不同意わいせつ罪を立証する6つの証拠と同意を立証する4つの証拠

不同意わいせつ罪を立証する6つの証拠と同意を立証する4つの証拠
弁護士 若林翔
2024年12月01日更新

「不同意わいせつ罪を立証する証拠にはどのようなものがある?」

「同意があったとして無罪を主張するならどんな証拠が必要?」

「不同意わいせつ罪の証拠がなければ逮捕されない?」

2023年7月13日施行の改正刑法により新設された「不同意わいせつ罪」は、暴行または脅迫を用いたわいせつ行為に限らず、被害者の同意のないわいせつ行為を処罰対象としています。

これにより、同意があると思ってわいせつな行為をしたのに、後から被害届を提出されてしまったというケースが増えてきています

もっとも、被害者の供述だけで有罪になるわけではありませんので、不同意わいせつ罪で処罰されるには犯罪成立を裏付ける証拠が必要になります。ご自身の身を守るためにも、どのような証拠が不同意わいせつ罪の証拠になるのか、しっかりと押さえておくことが大切です。

本記事では、

・不同意わいせつ罪の証拠となり得る6つのもの

・被害者の同意があったことを証明するための4つの証拠

・不同意わいせつ事件を起こしてしまったときに被害者と示談をする重要性

などについてわかりやすく解説します。

具体的な状況からみて不同意わいせつ罪が成立するかどうかは、知識や経験豊富な弁護士のアドバイスが必要になりますので、罪に問われるか不安な方は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

不同意わいせつ罪の証拠になり得る6つのもの

不同意わいせつ罪の証拠になり得るものとしては、以下の6つが挙げられます。

証拠の種類説明有効度備考
被害者の証言被害の直接的な証拠被害者の証言の信用性の吟味が必要
目撃者の証言犯行現場やその前後の状況を目撃していた人の証言中~高目撃者の証言の信用性の吟味が必要
被疑者・被告人の自白被疑者・被告人が罪を認めた供述内容自白の撤回は難しいため、慎重な対応が必要
防犯カメラの映像犯行状況や犯行前後の状況が記録された客観的な証拠非常に高犯行状況を写した映像があれば重要な物的証拠になる
微物検査(繊維鑑定)被疑者の手や指から採取した繊維が被害者の衣服と一致するかどうかの鑑定微物検査の結果だけで犯人だと認められるわけではない
DNA鑑定被害者に付着した体液が被疑者のDNAと一致するかどうかの鑑定非常に高DNA型が一致すれば重要な物的証拠になる

被害者の証言

被害者の証言は、不同意わいせつ罪の被害を立証する直接の証拠になります。

不同意わいせつ事件では、被害者の証言以外に証拠がないケースも少なくありませんので、不同意わいせつ罪の証拠の中でも被害者の証言は重要な位置づけとなります。

ただし、被害者の証言内容がそのまま採用されるのではなく、以下のような観点から証言の信用性が吟味されます。

・客観的な証拠との整合性
・供述内容の一貫性
・供述内容の具体性、迫真性
・供述態度が真摯であるか
・虚偽供述の動機の有無

実際の裁判でも被害者の証言の信用性が否定されて、無罪になった事案もありますので、無罪を主張するなら被害者証言の信用性の吟味が重要になります。

目撃者の証言

不同意わいせつ事件の現場を目撃していた人がいる場合には、目撃者の証言も証拠になります。直接的な犯行現場を目撃していなかったとしても、犯行前後の状況をみている人がいれば、その人の証言も証拠になります。

目撃者の証言も、被害者の証言と同様に証言の信用性の吟味が必要になります。目撃者証言の信用性は、被害者証言の信用性で挙げた要素に加えて、以下のような要素からも吟味が必要です。

・犯行時に目撃者がいた位置(わいせつ行為を視認できる位置であったか)
・目撃者の視力
・視認状況
・目撃者と被害者、被疑者との人間関係(虚偽供述の動機の有無)

被疑者・被告人の自白

被疑者・被告人が不同意わいせつ事件を起こしたことを認めた場合の自白も不同意わいせつ罪を立証する証拠になります。

捜査段階では警察官や検察官による取り調べが行われますが、その中で罪を認める供述をするとその内容が供述証書にまとめられて裁判の証拠となります。自白を後から撤回するのは困難ですので、早く釈放されたいからといってやってもいない事実を認めるのは禁物です。

防犯カメラの映像

防犯カメラの映像に犯行状況や犯行前後の状況が記録されていれば、不同意わいせつ罪を立証する有力な証拠になります。

被害者や目撃者の供述内容だとどうしても本人の主観がまじってしまいますので、信用性に疑義が生じますが、防犯カメラの映像であれば事実をありのまま記録できますので、証拠としての信用性は高いでしょう。

微物検査(繊維鑑定)

微物検査(繊維鑑定)とは、被疑者の手や指などから微細な物質や繊維を採取して、その種類や性状などを検査・鑑定する捜査手法です。

不同意わいせつ事件では、犯人がわいせつ行為をする際に、衣服の上から被害者の身体を触るケースが多く、犯人の手指には被害者の衣服と同種の繊維が付着することがあります。

微物検査(繊維鑑定)により被疑者の手指から被害者の衣服の繊維の種類・形状と一致するものが検出された場合、被疑者が被害者の衣服に触れたことを示す重要な証拠になります。

下記の記事でも詳しく記載していますので、ご覧ください。

痴漢事件の微物検査・繊維鑑定とは?検査結果が持つ意味とその他の証拠を解説

DNA鑑定

DNA鑑定とは、一人ひとりのDNAに異なる部分があることに着目して、異なる部分を比較することによって個人を高い精度で識別する鑑定方法です。

不同意わいせつ事件では、犯人がわいせつ行為をする際に被害者の身体に直接触れるケースが多く、犯人の手指には被害者の皮膚などの細胞様片や体液などが付着することがあります。

DNA鑑定により被疑者の手指から被害者のDNAが検出されれば、被疑者が被害者に触れた証拠となりますので、不同意わいせつ事件の犯人を立証する有力な証拠となります。

痴漢事件のDNA鑑定とは?痴漢冤罪を立証するためのDNA鑑定を解説

 

証拠がなければ不同意わいせつ罪で逮捕されない?

証拠がなければ不同意わいせつは逮捕されない?

不同意わいせつ罪を立証する証拠がなければ、警察に逮捕される心配はないのでしょうか。逮捕には、現行犯逮捕と後日逮捕の2種類がありますので、以下ではそれぞれの可能性について説明します。

現行犯逮捕|証拠がなければ逮捕される可能性は低い

不同意わいせつ罪を立証する証拠がないまたは乏しい状態なら現行犯逮捕される可能性は低いでしょう。

現行犯逮捕とは、現に犯罪が行われているまたは犯罪が行われた直後に逮捕状なしで犯人を逮捕する手続きです。犯人が犯行をしたことが明白であれば、誤認逮捕のおそれがないため、無令状での逮捕が認められています。

このような現行犯逮捕の要件からわかるとおり、十分な証拠がなければ不同意わいせつ罪の犯人であることが明白とはいえませんので、現行犯逮捕はできません。

そのため、証拠がなければ不同意わいせつ罪で現行犯逮捕される可能性は低いといえます。

後日逮捕|証拠が集まった段階で逮捕になる可能性はある

現行犯逮捕されなかったとしても、証拠が集まった段階で後日逮捕される可能性がありますので注意が必要です。

後日逮捕とは、犯行後に捜査を進めて罪を犯したことを疑う相当な理由と逃亡・証拠隠滅のおそれが認められる場合に、裁判官が発付する逮捕状に基づいて逮捕する手続きです。後日逮捕をする場合でも証拠が必要になりますので、捜査の結果、犯罪を立証する証拠が見つからなければ逮捕に至る可能性は低いですが、被害者の証言、目撃者の証言、周辺の防犯カメラの映像などから犯人および犯行が明らかになれば逮捕される可能性もあります。

後日逮捕のタイミングは、ケースバイケースですので逮捕のタイミングを予測することはできません。不同意わいせつ罪の公訴時効が12年ですので、それまでは逮捕される可能性があると考えておいた方がよいでしょう。

下記の記事で詳しく記載していますので、併せてご覧ください。

不同意わいせつ罪の時効は12年!時効待ち以外にできる3つのこと

被害者の同意があったことを証明するための4つの証拠

被害者から「同意していないのにわいせつな行為をされた」などと言われてしまったときは、無実を証明するために以下のような証拠を集めておきましょう。

被害者の同意があったことを証明するための4つの証拠

LINEやメールのやり取り

被害者との間でやり取りをしたLINEやSNSなどのメッセージは、被害者の同意の有無を立証するための証拠になります。

犯行が行われたとされる時点以降も被疑者と被害者が普段と変わらずにメッセージのやり取りをしている状況であれば、事件がそもそも存在しないまたは相手の同意があったことを推認できます。

交際相手の女性とのメッセージは、自分の身を守るための道具になりますので、別れたからと言ってメッセージを削除するのではなく、しっかりと保存しておくことが大切です。

防犯カメラの映像

防犯カメラの映像は、不同意わいせつ罪を立証する証拠になるとともに、無罪を立証するための証拠としても利用することができます。

被害者が同意なくわいせつな行為をされたと主張している場合、被害者供述の信用性を吟味することになりますが、防犯カメラに写っている客観的な状況と矛盾していることを突き付けることができれば、被害者供述の信用性を否定することができます。

たとえば、犯行現場として主張する場所から2人が手をつないで歩いている状況が記録されていれば、同意のないわいせつ行為はなかったと推認できるでしょう。

目撃者の証言

犯行があったとされる時点の前後の状況を目撃していた人がいる場合には、その人の証言も無実を証明する有力な証拠になります。

犯行後も親密な様子で過ごしていたなどの証言が得られれば、同意があったことが推認することができます。被害者とコンパで知り合ったのであれば、一緒に参加した友人に証言の協力をしてもらうとよいでしょう。

写真や動画

被害者と一緒に撮影した写真や動画があれば、それも無実を立証する証拠になる可能性があります。

特に、犯行前後の2人の様子を撮影した動画があれば、当時のお互いの様子を知る重要な証拠になります。動画に記録されている状況と被害者の供述内容に矛盾があれば、被害者供述の信用性を低くすることが可能です。

被害者と一緒に撮影した写真や動画がある場合は、データが消失しないようバックアップをとっておいた方がよいでしょう。

不同意わいせつの証拠があるときは早期に被害者と示談することが重要

不同意わいせつ罪を立証する証拠が残されている場合には、逮捕・起訴されるリスクがありますので、すぐに被疑者と示談することが重要です。

捜査機関に事件が発覚する前に被害者と示談を成立させられれば、事件化を回避することができますので逮捕・起訴されるリスクはほとんどありません。また、被害者により被害届が提出された後であっても早期に示談を成立できれば、逮捕・起訴のリスクを最小限に抑えることができます。

ただし、不同意わいせつ罪は、性犯罪の一種になりますので、被害者は加害者に対して強い処罰感情を有しているのが通常です。加害者本人が被害者に接触しようとしても、相手からは拒否されてしまいますので、加害者自身では示談交渉進めることは困難です。

そのため、不同意わいせつ事件の被害者との示談交渉をお考えの方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

 

不同意わいせつの証拠に関するお悩みはグラディアトル法律事務所に相談を

不同意わいせつの証拠に関するお悩みはグラディアトル法律事務所に相談を

最近では、マッチングアプリで出会った男女が不同意わいせつ事件に巻き込まれるケースが増えてきています。不同意わいせつ罪は、お互いの同意があったかどうかがポイントになりますので、相手から「同意がなかった」と言われてしまったときは、自分の身を守るためにも同意があったことを裏付ける証拠を集めなければなりません。

どのような証拠が必要になるかは、具体的な状況によって異なりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

グラディアトル法律事務所では、不同意わいせつ罪などの性犯罪に精通した弁護士が多数在籍していますので、無実を立証するために必要になる証拠やその収集方法などを熟知しています。また、不同意わいせつ事件を起こしてしまったときでも、すぐに被害者と示談を成立させることで有利な処分を獲得できる可能性が高くなります。

このような不同意わいせつ罪の弁護は、経験豊富な弁護士に依頼することが重要になりますので、まずは当事務所までご相談ください。

なお、当事務所では、24時間365日相談を受け付けておりますので、土日・祝日、早朝・深夜いつでもお電話可能です。初回相談料も無料で対応していますのでお気軽にお問い合わせください。

まとめ

不同意わいせつ事件の被害者から同意がなかったといわれたとしても、客観的な状況から同意があったといえることを立証できれば、不同意わいせつ罪による冤罪を回避することができます。そのためには、冤罪であることを立証するための証拠が重要になりますので、適切な証拠を確保するためにもまずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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