になる可能性が高いです。そのため、起訴決定前に被害者(会社)と示談することが極めて重要です。

業務上横領罪の逮捕を防ぐには示談が重要

業務上横領罪で逮捕を防ぐためには、示談が極めて重要です。

業務上横領罪で示談するメリット

被害申告を阻止できれば、警察に認知されない

警察が横領事件を認知するには、被害届や告訴状の提出が必要です。

横領が発覚しても、会社によって被害申告がされなければ、警察は事件を認知することができません。そのため、会社と示談交渉して、「被害申告をしない」という内容で合意できれば、逮捕や起訴のリスクを回避できるでしょう。

会社側も経済的な損害が回復されれば、それ以上の刑事処分は望まないケースが多いです。

刑事告訴したからといって会社に利益があるわけではなく、かえって警察対応などの手間が増える側面もあるからです。

ただし、示談交渉の進め方を誤ったり、証拠が明らかなのに否認を続けたりすると、かえって心象を悪化させる可能性もあります。「警察に介入してもらわなくても、直接解決できそうだ」と考えてもらうためにも、示談交渉は弁護士を通じて行いましょう。

任意捜査となる可能性が高まる

被害者が警察に相談したとしても、示談が成立していれば、任意捜査(在宅捜査)となる可能性が高まります。当事者間で被害回復がされていれば、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いため、逮捕要件を満たさないと判断されるからです。

特に、示談によって刑事告訴が取り消されたり、示談書に宥恕文言(容疑者を許すことの意思表示)が記載されていたりすると、捜査方針に大きく影響します。

在宅捜査になれば、捜査中も自宅で生活できるだけでなく、不起訴処分となる可能性も格段に高くなります。

逮捕されても早期釈放が期待できる

業務上横領は複雑な事件が多いため、身柄拘束が長期化しやすい傾向にあります。

検察によって勾留請求されることが多く、最長23日間にわたって身柄拘束されるケースも珍しくはありません。

しかし、示談が成立すれば早期の釈放が期待できます。示談が成立することで、逮捕・勾留要件を満たさなくなる可能性があるからです。

逮捕後であっても、次のようなタイミングでの釈放が期待できるでしょう。

釈放のタイミング釈放される理由
①送致前(逮捕後24時間)・容疑なし
②勾留請求前(逮捕後72時間)・勾留請求されなかった・勾留請求が却下された など
③勾留延長時(勾留10日後)・勾留延長請求がされなかった・勾留延長請求が却下された など
④不起訴処分・不起訴処分となった

釈放率を高めるには、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼して、速やかに示談交渉を開始することが大切です。

業務上横領罪の逮捕を防ぐならグラディアトル法律事務所へご相談ください

業務上横領の逮捕が不安な方は、ぜひ私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。

弊所は、刑事事件を数多く取り扱っており、圧倒的なノウハウと実績を有している法律事務所です。

・会社から、業務上横領を疑われている

・内部で横領の事実調査が開始された

・警察に被害届と出すと言われている

・業務上横領の疑いで、警察から呼び出しを受けている

・会社に示談交渉に応じてもらえない

・「業務上横領で逮捕されるのでは?」と不安で仕方がない など

上記のような方は、一人で悩まず、是非お話をお聞かせください。

弊所では、刑事事件の豊富な経験を持つ弁護士が、24時間365日・全国相談受付可能な体制でご相談を承っています。

・横領事件に強い弁護士が、粘り強く会社と示談交渉

・スピード感を持って、逮捕を阻止、早期釈放に向けた弁護活動を開始

・最短で即日、夜間・土日祝日もご相談可能!

これまでにも多くの方からご相談をいただき、示談を成立させて刑事事件化を阻止したり、不起訴・執行猶予を獲得することに成功しています。

ご相談をいただくタイミングが遅くなるほど、私たちにできることも少なくなってしまいます。業務上横領を起こしてしまったら、1人で抱え込まず、ぜひ私たちグラディアトル法律事務所へご連絡ください。

業務上横領の逮捕までの流れについてよくある質問

業務上横領の逮捕までの流れについてよくある質問

業務上横領で逮捕される可能性は高いですか?

業務上横領で逮捕される可能性は、被害額や示談の有無によって大きく変わってきます。

例えば、被害額が数百万円を超えるような高額の場合、特別な事情がない限り逮捕される可能性が高いでしょう。一方で、被害額が少なく示談が成立しているような場合は逮捕されない可能性が高くなります。

一般論として回答するのは難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。

経験豊富な弁護士なら、過去の判例や経験をもとに、想定されるリスクを教えてくれるはずです。

逮捕までの期間はどれくらいですか?

業務上横領は、発覚から逮捕まで時間がかかるケースが多いです。

事実関係がわかりにくかったり、証拠を集めるのに時間がかかったりするので、横領から1年以上経って発覚するケースも珍しくはありません。

例えば、次の事件では「約46万円」の横領が会計監査によって発覚し、1年4ヶ月後に逮捕に至っています。

25年近く務めた会社から売上金約46万円を着服・横領 54歳の経理担当の女を逮捕。 さらに行方不明の金が3000万円以上(出典:北海道ニュースUHB

・横領行為:2023年4月25日〜27日
・事件の発覚:2023年6月の会計監査
・警察への相談:2023年7月
・逮捕:2024年11月
・逮捕までの期間:1年4ヶ月

いつまで逮捕される可能性がありますか?

業務上横領罪の公訴時効は7年です。

この期間内であれば逮捕される可能性があります。

警察に自首した方が良いですか?

横領したことが事実なら、自首することも選択肢の一つです。自首が認められると、刑は最大で半分程度まで軽くなります。

ただし、自首が認められるのは、犯罪事実(横領したこと)及び犯人が捜査機関に発覚する前に限られます。タイミングによっては、自首ではなく出頭という扱いになり、刑の減軽が認められない場合もあります。

自首によってそのまま逮捕されるリスクもあるので、事前に弁護士に相談した方が良いでしょう。弁護士によっては、自首当日も警察まで同行してサポートしてくれます。

業務上横領の示談交渉は自分で行ってもいいですか?

示談交渉を自分で行うことはおすすめできません。そもそも交渉に応じてもらえなかったり、被害金額の認識が違っていてトラブルになるケースが多いからです。

示談の成立が遅くなるほど、逮捕・起訴されるリスクは高くなります。業務上横領が発覚したら、できる限り早く弁護士に相談しましょう。

会社に示談交渉を断られたらどうすればいいですか?

被害金額が大きかったり、会社側の被害感情が強い場合は、示談交渉に応じてもらえないこともあります。会社が示談交渉を拒否する場合でも、まずは謝罪の意を示すことが重要です。

その上で、弁護士を介して被害弁償を行っていきます。書面で謝罪の意思を伝えたり、示談金額を上乗せしたりして、粘り強く交渉していくことで、次第に態度が軟化することも珍しくはありません。

弁護士にはどのタイミングで相談するべきですか?

業務上横領をしてしまったら、できる限り早く相談することが大切です。

どのタイミングでも遅すぎることはありませんが、相談をもらうタイミングが早いほど、逮捕・起訴を防げる可能性は高くなります。

初回相談無料などの弁護士事務所もあるので、まずは連絡してみることをおすすめします。

まとめ

最後に、記事のポイントをまとめます。

◉逮捕までの流れは次のとおり

①業務上横領が発覚する
  ↓
②内部で調査が進められる
  ↓
③会社から事情聴取が行われる
  ↓
④被害届や告訴状が提出される
  ↓
⑤捜査が開始される
  ↓
⑥警察の取調べを受ける
  ↓
⑦逮捕される

◉逮捕後の流れは次のとおり

①逮捕後〜48時間|警察で取調べを受ける
  ↓
②48時間〜72時間(3日目)|検察へ送致される
  ↓
③4日目〜23日目|起訴決定がされる

◉業務上横領の逮捕を防ぐには、すぐに弁護士に相談して示談すること

・示談によって被害申告を防げば、警察は横領事件を認知できない

・事件が発覚しても、任意捜査(在宅捜査)となる可能性が高まる

・逮捕されても、示談によって早期の釈放が期待できる

以上です。

業務上横領の逮捕が不安な方は、すぐに弁護士に相談して逮捕を防ぐための行動を起こしましょう。一刻も早く事件が解決して、あなたの不安が解消されることを願っています。

この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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