不同意性交等罪は夫婦・カップルでも成立する?対処法も解説

不同意性交等罪は夫婦・カップルでも成立する?対処法も解説
弁護士 若林翔
2024年12月23日更新

2023年7月に「不同意性交等罪」が新設されて以降、夫婦やカップル間においても性的同意の重要性が強く意識されるようになりました。

しかし、親密な関係を築いている状況で本当に不同意性交等罪が成立するのか、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、夫婦やカップルであっても一定の要件を満たせば、不同意性交等罪が成立します

そのため、「あのときの性行為には同意していなかった」「不同意性交で訴えてやる」などと言われたときは、速やかに弁護士へ相談し、サポートを求めることが大切です。

本記事では、夫婦やカップル間における不同意性交等罪の成立可否などについて詳しく解説します。

よくあるトラブル事例や、不同意性交等罪に問われた場合の対処法なども記載しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

不同意性交等罪は夫婦・カップルでも成立する可能性がある

不同意性交等罪は、夫婦やカップル間でも成立する可能性があります。

性的な行為に対する決定権は、誰しもが当然に持っている権利です。

たとえ婚姻・交際関係にあったとしても、同意なく性行為をおこなうことは許されず、処罰の対象になります。

また、刑法の条文にも「婚姻関係の有無にかかわらず」と明記されています。

刑法第177条不動性交等罪

たとえば、配偶者が嫌がる素振りをみせているにも関わらず性行為に及んだ場合は、相手の出方次第で不同意性交等罪の罪に問われるおそれがあります。

親しい関係にあるからといって、当たり前に性行為が許されるものだとは考えないようにしましょう。

夫婦・カップル間でも不同意性交等罪が成立するケース

次に、夫婦・カップル間でも不同意性交等罪が成立するケースを解説します。

主に2つのケースが考えられるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

夫婦・カップル間でも不同意性交等罪が成立するケース

同意のない性行為に及んだ場合

夫婦やカップル間でも、同意のない性行為は不同意性交等罪にあたる可能性があります。

より具体的にいうと「同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態」にさせたうえでの性行為が不同意性交等罪に該当します。

【同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態にさせる行為】

  1. 1.暴行や脅迫を用いること
  2. 2.心身の障害を生じさせること
  3. 3.アルコールや薬物を摂取させること
  4. 4.睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること
  5. 5.同意しない意思を形成し、表明し、またはそのいとまがないこと
  6. 6.予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること
  7. 7.虐待に起因する心理的反応を生じさせること
  8. 8.経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること

たとえば、配偶者が拒否しているにもかかわらず強引に性交行為をおこなった場合や、交際相手が酩酊して正常な判断ができない状態で性的行為をおこなった場合などは、不同意性交等罪に問われるおそれがあります。

とはいえ、夫婦・カップル間の性行為では、同意があったかどうかの判断が難しいことも多いです。

そのため、双方の主張が食い違う場合には、弁護士に介入してもらうことが問題解決の近道といえます。

13歳未満の子どもや5歳以上離れた16歳未満の子どもと性行為に及んだ場合

13歳未満の子どもや5歳以上年上の16歳未満の子どもとの性行為は、たとえ真剣な交際関係にあったとしても不同意性交等罪に該当します。

さらに、子どもは性行為の意味や結果を十分に理解できていないため、同意の有無に関わらず不同意性交等罪が成立する点に注意が必要です。

たとえば、20歳の大学生と15歳の女子生徒の間で性行為がおこなわれた場合、女子生徒が同意していても不同意性交等罪が成立します。

ただし、相手が16歳未満だと知らずに性行為をしていた場合は、罪に問われない可能性が出てきます。

故意ではなかったことを証明するには高いハードルがありますが、まずは弁護士に相談してみましょう。

不同意性交等罪に関する夫婦・カップル間のよくあるトラブル事例

ここでは、不同意性交等罪に関する夫婦・カップル間のよくあるトラブル事例を紹介します。

類似したトラブルに巻き込まれている場合は、できるだけ早く弁護士に相談してください。

不同意性交等罪に関する夫婦・カップル間のよくあるトラブル事例

拒否されているなかで無理やり性行為をして訴えられる

夫婦・カップル間のよくあるトラブル事例のひとつは、拒否されているなかで無理やり性行為をして訴えられるパターンです。

たとえば、配偶者や交際相手が体調不良を訴えているにもかかわらず、無理やり性行為を強要した場合は、警察に被害届を出され、逮捕されたり、起訴されたりする可能性も出てくるでしょう。

親密な関係性があったとしても、性行為に対する同意が常にあるわけではありません。

身勝手な思い込みを捨てたうえで、相手の気持ちや体調を尊重し、明確な同意を得ることが重要です。

DVなどで拒否できない状況に追い込んだうえで性行為を強要して訴えられる

夫婦やカップル間では、DVなどで拒否できない状況に追い込んだうえで性行為を強要し、不同意性交等罪で訴えられるパターンも見受けられます。

身体的な暴力をはじめ、生活費を渡さない、離婚をほのめかすなどの言動を受け、精神的に追い込まれている状態では、性行為に同意しない意思を示すことが難しくなります

そのため、不同意性交等罪の要件を満たす可能性が高く、怒りや恨みを抱いた相手方から、訴えられてしまうケースは少なくありません。

性行為のあとに相手の感情が変化して「同意してなかった」といわれる

性行為後に相手の感情が変化し、突然「同意してなかった」と言われてトラブルに発展するケースも多くみられます。

何かの出来事をきっかけに、性行為に対する相手の主張が変わることは決して珍しくありません。

たとえば、性行為の直後に喧嘩別れして、「あのときの性行為は嫌だった」と主張されるようなパターンが典型例です。

不倫や浮気が原因で「不同意だった」と嘘をつかれる

性行為に対する同意があったにも関わらず、不倫や浮気をきっかけに「不同意だった」と嘘をつかれるケースもよくあるトラブル事例といえます。

つまり、裏切られた側が怒りや復讐心を解消する手段として、不同意性交等罪を利用することがあるのです。

たとえば、不倫した夫に対して妻が「本当は性行為をしたくなかった。慰謝料を支払え!」と主張するパターンなどが考えられます。

嘘の主張とはいえ、相手が警察に被害届を出すようなことがあれば、事情聴取を受けたり、場合によっては逮捕されたりする可能性もゼロではありません。

夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合の対処法

次に、夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合の対処法を解説します。

問題が大きくなる前に解決するためにも、迅速な対応を心がけましょう。

夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合の対処法

早急に示談を成立させる

夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合は、早急に示談を成立させることが重要です。

示談の中で相手に謝罪の意を示しつつ、金銭的な補償をおこなえば、被害者の処罰感情が和らぎ、被害届の提出や告訴を踏みとどまってもらえることがあります。

また、示談の成立により当事者間で和解していることを示せば、警察が逮捕に乗り出したり、検察が起訴したりする可能性も低くなるでしょう。

仮に起訴されたとしても、減刑を目指すには示談の成立が欠かせません。

ただし、強い恐怖心や処罰感情を抱いた相手との示談交渉は、さらなるトラブルにつながるおそれもあるので慎重に進める必要があります。

また、夫婦間での示談交渉は示談金のやりとりなどが複雑になるケースも少なくありません。

そのため、示談交渉に関しては、弁護士に一任するのが賢明な判断といえるでしょう。

下記にも示談について記載をしていますので、ご覧ください。

不同意性交等罪の慰謝料・示談金相場は?払えない場合の対処法も解説

証拠を集めて冤罪を主張する

夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合、冤罪であれば、証拠を集めて無実を主張しましょう。

不同意性交等罪の立証責任は相手側にありますが、こちらとしてもただ黙っているわけにはいきません

客観的な証拠を示しつつ、相手の主張に反論していく必要があります。

同意があったことを証明する証拠としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • ・LINEやメールのやり取り
  • ・デート中の写真や動画
  • ・ホテル付近にある防犯カメラの映像
  • ・目撃者の証言

特に事件後の円満なコミュニケーションの記録は、重要な証拠となり得ます。

ただし、証拠収集はプライバシーなどに十分配慮しながら進めるようにしてください。

また、証拠の改ざんや捏造も立場を悪くするだけなので、絶対にしてはいけません。

不同意性交等罪の成立要件と冤罪を避けるための証拠6選を弁護士が解説

できるだけ早く弁護士に相談する

配偶者や交際相手から不同意性交等罪を疑われた場合は、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

刑事事件が得意な弁護士に相談・依頼すれば、個々のケースに合わせた対応策を迅速に講じてくれるからです。

たとえば、弁護士は交渉のプロでもあるので、被害者との示談を速やかに成立させることができます。

また、弁護士から捜査機関に対する働きかけによって、逮捕回避や不起訴処分の可能性が格段に高まるはずです。

特に冤罪事件における無実の証明は非常に難しいので、弁護士のサポートが必要不可欠といえるでしょう。

実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数々の性犯罪事件を解決してきました。

経験豊富なスタッフが24時間365日対応しているので、困ったときはいつでもお問い合わせください。

※※※ 問い合わせ先:03-6273-0472(初回相談無料・24時間受付) ※※※

下記の記事も併せてご覧ください。

不同意性交等罪の逮捕率は57%?|流れと逮捕を防ぐ方法を解説!

【不同意性交等罪の起訴率は32%?】不起訴になる3つの方法を解説

 

 

夫婦・カップル間の不同意性交等罪に関するよくある質問

最後に、夫婦・カップル間の不同意性交等罪に関するよくある質問をまとめているので、参考にしてみてください。

夫婦・カップル間の不同意性交等罪に関するよくある質問

同性カップルにも不同意性交等罪は適用される?

同性カップルにも、不同意性交等罪が適用される可能性は十分あります

不同意性交等罪が成立するかどうかの判断において、性別は基本的に関係しません。

相手の同意なしに口腔性交や肛門性交、指・性玩具を用いた挿入行為などがおこなわれた場合は、同性間でも不同意性交等罪の成立要件を満たすおそれがあります。

不同意性交等罪の刑罰は?

不同意性交等罪の刑罰は「5年以上の有期拘禁刑」です。

拘禁刑は、懲役刑と禁錮刑を統合するかたちで新設された刑罰で、2025年6月から導入されます。

受刑者の更生に向けた柔軟な処遇が可能になるなど、再犯防止が一層重視された刑罰といえるでしょう。

とはいえ、不同意性交等罪の罪は非常に重く規定されています。

初犯でも実刑になる可能性が高く、減刑されない限り執行猶予もつかないため、なんとしても起訴を回避することが重要です。

不同意性交等罪は5年以上の懲役?回避・短縮する方法を解説!

不同意性交等罪で執行猶予が付くのは20%?実刑を避けるポイント

 

不同意性交等罪の時効は?

不同意性交等罪の公訴時効は15年です。

犯罪行為が終了した時点から15年が経過すれば、起訴されることはなくなります。

ただし、被害者が18歳未満の場合は、18歳に達する日が公訴時効の起算点となるので注意してください。

なお、民事上の損害賠償請求権の時効は「被害者が損害および加害者を知った時点から3年(人の生命・身体を害した場合は5年)」もしくは「事件が発生した時点から20年」です。

不同意性交等罪の時効は15年〜20年|時効を待つべきでない理由

夫婦・カップル間の不同意性交等罪に関するトラブルは弁護士に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ・不同意性交等罪は夫婦・カップルでも成立する可能性がある
  • ・同意のない性行為、誤信・人違いを利用した性行為、子どもとの性行為は不同意性交等罪の成立要件を満たす
  • ・夫婦・カップル間で不同意性交等罪に問われた場合は示談や証拠収集が重要

不同意性交等罪の成立に関しては、婚姻・交際関係は基本的に関係しません。

そのため、配偶者や交際相手から「不同意性交等罪で訴えてやる」などと言われたときは、親しい関係にあるからといって受け流すのではなく、真剣に対応を検討する必要があります。

とはいえ、自力で示談を進めたり、冤罪の証拠を集めたりすることは困難です。

まずは弁護士に相談し、今後やるべきことについてアドバイスを受けるようにしてください。

グラディアトル法律事務所では、これまでに数々の性犯罪事件を取り扱い、解決へと導いてきました

早期にご依頼いただければ、事件化する前に解決することも十分可能です。

初回相談は無料、LINEでの相談にも対応しているので、お気軽にお問い合わせください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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