「不同意性交等罪で執行猶予はつく?」
「実刑を避けることはできる?」
不同意性交等罪は、5年以上の懲役が定められている重い犯罪です。
「3年以下」に減軽されない限り、執行猶予がつくことはなく、初犯で実刑となるケースも珍しくありません。
ただし、絶対に執行猶予がつかないわけでもありません。
事件後、すぐに弁護士に依頼して示談交渉などを行えば、刑を減軽して、実刑を回避できる可能性は高くなります。
(出典:平成29年刑法改正後の規定の施行状況についての調査結果(最高裁判所提供統計による量刑分布)|法務省)
法務省のデータによれば、強制性交等罪(現:不同意性交等)で執行猶予になる可能性は20%程度とされています。ただし、刑が「3年以下」に減軽されたケースに限れば、73%で全部執行猶予が付いています。
そうすると、不同意性交等で実刑を回避するには、まずは刑を3年以下に減軽することが重要と言えるでしょう。
本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事を読んで分かること ・執行猶予がつく条件 ・懲役が軽くなるケース ・執行猶予になるためのポイント ・不同意性交等罪で執行猶予がついた実例 |
不同意性交等罪で執行猶予を獲得したい方は、是非ご一読ください。
目次
不同意性交等罪で執行猶予は付く?
不同意性交等罪では、原則として執行猶予はつきません。
なぜなら、執行猶予が付くのは懲役が「3年以下」の犯罪だけだからです。
不同意性交等罪の刑は「5年以上の懲役」であるため、基本的に執行猶予がつくことはありません。
ただし、一定の事由を満たすと、不同意性交等罪でも「3年以下の懲役」に減軽されることがあります。
・犯行の背景に同情すべき事情があり、裁判官が考慮してくれる場合(情状酌量) ・罪を認めて自首した場合 など |
刑が3年以下に減軽されれば、執行猶予がつく可能性も出てきます。
執行猶予とは?
執行猶予とは、有罪判決が言い渡されても、刑の執行を一定期間猶予できる制度です。
執行猶予がつけば、懲役刑になっても、すぐに刑務所に入る必要はありません。事件前と変わらない生活を送ることができます。
さらに、執行猶予期間中に再び罪を犯さなければ、刑は免除されます。
つまり、同じ懲役刑でも「実刑(執行猶予なし)」と「執行猶予付きの懲役」では、受ける影響に大きな違いがあるのです。
なお、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類がありますが、不同意性交等罪で執行猶予が付くケースの99%以上は「全部執行猶予」です。
そのため、以下では「全部執行猶予」を念頭に説明します。
執行猶予が付く条件
全部執行猶予が付くには、次の2つの条件を満たす必要があります。
・直近5年以内に、禁錮以上の刑に処せられていないこと ・刑が「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」であること |
不同意性交等罪で特に注意するべきなのは、2つ目の「3年以下の懲役」という要件です。
前述のとおり、不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の懲役」だからです。
そのため、刑を3年以下に減軽してもらえなければ、執行猶予を付けることはできません。
減軽の方法については、次章で詳しく説明します。
不同意性交等罪で執行猶予になるには「刑の減軽」が必要
ここまで説明したとおり、不同意性交等罪で執行猶予になるには、刑を3年以下に減軽してもらう必要があります。
不同意性交等罪で刑が減軽されるケースは、主に次の2つです。
①情状酌量による刑の減軽|酌量減軽
刑が減軽されるケースの1つ目は、酌量減軽です。
酌量減軽とは、被告人の同情するべき事情を裁判で汲み取り、裁判官の判断で刑を軽くすることを指します。
認められると、懲役が最大で半分にまで軽くなる可能性があります。
酌量減軽で考慮されるのは、被告人にとって有利な一切の事情です。
具体的には次のようなものがあります。
・犯行が故意なのか過失なのか ・犯行時の状況や手段 ・被害者との関係性 ・被告人の職業や社会的地位 ・前科、前歴の有無・反省や謝罪の有無 ・被害者の処罰感情 など |
ただし、これらの事情があったとしても、必ず減軽されるわけではありません。
酌量減軽をするかどうかは、事件の状況や被告人の状況をもとに、裁判官が自由な心証で判断します。
【減軽が認められ、執行猶予付き判決となったケース】
(事件の内容) トイレ内で女性に後ろから抱きつくなど、抵抗できない状況にして、わいせつな行為。知人女性への不同意性交罪に問われた。 (判決) 示談が成立していたことが考慮されて、懲役3年、執行猶予5年の判決(讀賣新聞オンライン) |
(事件の内容) 女子中学生に現金5万円を渡す約束をしてホテルでみだらな行為をしたとして、不同意性交等や児童買春の罪に問われた。 (判決) 「実刑を選択することも考えられたが、前科はなく、反省の弁を述べている」として、懲役3年 執行猶予5年の判決(KKT熊本県民テレビ) |
②自首による刑の減軽
刑が減軽されるケースの2つ目は、自首して罪を自白した場合です。
警察をはじめとする捜査機関が、被疑者を特定する前に自首すれば、刑は半分程度に軽くなる可能性があります。
証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断されれば、自首当日にそのまま帰宅できるケースも多いです。
あなたが不同意性交を行ったことを後悔しているのであれば、自首は検討に値する方法と言えるでしょう。弊所でも、自首が成立したことで執行猶予が付いたり、不起訴になったりしたケースは珍しくありません。
ただし、当然ですが、自首によって罪が発覚し、そのまま逮捕されるリスクもあります。
そのため、自首する前に必ず弁護士に相談して、本当に自首すべきかどうかアドバイスを受けましょう。
場合によっては、先に被害者と示談交渉をした方がよいケースもあります。
例えば、まだ被害届が出ていないのであれば、示談によって刑事事件化そのものを回避できる可能性もあるからです。
また、自首する際も、当日は弁護士に同行してもらうことをおすすめします。
不同意性交罪で執行猶予が付く可能性は20%?
それでは、不同意性交等罪で執行猶予が付く可能性はどの程度なのでしょうか。
法務省のデータによれば、「強制性交等罪(現:不同意性交等罪)で終局した事件のうち、執行猶予が付いたのは20%程度だとされています。
(出典:平成29年刑法改正後の規定の施行状況についての調査結果(最高裁判所提供統計による量刑分布)|法務省)
ただし、「情状酌量・自首」などが認められて、刑が減軽されたケースに限定すると、執行猶予が付く可能性は格段に高くなります。
特に「刑が3年以下にまで減軽された事件」では、70%以上で全部執行猶予が付いているのです。
後述する方法を参考に、刑を減軽してもらうことができれば、実刑を回避できるチャンスは十分にあるでしょう。
※次の記事で、強制性交罪(現:不同意性交等罪)の量刑相場について解説しています。
「元ミスター東大候補者,強制性交罪で懲役3年,執行猶予5年!」
不同意性交等罪で執行猶予になり、実刑を避ける3つのポイント
不同意性交等罪で執行猶予を得て、実刑を回避するためのポイントは大きく3つあります。
早急に被害者と示談する
1つ目のポイントは、できる限り早く被害者と示談することです。
スムーズに示談が成立すれば、情状酌量で刑が減軽される可能性が高くなります。
さらに、逮捕・起訴される前に示談できれば、そもそも刑事事件化を回避したり、不起訴処分を獲得できる場合もあります。
ただし、示談交渉は必ず弁護士を通じて行いましょう。
不同意性交の被害者は、加害者と二度と会いたくないと思っているのが通常だからです。
自分で連絡することはもちろん、家族を通じて連絡することも避けるべきです。
被害感情を悪化させたり、感情的なトラブルに発展してしまう恐れがあります。
再犯防止の取り組みを行う
2つ目のポイントは、再犯防止の取り組みを行うことです。
不同意性交等罪をはじめとする性犯罪は、再犯率が非常に高い犯罪です。そのため、刑の減軽を認めてもらうには、再犯を防止する環境が整っているかどうかも重要なポイントとなります。
具体的には、次のような方法が考えられます。
・医療機関に通院して医学的な治療に取り組む ・同居の家族に、判決後の監督を誓ってもらう など |
あなたが不同意性交を行ったことを深く反省しており、再犯のおそれがないことを証明できれば、執行猶予を獲得できる可能性は高くなるでしょう。
自首して罪を自白する
3つ目のポイントは、自首して罪を自白することです。
自ら警察に出頭し、罪を告白することはとても勇気のいる行動です。生半可な覚悟ではできません。
しかしだからこそ、自首によってあなたの反省や後悔、罪を償おうとする意思が伝わる可能性は高くなるのです。
自首と並行して、被害者と示談交渉を進めたり、再犯を防止する環境を整えることも効果的な方法です。
・まずは弁護士に相談し、被害者との示談交渉を進める ・同時に、再犯防止に向けた取り組みも行う ・さらに、被害者の意向を伺いつつ、自首して罪を認めることも検討する |
事件後、このような真摯な行動を取れば、起訴を回避したり、執行猶予を獲得したりできる可能性は格段に高くなるはずです。
不同意性交等罪で執行猶予になりたい方は、グラディアトルへご相談ください!
不同意性交等罪で、執行猶予を獲得するなら、私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。
弊所は、性犯罪に強く、難しい不同意性交等罪の事件を数多く取り扱ってきた法律事務所です。
以下では、不同意性交等罪についてご依頼いただき、執行猶予を獲得したり、不起訴になった弊所の解決事例をご紹介します。
あなたの不同意性交事件を解決するために、ぜひ参考にしてください。
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【Q&A】不同意性交等罪の執行猶予についてよくある質問
不同意性交で執行猶予になる可能性はありますか?
はい。不同意性交等罪でも、執行猶予付き判決を獲得できる可能性はあります。
ただし、そのためには情状酌量などによって、刑の減軽を得ることが必要です。
執行猶予になっても前科は付きますか?
はい。執行猶予付き判決でも、前科は付きます。
前科を避けるには、不起訴処分を獲得することが必要です。
不同意性交罪は初犯でも実刑になりますか?
はい。不同意性交等罪では、初犯で実刑になることもあります。
示談をすれば執行猶予が付きますか?
示談が成立して刑が減軽されれば、執行猶予つき判決となる可能性があります。
まとめ
最後に、今回の記事のポイントを整理します。
・不同意性交等罪で、執行猶予をつけるには「刑の減軽」が必要
・刑が減軽されるケースは、大きく次の2つ
・被告人の事情を、裁判官が汲み取って減軽するケース(情状酌量) ・自首が成立するケース |
・不同意性交等罪で執行猶予を獲得し、実刑を避けるポイントは3つ
・できる限り早く、被害者と示談をする ・再犯防止の取り組みを行う ・自首して罪を自白する ※全てを並行して行うことも効果的 |
・示談や自首は、自分だけで行わず、必ず弁護士への相談が必要
以上です。
不同意性交事件で実刑を回避したい方は、この記事を読み終わったら、すぐに弁護士に相談して、必要な行動を起こしましょう。
一刻も早く事件が解決し、あなたが刑務所に収監されることなく、日常へ復帰できるように願っています。
この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。