「痴漢には時効があるの?」
「どのくらい経てば時効により処罰されなくなる?」
「痴漢をしたら時効になるまで待てばよいの?」
痴漢行為をしてしまったとしても、一定期間が経過すると時効により刑事事件として起訴されることはなくなります。
警察庁が公表している痴漢(迷惑防止条例違反)の検挙状況に関する統計資料によると、2022年の痴漢の検挙件数は2233件で、前年よりも302件も増加しています。
上記の検挙件数からも明らかなように、痴漢をして逃げ切るのは非常に困難ですので、時効を待つのではなく被害者と示談をするなど適切な対処をすることが必要といえるでしょう
本記事では、
・痴漢の刑事上の時効
・痴漢の民事上の時効
・痴漢をしてしまったときの対処法
などについてわかりやすく解説します。
痴漢により逮捕・起訴されてしまうとさまざまな不利益が生じますので、早めに示談に向けた対応を進めることが重要です。
目次
痴漢の時効には2種類ある
時効とは、一定期間が経過することにより法的な責任追及や権利行使ができなくなる制度をいいます。痴漢の時効には、「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2つがありますので、両者を区別してしっかりと理解しておくことが大切です。
刑事上の時効とは、検察官が起訴することができる期限をいいます。刑事上の時効が経過すると検察官は、事件を起訴することができなくなりますので、痴漢で処罰されることはありません。
民事上の時効とは、被害者による損害賠償請求の期限をいいます。民事上の時効が経過すると痴漢被害者の損害賠償請求権が消滅しますので、痴漢で慰謝料の支払いをする必要がなくなります。
痴漢の刑事上の時効|公訴時効
痴漢の刑事上の時効のことを「公訴時効」といいます。以下では、痴漢の公訴時効について詳しくみていきましょう。
公訴時効とは
公訴時効とは、犯罪が終わった時点から一定期間を経過すると、犯人を処罰できなくなる制度です。犯人を処罰するためには、検察官が起訴をして刑事裁判を行う必要がありますが、公訴時効が経過すると、検察官が起訴することができなくなります。つまり、公訴時効が経過すれば過去の痴漢で処罰されることはありません。
このような公訴時効は、長期間の経過により証拠が散逸して、公正な裁判が困難になることや事件の社会的影響力が弱まることなどの理由で設けられた制度になります。
痴漢の公訴時効は3年または12年
痴漢をした場合に成立する犯罪としては、不同意わいせつ罪と迷惑防止条例違反の2つが考えられます。痴漢の公訴時効期間は、成立する罪によって以下のように異なる期間が定められています。
痴漢で成立する犯罪の種類 | 公訴時効期間 |
---|---|
不同意わいせつ罪 | 痴漢をした日から12年 |
迷惑防止条例違反 | 痴漢をした日から3年 |
痴漢がどちらの犯罪に該当するかは、主に痴漢行為の態様などから事件ごとに個別に判断されます。たとえば、服の上から下半身を触るなどの軽微な痴漢行為であれば迷惑防止条例違反となる可能性が高く、下着の中に手を入れて身体を触るような悪質な痴漢行為になると不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
このように痴漢で成立する罪の種類によって、公訴時効期間は大きく異なりますので、どちらの罪が成立するかが重要なポイントとなります。
なお、痴漢をしたときに成立する罪の種類については、こちらの記事をご参照ください。
痴漢は何罪に問われる?痴漢の態様ごとに適用される刑罰を解説
痴漢の公訴時効はいつから進行する?
公訴時効の起算点は、「犯罪行為が終わった時点」が基準になります。
痴漢の場合、痴漢行為をした日が公訴時間の起算点になりますので、痴漢をした日から3年または12年が経過すると公訴時効成立となります。
被害者により被害届が提出された時点や警察が捜査を開始した時点が起算点になるわけではありませんので注意が必要です。
痴漢の公訴時効は停止することがある
痴漢の公訴時効は、一定の事由が生じた場合、その事由が生じている間は時効期間の進行がストップしますので、時効が完成することはありません。このような公訴時効の停止事由には、以下のものがあります。
・公訴の提起
・共犯者に対する公訴の提起
・加害者が国外にいる場合
・加害者が逃げ隠れをしていて有効に起訴状の送達や略式命令の告知ができない場合
たとえば、痴漢をした犯人が犯行後すぐに国外逃亡をしたとしても、公訴時効はいつまで経っても完成しませんので、帰国したタイミングで逮捕されてしまう可能性もあるでしょう。
痴漢の民事上の時効|消滅時効
痴漢の民事上の時効のことを「消滅時効」といいます。以下では、痴漢の消滅時効について詳しくみていきましょう。
消滅時効とは
消滅時効とは、権利者による権利行使が一定期間ない場合に、その権利を消滅させることができる制度です。痴漢は、民法上の不法行為に該当しますので、被害者は、痴漢行為により被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。
痴漢行為をした加害者は、被害者から慰謝料などの損害賠償請求をされた場合、その支払いをしなければなりません。しかし、消滅時効期間が経過して、加害者から時効の援用がされると被害者の有する損害賠償請求権は時効により消滅しますので、加害者は、賠償金の支払いを免れることができます。
痴漢の消滅時効は3年・5年・20年
痴漢は、民法上の不法行為に該当しますので、痴漢の時効は、不法行為の消滅時効期間が適用されます。不法行為の消滅時効期間は、以下のように定められています。
不法行為の種類 | 消滅時効期間 |
---|---|
通常の不法行為 | 3年 |
人の生命または身体を害する不法行為 | 5年 |
一般的な痴漢行為であれば消滅時効期間は、3年となりますが、痴漢行為に伴い被害者に怪我をさせてしまったような場合には、5年の消滅時効期間が適用されます。
なお、不法行為には、20年という除斥期間も定められていますので、痴漢行為から20年が経過したときも損害賠償請求権は消滅します。
痴漢の消滅時効はいつから進行する?
刑事上の時効は、痴漢行為時から進行しましたが、民事上の時効は、被害者が損害および加害者を知ったときから進行します。
たとえば、電車内での痴漢で当事者同士面識がない場合には、痴漢の被害者は、加害者が誰であるかがわかりません。そのため、痴漢行為があった日には消滅時効は進行せず、その後犯人が特定された時点から時効がスタートします。
このように痴漢の消滅時効は、犯人が誰であるか判明していない場合には、いつまで経っても時効が進行しません。逃げ回っていたとしても賠償請求を免れることはできませんので注意が必要です。
ただし、痴漢行為から20年が経過したら除斥期間により権利が消滅しますので、これについては、被害者の認識は関係ありません。
痴漢の消滅時効はストップまたはリセットされることがある
痴漢の消滅時効は、一定の事由がある場合には、消滅時効期間の進行がストップ(時効の完成猶予)またはリセット(時効の更新)することがあります。このような時効の完成を阻止する事由としては、以下のものが挙げられます。
【時効の完成猶予事由】
・裁判上の請求(事由終了まで完成猶予)
・強制執行(事由終了まで完成猶予)
・仮差押え(事由終了から6か月間の完成猶予)
・協議を行う旨の合意(催告後6か月間の完成猶予)
・催告
【時効の更新】
・裁判上の請求(権利の確定により更新)
・強制執行(事由終了により更新)
・承認
痴漢事件で時効を待つのは得策ではない!
痴漢行為をしてしまったら、時効を待つのではなく、被害者との示談を成立させることが重要です。
痴漢現場から逃げきれたとしても後日逮捕の可能性がある
痴漢には、刑事上の時効と民事上の時効がありますので、一定期間逃げ切ることができれば、処罰されることも、慰謝料の支払いを求められることもなくなります。しかし、実際には時効期間経過まで逃げ切るのは困難です。
痴漢現場から逃げきれたとしても、防犯カメラの映像や交通系ICカードの履歴などから犯人が特定され、後日逮捕となる可能性もありますので、時効待ちをして逃げ切ろうとするのは得策ではありません。
痴漢事件というのは被害者の処罰感情の強い犯罪ですので、被害者が諦めてくれるというのはあまり期待できません。逮捕や起訴のリスクを少しでも減らすためにも、時効待ちではなく、適切な対応が必要となります。
被害者との示談により逮捕や前科を回避できる
痴漢による逮捕や起訴のリスクを回避するには、被害者との示談が重要になります。
痴漢は、非親告罪といって被害者の告訴がなかったとしても処罰される可能性がありますが、被害者との間で示談が成立しているという事情は、逮捕や起訴をするにあたって重要な考慮要素となります。当事者間で解決している事件をあえて捜査機関が掘り起こすようなことはしませんので、示談が成立すれば逮捕や起訴を回避できる可能性が非常に高くなります。
そのため、時効待ちで何も対応しないのではなく、早期に被害者との間で示談を成立させるようにしましょう。
痴漢事件は時効を待つのではなくグラディアトル法律事務所に相談を
痴漢行為をしてしまったという方は、そのまま逃げ切ろうと考えるのではなく、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。
被害者との示談交渉をサポートできる
痴漢事件では被害者との示談交渉が重要になりますが、加害者自身で示談交渉をするのは得策ではありません。性被害を受けた被害者は、加害者と接触すること自体に恐怖や嫌悪感を抱いていますので、加害者自身で交渉をしてもうまく進まないケースが多いといえます。
このような場合は弁護士に示談交渉を任せるのがおすすめです。弁護士が窓口になって対応すれば被害者としても安心して示談交渉に応じることができます。
グラディアトル法律事務所では、痴漢事件をはじめとした刑事事件に関する豊富な経験と実績がありますので、被害者との示談交渉も適切に対応することができます。被害者の連絡先がわからない事案でも捜査機関を通じて被害者と連絡をとることもできますので、まずは当事務所までご相談ください。
24時間365日全国対応可能
刑事事件では、スピード感とフットワークが重要です。迅速に対応することで刑事事件として立件される前に解決することができたり、逮捕や起訴といった不利益な処分を回避できる可能性が高くなります。
グラディアトル法律事務所では、24時間365日受付をしておりますので、休日や夜間であってもいつでも相談の予約をすることができます。また、全国対応を行っておりますので、どの地域にお住いの方でも対応可能です。迅速な対応を希望される方は、まずは当事務所までご相談ください。
まとめ
痴漢には、刑事上の時効と民事上の時効があります。時効期間が経過すれば痴漢事件として処罰されることがなくなり、被害者からも慰謝料を請求されるおそれはありません。
しかし、時効期間が経過するまで逃げ切るのは至難の業ですので、時効待ちの方針ではなく被害者と示談をして事件を解決する方法を検討すべきでしょう。
痴漢事件の被害者との示談交渉をお考えの方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。