「不同意性交等罪はいったもん勝ち」は誤解!客観的証拠も必要になる

「不同意性交等罪はいったもん勝ち」は誤解!客観的証拠も必要になる
弁護士 若林翔
2025年01月04日更新

不同意性交等罪に関する事件では、性行為に対する同意の有無が争点となるケースが多くみられます。

とはいえ、性行為に対する同意はあくまでも本人の意思によるものなので、「不同意性交等罪はいったもん勝ち」といわれることも少なくありません。

実際に、相手が同意しているものだと信じて性行為に及んだものの、あとで「同意していなかった。示談金がほしい」などと主張され、どう対応してよいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

結論からいうと、「不同意性交等罪はいったもん勝ち」ではありません

逮捕段階では「いったもん勝ち」といえるような事例もありますが、起訴・不起訴の判断や裁判での判決にあたっては、客観的証拠が必要になります。

そのため、トラブルに巻き込まれたときは、相手の言いなりになるのではなく、弁護士と協力しながら適切に対処していくことが重要です。

本記事では、「不同意性交等罪はいったもん勝ち」が誤解といえる理由や、不同意性交等罪の罪に問われたときの対処法などを解説しているので参考にしてみてください。

「不同意性交等罪はいったもん勝ち」は誤解!起訴・有罪判決には客観的証拠が必要

不同意性交等罪に関するニュースなどが頻繁に取り上げられるなかで、「不同意性交等罪はいったもん勝ち」と主張する人は多いですが、それは誤った認識です。

実際に不同意性交等罪で起訴され、有罪判決に至るのは、客観的証拠がある場合に限られます。

ここでは、不同意性交等罪の成立要件と客観的証拠の重要性について詳しくみていきましょう。

不同意性交等罪の成立要件

刑法177条では、不同意性交等罪の成立要件を以下の3つの分類しています。

不同意性交等罪の成立要件
  1. 1.相手が同意しない意思を形成、表明または全うすることが困難な状態で性交等をおこなった場合
  2. 2.わいせつな行為ではないと誤信させたり、人違いをさせたりして性交等をおこなった場合
  3. 3.13歳未満または5歳以上歳の離れた16歳未満の相手と性交等をおこなった場合

そして、1つ目の要件に関しては、「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態」にさせる手段として、以下のとおり8つの類型が定められています

1.暴行や脅迫を用いること
2.心身の障害を生じさせること
3.アルコールや薬物を摂取させること
4.睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること
5.同意しない意思を形成し、表明し、またはそのいとまがないこと
6.予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること
7.虐待に起因する心理的反応を生じさせること
8.経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること

上記のような類型はあるものの、当事者間の関係性や性行為に至るまでの過程はさまざまであり、実際に同意があったかどうかは一律に線引きできるものではありません。

そのため、「同意の有無なんて本人の主張でどうにでもなるのだから、いったもん勝ちだ」と誤解している人が多くいるのです。

同意の有無は被害者の供述と客観的証拠に基づいて判断される

不同意性交等罪の成否を判断するうえで、被害者の供述が重要になるのは事実です。

しかし、「性行為に対する同意はなかった」として検察官が起訴するためには、被害者の供述を裏付ける客観的証拠も必要になります。

不同意性交等罪の客観的証拠として扱われるのは、主に以下のようなものです。

  • ・防犯カメラの映像
  • ・SNSやマッチングアプリでのやり取り
  • ・被害者が受けた暴行の痕跡
  • ・DNA鑑定の結果

上記のような客観的な証拠と被害者の供述との整合性を検証したうえで、不同意性交等罪の成否が判断されます。

つまり、客観的証拠が一切ない状況で起訴され、有罪になることは基本的に考えられません。

逮捕段階では不同意性交等罪が「いったもん勝ち」になっている!?

上述のとおり、被害者の供述だけで起訴される可能性は極めて低いといえます。

しかし、逮捕段階においては、不同意性交等罪が「いったもん勝ち」になっているケースがあるのも事実です。

つまり、警察が客観的証拠を吟味しないまま、被害者の供述を根拠として、逮捕に乗り出すことがあります

特に被害者の供述内容に一貫性があり、具体的であればあるほど信憑性が増すので、逮捕に至る可能性は高くなるでしょう。

一旦逮捕されてしまうと、冤罪を主張することは容易ではありません。

不同意性交等罪を疑われている場合には、できるだけ早く弁護士に相談し、まずは逮捕を回避することが重要です。

関連記事:

不同意性交等罪の逮捕率は57%?|流れと逮捕を防ぐ方法を解説!

「不同意性交等罪はいったもん勝ち」の勘違いを利用した犯罪の手口

2023年7月に不同意性交等罪が施行されて以降、「不同意性交等罪はいったもん勝ち」の勘違いを利用した犯罪の手口が多発しています。

ここでは、よくある手口を紹介するので参考にしてみてください。

「不同意性交等罪はいったもん勝ち」の勘違いを利用した犯罪の手口

復讐目的で「同意はなかった」と虚偽の告訴をおこなうケース

「不同意性交等罪はいったもん勝ち」の勘違いを利用した犯罪の手口としてよくみられるのは、復讐目的で「同意はなかった」と虚偽の告訴をおこなうケースです。

もともとは良好な関係にあり、お互い同意していることが明らかな状態で性行為をしたにも関わらず、浮気や金銭トラブルで揉めた途端に「あのときの性行為は嫌だった。訴えてやる」などと嘘の主張をされるパターンなどが該当します。

この場合、性行為前後の円満な関係性を読み取れるやりとりが残されていることも多いので、証拠を提示しながら、無実を主張するようにしましょう。

なお、虚偽の告訴をおこなった相手に対しては、虚偽告訴罪として「3か月以上10年以下の懲役」の罪に問える可能性があります。

美人局で金銭を巻き上げるケース

美人局で金銭を巻き上げるケースも、不同意性交等罪を利用したよくある犯罪の手口です。

マッチングアプリなどで出会った相手と自然な流れでホテルに行き、性行為に及んだあとで「性行為には同意していない。バラされたくなかったら示談金を払え!」などと連絡がくるようなトラブルは頻繁に起こっています。

この場合、美人局だとわかっていながら、事件化することをおそれて示談金を支払ってしまう人も少なくありません。

不同意性交等罪の罪に問われたときの対処法

次に、不同意性交等罪の罪に問われたときの対処法を解説します。

不同意性交等罪の罪に問われたときの対処法

同意のない性行為が事実だったかどうかでやるべきことが変わってくるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

同意があったことを証明できる証拠を集める

不同意性交等罪の冤罪を疑われた場合は、同意があったことを証明できる証拠をできるだけ多く集めてください。

客観的な証拠を示し、相手方の供述を覆すことができれば、逮捕や起訴を回避できる可能性が大幅に高まります。

たとえば、以下のようなものが証拠として役立てられるでしょう。

  • ・性行為の前後のSNSやアプリでのやり取り
  • ・一晩過ごした翌日にもデートしていることがわかるもの
  • ・性行為への同意を示す音声録音や同意書
  • ・利用した飲食店やホテルの近くに設置されている防犯カメラの映像

証拠の数は多ければ多いほど有利になるので、少しでも関係しそうなものは保存しておくようにしましょう。

ただし、証拠収集にあたっては相手方のプライバシーなどに十分配慮する必要があります。

余計なトラブルを起こさないように、弁護士のアドバイスを受けながら、慎重に証拠収集を進めることが大切です。

不同意性交等罪の成立要件と冤罪を避けるための証拠6選を弁護士が解説

罪を認めるなら示談の成立を目指す

同意を得ないまま性行為に及んだことが事実だった場合は、早急に示談の成立を目指しましょう。

示談の中で謝罪し、金銭的補償をおこなえば、被害者の処罰感情が弱まり、被害届の提出や告訴を踏みとどまってもらえることがあります。

また、示談を成立させ、当事者間で和解していることを示せば、捜査機関があえて逮捕や起訴に乗り出す可能性は低くなるでしょう。

ただし、被害者に対して直接示談交渉を申し込むのは現実的ではありません。

被害者は加害者と関わりたくないと考えるのが一般的なので、自分で交渉しようとすると逆効果になるおそれがあります。

そのため、示談交渉は弁護士を介して進めるようにしましょう。

【不同意性交等罪の起訴率は32%?】不起訴になる3つの方法を解説

「いったもん勝ち」の不利な状況で逮捕を回避するには弁護士のサポートが最重要

「いったもん勝ち」の不利な状況を回避し逮捕を回避するには、弁護士のサポートが最重要です。

上述のとおり、不同意性交等罪に関しては、被害者の供述だけで逮捕に至るケースも少なくありません。

証拠がないからといって安心していると、突然警察官がやってきて身柄を拘束される可能性があるのです。

その点、早期段階から弁護士に依頼していれば、以下のようなサポートを受けられるので、結果として逮捕を回避しやすくなります。

弁護士による主なサポート

相手方とトラブルになった時点で弁護士に介入してもらえば、事件化する前に解決することも十分可能です。

特に冤罪事件で無実を証明することは非常にハードルが高いので、必ず弁護士に相談するようにしてください。

不同意性交等罪に関するよくある質問

最後に、不同意性交等罪に関するよくある質問を紹介します。

不同意性交等罪に関するよくある質問

不同意性交等罪の立証責任はどちらにある?

不同意性交等罪の立証責任を負うのは、原則として加害者側です。

つまり、検察が不同意性交等罪の成立を証明できない限り、無罪と推定されます。

とはいえ、加害者側も黙ってみているだけというわけにはいきません。

冤罪を疑われているのであれば、性行為に対して同意があったことを、証拠を示しながら主張していく必要があります。

不同意性交等罪の刑罰は?

不同意性交等罪の刑罰は、5年以上の有期拘禁刑です。

拘禁刑は懲役刑と禁錮刑を一本化した刑罰のことであり、2025年6月から施行されます。

刑務所内での更生プログラムを、受刑者の特性に合わせて柔軟に実施できるようになっている点が特徴といえるでしょう。

とはいえ、不同意性交等罪の刑罰は、前身の強制性交等罪よりも厳しく規定されています。

略式起訴になることはなく、減刑されない限り執行猶予付きの判決を受けることもできません

関連記事:

不同意性交等罪は5年以上の懲役?回避・短縮する方法を解説!

不同意性交等罪で執行猶予が付くのは20%?実刑を避けるポイント

 

不同意性交等罪はいつの事件から適用される?

不同意性交等罪は、2023年7月13日以降の事件に対して適用されます。

2023年7月13日以前の事件については、多くの場合、従来の強制性交等罪が適用されることになるでしょう。

不同意性交等罪の疑いをかけられたときは弁護士に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ・不同意性交等罪の起訴・有罪判決には客観的証拠が必要
  • ・逮捕段階では「不同意性交等罪がいったもん勝ち」になっているのも事実
  • ・美人局や復讐の手段として不同意性交等罪が悪用されることがある
  • ・不同意性交等罪の罪に問われたときは証拠収集や示談を早急に進める
  • ・不同意性交等罪での逮捕を回避するには弁護士のサポートが最重要

不同意性交等罪は重大な性犯罪であり、重い刑罰が規定されています。

仮に起訴され、有罪になった場合、その後の社会生活に与える悪影響は計り知れません。

そのため、不同意性交等罪の疑いをもたれている場合は、できるだけ早く弁護士に相談し、しかるべき対処を講じていく必要があります。

弁護士の的確なサポートがあれば、事件化する前に解決したり、不起訴処分を獲得したりできる可能性が格段に高まるはずです。

実際に、グラディアトル法律事務所ではこれまでに数多くの性犯罪事件を解決してきました。

経験豊富な弁護士が24時間365日体制で対応しているため、困ったときはいつでもお問い合わせください。

初回相談は無料、LINEでの相談も受け付けているので、お気軽にどうぞ。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード