「覚醒剤取締法により所持が禁止されている覚醒剤とは何?」
「覚醒剤を所持しているとどのような罪に問われる?」
「覚醒剤の所持で逮捕されてしまったらどうすればいい?」
覚醒剤取締法では、覚醒剤の所持を規制していますので、覚醒剤の所持が発覚すると警察に逮捕される可能性が高いです。逮捕されると長期間身柄拘束され、捜査機関による取り調べを受け、ほとんどの事件が起訴されてしまいます。覚醒剤の所持で起訴されれば、99%以上の事件が有罪になりますので、執行猶予を獲得できるかどうかが重要なポイントになります。
覚醒剤の所持罪は、初犯であれば適切な弁護活動を行うことで執行猶予を獲得できる可能性が高いため、早めに薬物犯罪に詳しい弁護士に依頼すべきです。
本記事では、
・覚醒剤の所持により成立し得る犯罪類型 ・覚醒剤の所持により逮捕される可能性のあるパターン ・覚醒剤の所持事件における弁護活動のポイント |
などについてわかりやすく解説します。
ご家族が覚醒剤の所持で逮捕されてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
目次
覚醒剤取締法により所持が禁止されている「覚醒剤」とは?

覚醒剤取締法により所持が禁止されている「覚醒剤」とは、アンフェタミン、メタンフェタミンおよび各その塩類を指します。覚醒剤という特定の物質があるわけではなく、これらの成分を含有するものが「覚醒剤」として取り扱われます。
覚醒剤を使用すると脳内化学物質であるドーパミンの量が増加し、眠気や疲労感がなくなり、頭がさえたような錯覚を引き起こします。しかし、このような効果は一時的なものでしかありませんので、再び高揚感を得ようとして繰り返し使用するため、深刻な薬物中毒の状態に陥ってしまいます。
また、覚醒剤の乱用を続けると幻覚や妄想が現れ、錯乱状態になり、殺人や放火などの犯罪、重大な交通事故を引き起こすリスクもあるため、本人だけでなく家族や周囲、社会に大きな被害を及ぼしかねません。
そこで、覚醒剤取締法では、覚醒剤の使用に繋がる覚醒剤の所持を規制対象に含め、厳しい取り締まりをしています。
なお、覚醒剤の俗称としては、以下のようなものがあります。
・チョーク ・クランク ・クリスタル ・アイス ・メス ・スピード |
覚醒剤の所持により成立し得る犯罪類型

覚醒剤の所持により成立し得る犯罪類型には、以下のようなものがあります。
罪名 | 法定刑 |
---|---|
覚醒剤の単純所持罪 | 10年以下の懲役刑 |
覚醒剤の営利目的所持罪 | 1年以上の有期懲役または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金 |
覚醒剤原料の単純所持罪 | 7年以下の懲役 |
覚醒剤原料の営利目的所持罪 | 1年以上の有期懲役または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金 |
覚醒剤の単純所持
覚醒剤をみだりに所持すると覚醒剤の単純所持罪が成立します。
覚醒剤の単純所持罪の法定刑は、10年以下の懲役刑です。
覚醒剤の営利目的所持
営利目的で覚醒剤をみだりに所持すると覚醒剤の営利目的所持罪が成立します。
覚醒剤の所持が営利目的であると認定される可能性のある事情としては、主に以下のようなものが挙げられます。
・覚醒剤の所持量が多い(10g以上) ・覚醒剤を小分けにしたパケを多数所持している ・専用の計量器を所持している ・新品の注射器を多数所持している ・メッセージアプリで覚醒剤の譲渡に関するやり取りをしている |
覚醒剤の営利目的所持の法定刑は、1年以上の有期懲役または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金です。
覚醒剤原料の単純所持
法定の除外事由がないにもかかわらず覚醒剤取締法の別表で指定された覚醒剤原料を所持すると、覚醒剤原料の単純所持罪が成立します。
覚醒剤原料の単純所持罪の法定刑は、7年以下の懲役です。
覚醒剤原料の営利目的所持
法定の除外事由がないにもかかわらず、営利目的で覚醒剤取締法の別表で指定された覚醒剤原料を所持すると、覚醒剤原料の営利目的所持罪が成立します。
覚醒剤原料の営利目的所持罪の法定刑は、1年以上の有期懲役または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金です。
覚醒剤の所持により逮捕される可能性のある4つのパターン

覚醒剤の所持により逮捕される可能性があるパターンとしては、主に以下の4つが挙げられます。
警察による職務質問により覚醒剤の所持が発覚するパターン
覚醒剤の所持により逮捕されるパターンの1つ目は、警察による職務質問で覚醒剤の所持が発覚し、現行犯逮捕となるパターンです。
警察官は、路上や車内で不審な挙動をとる人がいると職務質問を実施します。職務質問の際には、所持品検査も行われますので、手荷物や車内から不審な薬物が発見されれば、簡易検査が実施され、陽性反応が出ると現行犯逮捕となります。
匿名の通報や相談により発覚するパターン
覚醒剤の所持により逮捕されるパターンの2つ目は、匿名の通報や相談により発覚するパターンです。
覚醒剤を使用している人は、幻覚や妄想により言動におかしなところが多くなります。周囲の人がそのような状況を目撃すると、薬物使用の疑いがある旨警察に通報や相談をすることがあります。このような通報や相談があると警察では、薬物犯罪の疑いがあるとして捜査を開始しますので、捜査の結果、覚醒剤の所持が明らかになれば逮捕となります。
覚醒剤の売人の顧客リストにより発覚するパターン
覚醒剤の所持により逮捕されるパターンの3つ目は、覚醒剤の売人の顧客リストにより発覚するパターンです。
覚醒剤の売人が逮捕されると、取り調べにおいてメールや通話履歴などが調べられてしまいます。そこから覚醒剤を購入した顧客が特定されれば、顧客にまで捜査の手が及びますので、逮捕状による通常逮捕(後日逮捕)となる可能性があります。
自宅の捜索で覚醒剤が発見されるパターン
覚醒剤の所持により逮捕されるパターンの4つ目は、自宅の捜索で覚醒罪が発見されるパターンです。
覚醒剤の所持や使用の疑いが生じると、警察は、証拠を確保するために被疑者の自宅の捜索を行います。自宅の捜索により隠していた覚醒剤が見つかってしまうと、覚醒剤の所持罪で現行犯逮捕となります。
なお、自宅の捜索は、事前の連絡なしにいきなり行われますので、所持している覚醒剤を処分することは困難です。
覚醒剤の所持で逮捕された実際の事例

覚醒剤の所持で市教委課長が逮捕
自宅で覚醒剤を所持したとして、愛知県警愛知署は、津市教育委員会教育研究支援課長の男性(52歳)を覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕しました。男性は、容疑を認めているということです。
署によると、容疑者は、自宅で覚醒剤若干量を所持した疑いがもたれています。容疑者の知人から情報があり、家宅捜索したところ、ベッドのマットレスの下からポーチに入れた覚醒剤が見つかったということです。他にも注射器数百本や覚醒剤とみられる結晶も押収しました。県警は入手経路や所持の目的などを詳しく調べています。
(引用:毎日新聞)津市教委課長を覚醒剤所持容疑で逮捕 過去には薬物乱用の啓発担当
消防士が覚醒剤の所持で逮捕
奈良県の香芝消防署の消防副士長の男(36歳)が、自宅で覚醒剤を所持していたとして警察に現行犯逮捕されました。
警察によりますと、容疑者は自宅で若干量の覚醒剤を所持した疑いがもたれています。
別件の薬物事件に容疑者が関与していた疑いが浮上。容疑者が消防署での勤務を終えて帰宅した際に、警察が家宅捜索を行ったところ、容疑者が所持していたリュックサックから、ポリ袋に入った覚醒剤と注射器複数本が見つかったということです。
取り調べに対し男性は容疑を認め、「間違いありません。自分で使うために持っていた」と供述しているということです。
(引用:MBSニュース)奈良・香芝消防署の消防士が覚醒剤所持の疑いで逮捕 リュックの中からポリ袋に入った覚醒剤と注射器複数本見つかる
覚醒剤の所持で逮捕された後の流れ

覚醒剤の所持で逮捕されると、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
逮捕・取り調べ
覚醒剤の所持で逮捕されると、被疑者の身柄は警察署内の留置施設で拘束され、警察による取り調べを受けます。
取り調べで話した内容は、供述調書にまとめられて後日の裁判の証拠になりますので、不利な調書が作成されないように気を付けなければなりません。
なお、逮捕には時間制限があり、警察は被疑者を逮捕したときから48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があると判断すると、送致から24時間以内に裁判官に対して勾留請求を行います。
覚醒剤の所持で逮捕されると、ほとんどの事件が勾留請求されてしまいます。
勾留・勾留延長
裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施して、勾留を許可するかどうかを判断します。
勾留が許可されると、原則として10日間の身柄拘束が行われます。
また、勾留には延長制度がありますので、検察官による勾留延長を裁判官が許可すると、さらに最長で10日間の身柄拘束が行われます。
そのため、逮捕から合計すると被疑者は、最大で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。
起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に被疑者を起訴するか、不起訴にするかを判断します。
なお、覚醒剤の所持で逮捕された事件は、ほとんどが起訴され有罪になってしまいますので、執行猶予を獲得できるかどうかが重要なポイントになります。
覚醒剤の所持で起訴されたときの量刑相場

覚醒剤の所持で起訴された場合、どの程度の刑罰が科されるのでしょうか。以下では、覚醒剤所持の犯罪類型ごとの量刑相場を説明します。
覚醒剤の単純所持|1年以上2年未満の懲役・執行猶予
令和2年犯罪白書によると、覚醒剤の単純所持罪の量刑は、以下のようになっています。
5年超10年以下 | 3年超5年以下 | 2年以上3年以下 | 1年以上2年未満 | 1年未満 |
---|---|---|---|---|
0.2% | 7.1% | 43.8% | 48.4% | 0.4% |
この統計からは、1年以上2年未満の懲役刑となる割合がもっとも多く、これが覚醒剤の単純所持罪の一般的な量刑相場といえるでしょう。
また、覚醒剤の単純所持罪では、62.4%の事件が執行猶予になり、37.6%の事件が実刑になっていますので、有罪になったとしても執行猶予を獲得できる可能性が高いといえます。
覚醒剤の営利目的所持|3年超5年以下の懲役・実刑
令和2年犯罪白書によると、覚醒剤の営利目的所持の量刑は、以下のようになっています。
5年超10年以下 | 3年超5年以下 | 2年以上3年以下 | 1年以上2年未満 | 1年未満 |
---|---|---|---|---|
17.6% | 50.5% | 30.8% | 1.1% | 0% |
この統計からは、3年超5年以下の懲役刑となる割合がもっとも多く、これが覚醒剤の営利目的所持罪の一般的な量刑相場といえるでしょう。
また、覚醒剤の営利目的所持罪では、3.3%の事件が執行猶予になり、96.7%の事件が実刑になっていますので、単純所持罪とは異なりほとんどが実刑になるといえます。
関連コラム:覚醒剤事件で執行猶予は付く?執行猶予中や再犯での執行猶予の可能性
所持していた覚醒剤はどうなる?
覚醒剤の所持で逮捕されると、所持していた覚醒剤は、警察により押収されます。そして、その後の裁判で有罪になれば、押収された覚醒剤は「没収」となります。
没収とは、犯罪に関連する物の所有権を奪い、国庫に帰属させる刑罰です。
覚醒剤取締法では、犯人が所持していた覚醒剤は必ず没収することが定められていますので、例外なく没収の対象となります。
覚醒剤の所持事件における弁護活動のポイント

覚醒剤の所持事件では、薬物事件に強い弁護士によるサポートを受けることで執行猶予を獲得できる可能性が高くなります。以下では、覚醒剤の所持事件における弁護活動のポイントを説明します。
早期に面会を行い取り調べに対するアドバイスをする
覚醒剤の所持で逮捕されると警察による厳しい取り調べを受けますので、取り調べに不慣れな方だとよくわからずに不利な調書を取られてしまう可能性があります。また、覚醒剤事件は、入手先などを明らかにするために警察による過酷な取り調べが行われやすい犯罪類型ですので、違法な取り調べが行われている可能性も否定できません。
弁護士に依頼すれば、早期に被疑者との面会を行い、取り調べに対するアドバイスができますので不利な調書がとられてしまうリスクを最小限に抑えることができます。また、違法な取り調べに対しては捜査機関に強く抗議することで、状況が改善される可能性が高いです。
逮捕中の被疑者と面会できるのは弁護士だけですので、逮捕されたときはすぐに弁護士に助けを求めるべきでしょう。
起訴後は保釈請求による身柄解放を目指す
覚醒剤の所持罪で起訴された後は、保釈による身柄解放を請求することができます。
被疑者として逮捕・勾留されている場合、そのままだと起訴後も勾留が継続し、数か月単位で身柄を拘束されることになります。捜査段階に比べて起訴後の勾留は、期間が長く、被告人に生じる不利益も大きくなりますので、早期の身柄解放を実現することが重要です。
弁護士に依頼すれば、捜査段階から保釈請求の準備を進めることができますので、起訴後速やかに保釈請求を行い、身柄解放を実現することが可能です。
再犯防止に向けた取り組みをサポートする
覚醒剤事件は、再犯率が高い犯罪として知られています。覚醒剤の所持で起訴された場合、執行猶予付き判決を獲得するには、再犯の可能性が少ないことを示さなければなりません。
それには、専門の医療機関や更生支援団体のサポートを受けることが重要です。薬物依存は、自分の意思だけでは抜け出すのは困難ですので、薬物依存症の治療を早期に開始することで、覚醒剤から脱却できる可能性を高めることができます。
薬物犯罪に強い弁護士であれば、専門の医療機関や更生支援団体とのつながりがありますので、状況に応じた適切な機関を紹介してくれるでしょう。
贖罪寄付により反省の態度を示す
覚醒剤事件は、被害者のいない犯罪ですので、一般的な犯罪のように示談をすることで刑を軽くすることはできません。しかし、贖罪寄付という方法により刑の減軽を求めることが可能です。
贖罪寄付とは、罪を犯した人が反省の気持ちをあらわすために、弁護士会や被害者支援団体などに寄付をすることをいいます。法廷で反省の言葉を述べるだけでなく、贖罪寄付という形で具体的に行動したことを示せば、裁判官に与える印象もよくなりますので、量刑が軽くなる可能性があります。
関連コラム:覚醒剤事件で弁護士に依頼する3つのメリットと弁護士の探し方を解説
覚醒剤の所持事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

覚醒剤の所持が発覚すると、基本的には逮捕・勾留され、起訴されてしまいます。起訴されると99%以上の事件が有罪になりますので、覚醒剤の所持事件では、執行猶予の獲得に向けた弁護活動が重要になります。
グラディアトル法律事務所では、覚醒剤の所持事件などの薬物犯罪の弁護について豊富な経験と実績があります。薬物事件の弁護活動のポイントを熟知していますので、事案に応じた効果的な弁護活動を行うことで、有利な判決を獲得できる可能性を高めることができます。
薬物事件の弁護は、薬物事件に強い弁護士に依頼する必要がありますので、家族が覚醒剤の所持で逮捕されてしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。薬物事件に強い当事務所の弁護士が迅速に警察署に駆けつけ、有利な処分獲得に向けて全力でサポートいたします。
まとめ
覚醒剤の所持で逮捕されてしまうと、ほとんどの事件は起訴されて有罪判決が言い渡されます。覚醒剤事件は被害者が存在しませんので、刑事処分の軽減を狙うには、示談ではなく再犯防止に向けた取り組みや贖罪寄付などの対応が必要になります。
適切な対応をとるには薬物犯罪に詳しい弁護士のサポートが不可欠になりますので、家族が覚醒剤の所持で逮捕されてしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。