不同意性交等罪の時効は15年〜20年|時効を待つべきでない理由

不同意性交等罪は何年で時効?
弁護士 若林翔
2024年11月01日更新

「不同意性交の時効は何年で成立する?」

「時効が成立すれば、逮捕はされない?」

「時効の完成を待っていれば大丈夫?」

こんな疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

不同意性交で時効が成立すると、刑事・民事責任を免れることができます。

ただし、不同意性交の時効が成立するには「15年〜20年」という長期間が必要です。

罪名公訴時効
不同意性交等罪15年
不同意性交等致傷罪20年
不同意性交等致死罪なし(廃止)
民事上の時効3年〜20年

実際には、時効の成立を待つことは、決して得策とは言えません。

なぜなら、事件後しばらく経ってから、被害が発覚する可能性は、決して低くないからです。

内閣府によれば、性犯罪の被害者の半数近くは、事件から「1ヶ月以上」経って相談しているというデータも出ています。

不同意性交(性犯罪)は1年以上経って相談する人が20%

(出典:第5次男女共同参画基本計画・第5分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に関する現状等|内閣府

被害者の証言や防犯カメラの映像、ライン・SNSのやり取り等、様々な証拠から犯行が特定されると、警察から連絡が来て取調べが開始されるでしょう。

同意がない状態で無理やり性交をしてしまった場合は、時効を待つのではなく、弁護士に相談して、逮捕を避けるために示談などの行動を起こすことが必要です。

本記事では、次の点を取り上げました。

◉この記事を読んで分かること
・不同意性交の刑事上の時効(公訴時効)
・不同意性交の民事上の時効(消滅時効)
・時効を待つ以外の対処法

不同意性交の時効について、分かりやすく解説したので、是非ご一読ください。

不同意性交の時効には2種類ある|刑事・民事

不同意性交の時効には、大きく分けて2種類あります。

ひとつは刑事上の時効(公訴時効)、もうひとつは民事上の時効(消滅時効)です。

不同意性交等罪の時効は2種類ある

刑事上の時効(公訴時効)とは?

刑事上の時効(公訴時効)とは、たとえ犯人が特定されていたとしても、被疑者を処罰できなくなる制度です。

公訴時効が成立すると、検察官は犯人を起訴することができなくなります。

つまり、罰金を払ったり、刑務所に入ったりすることを免れることになるのです。

民事上の時効(消滅時効)とは?

一方、民事上の時効(消滅時効)とは、被害者が加害者に対して慰謝料を請求できなくなる制度です。

刑事事件では、加害者は罰金や懲役などの刑事責任を負うだけでなく、被害者に対して慰謝料を支払う民事責任を負います。これは、被害者が受けた肉体的・精神的な苦痛を、金銭によって償うためです。

この慰謝料を請求する権利も、一定の期間が経過すると、消滅時効によって消滅します。

つまり、消滅時効が成立すると、被害者は加害者に慰謝料を請求することができなくなるのです。

刑事上の時効は15年〜20年|公訴時効

まずは、不同意性交罪の刑事上の時効(公訴時効)について、詳しく見ていきましょう。

【刑事訴訟法 第250条3項】
次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。 
 一 刑法第百八十一条(不同意わいせつ等致死傷)の罪(人を負傷させたときに限る。)若しくは同法第二百四十一条第一項の罪又は盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条の罪(同項の罪に係る部分に限る。) 二十年 
 二 刑法第百七十七条(不同意性交等)若しくは第百七十九条第二項(監護者性交等)の罪又はこれらの罪の未遂罪 十五年
不同意性交等罪の公訴時効

「不同意性交等罪」の公訴時効は15年〜20年

同意のない性交等で成立する犯罪は、大きく「不同意性交等罪」「不同意性交等致傷罪」「不同意性交等致死罪」の3つに分けられます。

成立する犯罪によって、公訴時効の期間は大きく変わってきます。

罪名公訴時効具体的なケース
不同意性交等罪15年・暴行や脅迫を用いて、不同意性交をする
・お酒(アルコール)や睡眠薬を飲ませて性交等をする
・立場を利用して性交等をする(上司と部下など)
・16歳未満の子どもと性交等をする
・本番なしの風俗店で、本番行為をする
不同意性交等致傷罪20年・不同意性交等で、相手が性病に感染する
・不同意性交等で、PTSDなどを発症する
・不同意性交等で、相手が怪我をする
不同意性交等致死罪なし(廃止)・不同意性交等で、相手が死亡する

加害者が気づいていなくても、不同意性交によって性病を感染させたり、PTSDを発症させてしまったりすると、不同意性交等致傷罪が成立するので注意が必要です。

公訴時効の期間も、15年ではなく20年になります。

時効の起算日は「性行為の終了時」

公訴時効の起算点は、犯罪行為が終わった時点です。

不同意性交等罪の場合、性交が終わった時点から公訴時効のカウントがスタートします。

例えば、令和6年1月1日に性交等を行い、公訴時効が15年の場合、令和21年1月1日に公訴時効が成立します。

なお、公訴時効は「日」で計算するので、性行為が終わった「時間」は関係ありません。

性交が終わったのが午前9時でも午後22時でも、初日から数えて15年目の同じ日に時効が成立します。

未成年の場合は延長される

不同意性交の被害者が未成年の場合、公訴時効の期間は延長されます。

なぜなら、公訴時効のカウントは、被害者が18歳になるまでスタートしないからです。

例えば、不同意性交の相手が16歳の女子高生だった場合、公訴時効のカウントは、被害者が18歳になった時点でスタートします。

つまり、公訴時効が成立するのは、性交から17年後(被害者が33歳になった時)です。

公訴時効は停止することがある

不同意性交の公訴時効は、一定の事由が生じると停止します。

その事由が生じている間は、時効のカウントはストップされるため、公訴時効が成立することはありません。

具体的には、次のようなケースです。

・公訴が提起された
・共犯者に対する公訴が提起された
・加害者が国外にいる期間
・起訴状が送達されなかった
・加害者が逃げ隠れをしていて、有効に起訴状の送達ができない

例えば、不同意性交を複数人で行った場合、共犯者が起訴されると、他の共犯者の公訴時効も停止します。

時効の成立直前であったとしても、共犯者が逮捕されると、芋づる式に逮捕される可能性が高くなるでしょう。

民事上の時効は3年〜20年|消滅時効

次に、不同意性交の民事上の時効(消滅時効)について詳しく説明します。

不同意性交等罪の消滅時効

不同意性交の消滅時効とは

不同意性交は、「不同意性交罪」だけでなく、民法709条の「不法行為」にも該当します。

そのため、被害者は加害者に対して、不法行為に基づく慰謝料請求(損害賠償請求)をすることができます。不同意性交の場合、慰謝料の目安は100万〜300万円です。

ただし、この請求権にも消滅時効が存在します。

被害者が長期間、慰謝料を請求しない状態が続くと、消滅時効によって請求権が消滅し、慰謝料の請求ができなくなるのです。

消滅時効の期間は3年〜20年

不同意性交の消滅時効の期間は、不法行為の種類によって異なります。

不法行為の種類消滅時効の期間除斥期間
通常の不法行為3年20年
人の生命または身体を害する不法行為5年20年

通常の不法行為であれば、消滅時効の期間は3年です。

一方で、不法行為が「人の生命または身体を害する」と認定されると、消滅時効の期間は5年になります。

例えば、暴行によって不同意性交をした場合や、不同意性交で被害者にPTSD等を発症させた場合、消滅時効の期間は5年となる可能性が高いです。

また、この他に20年の除斥期間も定められています。

不同意性交から20年が経過すると、後述する「被害者が犯人を知っていたか」「完成猶予・更新事由があったか」等に関わらず、慰謝料請求権は消滅します。

消滅時効の起算点はケースによって異なる

消滅時効の起算点は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」です。

そのため、被害者の認識や年齢によって、消滅時効の起算点は変わってきます。

具体的なケース別に起算点の一例を挙げると、次のとおりです。

具体的なケース消滅時効の起算点
(※全て翌日からカウントがスタート)
お互いが顔見知り(部下・知人など)・性交が終わったとき
・面識が無い・加害者が誰か分からないように装っている・被害者が加害者を知ったとき
・被害者が18歳未満・被害者の法定代理人(両親など)が損害及び加害者を知ったとき
・被害者が18歳になって、加害者を知ったとき

例えば、不同意性交を行った相手が顔見知り(部下・知人など)の場合、基本的には性交が終わった日の翌日から、消滅時効のカウントがスタートします。

一方で、面識が無かったり、加害者が特定できないように装っていたりした場合、被害者は、加害者が誰か知ることはできません。

そのため、消滅時効はすぐにカウントされず、加害者が特定されてからスタートします。

なお、不同意性交の相手が18歳未満の場合も、すぐに消滅時効はスタートしません。

被害者の法定代理人(両親など)が損害及び加害者を知ったときや、被害者が18歳になって加害者を知ったときに、カウントが開始します。

時効はストップまたはリセットされることがある

不同意性交罪の消滅時効は、一定の事由が生じると、ストップ(時効の完成猶予)したり、リセット(時効の更新)することがあります。

一例として、次のようなケースが挙げられます。

【時効の完成猶予事由】
・裁判上の請求(訴訟が提起された場合)
・協議を行う旨の合意(話し合いをすることを書面で合意した場合)
・催告(「払って」と言われた場合)
【時効の更新事由】
・裁判上の請求(勝訴の判決が確定する)
・承認(慰謝料を払うと言った場合)

時効の完成猶予事由や更新事由に該当する事情が生じた場合、消滅時効の進行が止まったり、リセットされたりします。

そのため、事件から長期間が経過していても、慰謝料請求されるケースがあることを忘れてはなりません。

不同意性交等罪は時効を待つべきではない!

ここまで、刑事・民事それぞれの時効制度の概要をお伝えしました。

時効が成立するメリットが大きいと感じた方もいるでしょう。

しかし、不同意性交で時効を待つべきケースはほとんどありません。

なぜなら、事件からかなりの期間が経って被害届が提出され、深刻な問題に発展するケースも決して珍しくないからです。

時間が経って被害届を出されるケースもある

事件から時間が経ってから被害届が出されるケースは、決して少なくありません。

むしろ、一定時間が経過し、精神的なショックが落ち着いてから周囲に相談し、事件が発覚するケースが半数近くを占めています。

例えば、内閣府によれば、性犯罪(強制性交など)の被害者が「性犯罪・性暴力に関する相談窓口(ワンストップ支援センター)」へ相談するまでに要した時間は、次のとおりです。

不同意性交(性犯罪)は1年以上経って相談する人が20%

(出典:第5次男女共同参画基本計画・第5分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に関する現状等|内閣府

事件から「1ヶ月以上」経って相談した人が全体の50%近く、「1年以上」経ってから相談した人も20%以上いることが分かります。

事件から時間が経って相談されるケースは、決して少なくないのです

すぐに逮捕されていなかったとしても、被害者が家族や公的機関に相談したり、警察に被害届が提出されて捜査が始まると、高確率で犯人が特定されるでしょう。

被害者の証言や防犯カメラの映像、LINEやSNSの履歴など、様々な証拠から犯人が特定されて、後日逮捕に至ります。

「いつ逮捕されるか分からない」という不安を抱え続けるのは、精神的にも大きな負担になるでしょう。

時効の成立を期待して事件を放置するのは、決して得策ではありません。

逮捕や起訴のリスクを回避するには、示談が重要

一方、時効を待つのではなく、きちんと弁護士に相談して被害者と示談すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性は高くなります。

特に、被害者が顔見知りで連絡先が分かっている場合、弁護士から連絡することで解決に向かうケースは多いです。

示談交渉で弁護士は、次のようなことを行います。

・示談交渉を開始し、双方の言い分を汲み取る形で示談を成立させる
・同意の有無などで、言い分が食い違っている場合、しっかりと事実を主張する
・相場からかけ離れた高額な慰謝料請求を防ぐ など

スムーズに示談が成立すれば、万が一警察から連絡が来ても、逮捕・起訴を回避できる可能性が高くなるでしょう。

ただし、示談交渉は絶対に自分では行わないことが大切です。

たとえ顔見知りであったとしても、不同意性交の被害者は、二度と加害者と会いたくないと思っていることが通常だからです。

本人が接触すると、被害感情が高まり、かえって事態を悪化させてしまいます。

時効の成立を待つのではなく、速やかに弁護士に相談して、逮捕を回避するための行動を起こしましょう。

※こちらの記事もご一読ください。

「不同意性交等罪は今すぐ弁護士に依頼するべき!選び方と費用も解説」

不同意性交等罪は、時効を待つのではなくグラディアトル法律事務所へご相談ください

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【Q&A】不同意性交等罪のよくある質問

不同意性交等罪の時効はどのように改正されたのですか?

2023年7月13日に施行された改正法で、不同意性交罪の時効は、次のように改正されました。

罪名改正前改正後
不同意性交等罪10年15年
不同意性交等致傷罪15年20年

改正前の不同意性交等罪で、時効は遡及適用されますか?

はい。改正時点で公訴時効が成立していない場合、時効期間は15年・20年に延長されます。(※刑事訴訟法附則 第5条(公訴時効に関する経過措置)

まとめ

最後に、今回の記事のポイントを整理します。

不同意性交の時効には、公訴時効(刑事)と消滅時効(民事)がある

公訴時効(刑事上の時効)は次のとおり

・公訴時効が成立するまでの期間は15年〜20年
・時効の起算日は「性行為終了時」
・被害者が未成年の場合、18歳になるまで起算日が延長される
・一定の事由が生じると、停止することもある

・消滅時効(民事上の時効)は次のとおり

・消滅時効が成立するまでの期間は3年〜20年
・起算日は、加害者が特定されているかや被害者の年齢によって変わる
・一定の事由が生じると、ストップ(完成猶予)またはリセット(更新)する

・時効を待つことは決して得策ではない

・弁護士に依頼し、示談などを進めることができれば、逮捕・起訴のリスクを回避できる

以上です。

不同意性交を行ってしまったのであれば、不安に耐えて時効を待つのではなく、弁護士に相談して、逮捕を回避するための行動を起こしましょう。

本記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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