「勾留」とは、刑事事件の被疑者を刑事施設に身柄拘束する手続きのことです。
勾留されると原則10日間、最長20日間にわたって身体拘束を受けるので、仕事や学校生活にも大きな支障が生じてしまいます。
そのため、痴漢事件を起こして勾留されるおそれがあるのであれば、速やかに弁護士へ相談し、今やるべきことについてアドバイスを受けるようにしてください。
速やかに適切な対応を取り、勾留を回避できれば、誰にも知られず日常生活を取り戻せるかもしれません。
勾留が決まった場合でも、弁護士のサポートがあれば早期釈放を実現できる可能性がグッと高まります。
本記事では、痴漢で勾留が決まったあとの流れや勾留を回避する方法などについて解説します。
釈放されるタイミングなどもあわせて記載しているので、今後の処遇に不安を感じている方は参考にしてみてください。
目次
痴漢で逮捕された場合は勾留される可能性が高い
痴漢で逮捕された場合には、基本的に勾留されるものと考えておきましょう。
痴漢行為に対しては、迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪が適用されるケースが一般的であり、それぞれの勾留請求率は高い水準にあります。
勾留請求は検察官から裁判官に対しておこなわれますが、却下される可能性は低いです。
そのため、痴漢で逮捕された大半の事件において、被疑者が勾留されていることになります。
痴漢で勾留されると原則10日間・最長20日間の身柄拘束を受ける
痴漢で勾留された場合は、原則10日間の身柄拘束がおこなわれます。
基本的には警察の留置所に収容され、快適とはいえない環境のなかで長期間過ごさなければなりません。
勾留期間中は検察によって捜査が進められることになりますが、起訴・不起訴の判断に至らない場合には、勾留延長がおこなわれます。
勾留の延長期間は一律に決められていませんが、最大で10日間です。
つまり、最初の勾留期間と合わせると、20日間にわたって身柄拘束される可能性があります。
勾留期間中は外部との連絡が制限され、仕事や日常生活にも大きな影響が及ぶため、弁護士と連携しながら早期釈放を目指すことが重要です。
痴漢で勾留されやすいケース
次に、痴漢で勾留されやすいケースを解説します。
自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
被疑者が黙秘・否認を続けている場合
痴漢事件で被疑者が黙秘・否認を続けている場合は、勾留される可能性が高いといえるでしょう。
黙秘・否認を続けていると「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断され、勾留による身柄拘束が実行されてしまうのです。
また、被疑者の供述を得られない場合は捜査が難航し、起訴・不起訴の判断が難しくなるので、検察官は被疑者を勾留して真相解明にあたろうとします。
ただし、黙秘や否認をしたからといって、直ちに勾留されるわけではありません。
弁護士の適切なアドバイスを受けながら対応すれば、不当な勾留を回避できる可能性は十分あります。
痴漢の態様が悪質な場合
痴漢の態様が悪質な場合も、勾留される可能性が高くなります。
検察が勾留するかどうかを判断する際には、犯罪の重大性や再犯のおそれなども加味されるためです。
悪質な痴漢行為は常習性や計画性が疑われるため、釈放すると証拠隠滅・逃亡を図ったり、同様の犯罪を犯したりする可能性が高いと判断されやすくなります。
その結果、勾留によって身柄を拘束したうえで捜査を進める方針がとられるわけです。
たとえば、複数の女性をターゲットにして、身体に直接触れるような悪質な痴漢を何度も繰り返していたようなケースでは、基本的に勾留されるものと考えられます。
余罪があると疑われている場合
余罪があると疑われている場合も、勾留されやすくなります。
余罪の捜査には別途時間がかかるため、検察官が勾留請求をおこなうのも仕方のないことといえるかもしれません。
なお、勾留は人の自由を奪う重要な手続きであるため、勾留期間中に勾留状に記載されていない余罪の捜査をおこなうことは原則として禁止されています。
そのため、余罪が疑われる場合は、以下のようなケースでのみ例外的に捜査が認められています。
- ・本罪と同種の余罪がある場合
- ・本罪と余罪が関係している場合
- ・被疑者自身が余罪の取り調べを希望している場合
勾留はいつ決まる?痴漢で逮捕されたあとの流れ
次に、痴漢で逮捕されたあとの流れを詳しく解説します。
勾留が決まるタイミングが気になっている方は参考にしてみてください。
【痴漢で逮捕】今後の流れと不起訴を獲得する方法を弁護士が解説
警察による取り調べ
痴漢で逮捕されたあとは、警察による取り調べを受けなければなりません。
警察署の取調室に連行され、警察官からの質問に対して、応答もしくは黙秘することになります。
取り調べの内容は事案ごとに異なりますが、以下のような質問をされるケースが一般的です。
- ・事件当日の行動
- ・犯行の流れ
- ・周囲の状況
- ・犯行の動機
- ・被害者との関係性
そのほか、職歴や家族関係などプライベートな質問をされることもあります。
警察官による取り調べ時間は、1回あたり2~4時間程度です。
被疑者が犯行を認めている場合は2~3回で終了しますが、否認している場合は長期間にわたって繰り返されることもあります。
なお、取り調べで話した内容は、供述調書にまとめられ、裁判での重要な証拠になります。
取り調べ終了後には供述調書への署名を求められますが、安易に応じることはせず、内容に誤りや不足がある場合には必ず訂正を求めるようにしましょう。
自分自身で判断できないときは、弁護士との面会まで署名を拒否してください。
検察への送致(逮捕後48時間以内)
逮捕後は、48時間以内に検察へ送致されます。
送致とは、警察から検察に事件を引き継ぐ手続きのことです。
逮捕されている場合は、捜査資料とともに身柄が検察に引き渡されます。
なお、検察に送致するかどうかは警察が判断しますが、痴漢事件で逮捕されているようなケースでは、ほぼ確実に送致されるものと考えておきましょう。
送致を受けた検察は起訴・不起訴を判断するために、警察の捜査資料を精査したうえで、さらなる取り調べに着手します。
勾留請求(送致後24時間以内)
送致後、検察官は24時間以内に勾留請求するかどうかを決定します。
引き続き被疑者の身柄を拘束して捜査を進める必要があると判断した場合に、検察官が裁判官に対して勾留請求をおこないます。
とはいえ、刑事事件においては、ほとんどのケースで勾留請求がおこなわれています。
勾留質問
勾留請求後は、裁判官による勾留質問がおこなわれます。
勾留質問は、勾留の必要性を判断するために、裁判官が被疑者から直接話を聞く重要な手続きです。
勾留質問に際して、被疑者は裁判所に移送され、裁判官がいる個室に案内されます。
そして、被疑事実や勾留請求の理由などを説明され、自身の言い分を主張する機会を与えられます。
なお、裁判官の質問に対しては黙秘することも可能です。
最終的に、裁判官は勾留質問での受け答えや検察官から提出された資料などを踏まえ、勾留請求を認めるかどうかの判断をおこないます。
とはいえ、勾留請求はほとんどのケースで許可されているのが実情です。
勾留延長
10日間の勾留期間内に検察官の捜査が終わらない場合は、勾留延長がおこなわれます。
具体的には、検察官が裁判所に勾留延長を請求し、裁判官がその必要性を認めれば、最大10日間の延長が決定します。
つまり、もともとの勾留期間10日間と通算すると、最大20日間にわたる身柄拘束を受ける可能性があるのです。
被疑者にとって勾留延長はなんとしても回避したいところですが、実務上、多くの刑事事件では勾留延長がおこなわれています。
検察統計年報によれば、2023年に被疑者が勾留された事件のうち、約7割で勾留延長の手続きがとられています。
起訴・不起訴の決定
勾留期間中に捜査が進められ、最終的に検察官が起訴か不起訴かを判断します。
この時点で不起訴処分を獲得できれば、今後同じ罪で起訴される心配はなくなり、元の生活を取り戻すことが可能です。
一方、起訴された場合は裁判へ移行し、裁判官が有罪・無罪の判決を下すことになります。
起訴には、略式起訴と通常起訴があります。
略式起訴は軽微な事件に用いられ、書面審理のみで罰金刑を科す簡易的な手続きです。
通常起訴は、重大な事件や慎重な審理が必要な事件で用いられる手続きであり、公開の法廷で裁判が開かれることになります。
なお、多くの痴漢行為には、迷惑防止条例違反もしくは不同意わいせつ罪が適用されますが、不同意わいせつ罪になった場合はそもそも罰金刑がないので、略式起訴になることはありません。
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痴漢での勾留回避や早期釈放を目指す際のポイント
次に、痴漢での勾留回避や早期釈放を目指す際のポイントを解説します。
被害者との示談を成立させる
痴漢事件で勾留回避や早期釈放を目指す場合は、示談の成立が極めて重要です。
示談の成立は被害者と和解していることの証明でもあるので、検察官が「これ以上身柄拘束する必要はない」と判断する可能性が高くなります。
特に初犯で軽微な痴漢事件であれば、示談成立により勾留請求が見送られ、在宅事件に切り替わることも十分考えられるでしょう。
痴漢で逮捕された場合には、できるだけ早く弁護士に連絡し、示談成立に向けた交渉に着手してもらうことが大切です。
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早急に弁護士へ相談する
痴漢行為が発覚した場合は、早急に弁護士へ相談しましょう。
痴漢事件が得意な弁護士であれば、関係する法律や過去の判例などを参考にしながら、個々の状況に合わせた最善の対応策を提案・実行してくれます。
また、被害者との示談交渉や捜査機関への働きかけもおこなってくれるので、勾留回避や早期釈放の可能性は格段に高まるでしょう。
たとえば、勾留決定に対する準抗告や勾留取消請求などの法的手続きも、弁護士であれば迅速に進めることができます。
- ・準抗告:勾留決定の違法性を裁判所に訴える手続き
- ・勾留取消請求:勾留決定後の事情変更を理由に釈放を求める手続き
勾留の必要性がないことを弁護士から訴えてもらうことができれば、勾留回避・早期釈放に大きく近づきます。
ただし、時間が経てば経つほど弁護士の介入が難しくなるので、できるだけ早く相談・依頼することが重要です。
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痴漢の勾留に関するよくある質問
最後に、痴漢の勾留に関するよくある質問を紹介します。
同様の疑問を抱えている方は参考にしてみてください。
勾留期間中に外部と連絡はとれる?
勾留期間中でも、家族や知人などと面会することはできます。
ただし、時間や回数が制限され、警察官の立会いが必要になるなど、一定の条件が付される点には注意してください。
また、勾留中はスマートフォンなどの通信機器が回収されるため、自由に外部と連絡を取ることはできません。
手紙のやり取りも可能ですが、内容が検閲される可能性があることを念頭に置いておく必要があります。
なお、勾留期間中に接見禁止命令が出された場合には、弁護士以外との面会が一切できなくなります。
痴漢は何の罪で逮捕・勾留される?
痴漢が発覚した場合は、主に都道府県の迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪として逮捕・勾留されます。
迷惑防止条例違反は比較的軽微な痴漢行為に適用され、不同意わいせつ罪はより悪質な行為に適用されるケースが一般的といえるでしょう。
迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪の刑罰は、以下のとおりです。
- ・迷惑防止条例違反:原則6月以下の懲役または50万円以下の罰金、常習犯なら1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の場合)
- ・不同意わいせつ罪:6月以上10年以下の拘禁刑
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痴漢で逮捕されたあとに釈放されるタイミングは?
痴漢で逮捕されたあとに釈放されるタイミングは、以下のとおりです。
- ・逮捕後から検察官送致前での釈放
- ・送致後から勾留請求前での釈放
- ・勾留請求却下による釈放
- ・勾留決定後の準抗告容認による釈放
- ・勾留決定後の勾留取消請求容認による釈放
- ・勾留延長請求の却下による釈放
- ・不起訴処分による釈放
- ・処分保留による釈放
- ・起訴決定後の保釈による釈放
釈放のタイミングは何度も訪れますが、身柄拘束を受け、精神的にも不安定な状態で冷静に対処できるとは限りません。
少しでも早い釈放を望むのであれば、弁護士のサポートが必要不可欠です。
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痴漢で逮捕・勾留された家族のためにできることは?
家族が痴漢で逮捕・勾留された場合は、直ちに弁護士に連絡し、接見・弁護活動を依頼してください。
依頼を受けた弁護士はすぐさま接見をおこない、事件の詳細を把握したうえで、取り調べの対応方法などをアドバイスします。
また、被害者との示談交渉や捜査機関への働きかけにも早急に着手するので、早期釈放を実現できる可能性は格段に高まるはずです。
事件の詳細や捜査の進捗状況などを弁護士から共有してもらえる点も、家族にとっては大きなメリットに感じられるでしょう。
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痴漢事件を起こして逮捕された場合は、そのまま勾留される可能性が高いといえます。
勾留が決定すると、最長20日間にわたって身柄拘束を受けるので、仕事や学校生活に与える影響は計り知れません。
そのため、痴漢が発覚したときは、できるだけ早く弁護士に相談・依頼することが大切です。
痴漢事件が得意な弁護士であれば、その時々の状況に合わせて、できる限りの手立てを講じてくれるため、勾留回避・早期釈放の可能性が大幅に高まります。
実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数多くの痴漢事件を解決に導いてきました。
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