「鬼滅の刃」偽物シールを転売した疑い…27歳女を逮捕 “安すぎる価格”で発覚

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弁護士 若林翔
2020年11月11日更新

人気アニメ「鬼滅の刃」の偽物のシールを海外から仕入れて転売した疑いで、27歳の女が著作権法違反の疑いで逮捕されました。

どのような点が著作権法違反となり、刑罰はどのようになるのか、弁護士が解説していきます。

ニュース内容

人気アニメ「鬼滅の刃」の偽物のシールを海外から仕入れて転売した疑いで、27歳の女が逮捕されました。

著作権法違反の疑いで逮捕されたのは、奈良県王寺町に住む無職の女(27)です。

女はことし7月、偽物と知りながら、アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターのシールを海外から仕入れて転売した疑いが持たれています。

オークションサイトで「鬼滅の刃」のシールが60枚600円で売られているのを、警察がサイバーパトロールで発見。

本物のシールの価格は1枚50~100円程度で、不審に思った警察がシールを購入して販売会社の鑑定を受けたところ、偽物だと判明したということです。

警察によると、女は海外からシールを1枚約4円で仕入れ、50回ほど転売したと話していて、「偽物として売った」と容疑を認めています。

2020年11月11日 水曜 午前8:59 関西テレビ

弁護士からのコメント

転売女性の行った行為

報道によると、女性は偽物と知りながら、アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターイラストが印刷されたシールを海外から仕入れて転売したとのことです。

「偽物」、「転売」といかにも問題がありそうなキーワードが並びますが、法的な観点からはどのように理解されるのでしょうか。

以下、述べていきたいと思います。

著作権の所在

今回女性が海外から仕入れていた偽物シールは、「鬼滅の刃」の著作権者が有しているイラスト、あるいは著作権者から許諾を得て製作されていたイラストがそのまま印刷されていたと推察されます。

そのような場合、海外で作成・販売されたシールであったとしても、印刷されているイラストの著作権は、「鬼滅の刃」の著作権者、あるいは著作権者から許諾を得て製作している者が保有していることになります。

したがって、転売していた女性は、当然イラストについて著作権を有する著作権者ではないことになります。

著作権違反の内容

譲渡権(著作権法26条の2第1項)侵害

女性が仕入れていた偽物シールは、著作物(「鬼滅の刃」のイラスト)の複製物ということになります。

そして著作物の複製物を譲渡により公衆に提供する権利は、譲渡権として著作権者が専有すると著作権法に定められています。

ですので、イラストの著作権を有しておらず許諾も得ていない女性が無断で偽物シールを転売した行為は、譲渡権侵害となります。

(譲渡権)
第二十六条の二 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
著作権法

著作権法上のみなし侵害(著作権法113条1項1号)

また、国内において頒布(販売)する目的をもって、著作権侵害に当たる行為によって作成されたものを輸入する行為も、著作権侵害とみなされます。

そして女性が海外から仕入れていた偽物シールは、仮に国内で無断で作成すれば、複製権(著作権法21条)侵害、すなわち著作権侵害となるものです。

ですから、女性がこれを海外から仕入れていた行為は、著作権侵害と行為とみなされることになります。

(侵害とみなす行為)
第百十三条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
著作権法

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
著作権法

刑罰の内容

譲渡権侵害についての罰則は、著作権法119条1項により、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はこれの併科(懲役と罰金両方の刑)とされています。

みなし侵害についての罰則著作権法119条2項により、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、又はこれの併科とされています。

第八章 罰則
第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、同条第四項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第五項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第六項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第四項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二 営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三 第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四 第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
著作権法

まとめ

以上で見てきたとおり、自分が著作権を有しておらず、著作権者から許諾を得ていないイラストが使われた商品を作成・販売することや、転売のために輸入することは著作権を侵害する行為です。

そして罰則は非常に重く、刑事事件となるほか、民事上で権利者から多額の損害賠償請求をされる可能性も高いことにもなります。

今回の解説で、他人が著作権を有するイラスト等のコンテンツによって不正に利益を得てはいけないことがおわかりいただけたかと思います。

なお当法律事務所では著作権法が関係する事件・紛争についても多数経験があり、紛争解決の知見が蓄積しています。

他人に自己のコンテンツを無断で利用されていてお困りの場合は、刑事事件化、民事事件としての損害賠償請求や使用の差止め請求双方で万全にサポートさせていただきます。

反対に、権利者から警告書が届いた場合や、刑事事件として被疑者となってしまった場合にも速やかにご相談ください。
早期の解決に向けて、適切なアドバイスをさせていただきます。

最後に、著作権法に関してお悩み・お困りの方は遠慮なく当法律事務所にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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