傷害罪で示談に応じない相手への対処法は?示談が失敗する理由も解説

傷害罪で示談に応じない相手への対処法は?示談が失敗する理由も解説
弁護士 若林翔
2024年06月02日更新

傷害罪で、「相手が示談に応じてくれない」というご相談を頂く機会は多いです。

・事件以降、全く連絡がとれない

・交渉を拒否されてしまう

等の理由から、示談を諦めかけているご相談者様もたくさんいます。

しかし、示談を簡単に諦めてはいけません。

・示談していれば不起訴になったのに…

・示談していれば執行猶予が付いたのに

というケースは、決して珍しくないからです。

傷害事件を起こしてしまったら、経験豊富な弁護士に依頼して、解決に向けて最大限努力しましょう。

相手が示談に応じない理由を特定し、適切に対処できれば、流れを一変させることができます。

本記事では、傷害罪で

・被害者が示談に応じない場合の対処法

・示談に応じてもらえない理由

・示談できない場合のリスク

について、弁護士が解説します。

傷害罪の示談で悩んでいる方は、是非ご一読ください。

傷害罪で被害者が示談に応じない理由

傷害事件で、被害者が示談に応じないケースは少なくありません。

ここでは、弊所の経験を元に、被害者が示談に応じない理由として、よくある理由を3つ紹介します。

これらの理由を踏まえ、後述する対処法を検討してみましょう。

傷害罪で示談に応じない理由は?

連絡を取りたくないから

示談交渉を行うには、被害者に連絡を取る必要があります。

しかし、傷害事件の被害者は、加害者と2度と顔を合わせたくないと思っていることが通常です。

本人はもちろん、加害者の家族や知人とすら、会いたくないと考えているケースも珍しくありません。

例えば、元々知り合いだった等の理由で、連絡先が分かっていたとしても、事件後の接触は拒否されてしまうでしょう。

示談交渉は、必ず弁護士に依頼して行うことが必要です。

弁護士を介することで、直接顔を合わせる心配が無くなるため、被害者も示談交渉に応じてくてやすくなります。

※被害者の連絡先が分からない場合は?

弁護士を通じて、捜査機関に照会することができます。

もちろん相手の同意は必要になりますが、実務上も「弁護士であれば〜」といった理由で、連絡先を開示してもらえることが一般的です。

示談の内容に納得していないから

「示談の内容に納得していない」ことが理由で、示談に応じない被害者も多いです。

示談は、一定の示談金を支払う代わりに、被害者が加害者を許すことで成立します。

そのため、示談金の額が、被害者の考える賠償額と乖離していると、示談に応じてもらうことは難しくなります。

例えば、傷害の程度が大きかったり、行為の内容が悪質だったりする程、被害者が求める賠償額は高額になるでしょう。

示談交渉をスムーズに進めるには、被害者の心情に寄り添いつつ、妥当な賠償額を見極める必要があります。

被害感情が強いから

被害感情が強いことが原因で、示談に応じてもらえないケースもあります。

傷害事件の被害者は、事件によって大きな苦痛を受けているからです。

怒りや恐怖、不安感などのマイナス感情を抱えている被害者にとって、加害者を許して示談することは簡単ではありません。

事件の経緯や、傷害行為の中身によっては、「お金の問題ではない」「とにかく許せない」といった心理が働くこともあるでしょう。

この場合、金銭ではなく

「どうすれば被害者の被害感情を和らげることができるか」

に焦点をあてて、考えることが大切です。

被害者の恐怖心を取り除く配慮をすることで、示談がスムーズに成立することも多いです。

例えば、示談内容に「接近禁止条項(二度と関わらないという約束)」を盛り込む事も効果的かもしれません。

傷害事件で相手が示談に応じない場合の対処法

ここでは、示談に応じない場合の対処法を3つ説明します。

傷害罪で示談に応じない相手への対処法

示談金を増やす

示談金を積み増すことで、示談に応じてもらえるケースは多いです。

例えば、「お金の問題ではない」と言っている被害者に対しても、示談金の増額を打診することで、結果的にスムーズに示談が成立するケースもあります。

示談の成立を最優先に考えるのであれば、やはり「示談金を増やす」のは有効な手段の1つだといえるでしょう。

ただし、とにかく示談金を増やせば良いという訳ではありません。

いたずらに示談金を増やした結果、払えなくなったり、必要以上に経済状況を圧迫させてしまうと、意味がないからです。

示談金の増額を検討する場合、相場を把握した上で、状況に応じて判断することが必要です。

自分の支払い能力

示談に対する意向

などを弁護士に伝えて、専門家のアドバイスをもらいましょう。

示談の条件を見直す

示談金以外の条件が、被害者にとって受け入れがたい内容になっている場合も多いです。

示談では、示談金以外にも

・宥恕文言(加害者を許すという文言)

・被害届の取り下げ

・告訴の取り下げ

・嘆願書の作成

などの様々な条件が、示談の内容として盛り込まれます。

これらの条件が、被害者にとって納得できない内容となっており、難色を示しているケースも珍しくありません。

特に「宥恕文言(加害者を許すという文言)」は、被害者の被害感情が強いほど、受け入れてもらえない可能性が高まります。

弁護士のアドバイスを受けながら、柔軟に条件を調整していきましょう。

【Q&A】宥恕文言(加害者を許すという文言)が無くても、示談成立で刑事処分は軽くなる?

「被害者に許してもらえないなら、示談をしても意味がないのでは?」

と考える人もいるでしょう。確かに、宥恕文言は、事件の進行に大きな影響を与えます。

しかし、宥恕文言を外したからといって、示談の効果が無くなる訳ではありません。

示談金を支払って、当事者間で解決したという事情は、しっかりと考慮されます。

供託をする

どうしても示談を受け入れてもらえない場合は、「供託」を活用することも一案です。

※供託とは?

被害者にお金を受け取ってもらえない場合に、代わりに法務局にお金を預けること。

【供託のイメージ】

供託とは被害者にお金を受け取ってもらえない場合に法務局にお金を預けること

供託は、特に以下のようなケースで効果的な手段です。

・被害者と連絡が取れない

被害者が、示談交渉を拒否している

金額に関わらず、慰謝料を受け取る意思がない

いくら粘り強く交渉を行っても、被害者の意思が固く、示談が成立できないケースはゼロではありません。

その場合は、支払うつもりだった示談金を法務局に預けることによって、示談成立に近い効果が期待できます。

示談を受け入れてもらえなかった場合の最後の手段として、知っておくと良いでしょう。

ただし、供託をする場合も、相手の氏名や住所は必要です。

弁護士を付けずに「供託」を行うことは、非常に困難だといえるでしょう。

傷害罪で示談できないとどうなる?

それでは、傷害事件で相手と示談できなかった場合、加害者にはどのような不利益が生じるのでしょうか。

ここでは、示談できなかった場合の影響について説明します。

傷害罪で示談できないとどうなる?

前科がつく可能性が高まる

傷害罪で示談できないと、前科がつく可能性が高くなります。

示談が成立していない場合、

・被害者から許しを得ることができていない

・被害の回復に必要な行動を取っていない

ということを前提に、全ての刑事手続きが進んでいくからです。

TVでニュースなどを見ていても、「示談していれば不起訴となっていた可能性が高いのに…」という事案は、決して珍しくありません。

特に傷害事件の場合、被害が大きかったり、行為が悪質だったりすると、初犯でも実刑判決となる可能性が十分に想定されます。

傷害事件を起こしてしまった場合、前科を防ぐためにも弁護士に依頼して、示談成立に向けた最大限の努力をするべきです。

刑事処分が重くなる

傷害事件で示談に応じてもらえないと、刑事処分が重くなる可能性が高くなります。

示談の成立は、裁判官が刑を決定する際も、重要な判断材料となるからです。

示談が成立していない場合、以下のような影響が考えられます。

・執行猶予がつかず、実刑判決になる可能性が高くなる

・懲役刑の期間が長くなりやすい

・罰金額が高額になる

一方、示談が成立していれば、たとえ有罪判決を受けたとしても、執行猶予が付いたり、相場より軽い刑となる可能性が高まります。被害の回復に向けて最善を尽くしたことが、加害者に有利な事情として汲み取られるからです。

示談成立に向けて最善を尽くすことが、刑事処分を軽くする近道だといえるでしょう。

民事裁判に発展する

傷害事件では、被害者に対する「民事上の責任」も発生していることを忘れてはなりません。

例えば、ケガの治療費、休業損害、慰謝料などです。

これらの金額は、示談金に含まれていますが、示談をしていない場合、別途支払わなければなりません。

例えば、

・どこまで補償するのか

・どうやって支払うのか

・合計いくら支払うのか

・どのタイミングで支払うのか

等で揉めることも多く、将来的に民事裁判に発展するケースは珍しくありません。

裁判に発展すると、弁護士費用が必要になる上、時間的にも精神的にも大きな負担が発生します。

傷害事件を解決し、日常を速やかに取り戻すためには、被害者と示談を成立させることが大切です。

【要注意】本人が執拗に交渉すると、状況が悪化する場合も

要注意!傷害罪で本人が直接連絡すると、かえって状況が悪化する場合もある

傷害事件の示談で、最も注意したいポイントは「自分で交渉を進めないこと」です。

例えば、傷害行為の相手が「元々の知人だったようなケース」では、特に注意が必要です。

連絡先を知っているが故に、自分で連絡を取ってしまい、交渉に失敗してご相談をいただくケースが後を絶ちません。

もちろん、途中から弁護士が介入しても、示談を成立させることはできますが、通常より交渉が難航する可能性が高くなります。

例えば、以下のような行為は絶対に避けるべきです。

・被害者に対して、執拗に連絡する

・被害者の意向を無視して、示談を急がせる

・不当に安い金額で、示談を持ちかける

・被害者に対して、威圧的な態度を取る

・示談に応じなければ不利益になると脅す

こうした行為は、示談交渉を進展させるどころか、被害者の反発を招き、事態をさらに悪化させてしまいます。

傷害事件を早く解決したいという気持ちは大切ですが、自分で解決しようとして、かえって事態を悪化させてしまっては元も子もありません。

傷害事件で示談交渉をする場合は、速やかに弁護士に依頼しましょう。

弁護士に依頼すると、傷害罪の示談が成立しやすくなる理由

弁護士に示談交渉を依頼することで、示談が成立する可能性は格段に高まります。

傷害罪で弁護士が付くと、示談に応じやすいのは何故?

未払いの不安が無くなるから

被害者が示談に応じない理由の一つに、「示談金を支払ってもらえるか不安」というものがあります。

示談交渉にあたって、

・本当に払ってくれるのだろうか

・口先だけではないなろうか

という不安を抱えている被害者は少なくありません。

弁護士に依頼することで、この不安を取り除くことができます。

直接やり取りするのではなく、弁護士を経由して支払ってもらう等の柔軟な支払い方法が取れるため、被害者としても示談に応じやすくなるのです。

被害者の感情が和らぐから

被害者にとって、弁護士は事件の当事者ではありません。

そのため、弁護士を介してやり取りすることは、被害者の安心感に直結します。

弁護士を通してやり取りすることで、

・加害者に連絡先を知られてしまうのでは?

・後で仕返しされてしまうのでは?

という、不安を払拭させることができるでしょう。

実務上も、弁護士がついたことがきっかけとなって、被害者の心境に変化が生じることは、珍しくありません

示談交渉の経験が豊富だから

示談交渉の経験を豊富に持っていることも、示談が成立しやすくなる理由の1つです。

弁護士には、これまでに数多くの示談交渉を行ってきた経験があります。

そのため、どのようにすれば示談が成立するのか、そのノウハウを持っているのです。

例えば、被害者が高額な示談金を要求してきた場合、経験の浅い素人では、交渉に苦戦してしまうかもしれません。

また、示談条項についても、どのような内容にすべきか判断がつかないこともあるでしょう。

しかし、弁護士なら、被害者の要望を踏まえつつ、示談金の額や示談条項などを適切に調整することができます。

また、必要に応じて、被害者への謝罪の仕方なども、アドバイスしてくれるでしょう。

このように、弁護士の豊富な示談交渉の経験を活かすことで、スムーズに示談を成立させることができるのです。

傷害罪の示談で悩んだら、グラディアトル法律事務所へ

弁護士 逮捕

最後に、今回の記事の要点を整理します。

・傷害罪で、相手が示談に応じない理由は3つ

  ①連絡を取りたくない

  ②示談の内容が納得できない

  ③被害感情が強い

・傷害罪で示談できない場合の不利益は、計り知れない

・本人が、執拗に交渉するのは絶対にNG

・弁護士が付くことで、事態が一気に好転することも多い

・どうしても示談できない場合は「供託」も検討する

・弁護士に依頼して、最後まで最大限の努力をすべき

弊所でも、傷害事件で、被害者が示談に応じてくれないというご相談を頂く機会は多いです。

しかし多くのケースでは、弁護士が受任することで、被害者の心境にも変化が生じ、無事に示談を成立させることができています。

傷害事件を起こしてしまったら、速やかに弁護士に相談し、示談交渉を進めるなどの行動を起こすことが必要です。

グラディアトル法律事務所では、これまでにも数多くの傷害事件の相談を受けて、警察や検察と交渉を行ったり、被害者との示談を成立させる等の弁護活動を行ってきました。

勇気をもってご相談いただいたことで、事態が好転したご相談者様は数え切れません。

傷害事件で悩んだら、刑事事件に強いグラディアトル法律事務所へご相談ください。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日全国対応可能な体制を整備しています。

LINEでの無料法律相談も受け付けているので、是非お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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