「痴漢は不同意わいせつ罪?それとも迷惑防止条例?」
「不同意わいせつ罪になるような痴漢にはどのようなものがある?」
「痴漢で不同意わいせつ罪に問われたときは、どのような刑罰が科される?」
痴漢をすると不同意わいせつ罪または迷惑防止条例違反となる可能性があります。このうち、不同意わいせつ罪に該当する痴漢行為は、以下のような比較的悪質な痴漢行為が対象になります。
・下着の中に手を入れて身体を触る行為
・衣服の上からでも執拗に身体を触り続ける行為
・相手の手をつかんで自分の性器を触らせる行為
・路上で突然抱きついて身体を触る行為
・泥酔して意識のない相手の胸を触る行為
迷惑防止条例違反となる痴漢行為に比べて、不同意わいせつ罪となる痴漢は、起訴される可能性が高く、何もしなければ実刑判決となり刑務所に収容される可能性もありますので注意が必要です。
本記事では、
・不同意わいせつ罪の概要と成立要件
・不同意わいせつ罪となる痴漢行為の例
・痴漢で不同意わいせつ罪が成立した場合の刑罰
などについてわかりやすく解説します。
痴漢行為をしてしまったとしても、早期に適切な対応をすることで逮捕や起訴を回避できる可能性がありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
目次
悪質な痴漢行為は不同意わいせつ罪が成立
痴漢行為の中でも悪質な犯行態様であった場合には、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。以下では、不同意わいせつ罪の概要と成立要件について説明します。
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪とは、被害者が同意できないような状況でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法176条1項)。
以前は、「強制わいせつ罪」と呼ばれていたものになりますが、2023年6月13日施行の改正刑法により、強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪に変更になりました。
痴漢行為の中でも比較的悪質な態様のものが、不同意わいせつ罪の対象になると考えられています。
不同意わいせつ罪の成立要件
不同意わいせつ罪は、以下の要件を満たした場合に成立します。
【同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせまたはその状態に乗じること】
不同意わいせつ罪は、以下のような行為または事由により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じることが要件となります。
・暴行または脅迫
・心身の障害
・アルコールまたは薬物の摂取
・睡眠または意識不明瞭
・拒絶するいとまを与えない
・恐怖または驚愕させる
・虐待
・立場による影響力
また、同意しない意思の形成・表明・全うが困難とは、以下のような状態をいいます。
形成困難 | わいせつ行為を受け入れるかどうかの判断が困難な状態 |
表明困難 | 意識がはっきりしており、わいせつ行為を拒否したいと考えていても、その意思を伝えるのが困難な状態 |
全う困難 | わいせつ行為を拒否したいと考え、実際に抵抗したにもかかわらず、わいせつ行為を中断させるのが困難な状態 |
【わいせつな行為をすること】
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為と定義されています。
簡単に言えば、一般の人が「恥ずかしい」、「いやらしい」と感じる行為であり、痴漢行為は「わいせつな行為」に該当します。
【被害者の年齢】
被害者の年齢および加害者の年齢が以下のいずれかである場合には、被害者がわいせつな行為をすることに同意していたとしても不同意わいせつ罪が成立します。
・被害者が13歳未満の子ども
・被害者が13歳以上または16歳未満の子どもで、かつ、加害者が5歳以上の年長者
不同意わいせつ罪となる痴漢行為
では、どのような痴漢行為が不同意わいせつ罪にあたるのでしょうか。以下では、不同意わいせつ罪となる痴漢行為の例を紹介します。
下着の中に手を入れて身体を触る行為
着衣の上からではなく、下着の中に手を入れて被害者の身体を直接触るような痴漢行為をすると不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
明確に区別されているわけではありませんが、一般的には着衣の上からの痴漢行為は迷惑防止条例違反、身体に直接触るような痴漢行為は不同意わいせつ罪が成立すると考えられています。
なお、さらにエスカレートして膣や肛門に指を入れるような痴漢行為になると、不同意わいせつ罪よりも重い不同意性交等罪に問われる可能性があります。
衣服の上からでも執拗に身体を触り続ける行為
衣服の上からの痴漢行為については、基本的には迷惑防止条例違反の対象と考えられていますが、具体的な態様によっては、不同意わいせつ罪の対象になることもあります。
たとえば、衣服の上からでも執拗に胸や臀部を触り続けるような悪質な行為については、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
相手の手をつかんで自分の性器を触らせる行為
痴漢行為というと被害者の身体を触る行為をイメージする方が多いですが、被害者に自分の身体を触らせる行為も痴漢になり得ます。
たとえば、相手の手をつかんで自分の性器を触らせるような行為は、わいせつな行為に該当しますので、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
路上で突然抱きついて身体を触る行為
痴漢は、電車やバスなどの乗物内で行われるケースが多いですが、路上での痴漢(路上痴漢)も存在します。路上で突然抱きついて身体を触る、すれ違いざまに胸を揉む、人気のない路地に連れ込んで押し倒すなどの路上痴漢をすると不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
また、路上痴漢では被害者を押し倒したり、押さえつけたりする際に被害者に怪我を負わせることがありますが、その場合は、不同意わいせつ致傷罪が成立します。
泥酔して意識のない相手の胸を触る行為
新年会や忘年会などのシーズンになると、泥酔して路上で倒れている女性の姿を見かけることもあります。意識がない状態に乗じて被害者の胸やお尻を触ったり、衣服を脱がせるなどの行為をすると不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
痴漢で不同意わいせつ罪が成立した場合の刑罰
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑と定められています。
不同意わいせつ罪には、罰金刑は存在しませんので、起訴され有罪となると拘禁刑一択となります。また、罰金刑を前提とする略式手続きを利用することもできません。
拘禁刑とは、身体の自由を制限する自由刑の一つであり、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」を統合する形で設けられた新しい刑罰です。懲役刑と禁錮刑は、刑務作業の有無によって区別されますが、実際には、禁錮刑であっても希望すれば刑務作業を行うことができ、ほとんどの禁錮刑受刑者が刑務作業を行っていましたので、区別する実益はほとんどありませんでした。
そこで、刑法改正により新たに拘禁刑が設けられることになりました。拘禁刑の施行は、2025年6月1日ですので、それまでは従来どおり懲役刑が科されることになります。
不同意わいせつ罪と迷惑防止条例違反の痴漢の違い
電車やバスで女性の身体を触るといった痴漢行為をした場合に成立し得る犯罪としては、不同意わいせつ罪のほかに迷惑防止条例違反があります。
迷惑防止条例は、公衆に対する迷惑行為を防止する目的で、都道府県ごとに設けられている条例です。実際の規定内容や刑罰は、都道府県によって異なり、東京都を例に挙げると以下のような規定となっています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に
人の身体に触れること。
不同意わいせつ罪と迷惑防止条例違反となる痴漢は、明確に区別できるわけではありませんが、着衣の上から触るといった軽微な痴漢行為は迷惑防止条例、着衣の中に手を入れ被害者の身体を直接触るといった悪質な痴漢行為は不同意わいせつ罪に問われる傾向にあります。
両者の違いをまとめると以下のようになります。
不同意わいせつ罪 | 迷惑防止条例 | |
---|---|---|
行為 | わいせつな行為例)着衣の中に手を入れて身体を直接触る | 人を著しく羞恥させる行為例)着衣の上から身体に触る |
犯行場所 | 犯行場所に限定はない | 公共の場所に限る |
刑罰 | 6月以上10年以下の拘禁刑 | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金常習の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金※東京都の場合 |
痴漢は何罪に問われる?痴漢の態様ごとに適用される刑罰を解説
痴漢で逮捕・起訴を回避するには被害者との示談が重要
痴漢行為で逮捕・勾留されてしまうと、最大で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。身柄拘束中は、通常の日常生活を送ることができませんので、仕事や学業に重大な支障が生じるリスクがあります。
また、痴漢で起訴されてしまうと99.9%の割合で有罪となりますので、痴漢の前科が付くことになります。痴漢行為が不同意わいせつ罪にあたる場合、痴漢行為の中でも悪質なものといえますので、実刑判決になるリスクもあります。
このようなリスクを回避するには、早期に被害者との示談を成立させることが重要です。
痴漢は、被害者の告訴がなくても起訴することができる「非親告罪」にあたりますが、被害者との間で示談が成立している場合、当事者の意思を尊重して、検察官はあえて起訴しないケースが多いです。つまり、検察官が起訴または不起訴の判断をする時点までに示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなるといえます。
また、身柄拘束されている場合でも被害者と示談が成立すれば、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが減退し、早期の身柄解放を受けられる可能性も高くなります。
このように痴漢事件では、被害者との示談が非常に重要となりますので、早期に示談交渉を開始し、示談をまとめられるように対応していかなければなりません。
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痴漢事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
不同意わいせつ罪に該当するような悪質な痴漢行為をしてしまった場合、起訴されて有罪になれば、実刑判決になる可能性も否定できません。このような結果を回避するには、すぐに痴漢事件に詳しい弁護士に依頼することが重要です。
グラディアトル法律事務所では、痴漢事件に関する豊富な実績があり、経験豊富な弁護士が多数在籍していますので、迅速かつ適切な対応が可能です。加害者自身では対応が困難な被害者との示談交渉に関しても、豊富な経験とノウハウに基づいてスムーズに対応することが可能です。痴漢事件の経験や実績の有無によって弁護士の能力は大きく変わりますので、実績と経験豊富な当事務所までまずはご相談ください。
当事務所では、24時間365日相談を受け付けていますので、ご依頼があればいつでも弁護活動に着手できる状態でお待ちしております。初回相談料無料で、LINE相談も受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
痴漢行為のうち、着衣の中に手を入れて直接身体を触るといった悪質な痴漢行為に関しては、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反の痴漢と異なり、罰金刑がなく拘禁刑(懲役刑)一択ですので、早期に弁護士に依頼して、適切な弁護活動を行わなければ実刑になるリスクもあります。
痴漢行為をしてしまったという方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。