「また痴漢してしまった」
「今度こそ逮捕されるのでは?と不安で仕方がない」
「痴漢の再犯で逮捕されると、刑は重くなるの?」
こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
痴漢の再犯で有罪が確定すると、刑は「最大2倍」に重くなります。
例えば「不同意わいせつ罪」で起訴されると、「懲役10年以下」から「懲役20年以下」にまで加重されてしまうのです。
ただし、刑法上の「再犯(累犯)」は、おそらくあなたが想像している再犯と少し異なります。
なぜなら、刑法で再犯(累犯)加重がされるのは、次の3つの要件を満たした場合だからです。
とはいえ、再犯(累犯)加重されなかった場合も、痴漢の前科があるという事実は、「起訴・不起訴」「刑の重さ」などを決める際に考慮されます。
痴漢の再犯で、不起訴を目指すなら、速やかに弁護士に相談して、刑事処分を軽くするための行動を起こしましょう。
本記事では、次の点を取り上げました。
【この記事を読んで分かること】
・痴漢の再犯率や再犯までの期間 ・再犯するとどうなるのかのケース別解説 ・不起訴を目指すためにするべきこと ・2度目の痴漢で、執行猶予になった事例 |
痴漢の再犯でお悩みの方は、是非ご一読ください。
目次
痴漢の再犯率は高い|40%以上というデータも
痴漢は、性犯罪の中でも最も再犯率が高い犯罪の一つです。
法務省が平成27年に実施した調査によれば、痴漢の再犯率は44.7%にも上ります。
(※裁判確定日から、5年経過時点における再犯の有無)
全再犯率は,痴漢型が最も高く,次いで,盗撮型,小児わいせつ型,強制わいせつ型,小児強姦型,単独強姦型の順となっており,集団強姦型が最も低かった。性犯罪再犯率に限っても同様の傾向が認められた。 (引用:平成27年版 犯罪白書|法務省) |
さらに、痴漢は、再犯に至るまでの期間も非常に短い犯罪です。
同じ調査によれば、約半数の者が「290日経過時点」で性犯罪の再犯に及んでいるという結果が出ているのです。
痴漢は再犯のリスクが非常に高い犯罪だと言えるでしょう。
痴漢の再犯(累犯)とは?加重の要件
痴漢が再犯(累犯)の場合、刑は最大2倍にまで重くなります。
※刑法 第57条(再犯加重) 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。 |
再犯と聞くと、多くの人が「痴漢の前科がある人が、再び痴漢に及ぶこと」をイメージするでしょう。しかし、ここでいう「再犯(累犯)」は、おそらくあなたがイメージしている再犯とは異なります。
なぜなら、刑法上の再犯(累犯)の定義は、かなり限定されているからです。
刑法上の再犯は、次のように定義されています。
※刑法 第56条(再犯) 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。 |
具体的には、次の3つの要件を満たしていることが必要です。
過去に痴漢で有罪判決となっていても、罰金だったり、執行猶予だったりするケースでは、再犯(累犯)としては扱われません。
再犯(累犯)加重にならなくても、量刑事実上は影響する
法律上の「再犯(累犯)」に該当しなくても、過去に痴漢をした前科があるという事実は、実際に罪の重さを決める量刑上は大きな影響を与えます。
あなたが痴漢を繰り返している程、「反省をしていない」「常習性が高い」「より重い処罰が必要」と判断されやすくなるからです。
警察や検察には、あなたが痴漢で逮捕された記録(前歴)が残っています。
仮に、前回の痴漢が刑事裁判には至っていなかったとしても、逮捕・起訴されるリスクが高くなるのです。
2回目以降の痴漢で、逮捕・起訴を防ぎたいのであれば、初犯とは異なる対応が必要です。
被害者との示談はもちろん、どうすれば再犯を防止できるのか、しっかりと向き合って考えなければなりません。
あなた1人では難しい場合もあるので、ご家族にも協力してもらいましょう。
痴漢で再犯するとどうなる?|ケース別に解説
痴漢で再犯した場合、過去の処分内容によって、扱いが異なります。
ここでは、「執行猶予期間中だったケース」「懲役(実刑)になった経験があるケース」、「罰金になった経験があるケース」「前回の痴漢が不起訴だったケース」の4つに分けて解説します。
執行猶予期間中だったケース
執行猶予期間中に、痴漢で再犯した場合、執行猶予が取り消される可能性があります。
なぜなら、再犯は執行猶予の取消事由に当たる可能性があるからです。
具体的には、次のように処罰されます。
今回の痴漢が拘禁刑(禁錮・懲役) | ・再度の執行猶予が付かない限り、前回の執行猶予が必ず取り消しになる(必要的取消) |
今回の痴漢が罰金刑 | 執行猶予が取り消される可能性がある(任意的取消) |
再度の執行猶予がつくためには「情状に特に酌量すべきもの」が必要です。
可能性はゼロではありませんが、痴漢で認められるのは、かなり厳しいでしょう。
執行猶予が取り消しになった場合は、今回の刑罰と前回の刑罰が合わせて科せられます。
例えば、前回の痴漢が「懲役3ヶ月」、今回の痴漢が「懲役1年」であれば、「1年3ヶ月」の実刑です。
痴漢で懲役(実刑)になった経験があるケース
前回の痴漢が懲役(実刑)だった場合、再犯時の扱いは、再犯までの期間によって異なります。
具体的には、「刑の執行が終わった日又は執行の免除を得た日」から「5年以内」なのか「5年を超えている」のかによって変わってきます。
◉5年以内の場合
「刑の執行が終わった日又は執行の免除を得た日」から5年以内に再犯した場合、刑法上の再犯(累犯)となります。
今回の痴漢で懲役刑が処せられる場合、刑が最大2倍にまで重くなるのです。
例えば、迷惑行為防止条例違反のケースでは「懲役1年以下→2年以下」へと加重、不同意わいせつ罪のケースでは「懲役10年以下→20年以下」へ加重されます。
◉5年を超えている場合
5年以上経っていれば、再犯(累犯)加重の対象とはなりません。
ただし、前科が付いていることに代わりはありません。そのため、前回よりも重い処罰を覚悟するべきでしょう。
痴漢を行った回数が多いほど、「また、繰り返すのでは?」と判断されやすいからです。
初犯なら不起訴となっているようなケースでも、罰金や懲役となる可能性が高くなります。
刑を軽くしたり、不起訴を獲得するには、被害者と示談するだけではなく、再発防止のための具体的な方策が必要です。
痴漢で罰金になった経験があるケース
前回の痴漢が罰金の場合も、刑法上の再犯(累犯)にはなりません。
ただし、罰金も前科である点では同様です。
公判で罰金となったケース、略式起訴で罰金となったケース、いずれの場合でも刑事処分は重くなりやすいでしょう。
もっとも、常習的な犯行ではない、痴漢の程度が軽い、被害者との示談も成立している等の要因が揃っていれば、再び罰金で済む場合もあります。
前回の痴漢が不起訴だったケース
前回の痴漢が不起訴だった場合は、再犯(累犯)にはなりません。
前科も付いていないので、前述の3つのケース程には、大きな影響は生じないでしょう。
ただし、痴漢で捜査の対象となった記録(前歴)は、警察や検察に保存されています。
前歴があることが、今回の痴漢の処分に影響する可能性は高いです。
特に前回の痴漢から時間が経っていなかったり、痴漢が1〜2度ではなく、常習的に行われているようなケースでは、重く処罰されるリスクが高くなります。
痴漢の再犯で不起訴を目指すためにするべきこと
「痴漢の再犯をなんとかしたい」
「きちんと対応して、不起訴を得たい」
このように考えているのであれば、あなたが取るべき行動は次の3つです。
速やかに弁護士に相談する
痴漢の再犯で逮捕されてしまった場合、まず行うべきなのは弁護士への相談です。
あなたが過去に行った痴漢も正直に伝えれば、最善の弁護方針を打ち立てて、行動してもらえるでしょう。
弁護士へ相談するタイミングが早いほど、不起訴になる可能性は高くなります。
逮捕されてしまった場合も、速やかに駆けつけて、早期釈放に向けて弁護活動を行ってくれるでしょう。
再犯で逮捕されると、初犯のケース以上に身柄拘束の期間は長くなりやすいです。
逮捕・勾留が認められると、身柄拘束の期間は、最大で23日間に及んでしまうのです。拘束期間が長くなるほど、仕事や家庭にも大きな影響が生じてしまいます。
身柄拘束の期間を短くし、社会に復帰しやすくするためにも、早めに弁護士へ依頼することが大切です。
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被害者と示談をする
被害者との示談も、初犯のケース以上に大きな意味を持ちます。
過去に行った痴漢の回数が多いほど、刑事処分が重くなりやすいからです。
示談して被害者に許してもらわなければ、早期釈放や、不起訴になることは難しいでしょう。
とはいえ、痴漢では被害者の連絡先が分からないことが一般的です。
そこで、警察から被害者に連絡してもらい、弁護士へ連絡先を教えてもらう方法が考えられます。もちろん被害者の承諾は必要ですが、本人に教えないことを条件に教えてもらえるケースは多いです。
被害者の連絡先が分かったら、速やかに示談交渉をスタートします。
スムーズに示談が成立すれば、早期釈放・不起訴処分も現実的なものとなるでしょう。
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再犯を防止するための、具体的な取り組みを考える
「再犯を防止するためにどうするのか」具体的な方策を考えることも必要です。
被害者から許してもらえても、検察官に「また繰り返す可能性が高い」と判断されれば、不起訴は難しくなるからです。
本人が深く反省することはもちろん、家族の協力も欠かせません。
「なぜ繰り返し痴漢を行ってしまうのか」
「どのような状況で痴漢しやすいのか」
原因をしっかりと把握し、痴漢を繰り返さない環境を整えることが求められます。
「依存症」の可能性がある場合は、専門機関を受診して、治療を受けることも効果的な方法です。
「痴漢を繰り返さない」ことを検察官に伝えて、理解してもらうことができれば、不起訴になる可能性は高くなります。
痴漢で再犯をしてしまったら「グラディアトル」にご相談ください
痴漢の再犯で不起訴処分を目指すなら、痴漢事件に強いグラディアトル法律事務所へご相談ください。
グラディアトル法律事務所では、これまでも数多くの痴漢事件を担当し、難しい示談交渉を進めてきました。
例えば、複数回行ってしまった痴漢事件でも、示談成立で執行猶予となった事例があります。
5−1 2度目の痴漢で強制わいせつ致傷罪で起訴|示談成立で執行猶予となった事例
【依頼者/20代の男性】
◎第1事件 路上で痴漢した疑いがあるとして、警察に任意同行を求められる。夜道を歩く女性に対して後ろから抱きつき、服の上からその女性の臀部に触れたとのこと。 酔っていてよく覚えていなかったが、防犯カメラの映像から自分の犯行であると思い、犯行を認めた。 逮捕はされなかったものの、捜査は続くと警察から告げられる。 そこで、刑事事件に強い弊所へご相談。 |
◎第2事件 別件でも、同様の痴漢行為をしていることが発覚。その際には強引に抱きついたことで女性を転倒させ、負傷させていたことが判明する。 その後、第2事件について、強制わいせつ致傷罪の被疑事実で逮捕される。 |
◎弁護士の対応 弁護の要請を受けて直ちに接見に向かうバイト先や学校へ連絡してほしいことを聴取し、ご依頼者の母親に連絡。 ↓ ご依頼者やその母親と話し合いの末、2つの事件について示談を進めていくことを決定。 並行して母親に身元引受書を書いてもらい、申立てを行うなどして、ご依頼者の身体拘束からの解放に向けて精力的に取り組む。 ↓ 交渉の結果、2件の被害者双方と、宥恕文言(犯罪行為を許し、刑事処罰を求めないという文言)を含む示談書を結ぶことに成功。 ↓ 検察は2件の事件を大阪府の迷惑防止条例違反と同条例違反及び傷害の罪名で起訴し、執行猶予なしの懲役1年6ヶ月の求刑。 弁護士は各被害者との示談書を証拠として提出し、ご依頼者の反省状況や再犯防止策等について主張。 ↓ 懲役1年2ヶ月、執行猶予3年の判決。 |
上記のケースでのポイントは、次の3つです。
・早期に示談が成立し、宥恕文言を含んだ示談書を証拠として示すことができた ・依頼者が、自分の行為を素直に認めて反省・改善の意思を示していることを示せた。 ・具体的な更生の方法を主張することができた。 |
本件で依頼者が起訴された「強制わいせつ罪」は、「無期又は3年以上の懲役刑」という非常に重い犯罪です。
しかし、このようなケースでも、依頼者にとって有利な事情を主張し、適切な判断を繰り返し求めていくことで、執行猶予付きの判決を得ることができます。
痴漢の再犯についてよくある質問
家族が痴漢で再犯しないためにはどうすればいいですか?
ご家族が痴漢で再犯をしないためには、ご本人の意思だけでなく、周囲のサポートも欠かせません。依存症の疑いがある場合は、専門機関の受診も検討してみましょう。
痴漢の再犯で不起訴になる可能性はありますか?
被害者との示談や、ご本人の反省、再犯防止に向けた周囲のサポートなど、ご本人に有利な事情をしっかりと主張できれば、不起訴になる可能性もあります。
まとめ
最後に、今回の記事のポイントを整理します。
・痴漢は再犯率が非常に高い犯罪
・刑法上の「再犯(累犯)」加重になるのは、次の要件を満たす場合
① 前回の刑が懲役刑(実刑) ② 刑の執行から5年以内 ③ 新たな痴漢も懲役刑 |
・ただし、再犯(累犯)加重にならなくても、量刑上は影響する
・再犯で不起訴を目指すためにするべきことは3つ
・弁護士への相談 ・被害者との示談 ・再犯防止のための取り組みを考える |
以上です。
痴漢の再犯で悩んでいる方は、この記事を読み終わったら、すぐに刑事処分を軽くするための行動を起こしましょう。
一刻も早く、あなたが抱えている痴漢問題が解決し、無事に社会復帰できることを願っています。
この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。