不同意性交等罪に関する著名判例3選!判例の動向や量刑相場を解説

不同意性交等罪に関する著名判例3選!判例の動向や量刑相場を解説
弁護士 若林翔
2024年11月22日更新

「不同意性交等罪に関する判例にはどのようなものがあるの?」

「不同意性交等罪で有罪になった場合の量刑相場はどのくらい?」

「不同意性交等罪の判例の傾向としてはどうなっている?」

2023年7月13日施行の改正刑法により従来の「強制性交等罪」や「準強制性交等罪」が廃止され新たに「不同意性交等罪」が創設されました。従来の性犯罪は、暴行または脅迫を手段とするものでしたが、不同意性交等罪は同意のない性交等を処罰する犯罪ですので、暴行または脅迫に限られず、処罰範囲が拡大しています。

このような不同意性交等罪における裁判所の判断や量刑などを把握するには判例の理解が不可欠となります。ただし、不同意性交等罪は、施行後間もないため、まだ十分な判例の蓄積がありません。そこで、ここでは旧強制性交等罪や旧準強制性交等罪などの判例から不同意性交等罪の量刑相場などをみていきます。

本記事では、

・不同意性交等罪(改正前も含む)罪に関する著名判例3選

・不同意性交等罪に関する判例の動向

・判例から見る不同意性交等罪の量刑相場

などについてわかりやすく解説します。

不同意性交等罪は、原則として執行猶予が付かない非常に主に犯罪ですので、万が一不同意性交等罪を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

不同意性交等罪(改正前も含む)に関する著名判例3選

不同意性交等罪(改正前も含む)に関する著名判例3選

不同意性交等罪の構成要件は、旧強制性交等罪や旧強姦罪などの判例の判断を前提としていますので、過去の著名判例を理解しておくことが大切です。以下では、不同意性交等罪(改正前も含む)に関する著名判例3選を紹介します。

暴行または脅迫の程度|最高裁昭和24年5月10日判決

旧強制性交等罪(旧強姦罪)では、性交等をする際に暴行または脅迫を用いることが要件とされていました。不同意性交等罪においても、暴行または脅迫は、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にする原因行為の一つとして挙げられていますので、どの程度の暴行または脅迫が必要になるかは、過去の判例が参考になります。

旧強姦罪の暴行または脅迫の程度が争点となった事案について、裁判所は、「暴行または脅迫は相手の提供を著しく困難ならしめる程度のものであることを以って足りる」と判断しました。すなわち、不同意性交等罪が成立するには、被害者が抵抗できなくなるような強度の暴行または脅迫でなければなりません。

既遂と未遂の区別|大審院大正2年11月19日

未遂とは、犯罪の実行に着手したもののこれを遂げなかった場合をいい、既遂とは、犯罪の実行に着手し、これを成し遂げた場合をいいます。既遂と未遂では法定刑に違いはありませんが、未遂は刑の任意的な減軽が受けられますので、既遂になるのか未遂になるのかは重要なポイントになります。

既遂と未遂の区別が争点になった事案について、裁判所は、陰茎の没入により既遂となり射精を要しないと判断しました。すなわち、不同意性交等罪は、膣、肛門、口腔内に性器の一部でも挿入されれば既遂になります。

未遂罪の成立時期|最高裁昭和28年3月13日

犯罪の実行に着手すれば結果が生じていなかったとしても未遂罪が成立します。他方、実行の着手がなければ未遂にもなりませんので、犯罪は成立しません。そのため、いつ実行の着手があったのか、すなわち未遂罪の成立時期が問題になります。

強姦罪の未遂の成立時期が問題となった事案について、裁判所は、以下のように判断しました。

夜間婦女を人家稀な寺の境内に連込み、強姦の目的をもって同女の首を締めて押すようにしながら「大きな声をするな」等と申向けて脅迫したときは、いまだわいせつ行為に出ようとした直接の姿態がなかったとしても、強姦の実行に着手したものというべきである。

このように実際にわいせつ行為をしていなかったとしても、その前提となる暴行または脅迫があれば未遂罪が成立することになります。

不同意性交等罪に関する判例の動向|平成30年4月1日から平成31年3月31日まで

以下に、不同意性交等罪(強制性交等罪・準強制性交等罪)に関する無罪および有罪判決の内容をテーブルにまとめました。

分類件数内訳無罪・有罪理由
無罪判決6件強制性交等罪:
4件
準強制性交等罪:2件
・被害者供述に不自然な点があり、他の証拠と整合性が取れない
・被告人が暴行の認識を持っていたとは認められない
・被告人には性交の意図がなかった(強制わいせつ罪の範囲で有罪)
・被害者が抗拒不能状態ではなかった、またはその認識が被告人に認められなかった
有罪判決105件強制性交等罪:
45件
準強制性交等罪:60件
・特別な関係(親族、指導者、雇用主、上司など)がある事案が45件
・被害者の年齢等、詳細な状況により有罪判決

このテーブルは、不同意性交等罪における無罪および有罪判決の件数、内訳、理由の概要を示し、無罪と有罪に分かれる背景が理解できるように整理しています。

不同意性交等罪に関する判例の動向はどのようになっているのでしょうか。不同意性交等罪は施行後間もないため、以下では、改正前の強制性交等罪・準強制性交等罪を前提として説明します。

不同意性交等罪(強制性交等罪・準強制性交等罪)に関する無罪判決|6件

法務省が実施した「性犯罪に係る裁判例調査」によると、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に第1審で強制性交等罪および準強制性交等罪で無罪判決が言い渡された件数は、以下のようになっています。

・強制性交等罪……4件

・準強制性交等罪……2件

無罪判決を言い渡された事件で無罪とされた理由は、以下のとおりです。

・被害者供述の暴行に関する部分が不自然であり、他の証拠との整合性に疑問があるなどとして信用性を認めず、被害者が供述する暴行があったとは認められない
・被告人が自己の行為が被害者の犯行を著しく困難にする程度の暴行であることを認識していたとは認められない
・被告人には性交に及ぶ意図があったとは認められない(強制わいせつ罪の限度で有罪)
・被害者供述の信用性を認めず、性交があったとは認められない
・被害者が抗拒不能状態にあったとは認められない
・被告人が被害者が抗拒不能状態にあることを認識していたとは認められない

不同意性交等罪(強制性交等罪・準強制性交等罪)に関する有罪判決|105件

法務省が実施した「性犯罪に係る裁判例調査」によると、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に第1審で強制性交等罪および準強制性交等罪で有罪判決が言い渡された件数は、以下のようになっています。

・強制性交等罪……45件

・準強制性交等罪……60件

このうち、被告人と被害者との間に特別な関係(年長の親族、指導者、雇用主、上司など)があったものが45件ありました。被告人と被害者との間に特別な関係があった事件における被害者の年齢は、以下のとおりです。

 0~12歳13~19歳20~29歳30~39歳
強制性交等罪23件8件5件1件
準強制性交等罪0件5件3件0件

このように、被告人と被害者との相手に一定の関係がある事件では、若年者層が被害に遭っていることがわかります。

刑法改正後の不同意性交等罪に関する判例

刑法改正後の不同意性交等罪に関する判例

以下では、改正後の不同意性交等罪に関する判例をいくつか紹介します。

佐賀地裁令和6年3月27日判決|懲役3年執行猶予4年

被告人は、被害者(当時15歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが同人の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、ホテルにおいて、同人と性交したという事案について、懲役3年執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。

この事案は、高校教師である被告人が自身の教え子と性交をしたものになります。教師としての立場を利用した悪質な犯行といえますが、初犯であり、被害者との間で示談金360万円を支払って示談が成立していることから、酌量減軽により執行猶予付きの判決となりました。

横浜地裁令和5年12月19日判決|懲役3年執行猶予5年

被告人は、自らを19歳の高校生であるなどと詐称し、SNSを通じて当時15歳の被害者と知り合い、既婚者であることを隠して交際を開始しました。そして、このような交際を続ける中、被害者が被告人に好意を抱いていることを利用して、被害者(当時15歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが同人の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、性交等をしたという事案について、懲役3年執行猶予5年の判決が言い渡されました。

この事案は、被告人が現職の警察官として法律を遵守することが特に求められる立場にあったのに、被害者の年齢や判断能力の未熟さを顧みることなく、自己の性欲を満たすために安易に性交等に及んだものであり、経緯及び動機に酌むべき点はないものの、初犯であり、示談金200万円を支払って示談が成立していることから酌量減軽により執行猶予付きの判決となりました。

判例から見る不同意性交等罪の量刑相場

判例から見る不同意性交等罪の量刑相場

不同意性交等罪で有罪になった場合の量刑相場はどのくらいなのでしょうか。以下では、過去の判例を踏まえて、不同意性交等罪の量刑相場を説明します。

懲役3~7年程度が相場

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と定められており、改正前の強制性交等罪の法定刑である5年以上の有期懲役とほぼ共通します。不同意性交等罪は、施行後間もないため、量刑に関する資料がありませんが、不同意性交等罪の量刑相場を把握するにあたっては、強制性交等罪の量刑相場が参考になります。

法務省が公表している「性犯罪の量刑に関する資料」によると、不同意性交等罪の量刑相場は、懲役3~7年程度が相場です。不同意性交等罪で有罪になった場合の量刑もほぼ同様に考えてよいでしょう。

執行猶予率は約19%

令和元年に強制性交等罪により有罪となった事件は250件あり、そのうち執行猶予が付いたのは48件でした。執行猶予率としては約19%になりますので、執行猶予が付く事件は非常に少ないといえます。

その理由は、執行猶予の条件として言い渡される刑が「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」と定められているからです。強制性交等罪の法定刑は、5年以上の有期懲役刑ですので、原則として執行猶予の条件を満たさないため、上記のように執行猶予率が低くなっているのです。

もっとも、被害者と示談が成立している、未遂であるなどの事情があれば酌量減軽や未遂減軽により刑の減軽が受けられますので、それにより例外的に執行猶予を付けてもらうが可能になります。

下記の関連記事にも目を通してみてください。

不同意性交等罪は未遂でも処罰される!未遂の刑罰や逮捕を避ける方法

不同意性交等罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と定められていますので、原則として執行猶予が付きません。判例の量刑からも低い執行猶予率になっていることからもわかるように、非常に重い犯罪といえるでしょう。

しかし、被害者との間で示談が成立すれば酌量減軽により執行猶予が狙える可能性があります。また、事件が起訴される前の段階で示談がまとまれば、逮捕や起訴を回避できる可能性もありますので、不同意性交等罪を犯してしまったときは被害者との示談が重要になります。

グラディアトル法律事務所では、不同意性交等罪などの性犯罪事件の豊富な経験と実績がありますので、性犯罪の被害者との示談交渉も得意としています。被害者側の処罰感情にも配慮しながら適切に示談交渉を進めることができますので、早期に示談を成立させることが期待できるでしょう。示談成立の有無によって、その後の処分の重さが大きく変わりますので、すぐに当事務所までご相談ください。

当事務所では、初回法律相談料無料、24時間365日いつでも相談を受け付けています。土日・祝日や深夜・早朝でもお問い合わせ可能ですので、不同意性交等罪を犯してしまったときは一刻も早く当事務所までご連絡ください。

まとめ

判例からもわかるように、不同意性交等罪は性犯罪の中でも非常に重い刑罰が科される犯罪です。自分の犯した罪に向き合ってしっかりと反省することも大切ですが、被害者との間で示談を成立させることにより、有利な処分を獲得できる可能性もあります。加害者が性犯罪の被害者と直接示談交渉をするのは困難ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

不同意性交等罪を犯してしまった方は、性犯罪の弁護を得意とするグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード