どこからどこまでが痴漢?具体的な事例と適用される罪の種類を解説

どこからどこまでが痴漢?具体的な事例と適用される罪の種類を解説
弁護士 若林翔
2024年10月28日更新

「何をすれば痴漢になるのか、判断基準がいまいちよくわからない」

「どのような行為にどのような罪が適用されるのか知りたい」

満員電車などで痴漢を疑われることは誰にでも起こり得ます。

しかし、胸やお尻を見ていただけでも痴漢になるのか、電車が揺れた拍子に手が触れてしまった場合も罪になるのかなど、一般の方には判断が難しい部分があるのも事実です。

実際に痴漢を疑われ、自分自身の行為が本当に犯罪といえるものなのかどうか、納得がいっていない人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、どこからどこまでが痴漢に該当するのか、具体的な例を示しながら解説していきます。

痴漢に適用される罪の種類や痴漢を疑われたときの対処法なども記載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

どこからどこまでが痴漢?犯罪になり得る行為の具体例

「痴漢」に法律上の定義があるわけではありませんが、一般的には「相手の意に反してみだらなふるまいをすること」を指します。

具体的には、電車や路上などで以下のような行為に及んだ場合に痴漢とみなされ、罪に問われる可能性があります。

  • ・衣服や下着の上から胸や臀部をなでる
  • ・衣服や下着を脱がせようとする
  • ・下着の中に手を入れる
  • ・身体を密着させる
  • ・手を掴んで性器を触らせる
  • ・息を吹きかける
  • ・匂いをかぐ
  • ・卑猥な言葉を投げかける
  • ・局部を見せつける
  • ・体液をかける
  • ・執拗に身体を凝視する
  • ・路上で突然抱きつく

直接身体に触れる行為だけでなく、間接的に性的な嫌がらせをする行為も痴漢とみなされることがあります。

近年では、スマートフォンの共有機能を利用して卑猥な画像を送りつける行為も、犯罪として取り締まられています。

痴漢に適用される主な罪と判断基準

ひとくくりに痴漢といっても、行為態様によって適用される罪は変わってきます。

ここでは、痴漢に適用される主な罪と判断基準を解説するので参考にしてみてください。

痴漢に適用される主な罪と判断基準

都道府県の迷惑防止条例違反|比較的軽微な痴漢行為

公共の場における比較的軽微な痴漢行為に対しては、各都道府県の迷惑防止条例を適用するケースが一般的です。

迷惑防止条例の規定は都道府県によって異なりますが、基本的には「人を羞恥させ、不安を覚えさせるような方法で人の身体に触れる行為」を禁止しています。

一例として、以下のような行為に及んだ場合は、迷惑防止条例違反の罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

  • ・服の上から身体を触る
  • ・身体を相手に押し付ける
  • ・承諾を得ずハグをする

迷惑防止条例違反の刑罰も都道府県ごとに違いがあり、たとえば東京都では以下のとおり規定されています。

  • ・常習性のない痴漢行為:6月以下の懲役または50万円以下の罰金
  • ・常習性のある痴漢行為:1年以下の懲役または100万円以下の罰金

痴漢は迷惑防止条例違反?不同意わいせつ罪との違いや示談を解説

不同意わいせつ罪|悪質性の高い痴漢行為

痴漢行為に対しては、不同意わいせつ罪が適用される可能性もあります。

不同意わいせつ罪は、「被害者が同意しない意思を形成・表明・まっとうできない状態でわいせつな行為に及んだ場合」に成立する犯罪です。

迷惑防止条例違反と明確に線引きすることは難しいですが、痴漢のなかでも悪質性が高い行為が不同意わいせつ罪として処罰される傾向にあります。

具体的には、以下のような行為が想定されます。

  • ・下着の中に手を入れて身体を直接触る
  • ・衣服の上から執拗に胸や臀部を撫で続ける
  • ・相手の手を掴んで性器を触らせる
  • ・路上で突然抱きついて身体を触る

不同意わいせつ罪の刑罰は「6月以上10年以下の拘禁刑」です。

迷惑防止条例よりも重い刑罰が定められており、罰金刑がないので、略式命令による簡易な手続きがとられることもありません。

起訴されて有罪になると、拘禁刑一択です。

なお、拘禁刑は従来の「懲役刑」と「禁錮刑」を統合した新しい刑罰ですが、2025年6月の施行日までは、従来どおり懲役刑に処されることになります。

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痴漢で罪に問われる可能性が低いケース

痴漢を疑われたからといって、必ずしも罪に問われるわけではありません。

ここでは、痴漢で罪に問われる可能性が低いケースを見ていきましょう。

痴漢で罪に問われる可能性が低いケース

故意が認められない場合

痴漢を疑われた場合でも、故意が認められなければ、罪に問われる可能性は低くなります。

迷惑防止条例や不同意わいせつ罪が成立するためには、行為者の故意が必要です。

たとえば、混雑した電車内で偶然他人に触れてしまった場合や転倒して接触してしまった場合などは、痴漢の故意がないため、犯罪になることは基本的にありません。

故意がなかったことを理由に、無罪となった事例も存在します。

【事案概要】

1.男性は電車内で女子高生の胸に肘を押し付けたとして迷惑防止条例違反の罪に問われた

2.男性は痴漢行為を否認しており、故意があったどうかが争点となった

3.男性の肘が女子高生の胸に押し付けられていたことは事実であるが、以下のような事情が考慮された電車内は相当混雑していた男性はビニール袋を持っており、肘が曲がるのは自然であった男性と女子高生の身長差からして、肘が胸の位置にあったことも違和感がない

4.結果として、男性に故意があったとはいえず、無罪判決が下された

(大阪地裁平成20年9月1日判決)

とはいえ、痴漢冤罪事件において、故意がなかったことを証明するのは簡単ではありません。

痴漢を疑われ、故意の有無が争点となる場合は、弁護士のサポートが必要不可欠といえます。

未遂に終わっている場合

痴漢行為が未遂に終わった場合も、罪に問われる可能性は低くなります。

各都道府県が定める迷惑防止条例には、未遂規定がないためです。

たとえば、電車内で女性の身体を触ろうとしたものの電車が揺れて触れられなかった場合や、相手が気づいて回避したため接触に至らなかった場合などは未遂となり、迷惑防止条例違反が成立することはありません。

ただし、不同意わいせつ罪にあたる悪質な痴漢行為は、未遂に終わっても処罰されます。

未遂であれば減刑される可能性もありますが、不同意わいせつ罪にはもともと重たい刑罰が規定されているので、決して楽観視できるものではありません。

痴漢を疑われた場合にやるべきこと

最後に、痴漢を疑われた場合にやるべきことを解説します。

痴漢を疑われた場合にやるべきこと

痴漢が事実の場合

痴漢したことが事実であれば、被害者との示談成立を最優先に考えましょう。

示談のなかで金銭的な補償をおこなえば、被害届や告訴状の提出を阻止し、事件化する前に解決できる可能性があります。

また、検挙されてしまった場合でも、示談が成立していれば被害者と和解していることを示せるため、逮捕や起訴を回避しやすくなるでしょう。

しかし、被害者と連絡が取れるケースは少なく、仮に接触できたとしても示談に応じてくれるとは限りません。

そのため、示談を進める場合は、まず弁護士に相談することが大切です。

痴漢事件が得意な弁護士であれば、豊富な交渉ノウハウを用いて被害者との示談をスムーズに成立させることができます。

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痴漢が冤罪の場合

痴漢冤罪で疑われた場合は、自身の無実を証明するために、冷静さを保って行動することが重要です。

具体的には、以下のような点に注意しておきましょう。

  • ・その場から逃げ出さない
  • ・謝罪しない
  • ・事実と異なることは否認し続ける
  • ・警察に個人情報を隠さない
  • ・可能であれば証人を探す
  • ・弁護士と面会するまで取り調べの供述調書に署名しない

また、冤罪であっても、否認を続けると身柄拘束を受ける可能性があるので、家族や会社に連絡を入れておくことも大切です。

とはいえ、犯罪者扱いされているなかで、常に冷静な判断ができるとは限りません。

実際、被害者や警察から脅すような言動をとられ、やってもいない罪を認めてしまう人もいます。

そのため、痴漢を疑われた場合はできるだけ早く弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けることが重要です。

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痴漢を疑われたらグラディアトル法律事務所へ相談を

痴漢を疑われた場合には、速やかに弁護へ相談してください。

痴漢したことが事実であろうと冤罪であろうと、事件直後の対応次第でその後の処遇が大きく変わります

ただし、相談するのはどんな弁護士でもよいというわけではありません。

法律トラブルは多岐にわたるので、弁護士もそれぞれ得意分野をもっているケースが一般的です。

そのため、痴漢事件を得意とする弁護士に依頼することこそが、円滑な問題解決の近道といえるでしょう。

グラディアトル法律事務所では、これまでに多数の痴漢事件を解決に導いてきた実績があります。

痴漢事件の解決実績

痴漢事件に関する豊富な知識と経験を有する弁護士が24時間365日体制で対応しているので、一刻も早く弊所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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