「未成年同士の性行為は犯罪なの?」
「真剣に交際している者同士でも性行為をすると罪に問われる?」
「未成年同士の性行為が不同意性交等罪にあたる場合はどのように対処すればいい?」
2023年10月13日、富山県に住む会社員の少年(17歳)が18歳未満の少女に対し、未成年者であることを知りながら性行為をしたという富山県青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕されました。
この報道からもわかるように未成年同士の性行為であっても、犯罪に該当する可能性があります。お互いに同意があったとしても都道府県の青少年健全育成条例違反になる可能性があるほか、同意がない性行為については「不同意性交等罪」として重く処罰されることになります。性犯罪は、近年厳罰化の傾向がありますので、安易な性行為により将来を台無しにしないよう注意しなければなりません。
本記事では、
・未成年同士の性行為で不同意性交等罪が成立する2つのケース ・未成年者同士の性行為で不同意性交等罪以外に成立し得る3つの犯罪 ・未成年者同士の性行為で不同意性交等罪に問われたときに弁護士ができること |
などについてわかりやすく解説します。
未成年同士の性行為が犯罪になる場合、成人の刑事事件とは異なり、少年事件として扱われることになります。少年事件の特性を踏まえた弁護活動(付添人活動)が必要になりますので、犯罪の嫌疑をかけられたときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
目次
未成年同士の性行為で不同意性交等罪が成立する2つのケース
未成年同士の性行為で不同意性交等罪が成立するのは、以下の2つのケースが考えられます。
相手の同意なく性行為をしたケース
不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態で性交等を行う犯罪です。簡単にいえば、相手の同意なく性行為をした場合に不同意性交等罪が成立します。
未成年同士だと性に興味・関心がある年ごろですので、特に男子は、相手が嫌がっているにもかかわらず、自分の性的好奇心を満たすために無理やり性行為をしてしまうこともあるかもしれません。このような状況で行われた性行為は、相手の同意がありませんので、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
相手が13歳未満であったケース
未成年同士のカップルの場合、お互いに同意のもとで性行為を行うこともあります。お互いの同意があれば原則として不同意性交等罪は成立しませんが、例外的に、性行為をした相手の年齢が13歳未満だった場合には、不同意性交等罪が成立します。
なぜなら、13歳未満の人は、一般的に行為の性的意味を認識する能力が備わっていないと考えられているため、その人の同意があったとしても意味を持ちません。そのため、性行為をした相手が13歳未満だった場合は、お互いの同意があったとしても不同意性交等罪が成立します。
未成年同士の性行為で不同意性交等罪以外に成立し得る3つの犯罪
未成年同士の性行為では、不同意性交等罪以外にも以下の3つの犯罪が成立する可能性があります。
以下に、青少年健全育成条例違反、児童ポルノ・児童買春禁止法違反、および不同意わいせつ罪についての内容をテーブルでまとめました。
項目 | 内容 | 該当法 | 刑罰 |
---|---|---|---|
青少年健全育成条例違反 | 各都道府県が制定する条例で、未成年者との淫行やみだらな性交・性交類似行為を禁止(同意の有無は不問) | 青少年健全育成条例(例:東京都条例 第十八条の六) | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
青少年についての免責 | 未成年者同士の性行為に対しては罰則が適用されない | 青少年健全育成条例(例:東京都条例 第三十条) | 罰則適用なし |
児童ポルノ・児童買春禁止法違反 | 18歳未満の未成年者に金品を供与して性交等を行うことを禁止(未成年同士でも対価の授受があると該当) | 児童買春・児童ポルノ禁止法 | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
不同意わいせつ罪 | 同意がない、または同意しづらい状態でわいせつ行為を行うことを禁止 | 刑法176条 | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
このテーブルにより、各犯罪の内容や法的根拠、罰則が簡潔に整理されています。
青少年健全育成条例違反
青少年健全育成条例とは、青少年の保護と健全な育成を目的として、各都道府県が制定している条例です。未成年者との淫行を主な規制対象としていることから、「淫行条例」と呼ばれることもあります。
たとえば、東京都の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」では、未成年者との淫行について、以下のように規定しています。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
青少年健全育成条例は、未成年者との性交または性交類似行為を禁止しており、同意・不同意は要件とはされていません。そのため、相手の同意があったとしても未成年者と性行為をすると青少年健全育成条例違反に問われる可能性があります。
このような青少年健全育成条例違反をした場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
ただし、青少年健全育成条例では、青少年について以下のような免責規定を設けていますので、未成年同士の性行為については条例違反になったとしても、罰則が適用されることはありません。
(青少年についての免責)
第三十条 この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない。
こちらの関連記事も併せてご覧ください。
淫行条例とは?成立要件や処罰の対象外となる4つのケースを解説
児童ポルノ・児童買春禁止法違反
児童買春・児童ポルノ禁止法では、「児童買春」を禁止しています。
児童買春とは、18歳未満の男女に対して、金品を供与または供与する約束をして性交等をすることをいいます。未成年同士の性行為であっても、性行為の対価として金品などの供与を行うと、児童買春の罪に問われる可能性があります。
このような児童買春をした場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせ、またはそのような状態に乗じてわいせつな行為をする犯罪です(刑法176条)。
不同意性交等罪と同様に被害者の同意があったかどうかが犯罪の成否のポイントになります。未成年同士であっても相手の同意なくわいせつな行為を行うと、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。また、相手の同意があったとしても、相手の年齢が13歳未満の場合には、不同意わいせつ罪に問われることになります。
なお、不同意わいせつ罪が成立した場合、6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
※「不同意わいせつ」にリンク
未成年同士の性行為が不同意性交等罪にあたるとどうなる?
不同意性交等罪が成立する場合、犯罪になりますので刑事事件として処理されることになります。ただし、当事者が未成年同士であった場合には、成人のような刑事事件ではなく、少年事件として処理されます。以下では、未成年者が罪を犯した場合の少年事件の手続きの流れについて説明します。
逮捕
未成年者であっても14歳以上であれば成人と同様に警察に逮捕される可能性があります。
逮捕されると、警察署の留置施設で身柄が拘束され、警察官による取り調べを受けることになります。逮捕には時間制限がありますので、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄は検察官に送致されます。
検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者の取り調べを行い、引き続き身柄を拘束する必要があると認めるときは、送致から24時間以内に裁判官に勾留請求を行います。
ただし、未成年者が被疑者である場合には、やむを得ない場合でなければ勾留することができませんので、成人の場合に比べて勾留の要件が厳しくなっています。
勾留または観護措置
裁判官が勾留の要件を満たすと判断した場合は、勾留決定となり、原則として10日間の身柄拘束を受けることになります。勾留には、延長制度がありますので勾留延長も認められると最長で10日間の身柄拘束が追加されますので、合計で20日間もの身柄拘束期間になります。
なお、未成年者が被疑者である場合には、勾留に代わる観護措置がとられることもあります。勾留に代わる観護措置がとられると、少年鑑別所に収容され、10日間の観護措置期間が延長されることもありません。
家庭裁判所への送致
未成年者が罪を犯した疑いがある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致することが義務付けられています。これを「全件送致主義」といいます。
成人の場合には、勾留期間満了までに検察官が起訴または不起訴の判断をすることになりますが、未成年者が被疑者である場合には、すべての事件が家庭裁判所に送致されます。
観護措置
家庭裁判所は、より詳しく少年の性格などの分析をする必要があると判断した場合、少年に対する観護措置の決定を行います。
観護措置がとられると、少年鑑別所に収容され、少年の性格、発達の程度、家庭環境、交友関係などが調査されます。観護措置は原則2週間とされていますが、通常は1回更新されて4週間になるのが一般的です。
審判
家庭裁判所の審判は、成人の刑事裁判とは異なり非公開で行われます。審判では、裁判官は、次のいずれかの終局処分を言い渡します。
・不処分 ・保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設送致) ・検察官送致 |
なお、家庭裁判所が調査の結果、保護処分ではなく刑罰が相当であると判断すると、事件を検察官に送致します。これを「検察官送致」または「逆送」といいます。逆送された事件については、検察官により起訴され、成人と同様に刑事裁判が行われます。
未成年者同士の性行為で不同意性交等罪に問われたときに弁護士ができること
未成年同士の性行為で不同意性交等罪に問われたとき、弁護士であれば以下のようなサポートをすることができます。
冤罪の立証のサポート
未成年同士の性行為は、お互いが同意の上で行っていたのであれば、原則として不同意性交等罪に問われることはありません。しかし、相手の親が性行為の事実を知ると、「自分の子どもを傷つけられた」と感じ、子どもの意見も聞かずに一方的に非難してくることも少なくありません。
このようなケースについては、弁護士が間に入って、犯罪には該当しないことを法的観点から説明することで相手の納得が得られる可能性が高くなります。当事者同士では感情的になってしまいますので、冷静に話し合いを進めるためにも弁護士に依頼するのがおすすめです。
被害者との示談交渉
未成年同士の性行為で不同性交等罪が成立するケースでは、被害者との示談が重要になります。
しかし、加害者側から示談交渉を持ちかけても、被害者の親から拒絶される可能性がありますので、当事者だけでは示談交渉は困難といえるでしょう。しかし、弁護士であれば、示談交渉に関する豊富な経験がありますので、このような示談交渉が難航するケースであっても適切に示談交渉を進めていくことができます。
捜査機関に事件が発覚する前に示談を成立させることができれば、逮捕や審判などを回避できますので、早期に弁護士に依頼して示談交渉を進めてもらいましょう。
逮捕・勾留・観護措置の回避
未成年同士の性行為で不同性交等罪が成立する場合、そのまま何もしなければ逮捕・勾留されたり、鑑別所に収容される可能性があります。長期間の身柄拘束となれば、学業への影響も大きくなりますので、このような身柄拘束を回避することが重要です。
少年事件の場合には成人の刑事事件に比べて身柄拘束の要件が厳格に定められていますので、弁護士から捜査機関に対して勾留の要件を満たさない旨働きかけることにより、勾留を回避できる可能性があります。
少年審判で少年や保護者をサポート
成人の刑事裁判では、弁護士を弁護人として付ける必要がありますが、少年事件では基本的には弁護士を付ける義務はありません。しかし、少年審判では、再犯防止に向けた取り組みや環境調整など知識や経験のある弁護士のサポートが必要になります。
弁護士を付添人として選任することによって、少年や保護者のサポートをしてもらうことができます。
未成年者同士の性行為で不同意性交等罪に問われたときはグラディアトル法律事務所にご相談を!
未成年者同士の性行為であっても、相手が嫌がっているのに無理やり性行為をすれば不同意性交等罪が成立します。未成年者が罪を犯した場合、成人の刑事事件とは異なり少年事件として処理されますので、未成年者の事件を扱うには、少年事件に関する知識や経験が不可欠となります。
グラディアトル法律事務所では、性犯罪に関する豊富な経験と実績に加えて、少年事件の経験・実績も豊富ですので、未成年同士の性行為により不同意性交等罪に問われたときは、当事務所にお任せください。経験豊富な弁護士が早期に被害者と示談を成立させ、事件化を防いだり、環境調整などにより少年院送致を回避できるよう全力でサポートいたします。
まとめ
未成年同士の性行為であっても不同意性交等罪やその他の犯罪が成立する可能性があります。罪を犯してしまったことはしっかりと反省すべきですが、それにより将来が閉ざされることがないよう早めに弁護士に相談してサポートを受けることが大切です。
未成年同士の性行為により不同意性交等罪に問われてしまったときは、グラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。