迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは?逮捕されたケースや判例を紹介

迷惑防止条例の卑猥な言動とは?
弁護士 若林翔
2024年11月01日更新

「迷惑防止条例の「卑わいな言動」って何?」

「どういった行動が「卑わいな言動」になるの?」

こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは、典型的な「痴漢・盗撮」以外の迷惑行為を処罰するための概念です。

具体的には、次のような行為が「卑わいな言動」にあたり、実際に逮捕されたケースも存在しています。

・スカート丈で、下半身に向けてカメラを構える行為
・スボンの上から臀部(おしり付近)を撮影する行為
・「ハグさせて。性欲処理したいよ」などと声掛けする行為
・卑わいな格好をしたアニメグッズを路上に置く行為

これらは、いずれも典型的な痴漢・盗撮などの性犯罪行為ではありませんが、「卑わいな言動」として広く処罰される可能性があるのです。

本記事では、次の点を取り上げました。

◉この記事を読んで分かること 
・迷惑防止条例の「卑わいな言動」の意義
・判例で「卑わいな言動」と判断されたケース
・「卑わいな言動」の意義に対する裁判官の反対意見
・「卑わいな言動」をしてしまった場合の対処法

「卑わいな言動」の範囲が気になっている方は、是非ご一読ください。

迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは?

迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」のことを指します。

迷惑防止条例の卑猥な言動とは?

そもそも、各都道府県の迷惑行為防止条例では、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような迷惑行為が広く規制されています。

典型的なものとしては、「盗撮」や「痴漢」が挙げられます。

例えば、東京都の迷惑防止条例では、以下の行為が明文で禁止されています。

・衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること
・通常衣服で隠されている下着又は身体を、撮影したりカメラを向けること

一方で、上記のような典型的な「盗撮」や「痴漢」には当たらない迷惑行為もあります。

一例として、

・「衣服の上から」盗撮する行為
・スカートめくりをする
・性的な発言を投げかける
・近寄って匂いを嗅ぐ

などが挙げられます。

これらの行為を処罰する根拠となるのが、迷惑防止条例の「卑わいな言動」です。

典型的な「盗撮・痴漢」でなくても、被害者が、羞恥心を感じたり不安を覚えたりする行為は「卑わいな言動」として処罰されるのです。

「卑わいな言動」で逮捕されたケース

実際に、迷惑防止条例の「卑わいな言動」で逮捕された事例をいくつか見てみましょう。

・路上で女子高校生に対し、「ハグさせて。性欲処理したいよ」などと声掛け。
県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで逮捕されたケース(出典:神奈川新聞
・電車内で、4人がけのボックス席の対面に座っていた女子高校生の胸や太ももなどをスマートフォンで撮影
県迷惑行為防止条例違反(ひわいな言動)の疑いで逮捕されたケース(出典:朝日新聞デジタル
・路上に、卑わいな格好をしたアニメの女性キャラクターがプリントされた抱き枕カバーなどを置いて、県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで逮捕されたケース(出典:中国新聞デジタル

これらの事例からも分かるように、「卑わいな言動」として扱われる行為は非常に幅広いです。

具体的な行為が決まっているわけではなく、相手に性的な不快感や嫌悪感を与える行為が、広く「卑わいな言動」として逮捕されています

判例で迷惑防止条例の「卑わいな言動」に当たるとされた行為

迷惑防止条例の「卑猥な言動」について、判例はどのように考えているのでしょうか?

最高裁判所の代表的な判例を紹介します。

迷惑防止条例の卑猥な言動に当たるケース

スカート丈でカメラを構える行為

1つ目の判例は、膝上丈のスカートを着用した女性客に後方から接近し、前かがみになった女性のスカートの裾と同程度の高さで、小型カメラを構えた行為が、「卑わいな言動に当たるとされたケースです。

※判決文抜粋
被告人は、東京都内の開店中の店舗において、小型カメラを手に持ち、膝上丈のスカートを着用した女性客(以下「A」という。)の左後方の至近距離に近づき、前かがみになったAのスカートの裾と同程度の高さで、その下半身に向けて同カメラを構えるなどしたというのである。
このような被告人の行為は、Aの立場にある人を著しく羞恥させ、かつ、その人に不安を覚えさせるような行為であって、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作といえるから、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)5条1項3号にいう「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるというべきである。(出典:令和4年12月5日(令和4(あ)157)|裁判例結果詳細

スボンの上から臀部を11回撮影した行為

2つ目の判例は、ズボンを着用した女性の臀部を、近い距離から11回撮影した行為が「卑わいな言動」に当たるとされたケースです。

(問題となった行為)
細身のズボンを着用した女性客を、約5分間,40m余りにわたって付けねらい、背後約1〜3mの距離から,デジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて、臀部をねらい、(ズボンの上から)約11回撮影した。

本件では、「ズボンの上から女性の臀部を撮影する行為」が、迷惑防止条例の「卑わいな言動」とまで言えるのかが問題となりました。

この判決で、裁判所は、「卑わいな言動」の意義について示した上で、ズボンを着用した女性の臀部を撮影する行為は「卑わいな言動」に当たると判断しています。

(判決文抜粋)
「卑わいな言動」とは,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解され,同条1項柱書きの「公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し,正当な理由がないのに,著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」と相まって,日常用語としてこれを合理的に解釈することが可能であり,所論のように不明確であるということはできない

・被告人の本件撮影行為は,被害者がこれに気付いておらず,また,被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり,これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるものといえるから,上記条例10条1項,2条の2第1項4号に当たるというべきである。(出典:平成20年11月10日最高裁判所第三小法廷|裁判例結果詳細

「卑わいな言動」の意義については、裁判官の反対意見もある

ただし、本判決には「被告人の行為は「卑わいな言動」とまでは言えず、無罪とするべき」という裁判官の反対意見も付記されています。

(判決文抜粋)※反対意見
「卑わいな言動」とは,同項1号から3号に定める行為に匹敵する内容の「卑わい」性が認められなければならないというべきである。そして,その「卑わい」性は,行為者の主観の如何にかかわらず,客観的に「卑わい」性が認められなければならない。かかる観点から本件における被告人の行為を評価した場合,以下に述べるとおり,「卑わい」な行為と評価すること自体に疑問が存するのみならず,被告人の行為が同条柱書きに定める「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような行為」には当たるとは認められない。
※同項1号から3号 (1)衣服等の上から,又は直接身体に触れること。 (2) 衣服等で覆われている身体又は下着をのぞき見し,又は撮影すること。 (3) 写真機等を使用して衣服等を透かして見る方法により,衣服等で覆われている身体又は下着の映像を見,又は撮影すること。

・被告人の本件撮影行為それ自体を本号にいう「卑わい」な行為と評価することはできず,また,仮に何がしかの「卑わい」性が認め得るとしても本条1項柱書きにいう「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせる」行為ということはできないのであって,被告人は無罪である。

結局のところ、「卑わいな言動」がどのような行為なのかは、必ずしも明確となっているわけではありません。

撮影前後の状況や、撮影行為の内容、被害者の感じ方など、様々な要素が考慮されて、「卑わいな言動」に当たるかが判断されます。

本件のように、服の上からの撮影であっても、行為態様が悪質であれば「迷惑防止条例違反」として起訴され、有罪になる可能性があるのです。

「服の上から撮影しただけだから盗撮には当たらない」などと自己判断するのは非常にリスクが高い行為です。

トラブルに発展したら、すぐに弁護士に相談して、示談などの必要な行動を起こしましょう。

「卑わいな言動」として迷惑防止条例違反になった場合の刑罰

「卑わいな言動」として迷惑防止条例違反に問われた場合、どのような刑罰が科せられるのでしょうか?

迷惑防止条例は、法律とは異なり、各都道府県が独自に定めている条例です。

そのため、規制の内容や具体的な刑罰も、都道府県によって異なります。

例えば、東京都の迷惑防止条例では、次のような刑罰が定められています。

・「卑わいな言動」に常習性がない場合  
→6月以下の懲役又は50万円以下の罰金

・「卑わいな言動」に常習性があると認定された場合
→1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

東京都の迷惑防止条例では、常習性の有無によって、科される刑罰が異なります。

被害者が羞恥心を抱いたり、不安を覚えるような「卑わいな言動」を繰り返していると、より重い刑罰が科せられてしまうのです。

卑猥な言動に常習性がある場合と常習性がない場合の違い

他の都道府県でも、同じように常習性によって刑が加重されているケースは多くみられます。

単発的な行為であれば軽い罰金で終わる事件でも、常習性が認められれば懲役刑が科される可能性が高まるといえるでしょう。

「卑わいな言動」をしてしまったら、すぐに弁護士へ相談を!

もしも、自分の言動が迷惑防止条例の「卑わいな言動」に当たる可能性があると感じたら、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士へ相談することで、状況に応じたアドバイスを受けることができ、様々なリスクに対処することができるからです。

例えば、次のような疑問や不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

・自分の言動が「卑わいな言動」に当たる可能性があるのか不安
・被害者から訴えられたらどうすれば良いのか
・万が一、警察から連絡が来たらどう対応するべきなのか
・逮捕や起訴を回避するために、できることはあるのか 等

弁護士であれば、こうした疑問や不安に対して、一つ一つ丁寧に答えてくれるはずです。

法律的な観点から見たリスクや、具体的な対処方法についてのアドバイスが期待できるでしょう。

万が一、逮捕されてしまった場合でも、事前に弁護士に相談しておけば、早期の釈放・起訴回避に向けてすぐに弁護活動を開始してもらえます。

例えば、弁護士から捜査機関を通じて被害者に連絡し、示談交渉を行うという方法があります。

逮捕されても、すぐに示談が成立し、被害者から許してもらえたことで、早期釈放されるケースは珍しくありません。

一人で悩まずに、すぐに弁護士に相談することで、最悪の事態を避け、早期の問題解決につなげることができるのです。

迷惑防止条例違反で不安を感じたら、グラディアルへご相談ください

迷惑防止条例の「卑わいな言動」で不安を感じたら、グラディアトル法律事務所へご相談ください。

私たちが、グラディアトルをおすすめする理由は次の2つです。

・性犯罪に強く、難しい示談交渉も数多く成立させている
・24時間365日相談受付可能、初回相談無料

それぞれ、さらに詳しく説明します。

性犯罪に強く、難しい示談交渉も数多く成立させている

私たちは、性犯罪に強く、難しい示談交渉をいくつも取り扱ってきました。

路上で痴漢して逮捕されるも示談成立して不起訴となった事例

痴漢で逮捕|弁護士の早急な示談対応で2日で釈放・不起訴となった事例

デリヘルで迷惑防止条例違反|盗撮がバレて逃げるも示談金0円解決した事例

被害者の方が強い精神的ショックを受けていたり、激しくご立腹されている状態からでも、粘り強く交渉に取り組み、示談を成立させてきました。

「卑わいな言動」によって深刻なトラブルに発展している場合は、是非グラディアトルへご依頼ください。

迷惑防止条例違反による逮捕からあなたを守るため、グラディアトルが闘います。

24時間365日相談受付、初回相談無料

「卑わいな言動」として処罰されるリスクがあるのか、まずは相談だけしてみたいという方もいるでしょう。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日、初回相談料無料で対応しております。

「自分の行った行動が、卑わいな言動になるのか知りたい」
「弁護士に依頼する程、リスクの高いケースなのか知りたい」
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このようにお考えの方も、まずはご相談ください。

相談したからといって、必ず依頼しなければいけないわけではありません。

あなたが置かれている状況をお聞きした上で、あなとの状況に応じたアドバイスをさせていただきます。

まとめ

最後に、今回の記事のポイントを整理します。

・迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」のこと

・判例で「卑わいな言動」に当たるとされたケースは次のとおり

・女性のスカート丈で、下半身に向けてカメラを構える行為
・ズボンの上から、女性の臀部を複数回撮影する行為 
→ただし、裁判官の反対意見も付記されている

・卑わいな言動に当たるかは、個別具体的に判断される

・卑わいな言動に当たるかもと感じたら、すぐに弁護士への相談が必要

以上です。

迷惑防止条例違反は、比較的軽い「痴漢」や「盗撮」でも成立しやすい犯罪です。

とはいえ、逮捕されるリスクはありますし、最悪の場合「懲役刑」となってしまうリスクもあります。

「卑わいな言動」によって事件に発展した場合は、すぐに弁護士へ相談しましょう。

本記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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