痴漢をしたら裁判になる?痴漢裁判の流れと裁判を回避する方法を解説

痴漢をしたら裁判になる?痴漢裁判の流れと裁判を回避する方法を解説
弁護士 若林翔
2024年08月30日更新

「痴漢をしたら裁判になるって本当?」

「痴漢で裁判になる可能性の高いケースを知りたい」

「痴漢事件で裁判を回避するにはどうしたらいいの?」

痴漢は犯罪ですので、痴漢をして検察官に起訴されると刑事裁判により有罪・無罪の審理が行われます。

刑事裁判で有罪になれば、痴漢の前科が付いてしまいますので、その後の生活にも多大な影響が生じてしまうでしょう。

また、痴漢の裁判には刑事裁判以外にも民事裁判もありますので、痴漢被害者から慰謝料などの損害賠償請求をされる可能性があります。

このような痴漢の裁判は、被害者との示談により回避可能ですので、早めに示談を成立させることが重要です。

本記事では、

・痴漢で刑事裁判になる可能性の高い4つのケース

・痴漢事件の刑事裁判の流れ

・痴漢事件で裁判を回避するための対処法

などについてわかりやすく解説します。

痴漢事件の示談には弁護士のサポートが必要になりますので、痴漢をしてしまったという方は、一刻も早く弁護士に相談するようにしましょう。

痴漢の裁判には刑事と民事の2種類がある

痴漢の裁判には刑事と民事の2種類がある

痴漢の裁判には、「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類があります。

刑事裁判とは、罪を犯したと疑われる人について、有罪・無罪の審理を行い、有罪である場合にはどのような刑罰を科すのかを決める手続きです。

民事裁判とは、当事者間のトラブルを解決するための手続きで、痴漢事件では主に慰謝料請求という形で民事裁判が行われます。

痴漢で刑事裁判になる可能性の高い4つのケース

痴漢で刑事裁判になる可能性の高い4つのケース

痴漢事件の刑事裁判には、後述するように略式手続きと公判手続きの2種類があります。略式手続きは、書面の審理のみで罰金・科料を言い渡す特別な手続きですが、略式手続きを利用するには一定の条件を満たす必要があります。

以下の4つのケースに該当する場合には、略式手続きではなく公判手続きになる可能性が高いでしょう。

前科前歴がある

迷惑防止条例違反の痴漢であれば、初犯だと罰金刑で終わるケースが多いため、略式手続きが選択されるケースが多いです。

しかし、前科前歴がある場合には、罰金刑が不相当と判断され、公判手続きになる可能性が高いでしょう。特に、痴漢の前科前歴がある場合には、再犯のおそれが高く、更生の可能性が低いため厳格に処罰するために公判手続きで懲役刑になる可能性があります。

悪質性が高い

痴漢で成立する犯罪には、迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪の2種類があります。

痴漢行為の中でも衣服の中に手を差し入れ、直接身体を触るような悪質性の高い行為は、不同意わいせつ罪で処罰される可能性があります。不同意わいせつ罪には、罰金刑が定められていませんので、略式手続きではなく公判手続きが選択されます。

被害者の処罰感情が強い

検察官が略式手続きか公判手続きかを選択する際には、被害者の処罰感情も考慮にいれて判断することになります。

被害者の処罰感情が強い事案については、簡略な手続きでは批判があるため、通常の公判手続きにより処理されるケースが多いです。

痴漢を否認している

略式手続きを利用するには、被疑者の同意が必要になりますので、被疑者が痴漢を否認している場合には、略式手続きではなく公判手続きが利用されます。

被疑者としては、公判手続きで無実を争っていくことになりますが、検察官により起訴された事件は、99%以上の割合で有罪になっていますので無罪判決を獲得するのは容易ではありません。

痴漢事件の刑事裁判の流れ①|略式手続き

以下では、痴漢事件の刑事裁判のうち「略式手続き」の流れについて説明します。

痴漢事件の刑事裁判の流れ略式手続き

検察官による略式手続きの説明

検察官は、略式手続きが相当と判断すると、被疑者に対して、略式手続きに関する説明が行われます。その際、検察官は被疑者に対して、正式裁判による審理を受けることができる旨を告げなければなりません。

被疑者による略式手続きへの同意

略式手続きを利用するには、被疑者の同意が必要になります。

略式手続きに同意する場合には、検察官から差し出された同意書に署名・押印を行います。口頭での同意では足りませんので、必ず書面で同意しなければなりません。

略式起訴

被疑者から略式手続きの同意が得られると検察官は、簡易裁判所に略式起訴を行います。略式起訴の際には、被害者から提出された同意書を添付しなければなりません。

裁判所による略式命令

裁判所は、検察官から提出された書面に基づいて審査を行い、以下のいずれにも該当しない場合には、略式命令により罰金または科料の言い渡しを行います。

・事件が略式命令をすることができない

・事件が略式命令をすることが相当でない

・検察官が略式命令請求に関する手続きに違反した

罰金の納付

略式命令の告知日から2週間が経過すると略式命令が確定しますので、被告人は、略式命令で定められた罰金または科料を納付します。

逮捕・勾留されている状況での略式命令では、当日に罰金を納付するケースも多いです。

痴漢事件の刑事裁判の流れ②|公判手続

痴漢事件の刑事裁判の流れ公判手続

以下に裁判手続きの流れを簡潔にまとめた表を作成しました。

手続き内容
公判請求検察官が証拠に基づき起訴状を提出し、訴追が必要と判断した場合に起訴する。
冒頭手続き人定質問、起訴状の朗読、黙秘権の告知、罪状認否などが行われる。
証拠調べ手続検察官や弁護人による証拠調べの請求・決定、証拠の取り調べ(証人尋問、書類の朗読、物の展示)が行われる。
弁論手続検察官の論告・求刑、弁護人の弁論、被告人の最終陳述が行われる。
判決裁判官が最終的な判決を言い渡す。

この表は、各手続きの主要な内容を簡潔に示しています。

以下では、痴漢事件の刑事裁判のうち「公判手続き」の流れについて説明します。

検察官による公判請求

検察官は、被疑者が罪を犯したことが証拠上明白であり、訴追が必要であると判断する場合、裁判所に起訴状を提出して起訴します。

なお、嫌疑が十分であっても、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状などの事情を踏まえて、あえて起訴する必要がないと考えるときには起訴しないこともあります(起訴猶予)。

冒頭手続き

冒頭手続きでは、以下のような内容が行われます。

【人定質問】

裁判官が被告人の人違いの有無を確かめるために、被告人に対して、以下のような内容を尋ねます。

・氏名

・本籍

・住所

・職業

・年齢

【起訴状の朗読】

検察官は、起訴状を朗読することで審理の対象となる事実の確認を行います。

【権利の告知】

検察官による起訴状の朗読が終わると、裁判官から被告人に対して、黙秘権に関する告知がなされます。被告人には、黙秘権がありますので、終始沈黙していたとしてもそのことを理由に不利な処分をされることはありません。

【被告事件についての陳述】

冒頭手続きの最後に、裁判官から被告人および弁護人に対して、被告事件についての陳述の機会が与えられます(罪状認否)。被告人および弁護人は、起訴状に記載された事実を認めるのか否認するのかを明らかにします。

証拠調べ手続

証拠調べ手続きでは、以下のような内容が行われます。

【冒頭陳述】

検察官は、犯行に至る経緯、犯行状況、被害結果など、これから証拠により証明すべき事実を明らかにします。

【証拠調べの請求および決定】

検察官または弁護人は、裁判官に対して証拠調べの請求を行い、相手方は、それに対して意見(同意、不同意、必要性なし、しかるべくなど)を述べます。裁判官は、当事者の意見を踏まえた上で、検察官または弁護人が請求した証拠を取り調べるかどうかを決定します。

【証拠の取り調べ】

裁判官が証拠調べを決定した証拠については、証拠の取り調べが行われます。証拠には、証人、証拠書類、証拠物の3種類があり、それぞれの種類に応じて、以下のように取り調べ方法が決められています。

・証人……尋問

・証拠書類……朗読または要旨の告知

・証拠物……展示

弁論手続

弁論手続きでは、以下のような内容が行われます。

【検察官による論告・求刑】

検察官は、証拠調べの結果を踏まえて最終的な主張(論告)を行い、具体的にどのような刑を求めるのかを明らかにします(求刑)。

【弁護人による弁論】

弁護人は、証拠調べの結果を踏まえて最終的な主張(弁論)を行い、被告人に対してどのような刑が相当であるかの意見を述べます。

【被告人の最終陳述】

審理の最後に被告人にも意見を述べる機会が与えられます。罪を認めているのであれば反省の弁を述べたりします。

判決

すべての審理が終了すると結審となり、最終的に裁判官が判決を言い渡します。

痴漢の刑事事件で示談が成立しないと民事裁判になる可能性あり!

痴漢の刑事事件で示談が成立しないと民事裁判になる可能性あり!

痴漢行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当しますので、痴漢の犯人は、被害者に生じた損害を賠償する義務があります。刑事裁判により刑罰が科されたとしても、被害者に生じた被害が回復されるわけではありませんので、刑事裁判とは別途、民事事件についても対応していかなければなりません。

痴漢により精神的苦痛を被った被害者は、犯人に対して、慰謝料請求を行います。その際、犯人が真摯に対応しなかったり、慰謝料の支払いを拒否すると交渉ではなく民事裁判により慰謝料の支払いを求めてきます。民事裁判で慰謝料の支払いを命じる判決が確定すると、強制執行が可能になりますので、支払いを拒否していても財産の差し押さえなどにより強制的に慰謝料の回収が行われます。

なお、痴漢の刑事事件において被害者と示談を成立させることができれば、民事裁判に発展するのを防ぐことが可能です。

痴漢事件で裁判を回避するには被害者との示談が重要

痴漢をしてしまうと、刑事裁判だけでなく民事裁判にまで発展する可能性があります。このような裁判のリスクを回避するには被害者との示談が重要になります。

被害者との間で示談が成立していれば、処罰感情がなくなったものとして検察官が不起訴処分にする可能性が高くなります。また、被害者との示談が成立することで、被害者に生じた損害は回復済みとなりますので、民事裁判に発展するリスクも回避することができます。

このように痴漢事件では、被害者との示談を成立させることが重要になりますが、それには弁護士のサポートが不可欠になります。

なぜなら、痴漢事件は、性犯罪という性質上、加害者本人が被害者と接触するのは困難だからです。弁護士であれば加害者に代わって示談交渉を行ことができますので、被害者としても安心して交渉を行うことができるでしょう。

なお、痴漢事件の示談金に関する詳細については、以下の記事をご参照ください。

痴漢の裁判を回避したいならすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

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痴漢の裁判を回避したいなら、すぐにグラディアトル法律事務所にご相談ください。

示談交渉により不起訴処分を獲得できる可能性が高まる

痴漢の裁判を回避するには被害者との示談が重要となります。早期に被害者との示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得し、民事上の賠償問題も解決することができます。

グラディアトル法律事務所では、痴漢事件に関する豊富な実績と経験があり、痴漢事件の示談交渉を得意としています。処罰感情が強く示談交渉が難航するケースでも示談を成立させたケースが多数ありますので、安心してお任せください。

早期の身柄解放を実現できる

痴漢により逮捕・勾留されると最大で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。その間は、警察署内の留置施設で生活しなければならず、肉体的・精神的な負担だけでなく、仕事や家庭にも支障が生じてしまいます。

グラディアトル法律事務所にご依頼いただければ、早期に弁護活動に着手し、被害者との示談を成立させるなどの方法で早期の身柄解放を実現することができます。24時間365日相談を受け付けており、いつでも迅速に対応できる体制を整えておりますので、まずは当事務所までご相談ください。

なお、痴漢事件を弁護士に依頼するメリットについては、こちらの記事をご参照ください。

まとめ

痴漢をすると刑事裁判により処罰されるだけでなく、民事裁判により慰謝料の請求をされる可能性があります。このような裁判のリスクを回避するには、被害者との間で示談を成立させることが重要です。

痴漢の裁判を回避したいとお考えの方は、痴漢事件の弁護に強いグラディアトル法律事務所にお任せください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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