悪質な痴漢行為は懲役刑になる可能性あり!懲役刑の回避法を徹底解説

悪質な痴漢行為は懲役刑になる可能性あり!懲役刑の回避法を徹底解説
弁護士 若林翔
2024年08月31日更新

「痴漢事件で懲役刑になることはあるの?」

「どのような痴漢行為が懲役刑になる?」

「痴漢で懲役刑を回避するための対処法を知りたい」

痴漢犯罪というと軽微な犯罪をイメージする方も多いですが、痴漢は再犯率が高く、同種前科のある犯人が起訴されてしまうと、懲役刑になる可能性も十分にあります。

また、初犯であっても悪質な痴漢行為は、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が適用され、同様に懲役刑になる可能性があります。

このような痴漢による懲役を回避するためには、被害者との示談が重要になりますので、迅速に示談交渉に着手するようにしましょう。

本記事では、

・痴漢で成立する犯罪と法定刑

・痴漢で懲役刑が科される可能性のあるケース

・痴漢で懲役刑を回避するためにできる対処法

などについてわかりやすく解説します。

痴漢の被疑者になってしまったときは、すぐに弁護士に依頼し、示談交渉などの弁護活動を行ってもらうことで逮捕・起訴を回避できる可能性が高くなりますので、早めに相談するのがおすすめです。

痴漢で成立する犯罪と法定刑|懲役の上限は6か月または10年

痴漢をするとどのような犯罪が成立するのでしょうか。以下では、痴漢で成立し得る犯罪とその法定刑について説明します。

痴漢で成立する犯罪と法定刑
懲役の上限は6か月または10年

迷惑防止条例違反

痴漢行為で成立する犯罪の1つが迷惑防止条例違反です。迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められている条例で、具体的な規定は都道府県により異なりますが、ほとんどの条例で痴漢行為を禁止しています。

たとえば、東京都の迷惑防止条例では、以下のように定められています。

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に

人の身体に触れること。

このような迷惑防止条例に違反する痴漢をした場合の法定刑は、常習性の有無に応じて以下のように定められています。

・常習性のない痴漢行為……6月以下の懲役または50万円以下の罰金

・常習性のある痴漢行為……1年以下の懲役または100万円以下の罰金

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪とは、被害者が同意できないような状況でわいせつな行為をすることで成立する犯罪です。痴漢行為も被害者の同意なく行われるものですので、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。

不同意わいせつ罪は、以前は「強制わいせつ罪」と呼ばれていましたが、2023年7月13日施行の改正刑法により名称が変更され、不同意わいせつ罪となりました。

不同意わいせつ罪に該当するような痴漢をした場合の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑と定められています。

不同意わいせつ罪となる痴漢とは?迷惑防止条例との違いも解説

不同意性交等罪

不同意性交等罪とは、被害者が同意できないような状況で性交等をすることで成立する犯罪です。同罪の「性交等」とは、以下の行為をいいます。

・性交

・肛門性交

・口腔性交

・膣や肛門に陰茎以外の身体の一部または物を挿入する

たとえば、電車内での痴漢で女性の下着に手を入れて、膣を指で触るような行為をすれば不同意性交等罪に問われる可能性があります。

不同意性交等罪に該当するような痴漢をした場合の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と定められています。

なお、痴漢により成立する犯罪の詳細については、こちらの記事をご参照ください。

痴漢は何罪に問われる?痴漢の態様ごとに適用される刑罰を解説

不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が成立する場合は懲役刑一択!

不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が成立する場合は懲役刑一択!

上記のとおり、痴漢により成立する犯罪は、迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪の2つになりますが、どちらが適用されるかによって、痴漢の犯人に科される刑罰は大きく異ります。

痴漢により不同意わいせつ罪が成立すると法定刑には、罰金刑がありませんので懲役刑一択となります。「痴漢なんて軽微な犯罪だから大丈夫」という考えで、痴漢を繰り返していると、不同意わいせつ罪が成立し、初犯であっても実刑になってしまうリスクもありますので注意が必要です。

なお、不同意わいせつ罪が成立する可能性のある痴漢行為としては、以下のようなものが挙げられます。

・下着の中に手を入れて身体を触る行為

・衣服の上からでも執拗に身体を触り続ける行為

・相手の手をつかんで自分の性器を触らせる行為

・路上で突然抱きついて身体を触る行為

・泥酔して意識のない相手の胸を触る行為

迷惑防止条例違反で懲役刑が科される可能性のある4つのケース

迷惑防止条例違反の法定刑には、罰金と懲役刑の2つがあります。迷惑防止条例違反で懲役刑が科される可能性のあるケースとしては、以下の4つが挙げられます。

迷惑防止条例違反で懲役刑が科される可能性のある4つのケース

同種前科があるケース

迷惑防止条例違反の痴漢行為は、基本的には罰金刑が選択されるケースが多いですが、過去に痴漢行為をしたことがあるなど同種前科があるケースについては、懲役刑が科される可能性があります。

同種前科があるからといって常に懲役刑になるわけではありませんが、前科がある人はそうでない人に比べて再犯のおそれが高く、更生の可能性が低いためより重い刑罰が科される傾向があります。

常習性があるケース

過去に痴漢行為をして逮捕・起訴された経験がなかったとしても、常習的に痴漢行為をしている場合には、懲役刑が科される可能性があります。

東京都の迷惑防止条例でも常習性の有無に応じて法定刑が区別されており、常習性のある痴漢に対しては、通常の痴漢よりも重い刑罰が科されています。このことからもわかるように、常習性のある痴漢は、非常に悪質な行為といえますので、迷惑防止条例違反であっても懲役刑が科されるリスクがあるといえるでしょう。

犯行態様が悪質なケース

痴漢行為の中でも以下のような行為は、犯行態様が悪質なケースに分類されます。

 

このような悪質な痴漢については、迷惑防止条例違反ではなく不同意わいせつ罪が適用される可能性があります。もっとも、上記行為のすべてが不同意わいせつ罪になるわけではなく、具体的な事案によっては悪質な痴漢行為であっても迷惑防止条例違反が適用されることもあります。

そのような場合には、罰金刑ではなく懲役刑が科される可能性が高いといえるでしょう。

執行猶予中に痴漢をしたケース

軽微な痴漢行為であったとしても、執行猶予期間中であった場合、そのことが重く見られて罰金刑ではなく懲役刑が科される可能性があります。

執行猶予中の痴漢は、痴漢行為の処罰だけではなく、執行猶予が取り消されて、執行が猶予されていた以前の刑罰も加えた刑罰で処罰される可能性もありますので注意が必要です。

痴漢で懲役刑を回避するには示談が重要

痴漢で懲役刑を回避するには示談が重要

痴漢で不同わいせつ罪が成立すると懲役刑一択となり、迷惑防止条例違反が成立する場合でも犯行態様や前科前歴の有無などの条件次第では、懲役刑が科される可能性があります。

執行猶予が付けば直ちに刑務所に収容されることはありませんが、事案によっては執行猶予が付かない実刑判決となる可能性も否定できません。

このような痴漢による懲役刑を回避するには、被害者との示談が重要になります。

被害者との示談状況は、検察官が起訴・不起訴の判断をする際の重要な考慮要素となりますので、検察官による起訴・不起訴の判断が出る前に被害者との示談を成立させることができれば、当事者間ではすでに事件が解決したものと評価され、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

逮捕・勾留されている場合でも被害者との示談が成立すれば、逃亡の恐れや証拠隠滅のおそれが消滅し、早期の身柄解放を実現できる可能性も高くなるといえます。

なお、痴漢事件の示談金に関する詳細については、以下の記事をご参照ください。

痴漢示談金(慰謝料)相場は30〜150万円!減額する方法解説

痴漢で懲役刑を回避し、不起訴処分を獲得した事例

痴漢で懲役刑を回避し、不起訴処分を獲得した事例

 

以下では、痴漢で懲役刑を回避し、不起訴処分を獲得した当事務所の実際の事例を紹介します。

電車内での痴漢冤罪で逮捕されたものの不起訴となった事例

【事案の概要】

Xさんは通勤途中に電車内で痴漢をしたとして逮捕されてしまいました。

逮捕されてしまったXさんの家族から相談・依頼を受けて、当事務所の弁護士が逮捕当日に警察署に赴き、接見を行ったところ、Xさんは「痴漢行為はしていない、冤罪だ」として無罪を訴えていました。

その後、弁護士が詳細な事実について聞き取りました。

・電車に乗っていたときの状況

・被害者とされる女性との位置関係

・被疑者の手の位置

・その女性から手を掴まれた前後の状況

・逮捕されてしまうまでの経緯

・繊維鑑定の有無

その結果、担当弁護士としても本件が冤罪事件であるとの確信を抱いたため、ご本人と相談し、今後の方針として否認していくことになりました。

【弁護活動】

取調べでは、警察からの誘導で間違った事実を調書に取られないよう助言をし、黙秘権や調書への署名を拒否する権利などがあることを伝えました。

検察と裁判所に対し、本件は勾留すべき事案でないことを主張していく必要があります。

また、逮捕後勾留請求をされると、最大で20日間もの身柄拘束をされてしまいますので、担当弁護士としては勾留請求の阻止に向けた活動を開始しました。

具体的には、

・被疑者に前科前歴がないこと

・逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないこと

・勾留の必要性がないこと

などを具体的に記載した意見書を作成し、ご本人の誓約書、両親の身元引受書を添付して、検察庁へ提出をしました。

しかし、残念ながら検察官からは勾留請求をされてしまいました。

もっとも、その後、迅速に裁判所へ同様に意見書等を提出し、弁護人は裁判官と面談をし、本件は勾留すべき事案ではないと強く伝えました。

その結果、裁判所は勾留すべきではないと判断し、勾留請求が却下され、本人は無事に釈放されました。

釈放後、弁護人は検察官に対して本件は冤罪であり、不起訴にすべきである旨の意見書を提出し、最終的に、検察官としても冤罪の疑いがあるとのことで不起訴処分となりました。

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路上痴漢で逮捕されるも不起訴処分となった事例

【事案の概要】

Xさんは、お酒をたくさん飲み、酷く酔った状態で東京の繁華街を歩いていました。酩酊状態にあるXさんは、道端で知らない女性の身体を触るなどの痴漢行為をしてしまい、その場で警察を呼ばれ逮捕されてしまいました。

Xさんは、その後すぐに釈放されたものの、起訴される可能性もあったことから当事務所に相談し、正式にご依頼いただくことになりました。

【弁護活動】

担当弁護士はすぐに検察官に連絡をして示談したい旨などを伝えました。

その結果、検察官から被害者の連絡先を教えてもらい、被害者の方に連絡をとりましたが、被害者の方は、「Xさんに反省の様子がなかった」と大変ご立腹でした。

このままでは示談の成立は困難であると考え、Xさんが反省していることを示すために、担当弁護士からXさんの反省の気持ちを伝えるとともに、謝罪文をお渡ししました。

その結果、被害者の方にXさんの反省の気持ちが伝わり、示談金20万円で示談を成立させることができました。

示談成立後は、ご依頼者様の反省文と謝罪文、示談成立の合意書を捜査機関に提出し、無事に不起訴処分となりました。

路上で痴漢して逮捕されるも示談成立して不起訴となった事例

痴漢で不起訴処分を目指すならグラディアトル法律事務所に相談を

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痴漢で不起訴処分を目指すなら、痴漢弁護に強いグラディアトル法律事務所にご相談ください。

刑事事件に強い弁護士が被害者との示談交渉をサポート

痴漢事件は、性犯罪という性質上、加害者が直接被害者と示談交渉をするのは困難といえます。また、お互いに面識がないことがほとんどですので、示談交渉をしたくても相手の連絡先がわからないというケースも少なくありません。

グラディアトル法律事務所では、痴漢事件の弁護に関する豊富な実績と経験がありますので、被害感情が強く示談交渉が難しいようなケースであっても、粘り強く交渉を続けることで示談を成立させることが可能です。また、被害者の連絡先がわからないようなケースであっても、捜査機関を通じて被害者と連絡をとることができますので、示談交渉を進めることが可能になります。

迅速に不起訴処分獲得に向けた弁護活動に着手

刑事事件はスピード勝負といわれていますので、不起訴処分の獲得を目指すのであれば迅速に弁護活動に着手する必要があります。

グラディアトル法律事務所には刑事事件の経験豊富な弁護士が複数在籍していますので、依頼があれば迅速に弁護活動に着手することができ、多忙で後回しにされる心配はありません。痴漢事件での迅速な対応を希望される方は、当事務所までご相談ください。

初回相談無料・24時間365日全国対応

弁護士に相談したくても費用面の不安があり、相談を躊躇してしまう方も少なくありません。

当事務所では、そのような費用面の不安を払拭するために刑事事件に関する相談は、初回相談料無料で対応しています。相談の受付は24時間365日対応していますので、痴漢をしてしまったという方は、深夜や休日であってもすぐに当事務所までお問い合わせください。

なお、痴漢事件を弁護士に依頼するメリットについては、こちらの記事をご参照ください。

痴漢事件は迷わず弁護士を呼べ!理由と早期に不起訴獲得した事例

まとめ

痴漢事件のうち、行為態様が悪質なケースについては、懲役刑が科される可能性があります。前科の有無や行為の悪質性によっては、執行猶予の付かない実刑判決となる可能性もあるため、そのようなリスクを回避するには迅速な弁護活動が重要になります。

特に、被害者との示談がまとまれば、不起訴処分を獲得できる可能性が大幅にアップしますので、痴漢をしてしまったという方は、一刻も早くグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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