「痴漢して体液をかける行為は何の罪にあたるのか」
「体液をかけたことがバレるとどうなってしまうのか」
直接身体に触れるだけでなく、体液をかける行為も痴漢のひとつであり、犯罪です。
犯行の態様にもよりますが、暴行罪・器物破損罪・不同意わいせつ罪などの罪に問われる可能性があります。
そのため、体液をかける行為に及んでしまった場合には、速やかに弁護士へ相談し、今後の対応についてアドバイスを受けることが重要です。
本記事では、痴漢で体液をかける行為に適用される罪の種類について解説します。
逮捕の可能性や今後やるべきことなどについても記載しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
痴漢して体液をかける行為は何罪になる?
痴漢して体液をかける行為は、その態様によって適用される罪が変わってきます。
主に5つの罪に該当する可能性があるので、詳しく見ていきましょう。
暴行罪|身体に体液をかけた場合
痴漢行為で身体に体液をかけた場合、暴行罪に問われる可能性があります。
暴行罪は、他人の身体に対して不法な有形力を行使した場合に成立する罪です。
体液をかける行為も、相手に不快感や嫌悪感を与える「有形力の行使」と解釈され、暴行罪の成立要件を満たすことがあります。
たとえば、電車内で自慰行為をおこない、女性の手や足に精液をかけた場合は、相手が傷害を負っていなくても暴行罪が成立します。
暴行罪の刑罰は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは料料」です。
器物損壊罪|服や持ち物に体液をかけた場合
服や持ち物に体液をかけた場合は、器物損壊罪に問われる可能性があります。
器物損壊罪は、他人の物を損壊したり、使用不能にしたりした場合に成立する犯罪です。
物理的な破壊だけでなく、物の効用を著しく損なわせる行為も含まれるため、体液をかける行為も器物損壊罪の構成要件を満たすと考えられます。
具体的には、電車内で女性のスカートやバッグに精液をかけるケースなどが挙げられるでしょう。
器物破損罪の刑罰は、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。
なお、器物損壊罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴されません。
不同意わいせつ罪|わいせつな性的意図があった場合
わいせつな性的意図で体液をかけた場合は、不同意わいせつ罪に問われるおそれがあります。
不同意わいせつ罪は、被害者の同意なくわいせつな行為をおこなった場合に成立する罪です。
「わいせつな行為」にあたるかどうかは、行為の性質や状況、社会通念などを総合的に考慮して判断されますが、体液をかける行為が該当する可能性は十分あります。
たとえば、電車内で女性の身体に精液をかけた場合、その行為自体が強い性的意味を持つと解釈されると、不同意わいせつ罪の罪に問われるかもしれません。
不同意わいせつ罪の刑罰は、「6か月以上10年以下の懲役」です。
罰金刑が規定されておらず、比較的重たい刑罰になっている点に注意しておきましょう。
不同意わいせつ罪となる痴漢とは?迷惑防止条例との違いも解説
迷惑防止条例違反|卑猥な言動にあたると判断された場合
体液をかける行為が卑猥な言動と判断された場合、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
迷惑防止条例は、公共の場所での迷惑行為を規制するために、各都道府県が制定しているものです。
たとえば、電車や路上などで他人に体液をかけたことが、相手を著しく羞恥させたり、不安を覚えさせたりする言動にあたると判断された場合は、迷惑防止条例違反として検挙されるおそれがあります。
迷惑防止条例の刑罰は都道府県によって異なり、東京都であれば「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。
常習性がある場合には、より重い罰則が科されることもあります。
痴漢は迷惑防止条例違反?不同意わいせつ罪との違いや示談を解説
公然わいせつ罪|体液をかける際に陰部を露出した場合
体液をかける際に陰部を露出した場合、公然わいせつ罪に問われるおそれがあります。
公然わいせつ罪は、公衆の面前でわいせつな行為をした場合に成立する罪です。
陰部の露出は、一般的に「わいせつな行為」と判断される典型例といえるでしょう。
さらに、体液をかける行為をともなうことで、より強い性的意図が推認され、公然わいせつ罪となる可能性が高まります。
公然わいせつ罪の刑罰は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。
痴漢で体液をかけると逮捕される可能性がある
痴漢行為で体液をかけたうえで以下の要件を満たしている場合は、逮捕される可能性があります。
まず考えられるのは、体液をかけたところを目撃され、駆け付けた警察官に逮捕されるケースです。
そのまま警察署に連行され、身柄拘束を受けることになります。
また、体液をかける行為を誰にも見られず、その場をやり過ごしたあとで、後日逮捕されるケースも少なくありません。
体液をかけられたことに気づいた被害者が警察に通報し、防犯カメラの映像やDNA鑑定などで加害者の特定に至るパターンです。
実際に事件から数か月以上経過したあとに逮捕される事例もあるので、加害者となった場合には、ただ時間が過ぎるのを待つのではなく、速やかに弁護士へ相談してください。
痴漢で体液をかけて逮捕された事例
次に、痴漢で体液をかけて逮捕された事例を3つ紹介します。
駅構内で女性のバッグに体液をかけた逮捕された事例
駅構内で女性のバッグに体液をかけて逮捕された20代男性の事例です。
容疑者は2月25日午後11時ごろ、駅構内で20代女性の手提げバッグに自分の体液をかけた疑いがある。防犯カメラの映像などから判明した。駅の周辺では同様の被害がほかにも確認されており、関連を調べる。 |
(引用:朝日新聞デジタル)
体液をかけたのが女性の持ち物であったため、加害者は器物損壊罪に問われました。
なお、加害者は警察官であり、公共性の高い身分であったことから、氏名・年齢・勤務先なども報道されています。
電車で女性の下半身を触り、制服に体液をかけて逮捕
電車で女性の下半身を触ったうえに、制服に体液をかけて逮捕された30代男性の事例です。
容疑者は東京メトロ東西線の駅の構内で女性を物色し、通学途中だった10代の女子高生Aさんを発見。後をつけて満員の東西線に乗ると、Aさんの後ろに立ち身体を密着させ約7分にわたり尻を触ったとされます。さらにAさんの制服に体液を付着させたとか。 |
(引用:Yahoo!ニュース)
本件において、加害者は不同意わいせつと器物破損の疑いで逮捕されています。
痴漢の態様によっては、複数の罪が成立することも理解しておかなければなりません。
電車で女性の足に体液をかけて逮捕された事例
電車で女性の足に体液をかけて逮捕された40代男性の事例です。
容疑者は4月14日午前8時ごろ、名鉄名古屋駅から知立駅に向かう電車内で、乗客の女性(21)の右足甲に体液をかけた疑いが持たれている。女性のストッキングに付着した体液を調べたところ、同容疑者が捜査線上に浮上した |
(引用:東スポWEB)
女性の身体に直接体液をかけていることから、加害者は暴行罪の疑いで逮捕されています。
警察が女性の体液を調べたところ、加害者の存在が浮上し、後日逮捕に至ったとのことです。
痴漢で体液をかけて逮捕されたあとの流れ
次に、痴漢で体液をかけて逮捕されたあとの流れを詳しく見ていきましょう。
痴漢で体液をかけて逮捕されたあとは、警察署の留置所に連行され、48時間以内に検察に送致されます。
その後は24時間以内に勾留が決定し、原則10日間、最長20日間の身柄拘束を受けることになります。
勾留期間中は検察官による取り調べが進められ、最終的に起訴・不起訴の判断がおこなわれます。
不起訴処分となれば釈放され、通常の生活に戻ることが可能です。
一方、起訴された場合は刑事裁判が開かれ、有罪・無罪の判決が下されます。
とはいえ、日本の刑事裁判における起訴後の有罪率は99%以上です。
起訴されるとほぼ確実に有罪となるので、痴漢で逮捕された場合は不起訴処分を目指すことが重要になります。
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痴漢で体液をかけてしまった場合にやるべきこと
次に、痴漢で体液をかけてしまった場合にやるべきことを解説します。
事件直後の対応次第で、その後の処遇は大きく変わるため、迅速な行動を心掛けましょう。
被害者との示談を成立させる
痴漢で体液をかけてしまった場合、可能であれば、被害者との示談を急ぎましょう。
示談のなかで適切な被害弁償をおこなえば、被害者の処罰感情が和らぎ、被害届や告訴状の提出を踏みとどまってもらえることがあります。
また、示談を成立させるもうひとつのメリットは、捜査機関に対して被害者と和解していることを示せることです。
その結果、警察が逮捕に乗り出したり、検察が起訴の判断を下したりする可能性を大幅に抑えられます。
ただし、加害者が被害者と直接示談交渉を進めるのは現実的ではありません。
ほとんどのケースでは連絡先さえわからないうえ、たとえ接触できても、まともに対応してくれるとは考えにくいです。
そのため、示談を進める際は弁護士に依頼し、すべての手続きを任せるようにしてください。
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自首を検討する
痴漢で体液をかけてしまった場合は、自首することも検討してください。
自ら警察に出頭することで、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断され、逮捕を回避できる可能性が高まります。
自首して反省の態度を示せば、検察官が「あえて刑罰に処する必要はない」と判断し、不起訴処分になることも十分あり得ます。
ただし、黙っていれば隠し通せていたかもしれない犯罪行為が明るみになるため、自首は加害者にとってリスクのある選択といえるでしょう。
また、自首後の取り調べに対する受け答えを誤れば、大きな不利益を受けるおそれもあります。
そのため、自首を検討する場合には、まず弁護士に相談し、今後の流れについてアドバイスを受けることが大切です。
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できるだけ早く弁護士に相談する
痴漢事件を起こしたときは、できるだけ早く弁護士に相談してください。
痴漢事件を得意とする弁護士であれば、関係法律や過去の判例などをもとに、個々の状況に合わせた最善の対応策を提案してくれるはずです。
また、被害者との示談交渉や捜査機関への働きかけも速やかに進めてくれるため、逮捕回避や不起訴処分の獲得につながる可能性が高くなります。
なにより、犯罪を犯してしまい不安や焦りを抱えているなか、弁護士のサポートは大きな心の支えとなるはずです。
時間が経てば経つほど、加害者は不利な状況に追い込まれてしまうので、少しでも早く弁護士に相談することをおすすめします。
痴漢で体液をかける行為に関するよくある質問
最後に、痴漢で体液をかける行為に関するよくある質問を紹介します。
疑問が解消されると不安も少しは和らぐはずなので、ぜひ参考にしてみてください。
体液をDNA鑑定されて捕まることはある?
痴漢で体液をかけてしまった場合、前科があるとDNA検査で特定され、検挙される可能性があります。
前科がある人のDNAプロファイルは、警察のデータベースに登録されていることがあるためです。
体液に含まれるDNAと、データベースに登録されたDNAプロファイルを照合すれば、加害者は容易に特定されてしまいます。
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唾液をかけた場合も犯罪になる?
痴漢行為の一環として唾液をかけた場合も、犯罪として処罰される可能性が高いといえるでしょう。
たとえば、電車で前に立っている女性の身体に直接唾液をかけた場合は暴行罪、バッグなどの持ち物にかけた場合は器物損壊罪に問われるおそれがあります。
そのほか尿をかける行為なども、当然処罰の対象です。
痴漢事件を起こしてしまった場合はグラディアトル法律事務所に相談を
痴漢で体液をかけてしまった場合には、暴行罪・器物損壊罪・不同意わいせつ罪などの罪に問われるおそれがあります。
痴漢の態様次第では、懲役を含め、重たい刑罰に処される可能性も否定できません。
そのため、痴漢事件を起こしたときは、できるだけ早く弁護士に相談してください。
弁護士が被害者との示談を成立させたり、捜査機関への働きかけをおこなったりすることで、不起訴や減刑に大きく近づきます。
実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数々の痴漢事件を解決に導いてきました。
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